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東京都・小池知事、国の報復措置で税収2千億円減…安倍政権に完全敗北で大失態
http://biz-journal.jp/2018/01/post_22040.html
2018.01.18 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
小池百合子都知事(つのだよしお/アフロ)
東京都財務局・主税局をはじめ東京23区の税務担当職員は、一様に口を揃える。職員たちが怒りを露わにしているのは、政府が消費税の清算基準を見直すことを発表したからだ。
これまでにも、東京都は政府の指先ひとつで税を奪われてきた。もっとも有名な例がふるさと納税だ。和牛や海産物など豪華な返礼品が話題を呼んだふるさと納税は、制度が開始されて以降、富裕層の間で“節税”対策として静かに注目されてきた。それがテレビや雑誌などで頻繁に取り上げられるようになると様相は一変。広く存在を知られるようになった。
また、総務省が手続きを簡素化したこともあり、創設当初は約81億円規模(2008年度)しかなかったふるさと納税額は、1653億円(15年度)まで増加。爆発的にふるさと納税が増加したことで、東京・大阪などの都市圏の自治体は割を食わされることになった。東京都をはじめとする税収が豊かな自治体にとってみれば、自分たちが“稼ぐはずの”税収を奪われてしまうのだから、ふるさと納税ブームに怒り心頭となるのは当然だろう。
そうした自治体の怨嗟の声は総務省にも届いた。総務省は地方自治体の非難を無視できず、ふるさと納税の歪みを是正するべく、豪華な返礼品を出す自治体に“自粛”するように要請した。
これは、あくまでも総務省のお願いでしかないが、“お上”からのお願いは当然ながら強制的な意味を含んでいる。そうした総務省の態度に対して、一部の自治体は頭ごなしのやり方に反発した。とはいえ、多くの市町村は中央官庁に逆らえない。豪華な返礼品を出す自治体は、鳴りを潜めた。
こうして、ふるさと納税による税の流出は止まった。総務省が制度設計をしたふるさと納税に問題点はいくつかある。しかし、そうした問題を含みながらも、歳月とともに制度を育てていこうという思いが総務省にはあった。
ふるさと納税は、菅義偉官房長官が総務大臣だった時代に導入された。それだけに菅官房長官はふるさと納税制度に人一倍愛着を抱いているともいわれる。そんな長い目で育てようとしていたふるさと納税制度を、総務省自らが豪華な返礼品を自粛するように呼び掛け、ブームの火消し役を担ってしまったのだから、菅官房長官や総務省職員内には忸怩たる思いが燻る。
ふるさと納税による税の流出がなくなることで、東京都は財政力を取り戻し強大化する。強大化することで、政府に歯に衣着せぬ物言いをするようになる。外国の国家予算とも肩を並べる東京都だけに、簡単に国の言うことには従わない。それは、歴代首相が東京都知事に手を焼いてきたことからも窺える。長らく、政府や中央官庁にとって常に東京都の存在は目の上のタンコブだった。
それでも政権与党・自民党と蜜月の関係を築いていれば、いざというときに両者は協力し合う間柄にあった。しかし、このところその間柄は冷え込んでいる。理由はいくつかあるが、「小池百合子都知事が就任して以降は、政権との関係はさらに距離が開きつつある」(東京都職員)ともいわれる。
■政府による地方消費税の収奪
そんな小池・東京都を潰す策として政府が繰り出した一手が、消費税の清算基準の見直しだ。東京都の強さの源泉である“税収”を奪うことで、政府は東京都を意のままに操ろうとしているのだ。
現行8パーセントの消費税は、6.3パーセントが国税分、残り1.7パーセントが地方分として徴収されている。この1.7パーセントの部分は地方消費税と呼ばれ、政府が定める配分基準を用いて47都道府県に分配されることになっている。
地方消費税は年間で約5.0兆円前後あり、東京都は毎年7500億円ほどの地方消費税を得てきた。政府は地方消費税の清算基準の見直しを始めた。新たな基準で地方消費税を分配すると、東京都は最大で2000億円もの減収というダメージを負う。
これに、小池知事は黙っていられなかった。毎週開催される都知事会見では強く反対の意を表明し、自民党税制調査会の重鎮を回って陳情を重ねた。しかし、小池知事の陳情作戦は奏功せず、東京都が地方消費税を減収させることは避けられない。前出職員とは別部署の職員は、こう憤慨する。
「1989年に消費税が創設された際、それまで地方自治体の税収とされていたトランプ類税や電気税などの間接税が整理されて消費税に一本化されました。そうした経緯から考えると、本来、消費税収はすべて地方の税財源になるのがスジです。47都道府県間で税収格差があって、それを是正する目的があるのはわかります、しかし、政府が消費税の清算基準を強行的に見直しすることは、上からの押し付けであり、横暴そのものです。地方自治体の自立、地方分権にも逆行する話です」
ふるさと納税ブームが沈静化に向かい、ようやく税の流出にブレーキがかかる気配を見せていた矢先、東京都は政府による地方消費税の収奪という新たな危機に直面した。税金争奪戦は、新たな局面に入りつつある。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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