自作オーディオ http://www9.wind.ne.jp/fujin/diy/audio/amp.htmこのコンテンツは私が作製したアンプを紹介するだけのコーナーです。 私は、ここで紹介しているアンプの製作をこのコンテンツをご覧になった方に勧めるものではありません。アンプ作りには多くの知識・ノウハウを必要としますし、またその製作過程の中には危険を伴う場合があるからです。それと私の作品には私の独創的回路はありません。いずれの作品も技術誌、HP等を参考に製作したものです。 マランツ#7イコライザーアンプ(上)とラインアンプ(下)
2006年2月25日 今後LPを買う予定はまったくないのですが、なんとか良い音で聴きたくなって真空管式プリアンプとして有名なマランツ#7のイコライザー部をコピーしました。 外観は左のとおりですが、中身の製作法は氏家高明氏の著書を参考に、極力その手法を真似ています。下のラインアンプはイコライザーやCDを切り替えることと、入力信号を数倍増幅し、メインアンプに充分な電圧の信号を与えるためのものです。 光の具合で上下の色が違って見えますが、まったく同じ材料で、同じやり方で作っています。高さ以外のサイズも同じです。 http://www9.wind.ne.jp/fujin/diy/audio/amp.htm イコライザーアンプとラインアンプ http://www9.wind.ne.jp/fujin/diy/audio/77/eq.htm
■イコライザーアンプ 有名なマランツ#7のイコライザー部を作りました。 内容は『UZIKEアンプ』(氏家高明さん著)を参考に、氏家さんの製法を極力踏襲しています。 私はイコライザーアンプは、かつて2台製作しました。 一つは学生時代に作ったマッキントッシュC22のコピー版。それから1年半後にMJ誌掲載された安井章氏のものです。この安井式アンプは、その後27年も使うほど音質は気に入っていました。しかし去年の冬、事情があって友人のK君のところにお嫁入りしてしまい、そうなるとLPを聴くならC22コピー版しかありません。 ところがこのC22コピー版は正直言って失敗作なのです。 まったくの休眠状態で、たまに思い出したかのように音出ししても音の輪郭の甘さ、低域の弱さ、高域の伸びの悪さ、ヌケの悪さはどうしようもありません。 天下の名器といわれたマッキントッシュC22の音質とはこんなものか、とは思いません。私の技術の未熟さもあるでしょうし、ひょっとしたら部品を間違ってしまった(100Kの抵抗を10Kにしてしまったとか)かもしれません。 安井式アンプがなくなったので久しぶりにC22コピー版をひっぱり出して蓋をあけたら、我が作品ながらこんな作り方をしていたのかとびっくり。まず、ヒーターの点火電圧が低すぎます。 12AX7を3本直列にして点火するので37.8V必要なのですが、31V位しかありません。これではカソードが充分熱せられず、特性にもかなりの影響があるでしょう。 次に球の配線状態に愕然。12AX7の二つのユニットを左右に振り分けて配線しています。 つまり 右:【(1/2)12AX7 → (1/2)12AX7】 → (1/2)12AX7(KF) 左:【(1/2)12AX7 → (1/2)12AX7】 → (1/2)12AX7(KF) とすべきところを 右:【(1/2)12AX7】 → 【(1/2)12AX7】 → (1/2)12AX7(KF) 左:【(1/2)12AX7】 → 【(1/2)12AX7】 → (1/2)12AX7(KF) としていたのです。(同じ色のカッコが1本の球です) いうまでもなく、12AX7の二つのプレート間にシールドはないので、信号が一方から他方に飛びついてしまいます。当時はそんなことを考えて配線してはいませんでした。高域の甘さ、ヌケの悪さは、案外こんなところが原因かもしれません。 プリント基板(そもそもこれが自己流)で作っているので改善するなら最初からやり直す以外ありません。そうこうしているうちにネットで知り合った氏家さんから、マランツ#7は目眩を起すほどの好音質と聞き、C22コピー版も古いしそちらを作ってみるか、とはじめた次第です。 ●回路の疑問 回路は次のとおりですが、少々気になるのは時定数3段のNFBということです。C22コピー版を作った時#7と回路の比較をしましたが、この時定数3段が#7を作らなかった理由なのです。そして2段目から初段に22pFを使ってわずかに正帰還をかけています。氏家さんに言わせれば時定数3段のNFBと共に、この正帰還があるため常識破りの音質が得られるとのことです。 マランツ#7のイコライザー回路には私程度の者でも感じる疑問点がいくつかあります。 初段のグリッド〜アース間につながれた47kと1Mは意味不明。それとグリッド〜カソード間の100pは不要です。 この47kと1Mは、47kを1本グリッド-アース間につなげばいいと思うんですが。 100pを付ける理由は大体わかります。放送局が近くにある強電界の地域では、まれにわずかですが放送を受信してしまうことがありますから、メーカー側としてはユーザーのクレームを回避するためにやむなくこうしていると思われます。これは不要ですがせっかくだからつけておきます。 次に動作上の疑問は、初段と2段のIpは0.3〜0.35mA位になりますのでこの設定では12AX7のEp-Ip特性のカーブがやや寝ているところを使うことになり、12AX7の動作としては直線性上も、歪的にも少々不利のような気がします。さらに初段のカソード抵抗が4.7kと12AX7にしてはかなり大きくなっています(だからIpが小さい)。2段目に至っては6.2Kという大きさです。 初段も次段もプレート負荷は270Kと比較的大きく、大きなカソード抵抗と合わせてIpを絞ってプレート電圧とバイアス電圧を確保しています。 初段のカソード抵抗が大きければ3段目の負荷がやや軽くなりますが、交流的には初段のカソードから250μのコンデンサーを通して510Ωの抵抗が並列につながっていますから合わせて460Ωになり、4.7kはほとんど無視された恰好になります。250μは510Ωを直流的に切り離して初段のバイアスを保つためと思われますが、この510Ωがあるために交流的にはかえって重い負荷になっているのです。仮に4.7Kが3段目の負荷を軽くするためだとしたら、2段目に6.2Kを使う理由は何なのでしょう?単にIpを少なくするためとしか思えないのです。そうだとしたら2段目のIpを少なくするのに何のメリットがあるのでしょう? ここで『UZIKEアンプ』の一節を思いだします。 氏家さんは電圧増幅には電流(Ip)はいらない、と書いています。また#7の設計手法に大きな影響を受けたとも書いています。あるいはこのことと関係があるのかもしれません。 そして最大の疑問はカソードフォロア段のカソード抵抗(負荷抵抗)がわずかに27.68Kということです。Ipは2mAに近く、12AX7の動作としては異例というほかありません(C-22は330K)。 交流的にはこの27.68Kに1Mの抵抗、RIAA素子のインピーダンス(100Hzで245K、1000Hzで59K、10000Hzで12K)、初段で合成される460Ω、さらには私の場合、ラインアンプの100kのボリュームにつながりますから、交流的負荷はますます低くなるのです。 以下は私の想像ですが、カソードフォロアの出力インピーダンスは1/gmになります。gmはIpに伴って増加するので、#7の設計者は少しでもIpを多く流してgmの大きい(12AX7のgmなんて知れていますが)領域を使って負担を小さくしようと思ったのではないでしょうか。もっともそうだとしたらもっとgmの大きい球を使えば済むわけなのですが・・。 これらの設定は私には理解の外ですが天下のマランツ。私などには思いもつかぬ深い考えがあってのことでしょう(と自分に言い聞かせています)。 電源部はとりたてていうほどのものではありません。 B+の整流はファースト・リカバリ・ダイオード、ヒーター部にはショットキー・バリア・ダイオードを使っています。 高圧の電解コンデンサーは市場の原理が働き、今では本当に入手難です。チュブラーはUNICON、ブロックはJJです。この二つもいつまで供給されるでしょうか? 入手難といえば、トランスのEV-3Sが見つからず、ST-30にすると掲示板に書いたら氏家さんがISOの特注品を譲ってくださるとのことで助かりました。 LEDには15mAのCRDを直列に入れてあります。万が一12AX7のヒーターが断線して電圧が上がってもLEDが破壊されないよう保護するためです。それとどれほど効果があるかわかりませんが、電源トランスの一次側にはノイズフィルターを入れておきました。 ●製作 今回一番大変だったのは、サブ・シャーシーの加工と、基板作りでした。 私は力はないし、不器用だし金属加工はニガテなんです。『UZIKEアンプ』の実体図をほぼ原寸に拡大コピーして、これを切り抜いてベーク板やアルミ板に貼り付けて加工していきます。 チクショウメ・・・これでロクな音が出なかったら、ネットで茶@のヤツをコキおろしてやる・・・などと思いながら、危なっかしい手つきで金ノコやドリルを使ってギコギコと加工していく私でありました(笑) 氏家さんはベーク基板にピンを埋め込みましたが、私は適当なモノが見つからないし、ピンは基板の裏でハンダ付して固定するわけではないので、なんとなく不安定です。そこで3φのボルトナットで代用しました。 基板を作ってからCR類を取り付けますが、これがある意味、実に面倒です(笑) 私は今まで実体図を見ながら配線をしたことなんてありません。すべて配線図だけで行なってきました。氏家さんには失礼ながら、実体図を見ながら本当にこれでいいんだろうな? と疑いながらの配線です。 パーツは抵抗はリノケーム、カップリングコンデンサーはASC、電解コンデンサーはニチコンです。 氏家さんの作品と違って本機はイコライザーだけなので、負帰還のCRは基板上に空中配線しました。 それと増幅部の2箇所のアースは入力端子近くのLPプレイヤーのアース端子につないでいます。 電源のLED点灯にCRDを使ったこと、RIAA用のCRの空中配線、増幅部のアースのとり方。この3点が氏家さんのやり方と違うところです。あ・・あとケースも(笑) それにしても私は今までこんな不思議なアンプは作ったことがありません。 回路上の疑問もさることながら、ベーク基板上の配線のことです。必ずしも最短で結ぶ配線ではなく、わざわざ迂回したり増幅部ではアースを2点でとったり。 ケースはTopの写真のとおり、300Bアンプ方式です(^。^) ホームセンターで買った板とアルミを、これまたキコキコと加工して板にはビニールシートを貼り、アルミはスプレーで塗装しました。 さてケースにトランスをはじめ、増幅基板、入出力端子等を取り付けて結線。一発で音出しに成功しました・・・しかしなんということか。ハム音も元気いっぱいなのです! こりゃ困った。こんなにハム音が大きくてはどんなに音が良くても話にならん・・・・。音からしてトランスからの誘導ではなく、アースのとり方以外に考えられません。電源スイッチを切るとハムはすーっと消えます。アースがループになってハムを拾っているとしか思えません。 アースは増幅部に2箇所、電源部に1箇所あります。つなぎ方を変えたり、ひょっとしたら平滑回路の容量不足でリップルが乗っているのか・・いや違う・・・試行錯誤すること2日間。もうほとんど諦めかけた時、ふと閃くものがありました。 大変な間違いをしていることに気がつきました。 電源トランスはシャーシーにネジで固定し、電源基板はトランスの上にL金具で固定してあります。このため電源基板(アースが落としてある)はトランスを通してシャーシーにつながれ、特別に結線しなくともアースされていたのです。 これははじめから承知していました。アースにつながっているんだから結線する手間が省ける・・・・。 まったくうかつでした。 これでは電源基板→増幅基板→入出力端子→シャーシー→トランス→電源基板の巨大ループができてしまうのです。トランスとシャーシー間を切断しなくてはなりません。トランスをシャーシーから浮かせるため、トランスーシャーシー間に絶縁体としてCDのケースを挿入してテスト。 OKです。ハム音はほとんど聞こえなくなりました\(^o^)/ で、実際のトランスは左のようにベーク板を使ってシャーシーから浮かしています。 アースのとり方は左のとおりです。赤い線が電源〜増幅部のアース線です。 増幅部と入出力のアースはシャーシーの1点に集中させています。 プリ、特にイコライザーのアースは微妙な要素があって本当に難しいと思います。もっとも今回の原因は私が手抜きしたためですが(笑) これがメインアンプなら、おそらくまったく問題にはならなかったでしょう。解決には2日かかりましたが、これくらいで済んだのは運が良かったのかもしれません。 ハムは実際にはほんの少し残っています。このアンプの初段はカソードが交流的にアースされていないのも原因の一つかもしれません。 電池駆動でもない限りハムを皆無にするのは不可能ですから、ある程度のところで妥協することも必要です。今回は納得できるレベルでまとめることができました。 ホッと一息ついて、各部の電圧をチェックしたところ氏家さんの配線に比べてB+は5V、ヒーター部は0.5Vほど高めです。これ位の誤差ならピタリといっても差し支えありません。初段と2段目のプレート電圧は左右で5〜10V位の差があります。これは負荷抵抗の誤差というよりは12AX7自体のバラツキのせいでしょう。負荷抵抗が270Kと大きいのでわずかなバラツキ(Ipの違い)でも電圧差は大きくなるわけです。ちなみに使用した12AX7はナショナル製で(T)となっています。 ●試聴 最初にかけたLPはWe Get Requetst / Oscar Peaterson(1961年録音)。 続いて手持ちの中から高音質と思っているモノをたて続けにかけてみます。 Crystal Silence / Chick Corea & Gary Burton(1971年)、Ballads Burton / Ann Burton(1967年)、Big Blues / Art Farmer(1972年) 素晴らしい音質です。自画自賛かな(笑) 思わずLPってこんなに良い音だったの?!、と思ってしまいます。 各楽器の伸び、輪郭の明瞭さ、透明感、余韻等、今までとは全然違います。音量を絞ってもその傾向はほとんど変わりません。 従来はピアノのハーモニーが時には暴れて音が濁る傾向がありましたが実にきれいにハモります。 今までLPは増幅段数が増えるため(イコライザーのこと)音が甘くなるのはやむを得ない、と思っていましたが大変な間違いであることを知りました。 ■ラインアンプ さて、イコライザーアンプはできました。 しかしイコライザーの出力だけでは、あるいはCDプレーヤーの出力だけでは少々力不足です。 第一LPやCD等の入力を切り替えられません。そこで急遽手持ちの部品を適当に使ってラインアンプを作りました。新たに買ったのはトランス、入出力用ピンジャック、真空管ソケット、電解コンデンサー位なもので、10000円位で仕上がりました。超ローコストです。 球は箱の中にゴロゴロしている6AU6の三結。16dBほどの負帰還をかけて2.3倍程のゲインになっています(計算上)。これでボリュームは夜中は9時、昼間は10〜11時の位置で充分。13時ではうるさすぎになりました。 P-G負帰還の特性上ボリューム位置の変化とともに入力インピーダンスも変わるし、仮に電源スィッチが切れていても(アンプは動作していなくても)、出力端子には微量ですが入力信号が伝わるという薄気味悪いアンプでもあります(笑) SN比は抜群。ボリュームをMAXにしてもハムもノイズもまったく聞こえません。ケースのデザインや高さ以外のサイズはイコライザーとまったく同じに作ってあります。 それにしても・・・これって、氏家さんに何か言われそうだなあ(笑) ■今、我家はこういう状態です イコライザーの上にラインアンプを乗せてあります。これにΠの字型に作った板をかぶせ、その上にCDプレイヤーを乗せました。 http://www9.wind.ne.jp/fujin/diy/audio/77/eq.htm
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