2015•07•02 ギリシャ危機の原因はドイツ ここ最近、またギリシャ危機が騒がれ始めました。
私のブログのアクセス解析でも、【ギリシャ人 働かない】なんて検索ワードで訪れてくださる方がチラホラと。 しかし、前にも投稿で書いたことが有るのですが、今回のギリシャ危機の主な要因は、ドイツに代表されるEU内の先進国です。 ユーロという枠組みは、通貨を統合して政治的には統合しないという不思議な枠組み。 このシステムで一番得をしたのが、ドイツです。 そもそもドイツは、国際競争力の高い高級車等が主力商品の工業国。 売っている商品のジャンルこそ違えど、日本と同じ様な貿易黒字国です。 貿易黒字国の宿命として存在するのが、通貨高。 通貨高になってしまうと、優れた商品を作っても他国から見れば割高な商品となってしまう為、競争力は失われてしまう。 ではどうすれば良いのかといえば、そもそも通貨が変動しなければ良い。 ユーロという枠組みを作って、ヨーロッパ圏内の通貨を統一してしまえば、通貨変動によって競争力が変化しない。 よって、ドイツがどれだけ黒字を出そうが、ヨーロッパという市場では競争力が変化しない事になる。 またこの枠組みを作ることで、ドイツにとってもうひとつ有利な点が生まれる。 それは、通貨安。 ドイツが貿易黒字を出すと、通貨高の要因になるのは先ほど書きました。 では、ユーロという枠組みを作り、貿易赤字を垂れ流している国を引き込めばどうなるでしょうか。 赤字と黒字がユーロ経済圏内で相殺し合い、上手く行けば通貨安に誘導できる。 ユーロという通貨が安くなれば、世界市場で販売しているドイツ車の国際競争力は更に増し、ドイツ経済にとって良い影響を与える。 つまりユーロという枠組みは、ドイツのような貿易黒字国にとっては良いことづくめと言える。 しかし、経済だけを統一して国を統一しないと、問題が起こってきます。 それは、一部の都市のみが発展し、地方が衰退してしまうという現象です。
ヨーロッパという地域で考えると、イマイチ『ピンッ!』と来ないという方は、日本という枠組みで考えれば分かりやすいでしょう。 日本も、東京一極集中で、地方が衰退しています。 しかし日本の地方は、むかし夕張等で破綻が起こりましたが、それ以外は比較的安定しています。 何故かと言うと、国が地域差を是正する為に再分配を行っているからです。 具体的には、東京で稼いだ税金を吸い上げて、地方交付税という形で再分配をする。 もし、この日本の中で東京が 『地方は怠け者で働かないから発展してないだけだ。 何故自分達の税金が、関係のない地方に配られるんだ! 東京で稼いだ税収は東京のためだけに使うべき!』 と言い出したらどうでしょうか。 東京都地方の格差は、更に拡大することになります。 潤沢な資金が有る東京は、有り余る資金で最新設備を設けた大学などを何個も創ることが出来ます。 そうなれば、日本中の優秀な若者は、地方から東京に移住することになります。 東京という地域には人が流入し、経済的にも更に発展。 更に増額した税収で、住民サービスは良くなります。 すると、地方の引っ越しが出来る程の財力が有る人達は、発展していて住民サービスも良い東京に移住した方が得になるので、また、住民の移動が起こってしまう。
結果として、経済的・学力的に東京の大学に行けない若者と、引っ越す財力のない人達が地方に取り残されることになる。 この様な人たちは収入も少ない為、地方の税収は更に下がる。 財政を維持する為には、緊縮政策を取らなければならない。 つまりは、住民税の増額と公共サービスの削減・低下につながる。 簡単に表現すると 富める者はより裕福に。 貧しい者はより貧しくなってしまう。 この流れを避ける為に行われるのが、同じ経済共同体内での再分配です。 しかし、EUはこのが機能していない。 ドイツ人達は、『何故ギリシャ人の為に、自分達の税金が使われなければならないんだ!』と主張し、ギリシャに金を貸すことはあっても、再分配という形で分け合うことはしていない。 もしEUの要求通りに、ギリシャで緊縮財政が起こればどうなるのか。 先程日本で例えた際の、【東京】と【地方】の関係と同じようなる。 やる気があってまじめに勉強をしているギリシャ人の学生は、ドイツの大学に進学してドイツの会社に入社する。 当然、税金もドイツで支払い、ドイツはより潤う事になる。 その一方でギリシャは、公共サービスが低下して、税金も上昇。 EU国内では国民は移住が自由である為、余裕のある人はサッサとドイツに移住してしまう為、主な収入源の富裕層が国を出て行くことになる。 こうなると、更に税収は激減する。 つまり、ギリシャにとっては緊縮財政を採用しても借金を踏み倒しても、どちらにしても地獄ということ。 これは、ギリシャが悪いというわけではなく、EUという制度に致命的なエラーが存在するということ。 因みにこの話は、私が考えた机上の空論では有りません。 この話を、日本に留学で来ているスエーデン人の方に話した所、大きく頷き、ドイツに全て搾取されているといった事を話されていました。 その方の話によると、ドイツは経済状態も良く、物も大量に消費される為、物価自体が安いそうです。 どれぐらい安いのかというと、スエーデンでビールを購入するより、ガソリンを使ってデンマーク経由で陸路でドイツに渡り、トランクに詰めるだけ積んでスエーデンに戻った方が安いそうです。 ここまでモノが安いと、ドイツ周辺国の人は皆、ドイツで買物をすることになり、ドイツの税収が上がる一方で周辺地域は疲弊してしまう。 これが成り立つのも、再分配が行われていないからです。 今回のギリシャ危機は、どのような形で処理するかによって、EUという枠組みそのものが存続できるかどうかという重要な問題です。 ギリシャの意見を聞き入れ、再分配を真面目に考える事ができれば、存続できる可能性はあるでしょう。 しかし、ギリシャを切り捨てた時点で、EUという枠組みは近いうちに空中分解することでしょう。 http://kimniy8.hatenablog.com/entry/2015/07/02/193000 ▲△▽▼
ギリシャ危機、金融メディアが語らない10のこと http://jp.wsj.com/articles/SB10468926462754674708104581085121389238598 ギリシャ人たちが危機に陥っているのは、彼らが怠け者で借金を踏み倒す連中だからだ、というのは正しいか?
結局のところ、彼らは1年に10カ月間しか働かず、14カ月分の支払いを受け取っている。25歳で引退し、カフェにたむろしてウーゾ(アニスの香りがするギリシャの蒸留酒)をあおっている。ドイツからの施しで生活し、税金をごまかす。欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカが繰り返し支援しようとしたが、彼らは聞く耳をもたない。そして今や、極端なリベラルに走り、借り入れたカネをびた一文返そうとしない。 それは正しいか? 全く正しくない。 ギリシャ危機について皆さんが教えられているほとんどあらゆるものは、完全なたわごとである。以下はその理由だ。 1.ギリシャ人は既に要請されている以上に緊縮している。5年前の救済取り決め以降、ギリシャ政府は支出を削減し、増税し、そして基礎的財政収支(プライマリーバランス)を240億ユーロの赤字から30億ユーロの黒字に転換した。同国は実際には救済側の要求以上に債務を削減した。IMF自体が緊縮対策は「どんな基準でみても異例だ」と述べ、改革面での彼らの「重要な進展」を称賛したのも無理はない。 2.本当の問題はトロイカの薬が効かなかったということだ。IMFは当初、緊縮政策を採用すれば、ギリシャは2011年から「V字型」の経済回復に入ると予測していた。「信頼感の効果と、市場アクセス再開」が期待されたのだ。だが、現実にはそうではなかった。これらは10年の救済文書から引用したものだ。IMFは、14年までに経済成長率が3%を超え、「失業率は12年までに15%近くでピークになるだろう」と予測した。何たることだろう。つまるところ、ギリシャ政府が債務を削減する間、経済は一段と縮小しただけだった。 3.引用される「専門家」の発言は、皆バイアスがかかっている。確かに、TVやインターネット上では大勢の賢人たちがあれこれ非難したり警告したりしている。問題はどこにあるか。彼らがおおむね金融部門で働いている点だ。したがってその関心事は株式、債券、その他の金融資産であって、アテネやテッサロニキのような諸都市の雇用や世帯収入など日常生活の実態ではない。金融は実際に大切かもしれないが、それがすべてではないことは確かだ。 4.ギリシャは既に破局している。わたしにとって開いた口がふさがらないのは、ギリシャはトロイカへの返済を停止したり、ユーロから離脱したりすれば、経済的な災厄に直面すると別の専門家が主張する時だ。国内総生産(GDP)は8年間で25%減少した。輸入は40%減少した。公式の失業率は25%だ。災厄だって?それは既に発生している。 5.国というものは、財政緊縮でマネーを「創出」できない。ギリシャとトロイカの話し合いは、ギリシャ政府がどれほど増税ないし支出削減すべきかをめぐって決裂した。これは「単式簿記」システムの誤りに基づいている。それでも、広い範囲(尊敬すべき報道機関をも含む)で繰り返されている。ある国が増税ないし支出削減しても、全体としてマネーを創出しない。それは、一つの手から別の手にマネーが移動するだけだ。 6.本当は、ギリシャのドラクマ再導入は極めて容易だ。容易でないとする恨み言は、全く偽りだ。この種の措置は以前にも実行されたことがある。例えば、ベルリンの壁崩壊後の多くの東欧諸国がそうだ。当時、IMFとその他国際機関は手を差し伸べたし、新通貨への移行は成功し、比較的痛みも少なかった。彼らがギリシャを助けるのを拒否するなら、それは意図的な悪意ある行為だろう。 7.本当は、ユーロ無しでもギリシャはやっていける。英国がそうだし、ポーランドがそうだし、スカンジナビア諸国がそうだ。アイスランドは自国通貨の管理ができることもあって、2008年の通貨危機から回復した。実際、IMFは、ギリシャが今もドラクマを使っていてそれを切り下げてさえいれば、このような不況を回避できた可能性があると認めている。ギリシャがユーロを必要とするという考えはくだらないのだ。 8.ギリシャだけがこの危機の原因だったのではない。非は「ダボスの寵児たち」にある。彼らはお気に入りの「ユーロ」構想を誰にでも売り込んだ。その中にはユーロは不釣り合いなギリシャなどの国も含まれていた。これが過去10年間の膨大な債務バブルを膨らませる一因になった。それ以降、ダボスの寵児たちは自分たちの専売特許のパンと水と粥(かゆ)という治療食を強く勧めた。だが、効果は全くなかった。皆さんは、ダボスの寵児たちが自分たちのこの治療法を自分で試そうとするほど間抜けでないことに気づくだろう。ブリュッセル、フランクフルト、ロンドン、ワシントンでは、食事のメニューはこのような治療食ではなく、ロブスター・テルミドール、オイスター・ロックフェラー、そしてシャトー・ディケムだ。 9.パニックになるな。今回のギリシャ危機は他の世界にとって大きな問題にならないはずだ。ギリシャ経済の規模は米アラバマ州のそれと同じくらいだ。市場は既にギリシャの金融資産の大半を償却している。ギリシャ危機が「伝染」するのは、海外の政策担当者がそれを放置した場合だけだろう。わたしは良いパニックを好む人がいることは評価しているが、彼らは気持ちを落ち着かせる必要がある。
10.トロイカの提案する「治療薬」は無意味だ。トロイカが提案するように、ギリシャは年金制度を改革すべきか?課税基盤を広げて簡素化すべきか?港湾を民営化すべきか?確かに。よろしい。しかし、これらはどれも100万人規模の人々を職に復帰させ、カネを稼がせ、消費させるのに全く助けにならない。弾丸による負傷を「食事と定期的な運動」で治療しようとするようなものだ。それらの処方が悪いのではない。完全に的外れなのだ。
(筆者のブレット・アレンズはマーケットウォッチのコラムニスト)
原文:Opinion: 10 things they’re not telling you about the Greek crisis http://www.marketwatch.com/story/10-things-theyre-not-telling-you-about-the-greek-crisis-2015-07-01 http://jp.wsj.com/articles/SB10468926462754674708104581085121389238598 ▲△▽▼
“ギリシャは犠牲者” クルーグマンから擁護の声 ユーロの構造的問題を指摘 2015年6月29日
深刻な財政危機に直面しているギリシャは、EUが求めている財政緊縮案を受け入れるかどうかを問う国民投票を7月5日に実施することを決定し、ユーロ圏離脱の可能性も出て来た。ギリシャを非難する意見は多いが、責任はギリシャだけにあるのではないという見方もある。 ◆資本規制発表で国内は混乱。影響は国外にも 27日に、ギリシャへの金融支援延長は債権団によって拒否され、28日には欧州中央銀行が、ギリシャの銀行に対する資金援助枠の引き上げを見送った。これにより、ギリシャには銀行の営業を停止させ、資本規制を導入するという選択しかなくなったとロイターは報じる。 資本規制の発表を受け、ギリシャの市民は銀行のATMに長蛇の列を作った。また、29日の日経平均もギリシャ混乱のニュースを受け、今年最大の下げ幅を記録。他のアジアの国々でも、為替や株式に影響が広がった。 ◆押し付けの緊縮策こそ問題 このような状況のもと、ビジネス・インサイダー誌のヘンリー・ブロジェット編集長は、皆が悪者探しをしていると指摘。多くがギリシャのチプラス首相を無責任だと責めているが、経済学者のポール・クルーグマン氏は、これに異議を唱えていると述べている。 クルーグマン氏は、過去7年間、欧州はギリシャ経済の首を絞めてきたと主張。欧州が金を貸すたびに、ギリシャは歳出カットで応えており、緊縮財政こそが、ギリシャ経済にダメージを与えてきたと説明する。同氏は、危機に陥るたびに譲歩したことで、ギリシャは不況に苦しむ経済上の奴隷国になり果てたとし、ギリシャが持続可能な方法で負債を減らして現状から脱却することを欧州が認めないならば、ギリシャに残された道は債務不履行とEU離脱しかないと述べる(ビジネス・インサイダー誌)。 ブロジェット氏は、支出は各国政府がそれぞれの裁量で行うが、借り入れは単一通貨で行う現在のユーロの仕組みは、豊かな国が貧しい国を助成しない限りは、長期的にうまくいくはずはないと指摘。欧州の「中心」の国々は、この考え方を受け入れそうもないため、ギリシャや他の弱小国は、ユーロ圏を離れた方がおそらく幸せなのではないか、と述べている。 ◆富に負けた民主主義 英ガーディアン紙のコラムニスト、ゾーイ・ウィリアムズ氏も、ユーロのあり方に批判的だ。同氏は、国民投票の選択肢は、終わりなき緊縮か今すぐの大混乱だとし、どちらもギリシャ国民は望んでいないと説明。失業率は25%に達し、若者に至っては、ほぼ半分が職を持たず、40%の子供の生活レベルが貧困ラインを割っている現状では、EUがギリシャに求める緊縮案では、何も変わらないと主張する。 同氏は、単一通貨の導入で、自分たちの通貨のコントロールを失ってしまったとたんに、一国の政府は、その力を制限されてしまうと指摘。結局、強者が支配するのだと述べ、最も富めるドイツのやり方に従うことになると述べる。通貨管理は政治とは切り離すというユーロ創設時の神話は崩れ、民主主義はそれとともに降ろされたのだと同氏は主張。ギリシャはわれわれすべての力を弱める、間違った考えを維持するために犠牲になっていると述べている。 ◆ユーロ自体が悪?
英テレグラフ紙で執筆する政治コメンテーターのイアン・マーティン氏は、ギリシャのチプラス首相は、EU加盟国との慎重な話し合いを選ばず国民投票実施を決めたことで、欧州の政治家や官僚たちからは完全に狂っていると思われている、と述べる。しかし、狂っているのはチプラス首相ではなく、ユーロを作った側だと同氏は主張。彼らこそが、必要なセーフガードなしに、広大な大陸に通貨同盟を作ることで、政治的な夢と虚栄心が、経済感覚や文化、国の違いに打ち勝つと信じていたと断じる。 同氏は、ユーロ圏からギリシャが去り多大な影響が出れば、ユーロのエリートたちは、彼らのアプローチが機能していないことに、ようやく気づくかもしれないと述べている。 http://newsphere.jp/world-report/20150629-2/ ▲△▽▼
日本より長い労働時間 「ギリシャ人=怠け者」は大ウソだった 2015年7月8日 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/161509
「緊縮財政計画」を拒否したギリシャに対し、EU各国は呆れ果てている。もともと、ギリシャ人を「怠け者」と軽蔑していることもあって、「あいつら働きもしないで」と怒りを強めているようだ。
しかし、本当にギリシャ人は怠け者なのか。意外にもギリシャ人の労働時間は、日本人より長いという。ギリシャ人の労働実態について「東短リサーチ」が詳細にまとめている。チーフエコノミストの加藤出氏がこう言う。 「ギリシャ人が怠け者というのは、勝手な思い込みです。OECDの2013年の調査では、ギリシャ人の年間労働時間は、2037時間と世界2位。 1位は2237時間のメキシコ。日本は1735時間で16位でした。 この調査結果を疑った英BBC News Magazineが、フルタイムやパートなどさまざまな切り口で統計を見直したのですが、やはりギリシャの長時間労働は事実でした。 賃金の水準が低いため1つの仕事だけでは生活ができず、2つ、3つと仕事を掛け持ちしている人が多い。労働時間が長いという統計は、ギリシャ人の間で浸透している。だから“怠け者”と決めつけるドイツに対して猛烈に反発しています」 ■楽天的な国民性でイメージ定着
実際、1950年代、ドイツに移住したギリシャ人の勤勉ぶりは、よく知られている。 しかし、どうして「ギリシャ人は怠け者」というイメージが定着してしまったのか。 「公務員があまりにも恵まれているため、ギリシャ人は働かない、というイメージがついてしまったのでしょう。ステレオタイプの報道が多いのも原因です。 ドイツのテレビ局は、ヨットハーバーを映して〈経済危機でもギリシャ人はヨットを保有している〉と報じています。でも、実際にはヨット所有者の多くは裕福なドイツ人でした。 ギリシャ人が楽天的だということも大きいでしょう。気候が良いためか、“まぁ、しょうがないか”と深刻にならない。北ヨーロッパの国からすると、そうした態度が怠け者に見えるのでしょう」(加藤出氏) 怠け者ではないらしいが、あまりの楽観主義が、ここまで債務を膨らませてしまったのは確かだ。
▲△▽▼ 100年前の「ユーロ」とギリシャ 2015-07-10 ギリシャのこれからが問題になっているが、実は、ギリシャが欧州通貨連合を抜けそうになったのはこれで2回目なのである。 そのことはこのBBCニュースの記事(2012年)で知ったのだが、150年前にラテン通貨同盟という欧州の通貨同盟(各国の通貨は残して、交換レートを固定化して、交易の便を図る試み)が生まれた。 「ラテン通貨同盟の発足は1866年8月で、当初の加盟国はフランス、ベルギー、イタリア、スイスでした。 4カ国は、各国の通貨を標準化し、交換可能にすることに合意しました。 2年後、当初の4カ国にスペインとギリシャが新たに加入し、1889年には、ルーマニア、ブルガリア、ベネズエラ、セルビア、サンマリノが加盟し、さらに拡大しました。」(BBCニュースから引用) ということなのだが、ドイツはこれには当初から入っていない(ドイツは各州の通貨がまだ別だったので、ドイツ通貨統合でそれを固定化していた)。また英国は迷ったが加入しなかったというのも、ユーロの場合と同様だ。 そして、その後の歴史はこうだ。BBCから引用すると 「1832年、苦闘の末にオスマントルコ帝国からの独立を勝ち取って以来、ギリシャは度重なる財政危機や債務不履行に悩まされ、長い間、国際資本市場から事実上締め出されてきました。そしてラテン通貨同盟の草創期に加盟しましたが、やがてその存在は歓迎されなくなり、懸念の的となっていきました。 無責任で容認できない行動をとり続けたギリシャは、1908年にラテン通貨同盟から正式に除名されました。その結果、ギリシャは通貨政策を見直し、2年後に再び同盟に加入することができました。」 と、「無責任で容認できない(ギリシャ)」と、まるで現在と同じようなことが書いてあるのには驚く。しかし、その結末は、こうだった。 「しかし、その頃には同盟全体がますます脆弱になり、将来の見通しも次第に不確かになり、わずか4年後には第一次世界大戦が勃発しました。」 ここで実質的にラテン通貨同盟は終わりを迎えたのである。100年前にも、ギリシャ問題がきっかけで崩壊した通貨統合。これはやはりギリシャという地域が、通貨統合によって「財政危機」になりやすいということを示しているのだろう。そもそも、ギリシャを入れるべきではなかったのである。今回は、最後の結末だけは、繰り返して欲しくないと願うばかりである。 http://blog.goo.ne.jp/yamahafx/e/99bb684872164ef1517359030c4a8434 ▲△▽▼ 繰り返される共通通貨の歴史 BBCニュースサイト ギリシャは共通通貨を巡って、隣国とうまくいかなくなっています。
約1世紀前と同じことが繰り返されているわけですが、共通通貨を媒介とした親密な関係は、ほとんど長続きすることがないと、歴史学者デイヴィッド・キャナダインは言います。 ギリシャ経済の長引く低迷と、それが欧州経済通貨統合(EMU)に与える悪影響への懸念は、どちらも目新しく前例のないことのように見えますが、実はいくつかの重要な点において、何度も繰り返されてきたことなのです。通貨統合は、近年の革新的な発想のようですが、通貨そのものと同じくらい長い歴史があります。しかし2500年の歴史の中で、さまざまな共通通貨が生まれたものの、長く続いたものはほとんどありません。そのため、多くの人が、その存在をいとも簡単に忘れてしまっているのです。 初期の通貨統合でも、ギリシャは重要な役割を担っていました。時にはよい意味で、時には悪い意味で。そして近年、歴史はまた繰り返しています。英国がヨーロッパの枠組みとしての現在の統一通貨を敬遠するのは、今回が初めてではないのです。 ヨーロッパの歴史は、通貨統合の失敗の歴史と言っても過言ではありません。EMUの前には、19世紀のラテン通貨同盟がありました。最も多く流通している硬貨がまだ金や銀でできていた当時、ヨーロッパのいくつかの通貨を統一しようという試みがなされたのです。 ラテン通貨同盟の発足は1866年8月で、当初の加盟国はフランス、ベルギー、イタリア、スイスでした。4カ国は、各国の通貨を標準化し、交換可能にすることに合意しました。 共通の単一法定通貨は作られませんでしたが、加盟国の通貨が互いに定率で固定されたのです。 2年後、当初の4カ国にスペインとギリシャが新たに加入し、1889年には、ルーマニア、ブルガリア、ベネズエラ、セルビア、サンマリノが加盟し、さらに拡大しました。こうして大きくなったラテン通貨同盟は、第一次世界大戦まで続きました。 しかし、戦争の勃発で、金本位制の国際金融制度が突然終わり、その結果、ラテン通貨同盟は1927年の正式解散まで法人としては存続したものの、1914年には事実上終焉を迎えました。 ラテン通貨同盟の実現に向けての交渉が始まったのは1865年で、初めは英国も話し合いに参加していました。しかし、2つの提案が大きな障壁となりました。1つ目は、英国が、1ポンド硬貨をフランスの25フランと全く同等にするため、ごく少量ではありますが、硬貨に含まれる金の量を減らさなければならないというものでした。2つ目は、英国が、ほかのヨーロッパ通貨と同じ10進制の貨幣制度にするため、シリングとペンスを廃止しなければならないというものでした。どちらの提案も受け入れられないということになり、1999年の時と同じように、英国は同盟を離れ、ヨーロッパ大陸の国々だけで共通通貨の仕組みを作ることになりました。 1867年にフランスが提案した、フランス、英国、アメリカが同等の金貨を発行するという、さらに壮大な「世界貨幣」の構想にも、英国は興味を示しませんでした。 ここに、英国の最近の態度や行動の兆候が、はっきりと表れています。 『エコノミスト』紙のコラムニストで編集者でもあったウォルター・バジョットは、1860年代後半に、次のように深刻な危機の訪れを警告しました。 「遠くない将来、英国以外のヨーロッパ全体が、統一の通貨を持つようになり、英国だけが独自の通貨に固執して取り残されるだろう」バジョットの警告は続きます。「俗な言い方をすれば、我々は『仲間はずれにされる』だろう。もし、この通貨制度を導入するのに重大な不都合がないのなら、私個人としては、是非そうするべきだと考えている」 しかしバジョットは、それを実行に移すには、「どうしても乗り越えられない」困難があると考えていました。そして総合的には「統一通貨を導入する試みは、現時点では不可能」であると危惧していました。彼のその懸念は、のちのラテン通貨同盟の不運な結末によって、裏づけられることになりました。 それでも、20世紀末の欧州経済通貨統合の設立により、バジョットがかつて予想し恐れていた状態が、実現に大きく近づいたのです。2001年にギリシャが欧州経済通貨統合に加盟し、あとは、ご存じの通りの史実となりました。しかもその歴史は、まだとても終わったとは言えないのです。 1832年、苦闘の末にオスマントルコ帝国からの独立を勝ち取って以来、ギリシャは度重なる財政危機や債務不履行に悩まされ、長い間、国際資本市場から事実上締め出されてきました。そしてラテン通貨同盟の草創期に加盟しましたが、やがてその存在は歓迎されなくなり、懸念の的となっていきました。 慢性的な経済の低迷で、ギリシャ政府が何代にもわたって硬貨の金含有量を減らしたため、他の加盟国の硬貨と比べてギリシャ通貨の価値が下がった為です。またそれは、当初の合意に反する行為でもありました。 無責任で容認できない行動をとり続けたギリシャは、1908年にラテン通貨同盟から正式に除名されました。その結果、ギリシャは通貨政策を見直し、2年後に再び同盟に加入することができました。 しかし、その頃には同盟全体がますます脆弱になり、将来の見通しも次第に不確かになり、わずか4年後には第一次世界大戦が勃発しました。 19世紀のヨーロッパでは、ラテン通貨同盟以外にも、同様の試みが行われていました。 1857年に結成されたドイツ通貨統合は、ドイツ各州で流通していたさまざまな通貨を統一しようというもので、北部ドイツのターレルと南部ドイツのグルデンの2本建てでした。 この制度は、このような試みの中ではまれな成功例で、1870年のドイツ統一まで続きました。 ドイツ統一で政治と共に通貨制度も事実上統合され、5年後には2つの通貨に代わってライヒスマルクが公式通貨になりました。 ドイツほど成功はしませんでしたが、1873年にデンマークとスウェーデンがスカンディナヴィア通貨統合を結成し、2年後にはノルウェーも加わりました。その目的は、ラテン通貨同盟がヨーロッパ全体でより広範に行おうとしていたことを、スカンジナビアでも実現することでしたが、第一次世界大戦の勃発で事実上その機能を失い、1924年に正式に解散しました。 19世紀と20世紀に行われたこのような共通通貨の試みは、通貨制度そのものが生まれて以来何度も繰り返されてきた努力のうちの、ごく最近の例に過ぎません。このような試みの先駆者の中に、ほかならぬ古代ギリシャ人がいたことは、何とも興味深い歴史の皮肉です。 通貨統合の最も初期の試みの一つは、紀元前400年頃に小アジア西岸地域で行われました。ギリシャの7カ国が同盟を組み、貨幣制度を作ったことは、のちの欧州通貨統合の先駆けともいえるでしょう。 硬貨の表には赤ん坊のヘラクレスが蛇を絞め殺している絵と、ギリシャ語で同盟を意味する言葉の最初の3文字が共通して描かれています。硬貨の裏には、それぞれの国が独自のデザインを施しました。硬貨はすべて同じ重さに鋳造され、統一通貨となり、7カ国による経済同盟の具体的な象徴となりました。 この初期の通貨統合が、いつ、どのような理由で崩壊したかは定かではありませんが、200年後に、古代ギリシャでは別の試みが行われました。アカイア同盟として知られるこの試みは、ペロポネソス半島一帯の地域や都市国家が参加して、紀元前280年ごろに形成されました。 ここでも、共通通貨の表には共通デザインであるゼウスの頭部が描かれ、裏側にはそれぞれの発行当局が独自に考案した図案が施されていました。 歴史家ポリュビオスによると、このアカイア同盟により、ギリシャ人は「友好的な同盟地域を構築しただけでなく、共通の法律、度量衡単位、通貨制度も導入し、役人や議会、裁判所まで共有した」といいます。これほど高いレベルの統合が実現したことは、現代の熱心で野心的な欧州官僚にしてみれば羨ましい限りでしょうが、ラテン通貨同盟やスカンディナヴィア通貨統合と違って、アカイア同盟が100年以上続いた理由は、そこにあるのでしょう。 アカイア同盟は紀元前146年に消滅しましたが、その原因は、通貨などの問題に関して加盟国同士の意見が食い違ったからではなく、コリントスの戦いでローマ軍に惨敗したという外的要因でした。 このように歴史をひもといてみると、私たちには次のようなパラドックスが見えてきます。 古代ギリシャ人は通貨統合のパイオニアであり、それを持続させることに努力を惜しまなかったということです。一方、現代のギリシャ人は、通貨統合に参加するたびにその組織を脅かし、危機に陥れているのです。 https://www.bbcworldnews-japan.com/uk_topics/view/0000162 ▲△▽▼
ギリシャの真実 2015-07-09 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12048360210.html 相も変わらずといえば、日本国内のギリシャ問題に関する報道が相も変わらず、
「ギリシャ人は怠け者で、公務員だらけで、財政赤字を膨らませたから破綻した!」 といった嘘八百が流れておりますので、訂正しておきたいと思います。 ギリシャ人の労働時間は、OECD諸国の中では最長です。ドイツ人はもちろんのこと、日本人よりも多いのです。
そして、2014年のギリシャ政府はプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字化していました。 さらに、パパンドレウ政権までのギリシャの公務員数が妙に多かったのは確かですが、今は激減し、主要先進国の中では「日本に次いで」少なくなっています。 【主要先進国の公務員対労働人口比率(%)】 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/image-12048360210-13360844829.html http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#OECD
ギリシャ問題については、当ブログ以外では以下の記事がかなり適切かと存じます。 『【オピニオン】ギリシャ危機、金融メディアが語らない10のこと http://jp.wsj.com/articles/SB1046892646275467470810458108512138 ギリシャ人たちが危機に陥っているのは、彼らが怠け者で借金を踏み倒す連中だからだ、というのは正しいか?
結局のところ、彼らは1年に10カ月間しか働かず、14カ月分の支払いを受け取っている。 25歳で引退し、カフェにたむろしてウーゾ(アニスの香りがするギリシャの蒸留酒)をあおっている。 ドイツからの施しで生活し、税金をごまかす。 欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカが繰り返し支援しようとしたが、彼らは聞く耳をもたない。そして今や、極端なリベラルに走り、借り入れたカネをびた一文返そうとしない。 それは正しいか?
全く正しくない。 ギリシャ危機について皆さんが教えられているほとんどあらゆるものは、完全なたわごとである。以下はその理由だ。 1.ギリシャ人は既に要請されている以上に緊縮している。(後略)』9238598 WSJの記事でブレット・アレンズは「1」以外にも、以下のポイントを挙げていました。
2.本当の問題はトロイカの薬が効かなかったということだ。
3.引用される「専門家」の発言は、皆バイアスがかかっている。 4.ギリシャは既に破局している。 5.国というものは、財政緊縮でマネーを「創出」できない。 6.本当は、ギリシャのドラクマ再導入は極めて容易だ。 7.本当は、ユーロ無しでもギリシャはやっていける。 8.ギリシャだけがこの危機の原因だったのではない。 9.パニックになるな。 10.トロイカの提案する「治療薬」は無意味だ。 全て、正しいと思います。 上記が「事実」であるにも関わらず、なぜ、
「ギリシャ人は怠け者で、公務員だらけで、財政赤字を膨らませたから破綻した!」 のようなウソが蔓延するのか。 もちろん、緊縮財政を正当化するためです。日本の場合は、 「ギリシャは破綻した。日本も破綻する。だから、緊縮財政」 という、陳腐なレトリックが相も変わらず報道されています。 この手の「ウソ」からいい加減に目覚めなければ、日本もギリシャも経済の縮小と国民の貧困化から逃れられません。 というわけで、皆様もギリシャについて「ウソ」を語っていたり、書いたりしている人を見かけたら、容赦なく「ギリシャの真実」を教えて差し上げて下さいませ。 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12048360210.html
昨日のギリシャに関するレトリックは、実に「理不尽」でございますが、その上、問題解決を不可能とします。 ギリシャが財政破綻したのは、生産性が低い状況で関税自主権や通貨発行権を手放し、さらに国債発行に際し、共通通貨で国際金融市場から政府が資金調達しなければならなくなったためです。 ギリシャ政府は、国債を発行する際にドイツ政府やフランス政府と「競争」を強いられたわけでございます。 結果、ギリシャの金利は高止まりし(現在の長期金利は18.9%)、しかも関税と為替レートという「盾」を失っている状況で、生産性向上のための投資が困難な構造に置かれました。ギリシャの問題こそが、構造問題なのです。
ギリシャの構造というよりは、ユーロの構造ですが、ユーロという構造問題を解決するためには、結局は「ユーロという構造」を壊すしかありません。正しい解決策である「ユーロの構造を壊す」ことを防ぐためにも、全てを「ステレオタイプなギリシャ国民の印象」に押し付け、
「ギリシャ人は怠け者で、公務員だらけで、財政赤字を膨らませたから破綻した!」 などと、嘘つきたちが蔓延する結果になったのだと思います。 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12048719130.html ▲△▽▼ 【青木泰樹】ギリシャ危機は対岸の火事ではない 2015/07/11 ギリシャ危機は対岸の火事ではない。
この手の論評が目に付くようになりました。 確かに、私もそう思います。 しかし、ギリシャ危機から何を教訓として学ぶのでしょうか。そこが問題です。 財務省シンパと思われるマスコミの論調は、概ね一致していますね。 一言で言えば、「身から出た錆(さび)」。 ギリシャ危機を招いたのは他ならぬギリシャ自身の放漫財政の結果であると。 放漫財政のツケは必ず払わなくてはならない。まさに今のギリシャ危機がそれを物語っているのだと。 そして例によって、「翻って、日本の場合はどうなのか」というお決まりのパターンが続くわけです。
今回驚いたのは、ギリシャが2014年度に基礎的収支(プライマリーバランス:PB)を黒字化していたことでした(三橋先生が前にブログで指摘されて初めて知りました)。 「我が意を得たり」と思ったかどうかはわかりませんが、マスコミの論調もヒートアップします。 曰く、「ギリシャは日本より財政は健全であったにもかかわらず破綻寸前。ましてや日本は危機目前。早急に財政再建を」となるわけです。 確かに、ギリシャの政府債務対GDP比は180%くらいで、日本のそれは200%を超えています(もちろん幾つかある政府債務の定義のうちの一つの場合ですが)。 また日本は2020年度のPB赤字解消さえ危ぶまれているとマスコミは報じていますから、国民の危機感を煽るにはギリシャ財政との比較は格好の材料なのでしょう。 「消費税再増税も歳出削減も、日本のためなのだ。財政出動などもっての外だ」と言いたいために。 しかし、財政健全化の指標とされる政府債務対GDP比の国際間比較は、実はほとんど意味はありません。 外国と比較して多い少ないではなく、その比率が中長期的に一定の枠内に収まっていれば問題ないのです。 以前、サラリーマンの住宅ローンを組む時の目安は、年収の五倍程度までと言われておりました。 つまり住宅ローン対年収比率は500%までが健全ということです。 もちろん、まだまだ債務を膨張させられると言いたいのではありません。 あまり目くじらを立てるほど神経質になる必要はないと言っているのです。 以前からお話ししているように、国債問題とは民間保有の国債残高が累増し、利払い費が膨張することです。 本年中に日銀は国債発行残高の3割を保有することになるでしょうから、国債問題は事実上解決したのも同然なのです。 後は適当な時期に政府と日銀間で、すなわち広義の政府部門内で処理すれば良いだけの話です。 政府が新しい債券(例えば長期のゼロクーポン債)を発行し、それと日銀保有の国債を交換すれば済むことです(そうすれば、万一金利が上がっても日銀のバランスシートは痛まない)。 それによって民間の債権債務関係が変更するわけではないので、民間経済に悪影響は及びません。 政府債務対GDP比の国際間比較以上に意味がないというか、逆に経済成長にとって最悪なのが「PB目標」、すなわち基礎的収支を単年度で均衡させる財政目標です。 財務省、そのシンパのマスコミ、経済学者、評論家、政治家たちはギリシャ危機から財政再建の重要性を学ばねばならないと考えているのでしょう。 日本も、2020年度のプライマリー赤字解消に向けて9.4兆円歳出削減をしなければならないと息巻いていた自民党の政調会長もいましたね。 その方たちに是非、ギリシャ危機の本質を学んでいただきたい。 まさに対岸の火事ではないのです。 なぜギリシャ危機が生じたのか。その原因は何なのかを。 それは財政均衡主義がもたらした災厄なのです。
まさしく経済思想が現実経済を潰した事例なのです。 欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)という三者、いわゆるトロイカに押し付けられたPB目標を達成しようとして、ギリシャは忠実に増税と歳出削減を履行し、結果的に経済を破綻させました。 5年間でGDPは25%減少しました(日本に置き換えて考えるなら、日本の名目GDPは約490兆円ですから、120兆円以上が消し飛んだことになります)。 失業率も平均で26%超、若年層に至っては60%超です。 若者が希望の持てない、未来のない国にしてしまったのです。 万死に値する所業です。 ここまで経済を破壊して得たものは何か。 若干のPB黒字だけです。 それによって財政再建はかなったのでしょうか、財政破綻の危機は去ったのでしょうか。 とんでもない、PBを黒字化しても財政破綻寸前です。 PB目標の達成は、国家の安寧も財政再建も、何ももたらさなかったという歴史的事実が残ったのです。 これを教訓とせずして、何を教訓とすべきでしょうや。 PB目標の達成のためには、増税と歳出削減しかありません。
しかし、公的支出を削減すれば、総需要が減り、名目GDPが減り、税収も減る。 増税分を国内で使えばまだしも、対外債務の返済に充てれば、ますます名目GDPは減る。 民需か外需が公需の減少した分を補てんするだけ増加しなければ、国民経済は縮小する。 ただの足し算引き算です。 この誰にでもわかることを財務省も、トロイカも、特にドイツのメルケル首相はわからないのです。
それは、「入を量りて、出を制す」という財政均衡主義の原点である個人の経済感覚に根ざすものなのでしょう。 部分だけを見て全体を顧みない。 財政を均衡させれば、万事うまくいくと思っている。 救いのない頑固脳。 そうした経済通念から脱却しない限り、為政者の思い込みによる経済破壊が続くのです。これは本当に人災です。 果たして、財政均衡主義の犠牲となったギリシャはどうなるのでしょうか。 トロイカは、金融支援の替わりにより厳しい緊縮策をギリシャに要求しております。
増税(付加価値税における軽減税率廃止)によってGDP1%分の増収を、そして歳出削減策(年金制度変更)によってもGDP1%分の増収を目指せと言っています。 他に軍事費も4億ユーロ削減せよと要求しております。 ギリシャの国防にまで口を出してきています。 到底、声は届かないでしょうがギリシャのチプラス首相に二つ助言を送っておきましょう。 先ず財政支援に関して。
歳入=税収+国債収入(国債を中心とする借入金)。
歳出=一般歳出(国債費を除く政策経費)+国債費(利払い費および償還費等) ですね。財政赤字は「税収<歳出」です。
他方、プライマリー均衡は、「税収=一般歳出」です。
ギリシャはプライマリー黒字の状況ですから、問題は国債収入が確保できない(金融支援=借金ができない)ということです。
それゆえ借金の返済(国債費)ができずにトロイカに支援を仰いでいるわけです。 この状況を打開するためにチプラス首相はこう言えばいいのです。 「私が金融支援を仰ぐのは(追加の借金したいのは)、あなたたちに借金を返すためだ。」と。 さらに、あなたの右のポケットにあるカネを貸してくれ。すぐにあなたの左のポケットにそれを入れるから」と言えばよいのです。 つまり、トロイカのカネはギリシャ政府経由でトロイカに戻るのです。 トロイカに損はない。 これによってギリシャの銀行は救われ、実体経済をこれ以上毀損することなく、問題を先送りできるのです。 先送りが大切なのです。 世の中には、先送りを嫌悪する人達が一定数おりますが、それは物事の二面性を理解していないことを表明するに等しい。 先送りの対語は、拙速です。 拙速にならずに、じっくりと時間をかけて解決することが適切な場合も多々あるのです。今回のギリシャのケースがまさにそれです。 経済を立て直して、ユーロからドラクマに移行する時間稼ぎが必要なのです。 もう一つ、チプラス首相は緊縮策を受け容れないほうが良いのです。 これ以上、ギリシャ国民に貧困の淵を覗かせてはならないのです。 メルケルに従って、若者の失業を増やしてはなりません。
その代り、次のように逆提案すればよいのです。 「ギリシャは経済成長を成し遂げることによって、トロイカに債務を返済することを約束する。ついては、成長のための資金を融資してくれ。 これまで、トロイカの要求に素直に従ってきたが、結果は最悪だった。経済を潰してしまった。あなたたちの論理でギリシャを救えないことが分かった。 あなたたちもわかっただろう。成長によってのみ、ギリシャは救われ、ユーロも命脈を保つことができる(ただし、一時的ですが)。ギリシャには世界に誇れる観光資源がある。それを中心にギリシャ強靭化計画を実施することで再生を図りたいのだ」と。 もちろん、なかなか難しいでしょう。 ギリシャはユーロ通貨を導入したことで、先の見えない将来を自ら造ってしまいました。 以前の通貨ドラクマのままでいれば、現況以上に再生は可能であったと思います。 厳しい時期が到来しようと、未来に希望が持てれば生きていけるものですから。 ユーロ圏に留まる限り、ひとたび金融支援が滞るとギリシャの銀行システムは破壊されます。 今後も繰り返し、そうした状況が続きます。 それが実体経済にとって最も厳しいことなのです。決済ができないと商売が成り立たないからです。 http://www.mitsuhashitakaaki.net/ ▲△▽▼
緊縮財政の犠牲者 週刊実話 2015年7月23日 特大号 2015年7月1日、ギリシャがIMF融資15億ユーロ(約2000億円)の返済不能となり、デフォルト(債務不履行)した。すなわち、財政破綻である。
6月末時点で、ギリシャ議会は欧州連合(EU)などが金融支援の条件として示した構造改革案の是非を問う国民投票を、7月5日に実施することを賛成多数で承認。ギリシャのチプラス首相は6月27日にテレビで演説し、 「ギリシャは緊縮策の継続をEUなどから強要されている。国民の意思に逆らう要求に対して回答を迫られている」 「国民は(EU案による)脅迫から自由に決断すべきだ」 と、発言。EU側は激怒し、ユーロ圏19カ国財務相会合がギリシャ側の支援要請を拒否することを決断。ギリシャはついに、デフォルトに至った。 現在のギリシャは、国内の銀行を営業停止とし、資本規制導入も決定している。 何しろ、ユーロ加盟国であるギリシャは自国の「通貨発行」が不可能であるため、銀行を営業させると、確実に取り付け騒ぎになる。昭和金融恐慌時の日本のように、紙幣を印刷して銀行に積み上げるといった沈静化もできない。 ギリシャ国内の銀行が、片っ端から倒産していく状況になりかねない。 国民投票の結果がどうなるか、本稿執筆時点では不明だが、とりあえず「なぜ、ギリシャが財政破綻に至ったのか」について、日本国民は正しく知るべきだ。 とにかく、日本には“家計簿脳”の自称識者や政治家が少なくない。 「ギリシャは放漫財政を続け、財政赤字が膨らんだから財政破綻した。日本も増税や歳出削減でプライマリーバランス(政府の基礎的財政収支のこと。以下、PB)を黒字化しないと、財政破綻する」 などと、もっともらしく語る“無知な論者”が、溢れかえるほど存在するのだ。 信じられないかも知れないが、昨年のギリシャはPBが「黒字」だった。ギリシャの、地方政府分を合わせた2014年のPBは、国内総生産(GDP)比0.4%の黒字だったのである。 なぜ、ギリシャはPBが黒字であるにもかかわらず、財政破綻したのだろうか。話はまるで「逆」で、ギリシャはPBを黒字化するほど緊縮財政(主に支出削減)を実施したからこそ、デフレが悪化し、税収が減り、財政破綻に追い込まれたのだ。 日本のエコノミストと自称する連中や、 「PBを黒字化しないと破産する」 などと発言した自民党の政調会長をはじめとする無知な政治家には、是非とも以下の事実を理解してほしい。 ギリシャはPBが赤字だから財政破綻したのではない。PBが黒字化するほど緊縮財政を実施し、デフレが悪化し、税収が減り、財政破綻したのだ。 ギリシャは「緊縮財政の犠牲者」なのである。 アメリカのノーベル経済学者であるポール・クルーグマン教授は、ビジネス・インサイダー誌のインタビューで、 「過去7年間、欧州はギリシャ経済の首を絞めてきた。欧州が金を貸すたびに、ギリシャは歳出カットで応えており、緊縮財政こそが、ギリシャ経済にダメージを与えてきた。危機に陥るたびに譲歩したことで、ギリシャは不況に苦しむ経済上の奴隷国になり果てた。ギリシャが持続可能な方法で負債を減らして現状から脱却することを欧州が認めないならば、ギリシャに残された道は債務不履行とEU離脱しかない」 と、語っている。 その通りだ。ギリシャはカネをEUなどから借りるたびに、きちんと「緊縮財政」を実施してきた。だからこそ、こんな事態に至ってしまったのだ。 デフレ期に緊縮財政を続けた結果、ギリシャはGDPがピークから26%も減ってしまった。戦争でもなければ、普通はこれほどまでのGDP減少は起きない。 デフレとは、戦争並みに(あるいは戦争以上に)経済にダメージを与えるのだ。 GDPが縮小すると、税収も減る。GDPとは国民が働き、モノやサービスという付加価値を生産することで獲得する「所得」の合計だ。 そして、国民は所得から税金を支払っている。所得の合計である名目GDPが縮小すると、税金の「源」が小さくなるという話になってしまう。当然ながら、政府の租税収入も減る。 通貨発行権がないギリシャ政府は、緊縮財政で税収が減り続ける中、結局は対外負債の返済不能となりデフォルトに至ったのだ。 翻って我が国を見ると、6月30日に安倍(晋三)政権は「骨太の方針」を閣議決定し、2020年度までのPB黒字化と、'18年度のPB赤字対GDP比半減という「緊縮財政」の目標が設定された。 本来、財政健全化の定義は「政府の負債対GDP比率の低下」だ。財政健全化の目標を設定したいならば、当然ながら政府の負債対GDP比率の引き下げ目標を立てるべきなのだ。 それにもかかわらず、安倍政権は財政健全化の手段の一つにすぎないPBをことさらにクローズアップし、黒字化目標を立ててしまった。 PB黒字化を短期で「主体的に」達成しようとすると、税収が増えない場合(2015年度は対前年比で減収になるだろう)、政府の歳出削減以外にやれることがない。 というわけで、政府が支出を削り、日本を再デフレ化させ、GDPを減らし、税収が減り、さらなる歳出削減、という悪循環に突っ込んでいくことになってしまう。 我々もまた、緊縮財政の犠牲者であるという「現実」を、日本国民はいい加減に理解するべきなのだ。 http://wjn.jp/article/detail/1252119/ ▲△▽▼
万死に値する所業 2015-07-12 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12049464532.html ギリシャ議会が、アテネで市民が反緊縮のデモ行進をする中、EUと債権者側が示した120億ユーロの緊縮財政を承認しました。
国民投票は、何だったんだという話で、これでチプラス政権は支持率を失い、早急に退陣という運びになると予想します。
というか、自分の首を賭けて緊縮を受け入れるなら、別に国民投票に打って出る必要はなかったでしょうに・・・。 『ギリシャ議会:譲歩案を賛成多数で承認 http://mainichi.jp/select/news/20150711k0000e030166000c.html ギリシャ議会(1院制、定数300)は11日未明(日本時間同日午前)、チプラス政権が欧州連合(EU)など債権者側に示した120億ユーロ(約1兆6000億円)規模の財政改革案を賛成多数で承認した。ロイター通信によると賛成251、反対32、棄権8で9人が採決を欠席した。ギリシャが改革実行への決意を示し、EUなど債権者側も改革案を肯定的に評価しており、11日のユーロ圏財務相会合でのEU側との支援交渉開始に向け大きく前進したことになる。
改革案は、総額535億ユーロ(約7兆2000億円)の金融支援をEU側から受けるための条件。EU側が要求した緊縮策をほぼ受け入れる内容のため、5日の国民投票で緊縮反対を訴えた与党・急進左派連合(149議席)の一部から強い反発が出て、審議が長時間にわたった。 だが、最大野党の中道右派・新民主主義党(76議席)など野党の大半はユーロ圏残留を最優先すべきだと主張し、賛成に回った。 チプラス首相は採決を前に「国家としての責任を問う選択だ。私たちには国民を守る義務がある」と、賛成投票を促した。改革案について「公約とはかけ離れている」と認めたが「EU側の提案よりは少なくとも良い」と主張した。(後略)』 朝日新聞の記事「私たちの国民投票どこへ? ギリシャで緊縮反対デモ(7月11日)」で、興味深いインタビューが載っていました。アテネで街頭インタビューに答えた元数学教師のステリオス・マリーニヌさん(65)が、
「EUのせいでギリシャは生産性を失い、外国から製品を買わされるばかりになった。緊縮財政には最後まで『ノー』を貫き、EUを離脱すべきだ」 と、語っているのです。 本質を突いています。結局のところ、ギリシャ問題とは、
「生産性が異なる国同士が国際協定で統一市場、統一通貨を構築し、フェアに競争すると何が起きるのか?」 という実験の結果を、典型的に示してくれたという話なのです。 経常収支のインバランスが発生し、さらに国債発行まで「フェアに競争」ることになり、負け組は金利が高くなり、生産性向上のための投資が困難になります。さらに、関税や為替レートで自国市場を保護することもできない。
最終的には、経常収支の赤字(対外純負債の増加)が限界に達し、政府が財政破綻するわけです。
ちなみに、ギリシャのGDPは1790億ユーロであるため、120億ユーロの緊縮とは対GDP比6.7%のマイナスのインパクトが生じます。
すでにして、ギリシャのGDPはピークから26%減り、失業率は全体で26%、若年層失業率は60%超。この上、更なる緊縮財政。
失業者たちは、現在の所得を得られないのはもちろんのこと、自身の中に仕事の経験、ノウハウ、スキル、技能等を蓄積する機会を奪われ、将来的に「人材」に成長することがありません。すなわち、先のステリオス・マリーニヌさんではないですが、ギリシャは高失業率に対する対策を打てない時点で、生産性向上が不可能な環境に置かれているのです。
将来的に(「近い」将来的に)、ギリシャは発展途上国に舞い戻ることになるでしょう。これまでにギリシャが先進国だったのかという議論は置いておいて(わたくしは、そうは思っていません)、更なる発展途上国化が進むという話です。
一つ、世界にとっていいことがあるとしたら、今回のギリシャ議会の決定により、緊縮財政が国民経済にどれほど凄まじい「害」を与えるか、さらに世界に示す結果になること確実、という点です。その分、ギリシャ国民が悲惨なことになってしまうわけですが。
青木先生は、
【青木泰樹】ギリシャ危機は対岸の火事ではない http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/07/11/aoki-16/
において、EUやユーロがギリシャにやってきたことについて、
「欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)という三者、いわゆるトロイカに押し付けられたPB目標を達成しようとして、ギリシャは忠実に増税と歳出削減を履行し、結果的に経済を破綻させました。 5年間でGDPは25%減少しました(日本に置き換えて考えるなら、日本の名目GDPは約490兆円ですから、120兆円以上が消し飛んだことになります)。 失業率も平均で26%超、若年層に至っては60%超です。 若者が希望の持てない、未来のない国にしてしまったのです。 万死に値する所業です。 ここまで経済を破壊して得たものは何か。 若干のPB黒字だけです。」 と、書いてらっしゃいますが、まさに「万死に値する所業」をギリシャは継続することになるわけです。若者が働く機会を得ることができない国家に、未来はありません。何しろ、しつこく書きますが、真の意味における「経済力」とは、 「国民のモノやサービスに対する需要を、国民の供給能力で満たすこと」
なのです。そして、国民の供給能力は、国民が働くことによってしか蓄積されません。EUやギリシャ議会は、ギリシャの未来を奪いました。 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12049464532.html
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ギリシャ危機の原因についてメディアが嘘を並べています。 2015年07月06日 日本でもネット上でギリシャはヨーロッパの韓国だなんて、ギリシャをお荷物のように扱っていますが。。。メディアの報道に騙されている人々はギリシャと韓国を結び付けたがるのでしょうね。 ギリシャは、年金受給額も良いし、受給開始年齢も若いし、公務員の数もかなり多いのは確かですが。。。 以下の記事にて、ギリシャ経済がここまで悪くなったのは、金融エリートやグローバル企業(イルミナティ=ハザールマフィア)がギリシャを騙したからだということが分かります。なぜ、彼らはギリシャを騙してギリシャの財政を破綻させたのでしょうか。。。 彼らはギリシャの民営化を強要し、ギリシャの重要なインフラや遺産や資産を安く買い取ってしまったのです。そしてギリシャ政府をも乗っ取ったのです。ギリシャは彼らの支配下となり、完全に荒されてしまいました。その目的は。。。ギリシャの富を奪うためです。 彼らは世界の国々から資源や資産を奪うことしか頭にありません。そのためには、あらゆる手段を講じて国を破壊し乗っ取ります。また、その国の国民がどうなってもかまわないと考えています。大量虐殺さえします。このような欲深く汚らしい獣たちが世界を支配している限り、世界は常に彼らによってコントロールされてしまいます。 今回の投票で、ギリシャ国民は緊縮財政にNOを突き付けました。ギリシャはユーロ離脱をすることになるのかもしれません。しかしギリシャが次に頼る国は残念ながら中国とロシアでしょう。そしてギリシャはロシアの中国の支配下になってしまいます。ギリシャがたとえユーロを離脱しても、ロシアと中国に頼り、BRICSの仲間になるなら、ギリシャは永遠に独立国になることはないでしょう。 ギリシャはロシアと中国に頼らず主権を取り戻すことができるのでしょうか。それとも、欧米と同じようにイルミナティ(ハザールマフィア、バチカン)が支配しているロシアと中国に助けを求め、ロシアや中国の命令に従う国家になってしまうのでしょうか。 最も気の毒なのはギリシャ国民です。どの国も一般国民が犠牲となります。 http://beforeitsnews.com/eu/2015/07/greece-the-one-biggest-lie-you-are-being-told-by-the-media-2585602.html (概要) 7月5日付け:Greece — The One Biggest Lie You Are Being Told By The Media
No to blackmail and austerity
By Truth and Satire ギリシャ危機に関して、どこのメディアもギリシャが悪いと批判をしています。例えば、ギリシャ政府は巨額の財政支出を行ってきたために破たんしたとか、寛大な金融機関が彼らにお金をあげたのにギリシャはお金の管理がきちんとできなかったため返済不能になったとか。。。このような批判はいかにも筋の通っ手いるように見えます。 しかしメディアのギリシャ批判は全くの嘘に基づいています。ギリシャだけでなくスペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドもギリシャと同じように様々な種類の緊縮財政を強いられています。 また、ラテンアメリカ、アジア、アフリカ諸国に関しても、数十年前から金融機関や企業体は大きな嘘をついてきました。 つまり、ギリシャは自ら破たんしたのではありません。破たんさせられたのです。 グローバル金融機関がギリシャ政府をつぶし意図的に持続不可能な債務を押し付けたのです。 しかも、収益を創出する公有資産はオルガルキーとグローバル企業に売却されました。 例えば、マフィアが流行っているレストランを乗っ取る時には、まず、レストランの営業を妨害し、レストランで殺人事件を起こすか放火をします。 レストランの経営が悪化すると、ゴッドファーザーはレストラン側に寛大にも大金を与えます。その代り、マフィアはレストランの経営権を奪います。 このようにマフィアはレストランのオーナーに窮乏の連鎖を与え、オーナーを一文無しにさせます。オーナーが殺されずに済むならかなり運が良いということです。 では、グローバル金融機関のやり方はどうでしょうか。 彼らは4段階に分けて対象国を破綻させます。 第一段階: ウォール街とグローバル銀行が仕組んだ2008年の金融恐慌により、ギリシャの経済がかなり悪化しました。金融機関は、金融恐慌を起こすために、サブプライム・ローンを誰にでも貸しつけ、それらを証券パッケージにして売りさばき世界中の金融機関に大きな利益をもたらしたのです。
金融エリートらは、このような恐ろしい構想を実行に移しました。そして、サブプライムローンを使った犯罪活動の実行部隊は金融エリートらが支配するS&P、フィッチアンドムーディーズなどの格付け機関です。彼らは初めから国家を破たんさせるために作り出した金融商品に対し、意図的に素晴らしい評価をしたのです。 恥知らずな政治家のトニー・ブレア英首相はゴールドマンサックスと共謀しサブプライムローン関連の証券をヨーロッパ諸国の政府、年金基金、地方自治体に売りさばきました。その結果、金融機関やウォール街の権威者たちは何千億ドルもの利益を得ました。 しかし第二段階に移ると、彼らはさらに巨額の富を得たのです。 第二段階:彼らは適時にサブプライムローンを崩壊させました。世界中の金融機関がたった数週間で破たんしてしまいました。そして各国の政府(地方政府?)の投資資金や資産が消滅しました。世界中がカオス状態となりました。 一方、ゴールドマンサックスなどのハゲワシは以下の3つの方法で巨額の富を得ました。
1)彼らはリーマンブラザーズやワシントン・ミューチュアルを通常よりもかなり安い価格で買収したのです。
2)ゴールドマンサックスやジョン・ポールソンなどのインサイダーらは、サブプライム証券が破たんすると賭けました。もちろんポールソンは賭けに勝ち、メディアは彼らの洞察力の良さを賞賛しました。これは9.11のテロリストが9.11が起こることに賭け、巨額の利益を得た場合と同じです。 3)厚かましい大手金融機関は、傷口を塩で擦るために、彼らによって生活が破壊された国民が納めた税金を金融機関の緊急支援にまわせと要請したのです。 アメリカの大手金融機関は納税者が納めた何千億ドルもの税金を強奪しました。また金融エリートらの偽装団体であるFRBからも何兆ドルもの緊急支援を得ました。 ギリシャでは、国内の金融機関がギリシャ国民が納めた税金のうち300億ドルの緊急支援を得ました。 第三段階:グローバル金融機関は対象国の政府に巨額の債務を無理やり受け入れさせました。
寄生虫の金融エリートらが使ったテクニックとは。。。2009年末から、対象国の国債を格下げしました。その直後に国債利回りが上昇しました。そして対象国はこれ以上借金をすることが難しくなり。。。既存の国債をロールオーバー?することも難しい状況になりました。 2009年から2010年中旬にかけて、ギリシャの10年国債の利回りが3倍に上昇しました。このような残酷な金融テロ攻撃を行った金融エリートらは、次に、ギリシャ政府を服従させ、ギリシャとの最初の協議では1100億ユーロを勝ち取りました。 さらに彼らは、破たんした国の政治家をも支配するようになりました。当時のギリシャ首相は2回目の巨額の緊急支援を断ったとき、彼らはギリシャ首相を即退任させ、欧州中央銀行の副総裁をギリシャ首相に任命しました。(選挙は行われませんでした。) この時、金融エリートらはギリシャの民主主義を破壊しました。 そして新首相は、金融エリートらが用意した書類に署名するだけのパペットでした。 翌日にはイタリアでも全く同じことが起きたのです。イタリアの首相が辞任し、金融エリートらのパペットが新首相になりました。 その10日後にスペインで早すぎる選挙が行われ、スペインでも金融エリートらのパペットが新首相となりました。 2012年には、金融エリートらは証券市場の操作を行い、ギリシャの国債の利回りを50%まで引き上げました。彼らによるギリシャに対する金融テロはすぐに効果が表れました。 それは。。。ギリシャ国会が金融エリートらが押し付ける2回目の巨額の緊急支援(一回目よりもはるかに多い額)を受け入れることになったのです。 このようにギリシャが2回の緊急支援を受け巨額の債務を抱えた時に金融エリートらはギリシャに対して国の資産の民営化を強要しました。 第四段階:ギリシャは強制的に押し付けられた債務により、国が所有する様々な重要資産をオルガルキーやグローバル企業に売却しなければならなくなりました。 民営化は無慈悲です。有益な国の資産が全て民営化されてしまいました。ギリシャの民営化は水道、電気、郵便、航空サービス、国営銀行、テレコミュニケーション、港湾管理(ギリシャは世界有数の海運国家でした。)、その他の施設にまでおよびました。
さらに、金融界の暴君たちは、ギリシャ政府の予算を全て決定しました。つまり政府が予算を決めることができなくなったのです。 ギリシャの民営化後に金融エリートらによる独裁政治が始まると、政府の歳入が減り、借金が増えていきました。そうなると、緊縮財政を受け入れざるを得なくなります。 公務員の大量リストラ、最低賃金の引き下げ、社会福祉のカット、年金の引き下げ、そしてギリシャ人口の99%の人々(1%の富裕層には影響しない)の生活に影響を及ぼす増税が断行されました。 このような緊縮財政策が実施された結果、ギリシャは1930年代にアメリカで起きた大恐慌よりも酷い状態となってしまいました。 もちろん、金融エリートらは、ただちにギリシャのメディアの民営化を断行したため(彼らがギリシャのメディアを乗っ取った)、ギリシャ国民は金融エリートらにとって最も都合のよい報道やプロパガンダしか耳にすることができなくなりました。ギリシャのメディアは「金融機関はギリシャを救おうとしており、彼らが提案する緊縮財政が最も効果的な方法だ」と伝え続けたのです。 もし、緊縮財政の恐ろしさについてギリシャの全国民が理解していたなら、このような状況には陥らなかったでしょう。そして同じく緊縮財政を強いられたスペイン、イタリア、ポルトガル、アイルランド、その他の国々も同じなのです。 このような残酷な政策は今に始まったことではありません。第二次世界大戦以降、アジア、ラテンアメリカ、アフリカでIMFと世界銀行により緊縮財政が断行されたのです。 これこそ、ニューワールドオーダーの本質なのです。世界はほんの一握りのエリートらによって支配されています。 今まさに、ギリシャの素晴らしい人々がゼウスのように立ち上がるべきときがきました。ギリシャ国民は欲深いパペットマスターや国賊のオルガルキー、寄生虫の金融エリート、腐敗した政治家にNOを、そして彼らが押し付ける緊縮財政にNOを突き付けましょう。 http://blog.livedoor.jp/wisdomkeeper/archives/51963097.html ▲△▽▼ 2015年7月23日 木曜日 緊縮財政のギリシャで 軍事予算だけは削られない理由 ジャーナリスト 堤未果
二〇一五年六月三十日。ギリシャはIMFへの返済が出来ず、事実上債務不履行に陥った。七月五日には、EUからの要望である緊縮策の賛否を問う国民投票が実施された。
ここまで財政赤字が膨れ上がった原因は、高すぎる年金、公務員優遇だなどと報道されているが、何故か触れられないもうひとつの重要要素についてはあまり知られていない。 債務の半分以上を占めるといわれる、防衛予算だ。 NATO同盟国28か国の中で、ギリシャの軍事支出はトップのアメリカに次いで2位と突出している。金融危機から5年たった2015年においても、財政赤字がGDPの175%だった前年よりも軍事費は1%増やし、GDP比2.4%というEU最大規模を維持し続けているのだ。 この問題について、欧州外交政策財団のサノス・ドコス所長はガーディアン紙のインタビューでこう答えている。 「1300車両という、イギリスの二倍以上の数の戦車が本当に必要なのかどうかは議論が分かれるところだろう。だがトルコの軍事的脅威に対しバランスをとるためには、やむを得ない措置なのだ」 トルコの脅威。だが本当にそれだけだろうか? 奇妙なことに、危機に陥ってからこの間、IMFやEU、欧州中央銀行から提示された緊縮財政メニューの中に、軍事費削減はのっていない。 ギリシャへの財政支援条件として最も強く緊縮財政を要求していた債権国のドイツも、ギリシャに軍事費を半減させ、ドイツと同じGDPの1%台に抑える事でIMFへの当座の支払いをさせるという現実的な要求は決してしなかった。代わりにメルケル首相は、救済金の大半を国内経済の立て直しではなく軍事支出に振り分けるよう、ギリシャ政府に圧力をかけている。 だがメルケル首相にはそうするだけの理由があった。ドイツは武器輸入大国ギリシャから、アメリカに次いで最も恩恵を受けている国の一つだからだ。ちなみに三位は、ドイツ同様長年ギリシャ政府に軍事費増の政治的圧力をかけてきた、 やはり債権国のフランス。2010年から2014年までの5年間、ギリシャ政府は5億5100万ドル分の武器をドイツから、1億3600万ドルの武器をフランスから購入している。 二〇一二年に金融支援の条件としてギリシャ政府が課された20%もの最低賃金引き下げや、公務員の給与凍結は一体何のためだったのか?IMFに言われるままに、障害者の自己負担を高騰させ、医師数を大幅に減らし、病院を閉鎖させ、国家にとって最大の財産である筈の国民を公衆衛生上の危機に陥れた対価は、更なる財政赤字となってギリシャ政府にのしかかった。 二〇一〇年に、メルケル首相とサルコジ大統領が、借入金が入る前に武器輸入契約の維持をギリシャ政府に約束させた事実や、二〇一三年にドイツの防衛産業からの収賄が暴露されたギリシャの元防衛大臣他政府高官らの逮捕など、次々に暴露される腐敗劇に国民の怒りは爆発寸前だ。 百万人の失業者、ホームレス人口の急増、若者の二人に一人が職を失い、二十万人もの国民が国外へ逃げ、貧困層の間で感染症が拡大しているギリシャ。 欧米の商業 マスコミが描く公務員天国の自堕落なギリシャ像の裏で、笑いが止まらない勝ち組たちの姿が、私たちに見えるだろうか? (週刊現代「ジャーナリストの目」2015年7月掲載記事) http://www.mikatsutsumi.org/blog/?p=98 ▲△▽▼ ジョージ・ソロス氏: ギリシャ経済はユーロ圏にいる限り決して回復しない2016年1月10日 http://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/2277 引き続き、ドイツの週刊ビジネス誌Wirtschaftsによるジョージ・ソロス氏のインタビュー(原文ドイツ語)の翻訳である。今回はギリシャ問題の先行きについてである。
先ず、ユーロ圏における緊縮財政に対するソロス氏の意見は以前より一貫している。ドイツのメルケル首相がTIME誌の「Person of the Year」に選ばれたことについて、これは過大な評価かと聞かれ、ソロス氏はこう答えた。 とんでもない。メルケル氏がヨーロッパに押し付けている緊縮財政はどうしようもなく間違っているが、彼女が長らくヨーロッパの指導者として、そして間接的には自由を尊重する世界全体の旗手として、疑いようのない活躍をしていることは確かだ。
移民受け入れはオープンな社会を望むソロス氏の政治的立場と一致している。しかし今回の主題は経済である。ユーロ圏の盟主としてのドイツの立場について、彼はこう語る。 ドイツはメルケル氏のリーダーシップのもとヨーロッパの覇権国(訳注:経済学の術語、ウィキペディア)となったが、しかしドイツは覇権国として得られる利益に対し対価を払わなければならない。
ドイツ人が負債についてどれほどギリシャ人を責めようとも、対価を払うべきなのはドイツなのだ。覇権国には覇権国に委ねられた他国の利害というものがある。ドイツは1945年以後のアメリカのように義務を果たすのかどうか、決めるべき時が来ている。 読者にも周知のように、わたしもこれに同意する。というよりは、これに同意しない人間は経済学に明るくない人々とドイツ人だけである。経済学には以下の等式がある。 •政府貯蓄 = 貿易収支 + 投資 – 民間貯蓄 つまりは貿易収支が増えれば政府の赤字は減り、貿易収支が減れば政府の赤字は増える。ユーロという通貨がドイツにとって非常に安く、ギリシャにとって非常に高いという事実を思い出そう。この事実は長年ドイツの政府債務を軽減し、ギリシャの政府債務を肥大化させてきた。 したがってドイツ人が勤勉でギリシャ人が怠惰であるというのは、上記の経済的事実から生じた全くのまやかしである。両方の国を知る人間は、ドイツ人の仕事ぶりが評判に反して案外に適当で無責任であり、ギリシャ人がとりわけ怠惰ではないということを知っている。 ギリシャはどうなるだろうか? ソロス氏はこう予想する。 2009年後半にギリシャで債務危機が生じた時、ドイツの率いるEUは支援の手を差し伸べた。だが要求した対価が大きすぎた。彼らはあまりに高い利子を負債に課したため、ギリシャは負債を返せなくなってしまった。残念ながら、ドイツは最近の交渉で同じ誤りを犯した。ドイツの強制した条件はギリシャを更に深刻な債務危機へと陥れるだろう。ギリシャの負債が返済されることはない。
ギリシャは投資先としてどうかと聞かれると、ソロス氏はこう答えた。 ギリシャがユーロ圏に留まる限り、魅力的な投資先にはなりえない。ユーロ圏のなかではギリシャは決して回復することはない。通貨レートが高すぎるからだ。
もう一度例の等式を思い出そう。彼も単純にこの式を想定しているはずである。 •政府貯蓄 = 貿易収支 + 投資 – 民間貯蓄 ドイツ人にまともな経済学の知識さえあればユーロ圏の悲劇は起きなかったのだが、彼らは自分に都合の悪い事実は見ようとしない。彼らの財政黒字が自分たちの勤勉さの結果だと信じたいのだ。 彼らの主題は常に、自分を誇ることができるかどうかにある。そしてドイツの振る舞いのために南欧諸国の貧困層が子供にスリや売春を押し付ける生活を送ろうとも、ドイツ人は決して気に留めることがない。 •ヨーロッパには移民受け入れ能力はない: イタリアで邂逅した少女の話とドイツの欺瞞 ドイツ人が自己中心的な国民性を形成した歴史的、文化的背景については以下の記事に詳しく書いたので、そちらを参考にしてほしい。 •移民を歓迎するドイツの本音と哀れなハンガリーの受難 ヨーロッパの今後については、個人的にはもう諦めつつある。あまりに多くの悲劇が既に起こってしまった。本当に行くところまで行かなければ、彼らは気付かないのだろう。 •パリ同時多発テロの犠牲者130人はドイツが殺した •大晦日に移民が集団でヨーロッパ人女性に性的暴行、ドイツ、スイス、フィンランドで ▲△▽▼ ユーロ圏がドイツの植民地だと一目で分かる各加盟国の貿易収支比較2017年1月29日 http://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/5343 ユーロ圏は崩壊寸前である。2010年には欧州債務危機が起こり、南欧諸国の財政は破綻の危機に瀕した。ユーロ圏の失業率はいまだ10%近い水準であり、イタリアやフランスにはユーロ圏やEUからの離脱の兆候が見られる。 •イタリア改憲国民投票否決はユーロ圏離脱の始まり
•フランス大統領候補ル・ペン氏: EUは死んだ、変化なければフランスはEU離脱を しかし何故ユーロ圏はこれほどに混乱しているのか? 移民問題などの理由もあるが、経済的な混乱の原因は、一つの経済指標を調べれば非常に端的に理解できる。それはユーロ加盟国の貿易収支である。
為替レートと貿易収支
ここの読者にはお馴染みの話となるが、先ずは為替レートと貿易収支にどういう関係があるのかから説明したい。 アベノミクスが量的緩和で紙幣を印刷し、日本円の価値を意図的に引き下げたのは、通貨安になれば国内の輸出企業にとって利益となるからである。自国の通貨が安ければ、自国通貨建てでは同じ値段の輸出品であったとしても、外国の買い手から見れば安くなるため、輸出品が売れやすくなるわけである。 では、ユーロ圏の場合にはこの理屈はどう作用しているか? ユーロは元々別の通貨を使っていた複数の国がその通貨を統一したものである。元々、ドイツにはマルク、フランスにはフラン、イタリアにはリラという通貨があったが、これがすべてユーロという一つの通貨に統一されたのである。 ユーロ採用以前にはそれぞれの通貨がそれぞれの通貨に対して為替レートを変動させていた。イタリアの輸出が振るわない場合、景気刺激のために金融緩和をすれば、イタリアのリラはドイツのマルクに対して下落し、イタリアの輸出業は通貨安による一時的な底上げを得ることが出来た。変動通貨制においてはその国の産業の好調不調に対してこのように自動の調整機能が働くのである。 しかし、いまやヨーロッパの大部分はユーロを採用した。つまり、複数の国が一つの為替レートを使用していることになるわけだが、ではその一つの為替レートはどのように決まっているのか? それは、非常に大まかに例えとして言えば、すべての加盟国の為替レートの平均となる。ユーロ圏内で豊かな国は先ずドイツであり、輸出で外貨を稼ぎ、金融緩和も南欧諸国ほど必要としないドイツのマルクは強かった。一方で、ドイツ経済より弱く、失業率がドイツほど低くないイタリアのリラは、一般論で言えばマルクより弱い通貨であった。それがユーロという一つの通貨に統一されるのだから、ユーロの為替レートはある意味その間を取ったものになるわけである。 矛盾をはらんだ共通通貨ユーロ
この「平均的な」ユーロこそが問題の元凶であった。大国ドイツが入ったユーロという通貨は、当然イタリアのリラよりも高くなった。結果、イタリアの輸出は振るわず、ユーロ圏加盟前にはGDP比で5%近くあったイタリアの貿易黒字は、1998年のユーロへの段階的移行を境に瞬く間に減少してゆき、ついには貿易赤字の状態まで転落してゆく。 http://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2017/01/italys-net-exports-to-gdp-after-joining-euro.png その悪化は10年以上続き、ようやく改善されたのは2010年に欧州債務危機が表出してECB(欧州中央銀行)が事後的に対策に乗り出してからである。それまでの間にイタリアの債務は膨れ上がり、経済は瀕死の状態まで追い込まれてしまった。
輸出が振るわないということは、外貨を稼ぐことが出来ないということである。マクロ経済学上、稼いだ外貨は政府と民間で分け合う(つまり輸出の利益は税金と企業利益に分割される)ことになるため、外貨を稼ぐことが出来なければ、輸出企業の利益が減少するだけでなく、税金を得られない政府の財政も急激に悪化してゆくことになる。これこそが欧州債務危機の真実なのである。 他国の状況
「高すぎるユーロ」の犠牲となったのはイタリアだけではない。スペインの貿易収支も1998年辺りを境に同じような下落トレンドを辿っている。その悪化速度はもはや見事なほどである。 http://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2017/01/spains-net-exports-to-gdp-after-joining-euro.png ユーロ圏で一番状態の悪いギリシャの貿易赤字は一時GDPの10%を超えるところまで悪化した。
http://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2017/01/greeces-net-exports-to-gdp-after-joining-euro.png ニュースになったギリシャの債務危機は、高すぎるユーロのために外貨が稼げなくなったことが理由であり、南欧諸国の財政が悪化してゆく理由はこうしたグラフを眺めれば素人でも分かるものだったにもかかわらず、明らかに必要とされていた金融緩和をドイツが自分に必要がないからという理由で頑なに拒否し続けたために起こった悲劇である。
それでもドイツ人はギリシャ人を怠惰だと罵り続けた。しかし経済学の知識のある人々は全員、その原因がユーロにあると知っていた。 •ジョージ・ソロス氏: ギリシャ経済はユーロ圏にいる限り決して回復しない 因みに興味深いことに、こうした貿易収支の悪化を経験しているのは南欧諸国だけではない。以下はユーロ圏で二番目に大きいフランス経済の貿易収支である。 http://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2017/01/frances-net-exports-to-gdp-after-joining-euro.png 天秤の反対側 さて、加盟国の通貨レートの「平均」であるユーロがこうした国々にとって高すぎるということは、その天秤の反対側にはユーロが自国にとって安すぎる状態となっている国があるはずである。そしてその国の貿易収支は、上記の国々の貿易収支が悪化した分、凄まじい改善を見せているはずである。 その国はドイツである。以下はドイツの貿易収支のチャートである。もう笑うしか無いだろう。 http://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2017/01/germanys-net-exports-to-gdp-after-joining-euro.png これがドイツ人が他のユーロ加盟国の犠牲をもとに稼いだ外貨の総量である。GDPの7%分にも達している。ドイツ人はこれらの外貨を自分の政府の財政状態の改善のために使い、その結果実現したドイツの財政黒字をドイツ人が勤勉である証拠だと誇っている。そしてイタリア人やギリシャ人を怠惰だと馬鹿にしているのである。
結論
しかし他国人はそうは見ていない。こうしたユーロ圏の狂気を知っていたイギリス人は2016年に何を決断したのだったか? イギリスのEU離脱を主導したジョンソン外相の言葉をもう一度眺めたい。 •元ロンドン市長: EU統一を目指すドイツの目的はヒトラーと同じヨーロッパ支配だ
EUの悲惨な失敗は加盟国間の緊張をもたらし、そしてドイツにヨーロッパにおける過大な権力を与え、彼らがイタリア経済を乗っ取り、ギリシャを破壊することを許す結果となった。
イタリア人はかつて優れた自動車製造業を誇っていたが、これはユーロによって完全に破壊されてしまった。ドイツ人が望んだ通りにである。 ユーロはドイツの生産力がユーロ圏の他の地域に対して不可侵の優位性を得るための道具となってしまった。これはわれわれイギリス人にとって、節度と常識の声としてヨーロッパの救世主となり、目の前で繰り広げられる無秩序を止めるためのチャンスなのだ。 このように、経済的に完全にドイツの植民地となったヨーロッパの現状を詳細に理解しながら、イタリア人とフランス人が2017年にどういう政治的決断を行うのかについてもう一度思いを巡らせてみたい。ル・ペン氏の言葉通り、EUは既に死んでいるのである。 •イタリア改憲国民投票否決はユーロ圏離脱の始まり •フランス大統領候補ル・ペン氏: EUは死んだ、変化なければフランスはEU離脱を http://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/5343
▲△▽▼ 2017年02月25日 ドイツの植民地と化したギリシャ、緊縮財政の末路 ドイツはギリシャを騙して財政悪化させて支配下に置いた 引用:http://mandiner.hu/attachment/0122/121638_merkel_ciprasz.jpg 経済植民地になったギリシャ
2010年のギリシャ危機から早くも7年が経ったが、あれからギリシャがどうなったのか報道されなくなりました。 IMFの管理下に入って支援を受け、ドイツなどEUからも支援を受けたが、悪くなる一方だと言われています。 IMFが僅かな金融支援の代わりにギリシャに求めたのは破壊的な緊縮財政で、実行すればギリシャ経済が破綻するのは予想できた。 IMFおよび欧州議会は「今すぐに」財政黒字化を達成するようギリシャに迫り、その手段は国家予算をカットする以外に無い。 例えば日本の政府予算は年100兆円だが、他にも地方予算が100兆円ほどあるので、合計200兆円くらいの規模になっている。 日本のGDPは500兆円なので、そのうち4割の税金を徴収すれば財政赤字にはならないが、税収額が下回っているので赤字です。 これを例えば「明日財政黒字にしろ」と指示されて政府と地方予算を半減したら、経済活動が縮小して不況になります。
その代わりにIMFとドイツが「はした金」を援助してくれるが、結果は支援を受けないのと変わらない気がします。 このような経済政策は下の下で、第一次大戦後にドイツを経済破綻させたフランスの手口と同じです。 フランスも当時のドイツに緊縮財政を要求して、はした金を出し、事実上ドイツを植民地支配する事にしました。
国民生活が破綻したドイツでは「フランス野郎をぶちのめせ!」と主張するナチス党が大人気になり、後に公約は実行されました。 戦争に勝ったからといって調子に乗りすぎたフランス人が悪いので、自業自得というところです。 ドイツがギリシャにした事
ギリシャの財政危機が表面化したときに、ドイツのメルケル首相は「ギリシャ人は怠け者だからこうなった」と露骨にギリシャ人を見下す発言をしました。 実際その通りなら仕方がないが、ギリシャはEUに加盟するまで欧州でもっと健全財政で、怠け者でも浪費家でもありませんでした。 ギリシャはGDP2422億ドル(約27兆円)で政府債務は計約3200億ユーロ(約43兆円)だったが、最初からこんなに酷かったのではなかった。 ギリシャは1981年にEU加盟し、1990年にEU統合し、2002年にユーロを導入しました。
1990年のギリシャ政府債務はGDP比50%以下と健全だったが、ユーロ加盟条件は単年度赤字GDP3%以下、政府債務残高はGDP60%以下でした。 2002年時点でEUの財政規律を守っている国は一カ国も無かったが、ギリシャはEUの勧告に従って緊縮財政に転換しました。 財政が健全だった国が緊縮財政をすると経済成長率が低下し税収も少なくなるが、運が良ければ財政赤字が減少します。
たとえば日本は1990年時点での財政は(今よりも)健全だったが、やはりIMFや欧米の勧告に従って緊縮財政に転換しました。 消費税のように増税して支出を減らしたのだが、それ以上に景気悪化で税収が減ったので、財政赤字は悪化しました。 ギリシャでも同じ事が起きて財政破綻してしまい、EUとドイツ、IMFなどに従ったせいで国が破産してしまいました。
1990年に健全財政だったギリシャだが、ドイツの口車に乗って緊縮財政にした結果、2002年にGDP比98%になっていました。 2011年には170%に達したが、またドイツとEU、IMFに従って緊縮財政した結果、GDP比180%以上に増えています。 「ギリシャ人は怠け者だ」とメルケルは言ったが、実際はギリシャの労働時間はドイツよりもずっと長いのが分かっている。 食い物にされていく日本とギリシャ
結局緊縮財政で政府が支出を減らすと、経済活動が縮小して節約した以上に税収が減るという、戦前の経済理論をおさらいしただけでした。 アメリカは1929年に大恐慌で経済破綻しやはり緊縮財政したが、節約すればするほど財政が悪化してしまいました。 この間違った政策を正したのが教科書に出てきたニューディール政策で、ルーズベルト大統領は逆に公共事業でお金をばら撒いて経済と財政を好転させました。 つまり緊縮財政すると財政悪化して最終的に経済破綻するのは、70年も前に分かっていた事で、ドイツ人はギリシャが破産するのを承知でやらせていました。
日本の緊縮政策も全く同じで、緊縮財政すれば経済破綻するのを最初から知りながら、財務省は緊縮と増税に突っ走っています。 財務省がそうする理由は増税すれば出世するからで、アメリカが緊縮財政と消費増税を指示しているからでもある。 ドイツやアメリカが自分では浪費しておいて、なんで日本とギリシャに緊縮を迫るのかは、敵国を破産させる為です。
アメリカは1980年代に財政赤字で破産しかけましたが、レーガンは軍拡と浪費政策を取り、90年には日米逆転していました。 当たり前のことで政府がお金を使えば経済が拡大して税収が増え、政府が緊縮すればするほど財政赤字が拡大していきます。 アメリカにとっては日本経済が好転して良い事は一つも無く、ライバルは落ちていったほうが良いに決まっています。
その口車にまんまと乗せられているのが財務省の無能官僚たち、そして財務官僚に経済を教えてもらって「経済通」を自認しているのが麻生財務大臣と自民党政治家です。 この構図が続く限り、アベノミクスがどうなろうと日本の再生はありえず、ギリシャと同じになるでしょう。 http://thutmose.blog.jp/archives/69556428.html ▲△▽▼ 2017年03月01日 ドイツはなぜ難民が溢れても財政黒字なのか メルケルはドイツが繁栄した時期に首相を務めた 引用:https://jp.sputniknews.com/images/149/31/1493178.jpg ドイツはなぜ財政黒字なのか
ドイツを巡って2つのニュースが2017年2月に世界へ伝わり、一つは良いことで、もう一つは悪いことだった。 良いほうはドイツの財政黒字が統一後最大になり、お金が余って使い道に困っているという話でした。 悪いほうはドイツで排他主義が勢力を増し、難民施設襲撃が過去最多になったという話題でした。 まずドイツの財政黒字については本当に黒字なのか、黒字に見せかけているだけなのかを慎重に見極める必要がある。 というのは国家の「借金」は国家の「資産」と同額であり、ドイツの資産の分だけ必ずどこかに借金が存在するからです。 日本の財務省は毎日24回は「日本は世界最大の借金を抱えている」と1000兆円の借金を誇示しているが、半分本当で半分は嘘です。 まず日本政府の借金が仮に1000兆円だとしても、世界最大はアメリカか中国のどちらかです。
両国ともGDPが日本より大きいので金額で政府債務が上回っているのは当然として、対GDP比政府債務でも日本を上回っています。 アメリカは合衆国制なので「連邦債務」だけを公表し「公的債務」全体を公表しておらず、州や自治体、民間公的機関の債務は非公開にしています。 アメリカ全体の公的債務の合計は3500兆円とも5500兆円とも言われているが、建国以来一回も計算していないので大統領すら知らない。
アメリカのGDPは約1600兆円(1ドル100円として)なので公的債務3500兆円だとしても日本より良いという事はありません。 中国も省と国家は別々に経営されている上に、GDPも債務総額の数字も信憑性に乏しい。 なぜドイツだけが繁栄するのか
欧米の大手金融機関や情報機関の推測によると、中国の公的債務はGDP比200%から300%の間とされています。 ドイツも連邦制度でドイツ連邦とそれぞれの州は独立していて、連邦政府が発表した数字がドイツ国家の合計である訳ではない。 日本はどうかというと北海道から沖縄まで「日本政府」が配る予算で経営されていて、民間の公的機関の借金も政府債務に含めて発表しています。 ざっくりいうとアメリカ、中国、ドイツのような連邦制国家は、国全体の公的債務の2分の1か3分の1だけが「政府債務」で他は関係ないのです。
というわけでドイツの財政黒字もそれが本当なのかは、大いに疑って掛かる必要があるのです。 ドイツは2015年に300万人の移民を一旦は受け入れて、そのうち200万人を送り返したり他のEU諸国に押し付けて100万人を受け入れた。 2015年に約90万人の難民申請があり、2016年にも28万人の難民申請があり、さぞや財政負担で苦しんでいるだろうと思いきや、儲かりすぎて困っています。
ドイツは日本よりは遅いが高齢化と少子化が進んでいて、移民の負担もあるのに財政黒字になっている。 消費拡大と就業者数増加で税収が増えたが、メルケル首相は「黒字幅が小さすぎるので支出は増やさない」と言っています。 ドイツ経済を支えているのは輸出で、EU統一通貨ユーロのおかげで、いくら輸出しても絶対に「円高不況」はおきません。
1ドル360円で輸出し放題だった頃の日本と同じと言ってよく、特にEU域内で関税なしの無制限で輸出できます。 その犠牲になっているのはドイツ以外のEU加盟国で、貿易黒字はほぼドイツだけで、他は全て貿易赤字に近い。 ドイツの春はいつまで続く
ギリシャが経済破綻したのもドイツのせいだし、他のEU諸国が不況なのもドイツのせいと言い切っても良いほどです。 EU域外への輸出でも、ギリシャやイタリアなど他の国の貿易赤字のおかげで、ユーロは安いままなので、ドイツの輸出は止まりません。 自動車王国の日本でも輸入車が10%を超え、大半をドイツ車が占めているのも、ユーロ安のお陰です。 財政黒字もユーロ安による無制限輸出のお陰で、この状況が続けばドイツはアメリカに匹敵する「超大国」になるかも知れません。
だがドイツの黒字を負担させられている他のEU諸国は、ずっとドイツ人の言いなりになるのかは分かりません。 イギリスのように「ドイツに支配されるのはごめんだ」と言ってEUから出て行くかもしれません。 ドイツでは実は「ドイツ人」つまり昔からのドイツ民族が急激に国外に移住し、変わって外国人がドイツに移住しています。
このためドイツの2割超が既に移民で占められていて、難民受け入れ後はさらに急速に移民が増加しています。 そうなると反発も強くなり、ナチズムを支持する人が増えたり、難民排斥を主張して襲撃する事件が多発しています。 12年に渡ってドイツ首相を勤めてきたメルケルは、難民政策の失敗でどうやら今年で交代する可能性が高い。
ドイツには日本の自民党やアメリカの2大政党のようなものがなく、少数政党が乱立して連立政権をつくっています。 メルケル交代をきっかけに、ドイツをめぐる情勢も変化していくと考えられます。 http://thutmose.blog.jp/archives/69641007.html ▲△▽▼ ギリシャ国民の集団大虐殺 http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-87b7.html 2018年8月24日 マスコミに載らない海外記事
2018年8月21日 Paul Craig Roberts 欧州連合や他の政治声明が、ギリシャ危機は終わったと発表し、ギリシャ国民集団大虐殺の政治とマスコミによる隠蔽が、昨日(8月20日)始まった。 それが意味するのは、ギリシャはもう終わりで、死んで、おしまいだということだ。ギリシャは限界まで搾取され、死骸が犬に投げ与えられたのだ。 350,000人のギリシャ人、主に若い専門職の人々がギリシャから去った。出生率は、残った人口を支えるのに必要な率より遥かに低い。EUやIMFやギリシャ政府によってギリシャ国民に課された緊縮政策が、ギリシャ経済の25%もの縮小をもたらした。減少はアメリカ大恐慌にも等しいが、ギリシャでの結果は最悪だ。フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、社会保障法や、預金保険や公共事業計画など社会福祉の他の手段で、大量失業の影響を緩和したが、ギリシャ政府は、IMFとEUの命令に従って社会福祉手段を剥奪し、大量失業の影響を悪化させた。 伝統的に、腐敗、誤った運営、不運、予想できない出来事なりのいずれかで、主権国家が、債務を返済できなくなった場合、その国の債権者たちは、債務を負った国が返済できる水準まで債務の帳簿価格を切り下げる。 ギリシャの場合、状況が一転した。ジャン-クロード・トリシェ率いる欧州中央銀行と国際通貨基金が、ドイツやオランダやフランスやイタリアの銀行が保有しているギリシャ政府国債の利子と元金の全額を、ギリシャは支払わなければならないと裁定したのだ。 一体どうして、こういうことが実現したのだろう? いずれも危機を悪化させた二つの理由が、現在のギリシャを、ほぼ十年前の危機の始めにそうであったより遙かに酷い立場におくことになったのだ。 “危機”の始めなら、ギリシャ債務はギリシャ国内総生産129%で、債務金額の一部を切り下げることで、容易に解決できていたはずなのだ。現在、ギリシャ債務はGDPの180%だ。 一体なぜだろう? 債務者が一セントたりとも失わずに済ませるため、ギリシャの債権者に利子を支払うべく、ギリシャは更に融資を受けたのだ。売女経済マスコミが“緊急救済措置”と呼んだ追加融資はギリシャにとっての緊急救済措置ではなかった。ギリシャの債権者にとっての緊急救済措置だったのだ。 緊急救済措置を期待して、ギリシャ債務のクレジット・デフォルト・スワップをアメリカの銀行が売っていたため、オバマ政権は、この緊急救済措置を奨励した。緊急救済措置が無ければ、アメリカの銀行は賭けに負け、ギリシャ国債のデフォールト保険を支払っていたはずなのだ。 更にギリシャは、外国人への公共資産売却や、例えば、最低限の生活以下への年金引き下げや、病人が治療を受ける前に亡くなるほどになった実に劇的な医療引き下げなど、ギリシャの社会福祉削減を要求された。 記憶が正しければ、中国はギリシャの港を買収した。ドイツは空港を買収した。様々なドイツやヨーロッパの企業がギリシャ各都市の水道会社を買収した。不動産投機家連中が、ギリシャの保護された島々を不動産開発のために購入した。 このギリシャ公共財産略奪は、ギリシャが負っている債務を減らす方向には向かわない。あらたな融資と同様、利子の支払いに使われたのだ。 かつてない膨大な債務はそのままだ。債務を負っているギリシャ国民同様、経済は、かつてないほど小さい。 ギリシャ危機が終わったという宣言は、外国銀行の儲けのために、ギリシャ国民から搾り取れるものはもはや何もないという声明にすぎない。ギリシャは急速に沈没しつつある。港や空港や都市公益事業や強制的に民営化された他の公共財産にまつわる収入は今や外国人のものとなり、彼らがお金をギリシャから奪い取り、更にギリシャ経済を悪化させる。 ギリシャ人は彼らの経済的な未来を奪われてしまっただけではない。彼らは主権も失ってしまったのだ。ギリシャは主権国家ではない。EUとIMFに支配されている。2013年の私の著書、The Failure of Laissez Faire Capitalism第III部、“The End of Sovereignty”で、これがいかにして行われたかを私はご説明した。 ギリシャ国民はツィプラス政権に裏切られたのだ。ギリシャ国民には自分たちを国際銀行家連中に売り渡した政府に反乱し、暴力的に打倒するという選択肢があった。そうはせずに、ギリシャ国民は自らの破滅を受け入れ、何もしなかった。ギリシャ国民は本質的に集団自殺したのだ。 2008年の世界金融危機は終わっていない。アメリカやEUやイギリスや日本の中央銀行による膨大な貨幣の創造によって、隠されているだけだ。貨幣の創造は実際の生産の成長を遙かにしのいでおり、“実際の条件”が維持可能なものを超えて、金融資産の価値を押し上げている。 この危機が一体どういう展開になるかは、見ていなければわからない。欧米文明の崩壊という結果をもたらしかねない。食うか食われるかなのだろうか? ギリシャの後はイタリアやスペインやポルトガルやフランスやベルギーやオーストラリアやカナダで、最後は誰もいなくなるのだろうか? 欧米世界丸ごと、自分たちの権益に役立つよう強力な既得権益経済集団が醸成するウソの中で暮らしている。オンラインのものを除き、自立したメディアはなく、そうした独立メディアは悪者扱いされ、アクセスできないようにされつつある。情報が管理されている世界に暮らしている人々は、自分たちに一体何が起きているのか全くわからずにいる。それで、彼らは自分の利益のためにある行動ができずにいるのだ。 Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。 記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/21/genocide-of-the-greek-nation/
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