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海野素央の Love Trumps Hate
トランプに洗脳された男
2018/12/25
海野素央 (明治大学教授、心理学博士)
今回のテーマは「トランプに洗脳された男」です。マイケル・コーエン被告は2007年から、複合企業トランプ・オーガニゼーションの社員として働き、後にドナルド・トランプ米大統領の「火消し役」として顧問弁護士を務めました。コーエン被告は合計で約10年間、トランプ大統領に仕えてきたわけです。
これまでに起訴されたポール・マナフォート元選対本部長、マイケル・フリン元大統領補佐官、ジョージ・パパドポロス元外交顧問などの側近の中で、コーエン被告はトランプ大統領に最も近い人物であったといえます。ニューヨーク連邦地裁は12月12日、そのコーエン被告に脱税、米議会での偽証及び選挙資金法違反などの罪で、禁錮3年の実刑判決を言い渡しました。
本稿では、コーエン被告の証言並びにトランプ大統領の弁護団を率いる元ニューヨーク市長ルディ・ジュリアーニ氏の反論の分析を中心に述べます。
(Feodora Chiosea/Gettyimages)
コーエンの重要証言
コーエン被告から数々の重要証言が飛び出しました。同被告は判決後、米ABCニュースのインタビューに応じ、その中で「トランプ大統領はロシアについて真実を語っているか」という質問に対し、「いない」と明言しました。ロバート・モラー特別検察官の捜査に協力している最中なので、同被告はロシア疑惑に関して詳細を語りませんでしたが、重要証言であることは確かです。
加えてコーエン被告は、トランプ大統領と不倫関係にあったとされるプレイボーイ誌の元モデルカレン・マクドゥーガル氏と、元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏(本名ステファニー・クリフォード)に支払った口止め料についても語りました。同被告によれば、2人の不倫相手が告発した場合、「(大統領は)不倫関係が自分と選挙にどのような影響を与えるのかについて非常に懸念していた」というのです。これも重要証言です。
仮にこの証言が真実であれば、口止め料はトランプ大統領が主張しているような「完全にプライベートなもの」「単なる個人的な金銭のやり取り」ではなく、大統領選挙の結果に影響を与えようと意図的に行われたものになります。
焦点は選挙資金法違反
2人の不倫相手への口止め料について、以下で詳しくみていきましょう。
まずコーエン被告は、タブロイド紙「ナショナル・エンクアイアー」に、トランプ大統領とマクドゥーガル氏の不倫関係の記事が掲載されるのを阻止するために、親会社のアメリカ・メディア社(AMI)を通じて15万ドル(約1670万円)で記事を買い取り、もみ消しました。時期は、第1回大統領候補テレビ討論会が開催される1カ月前の16年8月です。
コーエン被告は、トランプ大統領の指示で行ったものであり、同大統領は口止め料の違法性を認識していたというのです。これも注目に値する証言です。
トランプ大統領のこの隠蔽工作とみられる行動について、コーエン被告と同大統領の友人であるAMIの最高経営責任者(CEO)デービッド・パッカー氏の証言は一致しています。
トランプ大統領は、ダニエルズ氏との不倫関係に関しても対策を講じました。同大統領とダニエルズ氏は、メラニア夫人がバロン君を生んだ2、3カ月後に不倫関係になったといわれています。コーエン被告は、ダニエルズ氏を黙らせるために取引をし、投票日直前のタイミングで、13万ドル(約1450万円)を建て替えて支払いました。
それに関して、トランプ大統領はコーエン被告に返済したと語りました。こここがポイントです。
トランプ大統領はコーエン氏個人に「献金」をしたとみなされました。選挙期間中における個人への献金額の上限はわずか5400ドル(約60万円)で、13万ドルはそれをはるかに上回る額です。従って、トランプ大統領も選挙資金法違反になります。
トランプの洗脳パワー
コーエン被告は、同インタビューで「自分の弱さはドナルド・トランプへの忠誠だった」と、過去の自分を振り返りました。以前、「(トランプ)大統領の身代わりなら銃弾も受ける」と発言したほどです。
コーエン被告は次のように述べました。
「忠誠を尽くすに値しない人物に、忠誠を費やしてしまった」
クライアントの悪行の隠蔽工作に追われたコーエン被告は、トランプ大統領に完全に洗脳されていたのでしょう。
「私にはいま自由がある」
コーエン被告はこう語りました。
スピンコントロール
ではジュリアーニ氏は、どのような方法でトランプ大統領を弁護したのでしょうか。
ジュリアーニ氏は、米ABCニュースの政治番組で、スピンコントロールを用いました。スピンコントロールとは、一言で言ってしまえば、情報操作です。論点や争点のすり替え及び都合のよい証拠やデータの提示などによって、状況を自分に有利な方向へ変える政治手法の一種です。
クリケットの投手が、ボールがバウンドした後、進行方向が変わるようにスピンをかけることが由来であるといわれています。スピンコントロールに長けた人をスピンドクターと呼んでいます。正にジュリアーニ氏がそうです。
ジュリアーニ氏はトランプ大統領の不倫相手に対する口止め料に関して、「大統領は家族と子供たちのことを心配していた」と主張して、論点をすり替え、選挙結果に影響を与える目的ではなかったと結論づけたのです。さらに、口止め料について一言こう述べました。
「ハラスメント程度だった」
ジュリアーニ氏は問題の過小化を図りました。
加えて、2008年米大統領選挙においてオバマ陣営が選挙資金法違反で罰金を支払ったと指摘し、争点を変えようとしました。トランプ大統領も自身のツイッターに、オバマ陣営の選挙資金法違反について投稿しています。
当時、オバマ陣営は政治献金に関する書類の提出が期限を過ぎてしまい、米連邦選挙委員会(FEC)に37万5000ドル(約4170万円)の罰金を支払いました。
しかし、今回のトランプ陣営の選挙資金法違反は、罰金を支払うだけでは済まされません。もしコーエン被告及びパッカー氏の証言が真実であるならば、口止め料の支払いはトランプ大統領と協議したうえでの決定です。同大統領の口止め料の主たる目的は、選挙結果に対する影響であり、それが動機づけになっています。
結局、トランプ大統領は共謀して罪を犯した可能性が高いということになります。この点でオバマ陣営とはまったく次元が異なるのです。
ジュリアーニの大失言
ジュリアーニ氏は同政治番組の中で、コーエン被告の忠誠に関する議論を封じ込めようとして、同被告がトランプ大統領とのやり取りを録音した問題を取り上げました。そのうえで、コーエン被告の人格攻撃を始めたのです。
「(コーエン被告は)トランプ大統領に忠実でははく、自分に忠実であった。自分の保身ばかりを考えている。減刑のためにあることないことを言いふらす」
ところがモスクワにおける高層ビル建設プロジェクト、いわゆるトランプ・タワー・モスクワ建設の時期について司会者から質問をされると、ジュリアーニ氏はつい口が滑ってしまったのか、新たな情報を提供してしまったのです。
コーエン被告はトランプ・タワー・モスクワ建設の交渉は、2016年1月に終了したと米議会に虚偽の証言をしました。その意図は、ロシアとの交渉は、米大統領選挙が本格化する前に打ち切ったので、トランプ陣営と同国との接触はなかったという誤った印象を与えることだったのでしょう。
後に、コーエン被告は大統領選挙期間中の2016年6月までロシアとトランプ・タワー・モスクワ建設交渉を継続していたことを認めました。トランプ大統領は同年4月に外交政策に関する演説を行い、ロシアに対して融和的な政策を示しています。
話を戻しましょう。ジュリアーニ氏は、トランプ・タワー・モスクワ建設の交渉時期に関して、次のように回答しました。
「2016年11月まで続いていた」
これこそが最重要証言です。
米大統領選挙終了まで、ロシアとの交渉が継続していたのです。選挙期間中も、トランプ大統領はコーエン被告からロシアとの交渉の経過報告を受けていたとみて、まず間違いないでしょう。トランプ氏がロシアに対して融和姿勢を示してきた本当の理由が明らかになってきました。
これは実に深刻な問題です。ロシアはこの2年間、トランプ大統領がトランプ・タワー・モスクワ建設交渉の時期について、嘘をついて隠蔽してきた事実を把握していました。トランプ氏の弱みを握っていたわけで、それがロシアに有利に働いた可能性があるからです。
これを機に、トランプ大統領は国民を欺瞞して勝利した大統領であり、合法的ではないという声が高まるのか、そこに注目です。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14886
- 北朝鮮に強いシグナルを送った米国「歯がズレて」死亡の米大生、北朝鮮が拷問552億円賠償命令 北朝鮮軍兵士による襲撃多発 うまき 2018/12/25 16:34:21
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