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対ファーウェイ戦争
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2018年12月15日 マスコミに載らない海外記事
2018年12月12日
ジェフリー・D・サックス
トランプ政権の中国との対立は、アメリカの貿易不均衡と、閉鎖的な中国市場、あるいは、中国の知的財産盗用とされるものとはほとんど無関係だ。中国が、外国市場や、先進技術や、世界的金融制度や、おそらくは、アメリカの大学を利用できなくして、中国を封じ込めるのが本当の狙いだ。
ファーウェイCFO孟晩舟逮捕は、中国との激化する対立における、ドナルド・トランプ大統領政権による危険な動きだ。もしマーク・トウェインの名言通り「歴史がしばしば韻を踏む」なら、我々の時代は益々、1914年に先行する時期を思い出させる。当時のヨーロッパ列強同様、中国に対する優勢を主張するのに熱心な政権が率いるアメリカが、世界を大惨事に押しやっている。
逮捕の文脈は極めて重要だ。香港からメキシコへ向かう途中、バンクーバー空港で、孟を逮捕し、更に、アメリカに彼女を引き渡すことをアメリカがカナダに要請したのだ。このような動きは中国実業界に対するアメリカの宣戦布告に等しい。ほとんど前例がなく、外国を旅行しているアメリカ実業家が他の国々によるこのような行動にあう危険がずっと大きくなる。
アメリカは、アメリカ人であれ外国人であれ、会社がおこなった犯罪とされるもののかどで、企業幹部を逮捕することはめったにない。企業幹部は通常、会社の不正と主張されていることより、彼らの(横領、贈収賄、あるいは暴力のような)個人的犯罪とされるものの容疑で逮捕される。企業幹部は、刑事責任まで含め、企業の不正行為の責任を負うべきだ。だが何十人もの有責のアメリカ人CEOやCFOではなく、主要な中国人実業家から、そうした慣行を始めるのは、中国の政府や実業界や国民に対する衝撃的な挑発だ。
孟はイランに対するアメリカ制裁に違反した嫌疑を掛けられている。イランや他の国々に対するアメリカ制裁に違反した膨大な数のアメリカや非アメリカ企業という文脈で、彼女の逮捕を考えよう。例えば、2011年、JPモルガン・チェースはキューバとイランとスーダンに対するアメリカ制裁に違反したことに対し、2011年に罰金として8830万ドルを支払った。それでもジェイミー・ダイモンは飛行機から拉致され、拘留されはしなかった。
しかも、アメリカ制裁への違反ということで、JPモルガン・チェースは唯一ではなかった。2010年から、下記の主要金融機関は、アメリカ制裁に違反したかどで罰金を支払った。ブラジル銀行、バンク・オブ・アメリカ、グアム銀行、モスクワ銀行、東京三菱銀行、バークレイズ、BNPパリバ銀行、クリアストリーム・バンキング、コメルツバンク、コンパス、クレディ・アグリコル、ドイツ銀行、香港上海銀行HSBC、ING、インテサ・サンパウロ、JPモルガン・チェース銀行、アブダビ国立銀行、パキスタン国立銀行、ペイパル、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(ABM Amro)、ソシエテ・ゼネラル、トロント・ドミニオン銀行、(現在ビーコンビジネス銀行として知られている)トランス・パシフィック・ナショナル銀行、スタンダード・チャータードとウェルズ・ファーゴ。
これら制裁を破った銀行のCEOあるいはCFOの誰一人として逮捕拘留されなかった。これらすべてのケースで、個々の幹部でなく、企業に説明責任があると考えられた。最近の記録によれば、罰金として驚異的な2430億ドルを支払った2008年の金融危機に向かう途上、あるいはその余波の時期、銀行は蔓延していた違法行為について、幹部に責任があるとは見なされなかった。この実績を考えると、孟の逮捕は、これまでの慣行からの衝撃的決別だ。そう、CEOとCFOには説明責任があるだろうが、偽善や高尚な原則を装った私利や、新しい世界的な葛藤を刺激するリスクを避けるために、まず国内から始めるべきだ。
孟に対するアメリカの動きは、関税を課して、中国の高度先端技術輸出に欧米市場を閉ざし、中国によるアメリカとヨーロッパのハイテク企業買収を阻止することで、中国経済を傷つけるというトランプ政権のより広範囲の取り組みの一環なのは実に明白だ。誇張なしに、これは中国に対する経済戦争、しかも無謀なものの一部だと断言できる。
ファーウェイは、中国の最重要ハイテク企業の一つで、それゆえ、いくつかの高度先端技術分野で、中国を遅滞させたり、勃興を止めたりするトランプ政権の取り組みの主標的だ。この経済戦争でのアメリカの動機は、一部は商業的な狙いで、一部は地政学的なもので、のろまなアメリカ企業を守り、有利にするためだ。国際法による統治を奉じることとは何の関係もない。
アメリカは、特に同社が、世界的規模で最先端の5G技術を市場に出すのに成功しているので、ファーウェイを標的にしようと試みている。アメリカは、同社のハードウェアとソフトウェアで隠された監視能力を通し、安全保障上の危険となると主張している。だがアメリカ政府は、この主張の証拠を提示していない。
「ファイナンシャル・タイムズ」のファーウェイに対する最近の酷評が、この点を暴露している。「干し草の山の中で針を見いだせるほど十分幸運でない限り、情報通信技術ICTでは干渉の具体的証拠は得られない」ことを認めた後、筆者は「安全保障を仮想敵国の手中に置く危険はおかさない」と断言する。換言すれば、ファーウェイによる不正行為を実際は指摘できないのに、それにもかかわらず同社をブラックリストに載せるべきだというのだ。
世界の貿易規則がトランプのギャング戦術を妨害するなら、彼によれば、規則は去らねばならないのだ。マイク・ポンペオ国務長官は、先週ブリュッセルで、同じようなことを認めた。「我々の政権」は「我々の主権的利益や、我々の同盟国の利益を満たさない旧式、あるいは有害な条約、貿易協定や、他の国際的合意は、合法的に、離脱するか、再交渉して」いると言ったのだ。ところがこれらの合意を終了する前に、政権は無謀な一方的な行動によって、彼らを破壊しているのだ。
アメリカの域外制裁、すなわち他の国々に、キューバやイランのような第三国と取り引きするのをやめるよう命じることができるというアメリカの主張に基づいているので、前例がない孟の逮捕は一層挑発的だ。確かに、中国や他のいかなる国も、アメリカ企業に、誰と取り引きできるか、できないかを命じるのをアメリカは大目には見るまい。
(中国企業に対するアメリカ制裁のような)国家でない集団に対する制裁は、たった一つの国によって適用されるべきでなく、国際連合安全保障理事会での協定によるべきだ。その点、国連安全保障理事会決議2231は、全ての国に、2015年イラン核協定の一環として、対イラン制裁を取り下げるよう求めている。ところがアメリカは、そしてアメリカだけが、今このような問題における安全保障理事会の役割を拒否している。ファーウェイや中国ではなく、トランプ政権こそが、国際法による統治と、それゆえ世界平和にとって、今日最も重要な脅威だ。
ジェフリー・D・サックスは、コロンビア大学の持続可能な開発の教授、健康政策・健康管理の教授で、コロンビア大学のCenter for Sustainable Developmentと、国連のSustainable Development Solutions Networkディレクター。著書に、『貧困の終焉――2025年までに世界を変える』、『地球全体を幸福にする経済学―過密化する世界とグローバル・ゴール』、The Age of Sustainable Development、Building the New American Economyや、最新刊 A New Foreign Policy: Beyond American Exceptionalismなどがある。
記事原文のurl:https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-war-on-huawei-meng-wanzhou-arrest-by-jeffrey-d-sachs-2018-12
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