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中国、対米国サイバー攻撃の“実行部隊”ファーウェイCFO逮捕の屈辱…中国経済が瓦解
https://biz-journal.jp/2018/12/post_25943.html
2018.12.15 文=相馬勝/ジャーナリスト Business Journal
G20首脳会議 米中首脳会談(写真:AFP/アフロ)
中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が米国の要請でカナダ当局に逮捕された事件は、米中両国の世界覇権をめぐる死闘の始まりを意味している。
なぜなら、米国にとってファーウェイは、サイバー攻撃によって同国の最先端技術や最重要情報などを狙うハッカー集団の元締めであり、このままファーウェイの行為を許していれば、米国の軍事情報を含む安全保障上の重要情報はほとんど中国に筒抜けになるからである。
一方の中国にとっては、ファーウェイは今後も中国の経済成長と生産性向上を推進するためになくてはならない中核企業であり、その最高幹部が逮捕されることによって、中国の最重要経済政策がなし崩し的に破綻に追い込まれる可能性がある。
ポンぺオ米国務長官は12月12日、世界最大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルで発覚した最大5億人分の顧客の個人情報流出に「中国が関与している」と語り、中国を名指しで非難。これを受けて、米上院司法委員会のグラスリー委員長は12日、「世界で行われるサイバー攻撃を通じた産業スパイ活動のうち、90%以上は中国と考えられている」と中国を糾弾した。
これは、このまま中国に軍事情報などを盗まれ続ければ、世界のなかで「米国一強」の地位は中国に脅かされ、中国によって世界覇権を奪取されかねないとの強い危機意識が働いているからにほかならない。
このため、米政府や議会は、中国政府がサイバー攻撃を仕掛けて技術を盗んだり、機密情報にアクセスできる要人のデータを集めたりしていると警戒しており、今年8月にはファーウェイや同じく中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)の製品を政府調達から排除することを決定した。なぜなら、ファーウェイやZTEの製品を通じてスパイウェアやマルウェアが政府の中枢システムに入り込み、サイバー攻撃の温床になっているとみられるからだ。
■メンツを潰された習近平
折しも、米中両国は今年7月から、トランプ米政権による対中関税発動を契機に貿易戦争に突入した。大幅な関税引き上げにより、とりわけ中国経済が悪化していることは一目瞭然だ。中国国家統計局によると、中国の今年7〜9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.5%増で、4〜6月期より0.2ポイント減速しており、リーマン・ショック直後の09年1〜3月期以来、9年半ぶりの低水準にとどまっている。この原因は貿易戦争勃発後、外資企業や中国企業が次々と生産拠点を中国から他国に移転し、中国内の失業者が急増していることが挙げられる。
11月28日付の経済ニュース専門サイト「財新網」は「国内雇用低迷のため、202万件の求人広告が消えた」と報じた。「網易」(10月22日付)も『今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超』との見出しを掲げた記事を配信。さらに、中国農業農村省は11月8日、740万人の農民工(出稼ぎ農民)が地元に戻ったと発表し、その実態を裏付けている。加えて、これまで右肩上がりで上昇していた都市部のホワイトカラー層の所得が伸び悩んでおり、習指導部の支持基盤である都市部住民の不満が高まっているのだ。
このようなことから、習主席はトランプ氏に首脳会談を提案。習氏は12月1日、主要20カ国・地域首脳会議(G20)の場を利用し、訪問先のアルゼンチンで、わざわざ米側の宿舎となっているホテルに習指導部の主要幹部を引き連れて行き、トランプ氏と会談したほどだ。まさに、習氏はトランプ氏に三拝九拝して会ってもらったといってよい。中国の皇帝は相手を“かしずかせて会ってやる”という「朝貢外交」の伝統があるが、習氏は皇帝のプライドをかなぐり捨てて、トランプ氏との首脳会談に臨んだのである。
この結果、米国が来年1月に予定していた中国への追加制裁を90日間猶予することが決まった。習氏は面目を保ったかに見えたのだが、実は、ファーウェイの孟氏は首脳会談当日の1日に逮捕されていたことが、のちに判明する。つまり、習氏は完全にメンツをつぶれされたのである。
■中国への信頼度低下
しかも、孟氏の祖父は元四川省副省長という中国政府幹部であり、周恩来首相人脈につらなる古参幹部。また、孟氏の父は中国人民解放軍出身でファーウェイ会長。孟氏自身は父の跡を継いで来年にもファーウェイ会長に就任するといわれる大物幹部であり、中国政府にとっても最重要人物だ。
習氏は高級幹部子弟の太子党閥の総帥だが、孟氏は典型的な太子党だけに、その孟氏が海外で逮捕されたのは、完全にトランプ政権に裏をかかれた格好で、中国の最重要人物を保護できなかった習指導部の失態としかいいようがない。
さらに習氏が犯した失敗は、孟氏逮捕の報復として、中国在住の2人のカナダ人男性を「国家安全を害した容疑」で拘束したことだ。これについて、中国外務省スポークスマンは「法に基づいて行動した」と述べ、孟氏逮捕とは無関係と主張したものの、報道ではカナダへの報復との見方が強い。中国がいくら「ファーウェイの問題と無関係」と言っても、タイミング的に2人のカナダ人が拘束されれば、誰でも報復措置と考えるのは当然だ。
この“違法”な身柄拘束によって、「中国はいまだに外国人を誘拐するような非人道的な真似をするのか。中国はまだ法治国家にはほど遠い」との印象を国際社会に与えることになり、習指導部への薄気味悪さは一段と増すことになる。これによって、西側社会の中国への信頼感は、限りなくゼロに近くなるといってもよいだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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