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米CIAの手先であるニューヨークタイムズとワシントンポストを米国民は信用していない
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25713.html
2018.11.30 構成・インタビュアー=大野和基/ジャーナリスト Business Journal
ニコラス・スカウ氏
当サイト記事『米CIAの世論操作:ニューヨークタイムズでも、実際に起きていることを把握せず報道』において、米中央情報局(CIA)が大手メディアと癒着して、世論を操作しているという驚愕の実態を紹介した。後編では、引き続き『驚くべきCIAの世論操作』(集英社インターナショナル)の著者でOCウィークリー紙編集長のニコラス・スカウ氏に、話を聞いた。
■CIAが新聞社を脅迫
― CIAが記事を没にさせた具体例を教えてください。
ニコラス・スカウ氏(以下、スカウ) もっとも有名な例は、スノーデン事件につながった例です。アメリカ政府は電話や電子メールやデータを、民間企業から入手したり、盗聴したりしていましたが、ニューヨークタイムズは、この事実を嗅ぎつけました。
ジェームズ・ライゼン氏はピュリッツァー賞受賞記者でとても有名な記者ですが、彼こそがまさにこの情報をつかんだのです。彼は記事にして報道しようと思いましたが、ニューヨークタイムズは掲載を拒否しました。最終的には記事になりましたが、それは彼が自分の本でそのことを書こうとしたからです。でも数年間、この事実を報道できないままでした。2回も掲載を拒否されています。
こういう主流新聞の編集者たちがCIAから脅迫されることは日常茶飯事です。それで掲載を見送ることになります。もし掲載を見送らなければ、CIAへのアクセスをリスクにさらすことになるからです。
― 本書には、CIAがハリウッドもコントロールしている話が出てきます。
スカウ ハリウッドでつくられる映画は、すべて最初からアメリカ文化を促進しています。1947年にCIAが創設されると、特に冷戦時代のソ連がしているのと同じように、アメリカの文化や価値観などを促進するべく、ハリウッドにある才能や知的資本をいかに利用するかということに、とても関心を持っていました。
具体的な例を挙げると、CIAはスタジオに人を送り、共産主義に反対するように台本を変えていました。まさにそれが始まりで、ずっと続きました。ベトナム戦争中は、CIAがアメリカの軍事力をヒーロー的なイメージとして促進しようと必死でした。このやり方が1970年代に崩れて、ハリウッドはCIAから独立してベトナム戦争やCIAに批判的な映画をつくり始めました。例えば、CIAが行う拷問に批判的な映画です。そこでCIAはハリウッドとの関係を修復しなければならないと思ったのです。
80年代以降、特に90年代になってからCIAは直接ハリウッドとかかわり、CIAのより良いイメージを促進するようなプロジェクトに取り掛かりました。それまでかなりネガティブなイメージがあったからです。“Hunt for Red October”(『レッド・オクトーバーを追え!』90年)や“Red Dawn”(『若き勇者たち』84年)などは、アメリカのタフでポジティブなイメージを促進する映画です。
それは9.11(2011年9月11日の同時多発テロ事件)まで続きました。そして9.11以降、この傾向はさらに強くなり、ハリウッドとCIAはさらに密接に映画をつくるようになりました。対テロ戦争の映画がそうです。“Argo”(『アルゴ』12年)や“Zero Dark Thirty”(『ゼロ・ダーク・サーティ』12年)のような映画です。その映画では事実は無視されて、対テロ戦争を正当化するようなイメージをアメリカ国民に売ることが目的でした。
― 私は『アルゴ』を書いた、元CIA要員にインタビューしたことがあります。
スカウ 彼はCIAでアーティストをしていました。偽造パスポートをつくったりしていました。この『アルゴ』は、ハリウッドとCIAの完璧な共同制作プロジェクトです。ハリウッドもCIAもこの映画ではヒーローになるからです。でも実際はそうではありません。事実とは異なります。実際は、カナダがアメリカ人の捕虜を助けたのです。事実はハリウッド映画よりも、はるかに複雑です。
■オバマ政権時代の言論弾圧
― バラク・オバマ前大統領は、情報漏洩者やそれを基にして記事を書いた記者をスパイ法を使って訴追しましたが、その数はそれまでの大統領が訴追した数を合計したよりも多かったのです。オバマ氏の異常な言論弾圧は、トランプ氏が同じような行動に出る道を切り開いたと指摘する声も多いです。
スカウ まったく同感です。非常に複雑な問題ですが、アメリカの政治で重要な要素はexecutive power(大統領令など執行権)が強くなったことです。これは私の見解なので、物議を醸すかもしれませんが、大統領の権力が強くなりすぎたと思います。多くの人はオバマ氏を良い大統領だったと振り返るでしょうが、オバマ氏は大統領の権限をますます強化して、秘密を維持する力をさらに強化しようとした、ほかの大統領と変わらない大統領だったということです。精査すると、オバマ氏のほうが、ほかの大統領よりもその度が過ぎていたことはあまり知られていませんが、重要な点です。トランプ氏を非難する前に、オバマ氏をもっと非難するべきだと思います。
トランプ氏の性格は不安定なので、情報漏洩者を訴追しようとする気持ちはわかりますが、一方で一見トランプ政権下よりもはるかにノーマルに見えたオバマ政権下でさえも、情報を共有する余地はほとんどなく、なんでも秘密にしようとしていたことを忘れてはなりません。
権力の濫用について何が起きていたかをよく見ると、オバマ政権はひどい弾圧をしていて、漏洩者や記者を逮捕していました。先ほど言及したジェームズ・ライゼン記者を脅して「情報源を言わなかったら、刑務所にぶちこむ」とオバマ氏は脅していました。トランプ氏は「フェイクニュース」と叫んでいますが、そんな単純なものではなく、トランプ氏が政権につく前から長い間、メディアが仕事をする能力は危機に瀕していたのです。このことを世界中の人は知るべきです。
― 私の友人には「オバマ氏は偽善者である」という人が多いです。アメリカ人の記者たちです。
スカウ 彼が偽善者そのものであるかはわかりませんが。人はあまりにも気軽にオバマ氏をヒーローにしすぎです。正式に許可されていないドローン攻撃で無辜の人民を多く殺害したのもオバマ政権です。このことを人はあまりにも簡単に忘れてしまっています。少なくともオバマ氏には、イラク侵攻の責任はありません。それはジョージ・ブッシュ元大統領にあります。それはひどいもので、イラク侵攻は起きるべきではありませんでした。
しかしオバマ氏は、イラク戦争を引き継ぎました。アフガニスタンでこの戦争を引き継ぎました。オバマ氏は兵隊をそこから出して帰還させたでしょうか。それどころか彼は戦争をエスカレートさせました。どうやってそれを成し遂げたのでしょうか。秘密のドローン攻撃です。誰もドローン攻撃をコントロールできません。爆弾を無辜の民に落としていて、誰も責任を取らない状態です。こんなひどいことはありません。それがオバマ政権時代です。
― CIAは、CIAの失態や不祥事を記事にしようとする記者を、どのように脅迫するのでしょうか。
スカウ 不文律があります。もしあなたが国家安全担当の記者でCIAと仕事をしている場合は、記事にする24時間前に内容をCIAに知らせないといけない不文律があります。そのときに、不都合な内容であればCIAは記事を出さないように説得しようとします。もしそれに従わない場合は、CIAとの関係を切られます。切られたくなければ、記事にすることはできません。主流の新聞ではなく、ネットメディア「インターセプト」のような、もっと独立したメディアは、CIAに報告しないで報道します。それに関しては、CIAはコントロールできません。
― さきほど言及したライゼン記者は、ニューヨークタイムズを辞めてインターセプトに移りましたね。
スカウ そうです。彼がニューヨークタイムズで働くのは難しいです。ニューヨークタイムズが彼をコントロールするのが難しいからです。それで移ったのです。CIAはインターセプトを非常に怖がっています。どういうストーリーが出てくるか事前にわからないからです。ニューヨークタイムズやワシントンポストであれば、事前に教えてくれるので安心できます。
― つまり、ニューヨークタイムズやワシントンポストの記者はCIAに記事を事前に送って、承諾を取るということですか?
スカウ そうです。とてもいかがわしい関係です。
― トランプ氏の支持者は、今でもトランプ氏を支持しています。彼らは主流のメディアを信用していません。ある意味では、トランプ支持者は正しいということでしょうか。
スカウ ある意味ではそうですね。残念なことですが、そうです。トランプ氏と真実は、お互いになんの関係もありません。トランプ氏は自分の気に入らないニュースを「フェイクニュース」と呼びます。
実際は、アメリカ国民はアメリカの主流メディアに対して、非常に低い評価をしています。それはトランプ氏が大統領になる前からです。CIAはメディアを使ってイラク侵攻を正当化しました。メディアがCIAにだまされて報道し、それを利用してイラク侵攻したのです。アメリカ国民はそのストーリーを信じて、自分の息子たちを戦地に送ったのです。ですから、多くのアメリカ国民は主流のメディアは信用できないと考えています。これはトランプ氏のせいではありません。
(構成・インタビュアー=大野和基/ジャーナリスト)
前編記事
米CIAの世論操作:ニューヨークタイムズでも、実際に起きていることを把握せず報道(Business Journal)
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