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<記者殺害疑惑>サウジの悪事?のおかげで歩み寄ったアメリカとトルコ(ニューズウィーク)
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/283.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 10 月 16 日 19:28:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

【記者殺害疑惑】サウジの悪事?のおかげで歩み寄ったアメリカとトルコ
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/post-11109.php
2018年10月15日(月)19時42分 マイケル・ハーシュ ニューズウィーク


10月15日、失踪事件の舞台となったイスタンブールのサウジ領事館から出てきたサウジ政府関係者 Murad Sezer-REUTERS


<サウジ記者殺害事件に関する情報を流す一方、アメリカ人牧師を釈放したエルドアンとトランプの間では、いったいどんな取引があったのか>

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、ドナルド・トランプ米大統領にとって「強権支配の先輩」と言ってもいい。トランプがアメリカ国内でやろうとしていること──政治とメディアを支配し、巧妙に世論を操作すること──を、エルドアンはトルコでほぼやり遂げているからだ。

2016年7月のクーデター未遂事件以降、エルドアンは報道機関を次々と閉鎖。9月には、トルコで最後に残された独立系新聞もエルドアンと親しい友人の支配下に入ったらしい。

だが国際舞台では(少なくともぱっと見たところは)、エルドアンは言われ放題、いじめられ放題になりつつある。

例えば10月12日、トルコは突然、でっち上げの証拠で逮捕・収監していたアメリカ人牧師のアンドルー・ブランソンを釈放した。エルドアンは、アメリカによる経済制裁がもたらす苦痛にもはやトルコは耐えきれないと暗黙のうちに認めたのだ。

トランプは8月、ブランソン牧師の拘束を理由にF35戦闘機100機のトルコへの売却が凍結、さらにトルコから輸入する鉄鋼とアルミニウムへの関税率を2倍に引き上げると発表した。トルコの通貨リラは8月以降急落し、トルコ経済はすでに景気後退局面に入っている可能性がある。

■「いいこと続き」のはずだったのに

だが、本当に勝ったと言えるのはどちらなのだろう。トランプ政権高官らはブランソン牧師の釈放はトルコ閣僚への制裁発動を含む大統領の強硬姿勢の勝利だと喜んでいた。だが祝賀気分は長くは続かなかった。トルコが絶妙のタイミングでサウジアラビア国籍でアメリカ在住のジャーナリスト、ジャマル・カショギの失踪に関する恐るべき情報を公表したからだ。

トルコ当局によれば、サウジアラビア政府に批判的だったカショギは10月2日、イスタンブールのサウジアラビア領事館で殺害されたという。トルコによる相次ぐリークは、ワシントン・ポストが11日にカショギの拷問と殺害を示す音声や映像の存在を報じたことでクライマックスを迎えた。

トランプの連戦連勝ムードはすっかり水を差された格好だ。レイプ未遂疑惑が出ていたブレット・キャバノーの最高裁判事への指名を勝ち取ってわずか数日後、トランプが友好関係を大事にしてきたサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、カショギ殺害を命じた黒幕として浮上したのだ。

トランプがそれでもサウジアラビアを守ろうとすると、米議会は共和党も含めて激怒した。

カバノーを最も強力にかばった共和党のリンゼー・グラム上院議員までが怒り出し、民主党と足並みをそろえ、人権侵害を行った外国の当局者への制裁を定めたマグニツキー法の発動をトランプに求めた。

「もし彼(カショギ)がサウジ政府の指示の下で誘拐され殺害されたのが事実だとしたら、両国関係は大きく損なわれる」とグラムはFOXニュースに述べた。

トランプにとっては最も聞きたくない言葉だったろう。トランプはその前日、記者らに対し、たった1人の記者が失踪したぐらいで1100億ドルの武器売却契約を含む「金のたまご」である両国関係を犠牲にするわけにはいかないと言ったばかりだったからだ。「これはトルコで起こったことで、カショギはアメリカ国民ではない」とトランプは述べた。「せっかく大金が入ってくるのを止めたくない」

■アメリカを巻き込む巧みな作戦

一部の外交官やアナリストからは、リーク作戦はサウジとアメリカの関係にくさびを打つためのエルドアンの企てだという見方もある。サウジとアメリカは足並みをそろえてトルコに反対した過去があり、両国の友好関係はトルコにとっては目の上のこぶのようなものだ。

「人権侵害のリークによってアメリカを巻き込み、自分たちの問題を解決しようとするトルコの様子は興味深い。トルコ一国でサウジと渡り合いたくないのだろう」と、ブッシュ(子)政権からオバマ政権にかけて国務次官を務めたニコラス・バーンズは言う。

国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのサラ・リア・ウィットソンもこう語る。「アメリカ政府内にも(サウジとの関係を損なわないため)カショギの失踪事件は未解決のままにしておきたいという人は多い。トルコのおかげで、アメリカは事件を見過ごすことができなくなった」

米トルコ関係は2016年のクーデター未遂事件以降、悪化してきた。

クーデター未遂後、反エルドアン派の聖職者でアメリカ在住のフェトフッラー・ギュレンと関係したという容疑で、トルコ国内のアメリカ領事館で働くアメリカ人やトルコ人が逮捕された。エルドアンは、ギュレンが率いるイスラム勢力「ギュレン運動」(トルコ当局からはテロ組織に指定)やクルド労働者党(PKK)をアメリカ政府が支援していると疑ってきたが、アメリカはギュレンの引き渡しを拒んできた。

トルコ当局が、ギュレンの関係者だとする容疑をでっちあげてブランソンを逮捕したのもそれに対する報復だった。ブランソンはノースカロライナ州出身のキリスト教の牧師で過去20年以上にわたってトルコに在住していた。

ブランソン釈放と引き換えにエルドアンは見返りを得たのだろうか。アメリカとの間に取引があったとすれば、それは今後明らかになってくるはずだ。「取引の条件は何かを見きわめるには、今後トルコに対する制裁措置のどれが取り消されるかを見ていればいい」と、シンクタンク「民主主義防衛財団」のマーブ・タヒログルは言う。

■互いに必要としている自覚はある

バーンズに言わせれば、実際に崖から転がり落ちることなく目的を達成したという意味で、トランプ政権もトルコも全体的に瀬戸際外交をうまくやりおおせてきた。「最後までブランソン牧師を守り抜いた点では、トランプ政権も賞賛に値すると認めざるをえない」とバーンズは言う。

同時にトランプ政権は、NATO加盟国であるトルコがロシアの地対空ミサイルシステムS-400を購入するという暴挙に出た後も対話は維持し、エルドアンがロシアのウラジーミル・プーチン大統領の手中に落ちることを防いできた。

「(トルコとアメリカの関係は)容易ではないが、両国とも、互いを必要としていることは自覚している」とバーンズは言う。

ムハンマドが本当にカショギ失踪の黒幕だったとすれば、図らずもそれはアメリカとトルコに最接近の機会を与えてしまったかもしれない。

(翻訳:村井裕美)

From Foreign Policy Magazine


 

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