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北方領土実効支配を強めるロシア、ウクライナでもクリミアに続きアゾフ海も実効支配を強める
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2018.09.24 白石和幸 ハーバー・ビジネス・オンライン
黒海北部にある内海、アゾフ海 photo by bos2007 via pixabay(CC0 Public Domain)
北方領土問題を棚上げしての平和条約締結を突然切り出して安倍晋三首相に赤っ恥をかかせたプーチン大統領だが、ロシアの周辺諸国への領土拡張の動きは止まらない。
ウクライナの自治区だったクリミアがロシアが実効支配するようになったのは2014年3月からだ。ところが、ロシアが完全支配するにはロシアとクリミアを直結させる陸路が必要であった。その為にロシアがプーチン大統領の指令で急ピッチで作業を行い、今年の5月に完成させたのが、ロシアとクリミアの間に存在するケルチ海峡を跨いだ大橋である。全長19キロにも及ぶこの大橋によって、ロシアはウクライナ領土を経由せずにクリミアに物資も直送できるようになった。
そして今、プーチン大統領が実効支配しようとしているのが、このケルチ海峡を境にして黒海の内海となっているアゾフ海なのである。アゾフ海を実効支配することによってそこに存在しているウクライナの主要な港を全て経済的に退廃させようという狙いである。
ウクライナは常設仲裁裁判所提訴も辞さず
ウクライナのポロシェンコ大統領は「クリミアを支配したように、アゾフ海も支配することがロシアの目的だ」と9月14日のワシントンポスト紙とのインタビューの中で語ったという。また、アゾフ海に面したウクライナの港への船の入港を妨げる行動をロシアが取っていることも指摘した。
ポロシェンコは、この地域におけるウクライナ軍の強化を図ると共に、ロシアの暴挙をオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)に訴える意向であることも表明した。(参照:「Hispan TV」)
ウクライナ最高議会の複数の議員の間でも、このプーチンの計画を受けて、これまで存在しているアゾフ海とケルチ海峡におけるロシアとの開発協力の合意を破棄する法案を提案したという。(参照:「Geopolitico」)
アゾフ海でウクライナ船を妨害するロシア
そもそも、両国の開発協力は2003年に合意が結ばれたものだ。ところが、ロシアがクリミアを併合してから事態は一変するのである。
ロシアは、ウクライナ船や外国船をアゾフ海で停止させて、これといった理由もなく乗組員に尋問して威嚇し、この水域での業務を断念させようとしているというのだ。それが7月末には、平均して54時間拘束するといった事態にまで発展しているという。
アゾフ海に面したウクライナのマリウポリ港の船会社マリタイム・ロジスティックのアントン・シャプラン部長によると、この妨害による損出額は3000から13000ドル(33万円から140万円)に及んでいるそうだ。マリウポリ港はロシアの妨害で最も損害を受けている港のひとつだという。ウクライナがケルチ海峡でのロシアの妨害を防止しようとしても、ウクライナには軍艦がない。ロシアがクリミアを併合した時にクリミアに停泊していたウクライナの8割の軍艦を失ったというのである。海軍力のないウクライナの前に、ロシアは思う存分勢力を拡大できるというわけである。(参照:「EL Confidencial」)
両国の間で緊張する出来事が起きたのは今年3月のことだ。クリミアの漁船がロシアの国旗を掲げて漁をしていたのを、ウクライナ海上保安局が拘束した事件であった。ウクライナから見ればクリミアはウクライナの領土である。にもかかわらず、クリミアの漁船がウクライナの国旗ではなく、ロシアの国旗で漁をしていたとして船長を含め乗組員を逮捕したのである。それに対し、ロシアは同保安局の局員が、あたかもソマリアの海賊のようにクリミアの漁船員の前で振舞ったとして、それ以後ロシアはアゾフ海での「パトロール」を強化してウクライナの船の航海を妨害するまでになっているという。(参照:「EL Confidencial」)
8月末からはロシアは軍艦を3隻も派遣したという。そして、この水域をロシア連邦保安庁が担当し、これまでアゾフ海のウクライナの港に向かっていた150隻以上の船が拘束されたそうだ。
このような状態が理由で、問題を避ける為にケルチ海峡からアゾフ海に入る為の許可の取得をする必要に迫られ、その取得に数日を要するまでになっているというのだ。一方、ロシアの船は遅れることなくそれぞれの港に向かうことができているそうだ。(参照:「EL Confidencial」)
ウクライナの海運に大きな影響
この影響で、アゾフ海にあるウクライナの2大港、マリウポリとベルジャーシクでは30%の減収になっているという。その上、クリミア大橋が海面から33メートル以上の高さを持った船は橋の下を通過できなくなっている。
米国務省はロシアの行動はウクライナを不安定にさせようという意図を持ったものだとして批判している。
今では、ロシアはアゾフ海で対抗勢力なく実質、支配するようになっているという。そしてロシアの次の狙いは黒海だという。ウクライナに向かう海上ルートを妨害する為に、ロシアはルーマニアの方に向かって黒海での勢力を伸ばそうとしている。そのように指摘しているのは、英国の軍事専門家グレン・グラント大尉である。(参照:「EL Confidencial」)
ウクライナはNATOの海軍の支援を要請すべきだという意見もある。しかし、NATO加盟国でもないウクライナの為にNATOが危険を犯してまでロシアの黒海での勢力拡大の動きを牽制する用意があるか疑問視されている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
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— tatsu (@tatsu1023) 2018年9月24日
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