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日本人技術者OBを潜水艦建造に起用? 台湾、ステルス外交で日豪印に急接近
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/ob.php
2018年9月21日(金)16時18分 ニューズウィーク
9月14日、中国が台湾を外交的により孤立させようと攻勢を強めるなか、台湾は長年に渡って築いてきた米国との関係を超え、アジア・太平洋の域内大国と安全保障面で関係を強化しようと、目立たないように、それでいながら活発に動いている。台北の中正紀念堂で2018年3月撮影(2018年 ロイター/Tyrone Siu)
中国が台湾を外交的により孤立させようと攻勢を強めるなか、台湾は長年に渡って築いてきた米国との関係を超え、アジア・太平洋の域内大国と安全保障面で関係を強化しようと、目立たないように、それでいながら活発に動いている。
中国軍の動向に関する情報をインドと共有する試みから、潜水艦の自主開発に日本の専門家を招こうという動きまで、台湾との関係はその国にとって機微な問題にも関わらず、次第に実を結びつつあると、政府や軍、外交関係者は話す。
台湾はインドや日本に加え、オーストラリアやシンガポールとの関係強化も狙っている。
中国政府の怒りに油を注ぎ、非公式に台湾を支援する国々への圧力が高まる事態を避けるため、台湾はひっそりと動いてきた。一方で蔡英文政権は、東南アジアやオーストラリアなどと通商面、文化面で結びつきを深めようと「新南向政策」を公式に掲げている。
中国はこのところ、台湾を国家として承認する数少ない国々の方針を転換させることに成功した。台湾は残る国との正式な外交関係の維持に注力しつつ、域内大国が中国の台頭に対処しようとする機会を捉え、こうした国々との戦略的な関係を深化させようとしていると、台湾当局者は話す。
「台湾とこれらの国々が、現在の安全保障の環境についてより深い理解を共有することを望んでいる」と、台湾の呉ショウ燮外交部長(外相)はロイターに語った。
中国がより強く、より威圧的になる中、呉部長は「こうした国々の多くは影響を感じており、自国の利益の一環として、台湾を避けるのではなく、より良く知っておきたいと考えている」と述べた。
■国家承認の問題
中国は、民主的な台湾を地方政府の1つと位置づけており、支配下に置くため武力行使も辞さない構えを崩さない。近年は台湾周辺での軍事活動を活発化させている。
エルサルバドルは今年8月、台湾と断交して中国と外交関係を樹立した。5月にはドミニカ共和国が、昨年はパナマが同様の決断をした。台湾と正式な外交関係があるのはわずか17カ国となり、うち6カ国は太平洋の小さな島しょ国だ。
「域内大国の中で、台湾との関係を米国並みにしようと考えている国は1つもない」と、米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレイザー氏は言う。「だが、関心が交差していることは確かだ。様々なことが積極的に模索されている」と、同氏は話す。
米政府も「1つの中国」政策を採用しており、台湾と正式な外交関係はない。同時に米国は、台湾に対する最大の武器供与国であり、国際社会の中で最大の支援国でもある。
この関係はトランプ米大統領の下で強まっている。米政権は武器の輸出拡大を検討しているほか、政府関係者同士の交流を活発化させている。ロイターが入手した米政府の推計によると、軍関係者を含めて毎週100人のペースで米当局者が台湾を訪問している。台湾側も蔡政権になって米国との交流を促進している。
■インドが進出
機密情報の共有を含め、安全保障面における台湾と日本の関係は一定の時間をかけて築かれてきたが、台湾とインドとの関係は急速に深まっていると、事情に詳しい筋は話す。
大使館に相当する台湾の駐インド代表処には、非公式に武官が置かれた。インド軍幹部は公用旅券ではなく、通常旅券で頻繁に台北を訪れている。台湾は東京やシンガポール、ワシントンの代表処にも非公式に武官を駐在させている。
事情に詳しいインド筋によると、同国は台湾が把握する中国軍の動向、とりわけインドとの国境に近い中国西部での動きに関心を寄せている。「台湾は中国を監視しており、我々は台湾を頼りにしている」と同筋は話し、「インドの軍関係者は、研修休暇と呼ばれるものを利用して定期的に台湾を訪れている」と明かす。
ロイターはインド政府に公式見解を求めたが、同政府に近い筋は安保面の関係についてはコメントを拒否し、こう話した。「台湾との関係は経済や商業のつながり、人的な交流に限定されている」。
台湾は米国の主要同盟国オーストラリアにも接近していると、アジア・太平洋諸国の複数の外交官は言う。
まだ模索段階だが、東南アジアや太平洋地域における中国の動向を監視するという共通の関心について議論をしているという。インドとの関係同様、装備協力などではなく、中国の活動や軍の展開、その意図などの情報共有に発展していく可能性が高いという。
オーストラリア政府の広報官は、コメントを避けた。
豪ロウイー研究所の地域安全保障アナリスト、ユアン・グラハム氏は、オーストラリア政府の立場について、台湾の戦略的な重要性について認識を深めているものの、慎重な姿勢を崩さないだろうと分析する。
「オーストラリアが、例えば日本のように関係を深めてくれると考えているなら、台湾は期待しすぎだろう」と、グラハム氏は言う。「台湾と直接、軍事関係を構築するのはオーストラリアにとって心地よいものではない」。
一方、情報筋によると、シンガポールは中国政府からの圧力にもかかわらず、小規模な軍事的なプレゼンスを台湾に維持する意向をたびたび台湾当局者に示唆している。
台湾とシンガポールの関係は過去数十年続いてきたもので、軍事演習への部隊派遣が柱となっている。2016年11月には、演習で使ったシンガポール軍の装甲車を台湾から輸送する際、香港税関が一時的に差し押さえる事態が発生し、中国政府が非難した。
両者の関係に詳しいシンガポールの研究者は、「台湾はシンガポールが中国の圧力に抵抗し、訓練にとどまらず、広範で深い軍幹部の交流が行われていることを歓迎している」と語る。「今の環境では話し合うことはたくさんある」。
他の研究者も、政府とつながりがある中国人研究者から、台湾との軍事関係を批判されると話す。
「みんな判で押したように、シンガポールはいつになったら(台湾との軍事協力を)止めるのかと聞いてくる。ヒントは明らかだ」と、あるベテラン研究者は言う。
ロイターはシンガポール国防省にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。
台湾の複数の研究者によると、台湾が自主建造を目指す潜水艦計画について、退職した日本人技術者が支援のために訪台している。
台湾国防部(国防省に相当)はロイターの問い合わせに対し、そうした報道は「完全な憶測だ」と発表した海軍の声明を参照するよう回答した。
日本の外務省は、日本人技術者が関与しているとの情報は把握していないとした上で、「台湾との関係は1972年の日中共同声明にあるとおりで、非政府間の実務的な関係は維持されている」としている。
台湾の外交は「半官半民」の役割が重要性を増している。特に鍵を握るのが、政権に近い台北の研究機関。外交部が一部資金を拠出し、国家安全会議(安全保障会議)と密接な両岸交流遠景基金会が、現役の研究者や退職した当局者、軍出身者、時には現職の政府関係者に幅広く接触している。
同会は台湾の国際的な交流を後押しているが、研究者らによると、現役の軍関係者が関わる場合は制服を着ずに国外へ出張するという。台湾がいかに目立たないように活動しているかを示している。
(翻訳:山口香子、編集:久保信博)
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