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プーチン大統領、本職さながら?の狙撃技術披露 プーチン突然の提案 悲観の必要なし 露国営テレビでプーチン氏専門番組が開始
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/898.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 20 日 22:29:36: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

プーチン大統領、本職さながら?の狙撃技術披露
2018年9月20日 17:58 発信地:モスクワ/ロシア [ ロシア ロシア・CIS ]

【9月20日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は19日、首都モスクワ郊外のクビンカ(Kubinka)にある軍事テーマパーク「パトリオットパーク(Patriot Park)」を訪れ、同国の武器メーカーであるカラシニコフ(Kalashnikov)の新型スナイパーライフルを試射した。

 ロシア国営ニュース専門チャンネル「ロシア24(Rossiya 24)」の報道によるとプーチン氏は試射の際、息を止めたまま心臓の鼓動の合間を縫って引き金を引くという本職さながらの技術を披露したという。

 ロシア24によると「標的は一番遠い場所に設置」され、「撃った5発のうち半分以上は命中した」という。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3190352?pid=20534526

 


NEXT MEDIA "Japan In-depth"2018年09月19日 19:43

プーチン突然の提案 悲観の必要なし



握手を交わす日露両首脳 出典:ロシア大統領府

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー2018#36」 2018年9月17-23日

【まとめ】

・プーチン氏の「年末までに前提条件なしで平和条約締結を」との提案に安倍首相が反論しなかったことが批判された。

・日露交渉の目的として最低限達成すべきは、ロシアとの対話を続けること。

・台風21号に関連した中国のfakeニュースで台湾への世論工作が展開されたとの見方。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイト https://japan-indepth.jp/?p=42048 でお読み下さい。】

先週はプーチン大統領の「突然の提案」のお蔭で日本は大騒ぎだったが、海外主要紙は殆ど報じていない。NYT電子版に至っては「Russia’s Putin Says His Japan Peace Treaty Proposal Was No Joke」というロイター電を短く編集した記事を流しただけ。このヘッドラインを読む限り、欧米の読者にはチンプンカンプンだろう。

 この「提案」なるものが東京で大ニュースとなるのは仕方ない。日本では、プーチン氏がウラジオストックの東方経済会議の質疑応答部分で、「今頭をよぎったことだが」と前置きし、「年末までに前提条件なしで平和条約を締結しよう」と述べたこと、更にはその場にいた安倍首相が反論しなかったことが大いに批判された。一体なぜなのか。

今週は英語コラムしか書く場がないためJapan Timesに書いた。日本語版はないので、ここで簡単に要約しておく。

要するに、

@プーチン氏の提案は突然の思い付きなどではなく、周到に計算された反撃だ。

A主要各紙の社説で安倍首相の「沈黙」を批判する向きもあるが、これは所詮、総裁選も含めた内政がらみの話だろう。

B最も重要なことは、ロシア・プーチン氏の考え方や立場が近年ほぼ一貫しており、「北方領土の帰属の問題を解決」して平和条約を結ぶこ とに消極的なことだ。北方4島での「共同経済活動」が主権の問題も あり簡単には動かないから、ここで一発仕掛けてきただけだ。され  ば、別に驚くべき提案でもないし、何も悲観する必要はない。

 筆者はロシア語の専門家ではないし、交渉の経緯に精通している訳でもない。されど、というか、だからこそ、素人の方が大局を掴み易いのではないか。今の日露交渉の目的として最低限達成すべきは、ロシアとの対話を続けることで「不法占有者」による所有権・使用権の「時効取得」を回避することだと筆者は割り切っている。

 その意味では対露交渉は一定の成果を挙げているし、これで4島が今すぐ返ってこないとしても、それはそれで、これからも長く続く交渉の一側面と考えれば良いのではないか。ロシアが中国との関係も睨みながら、近くない将来に地政学的、戦略的な決断を下す可能性が残っている以上、現状が悪い方向に向っているとは思わない。

 これ以外の結論が出るとしたら、それは交渉結果に対する期待値が高過ぎるのか、または内政上の理由で何らかの政治的な判断を下さざるを得ないのか、その両方か、のいずれではないだろうか。その意味で主要各紙社説の結論に異を唱えるつもりはないが、どの社説も、どこか「ピントがずれている」感じがする。

 今週もう一つ気になったのは、中国のfakeニュースによる他国での世論操作だ。ロシアによる米国内政への介入は、特別検察官の捜査もあり、米国では徐々に全貌が明らかになりつつある。だが、この種のオペレーションを国家的規模でやっているのはロシアだけではない。中国の動きは要注意、日本でも既に行われている筈だ。


写真)2017年のG20サミットで会談する米露両首脳
出典)ロシア大統領府

ある台湾の友人に教えてもらったのが次の記事だ。「【台風21号】関空孤立めぐり中国で偽ニュース 「領事館が中国人を救出」 SNS引用し世論工作か」と題された記事はfakeニュースの意図的拡散による特定国世論の誘導・操作の恐ろしさを浮き彫りにしている。具体的には次の通りだ。

 台風21号の影響で旅行客ら最大約8千人が関西国際空港に取り残された問題をめぐり、「中国の総領事館が用意したバスが関空に入り、優先的に中国人を救出した」とのfake情報が中国のインターネット上で拡散したそうだ。日本で起きた災害をきっかけに中国国内や台湾への世論工作が展開されたという。


写真)浸水した関西国際空港
出典)国土交通省近畿地方整備局

 関西空港閉鎖に伴い、中国人旅行客も約千人が取り残された。関連記事によれば、この偽情報は「海外で災害などに遭遇した台湾人の不安心理を揺さぶる中国側の巧妙な宣伝工作」(北京在住の台湾籍の男性)だという。これが、日本の世論に対して行われるようになったらと思うとぞっとするのだが、皆さんはどう思うのだろうか。

 今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

タグ:
北方領土ロシア安倍晋三ウラジーミル・プーチンフェイクニュース
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文春オンライン


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木走正水(きばしりまさみず)
http://blogos.com/article/326136/

 
露国営テレビでプーチン氏専門番組が開始 「礼賛だ」と批判も
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2018年9月18日 23時39分 産経新聞
 【モスクワ=小野田雄一】ロシア国営テレビは今月、プーチン大統領の動静だけを伝える新番組「モスクワ・クレムリン・プーチン」の放送を始めた。

 2日の初回放送に出演したペスコフ大統領報道官は「番組は大統領府ではなくテレビ局が独自に企画した」と強調したが、一部メディアは「大統領礼賛番組であり、政治キャンペーンだ」と批判している。

 ロシアの主要テレビ局はプーチン政権の厳しい統制下に置かれ、プーチン氏の動向を逐一報道。同氏の高い支持率を維持する機能を担ってきた。しかし最近は、長引く景気低迷や年金支給年齢引き上げ政策への反発などで支持率が下落しており、新番組は「てこ入れ」が狙いだとみられる。

 毎週日曜夜に1時間放映される新番組の初回放送では、地方を訪れたプーチン氏が子供らと触れ合い、森を散策する様子などが伝えられた。司会者から「大統領は番組を気に入っただろうか」と問われると、ペスコフ氏は「それは重要ではない。大切なのは正確な動静が伝わることだ」と応じた。現時点でプーチン氏の出演予定はないという。

 日刊紙「独立新聞」は、「国民は今以上にプーチンを見る」と題した記事で、「ペスコフ氏は国営メディアの従来の動静報道が間違っていたとでもいうのか」と指摘。「インターネット上では『動静は十分伝えられてきたのに、この上なぜ特別な番組が必要なのか』と議論が起きた」と伝えた。さらに「番組はプーチン氏の支持層の拡大を狙ったキャンペーンだ」とする複数の政治アナリストの分析も紹介した。

 経済紙「ベドモスチ」も「お世辞番組には2つの狙いがある。年金改革で揺らいだ支持率の回復と、プーチン人気に乗じた視聴者取り込みだ」との見方を示した。

産経新聞

外部サイト
「プーチンは去れ!」…ロシアで大規模反政府集会、800人以上拘束 国民の不満高まり反映か
ロシア・プーチン大統領が発表した「驚異の新兵器群」 額面通り受け取れない理由 
前提なし平和条約 プーチン氏「思いつきだがジョークではない」 露外務省「日本への事前通告なし」
「ウラジーミル・プーチン」をもっと詳しく
http://news.livedoor.com/article/detail/15324879/

 

2018.9.10 05:38
「プーチンは去れ!」…ロシアで大規模反政府集会、800人以上拘束 国民の不満高まり反映か

9日、ロシア・モスクワでの反政府集会で、「道理はない」と書かれたプラカードを掲げる参加者(小野田雄一撮影)
 【モスクワ=小野田雄一】ロシアの数十の都市で9日、政府による年金支給年齢引き上げ政策に反発する国民らによる集会が一斉に行われた。モスクワ中心部での集会には約数千人が参加したとみられる。ロイター通信によると、日本時間10日未明時点で、ロシア全国で少なくとも800人以上が治安当局に拘束された。プーチン政権は反体制勢力への弾圧を強めているが、強権的な政治手法や長引く経済低迷、政権長期化などへの不満が国内に募っている実態が改めて浮きぼりとなった。

 集会は露統一地方選の実施日に合わせ、反体制派の野党指導者、ナワリヌイ氏がインターネット上などで参加を呼びかけていた。しかし当局は8月25日、3月の大統領選へのボイコットを呼びかける集会を無許可で組織したとする容疑で同氏を拘束。拘束は現在も続き、同氏の広報担当者は「集会を防ぐための不当逮捕だ」と反発していた。

 参加者には20〜30代とみられる若者も多く、警察車両から「社会秩序を乱す行為には公権力行使も辞さない」との警告が続く中、「プーチンは去れ」「ロシアを自由に!」などとシュプレヒコールを上げた。年金制度改革と直接的には関係のない若者らが多く参加した背景には、政府によるネット上の情報統制などへの反発があるとみられる。

 年金改革をめぐっては、財政難に悩む政府が6月、支給開始年齢を段階的に引き上げる法案を下院に提出。国民の猛反発を招き、支持率が低下した。プーチン氏は8月29日、法案内容の一部を緩和修正することを表明したが、支持率の劇的回復には至っていない。

 ナワリヌイ氏は元弁護士で、政権幹部らをめぐる不正蓄財疑惑などを告発。2013年のモスクワ市長選でも健闘したが、刑事罰を受け、3月の大統領選への出馬は認められなかった。5月にも反政府集会を組織し、同氏や参加者ら1000人以上が一時拘束された。
http://www.sankei.com/world/news/180909/wor1809090021-n1.html
 

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コメント
1. 2018年9月21日 07:18:00 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1481] 報告
北方領土問題は今度こそ動くのか「2島返還論」のタブーを解禁するとき
2018.9.21(金) 池田 信夫

北方領土の国後島を訪問したロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(当時、2010年11月1日撮影、資料写真)。(c)AFP/RIA-NOVOSTI/KREMLIN/MIKHAIL KLIMENTYEV〔AFPBB News〕

 自民党総裁選挙で、安倍首相が3選された。3期目に積み残した課題は多いが、その1つは北方領土問題だ。9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領は、突然「前提条件なしで年末までに平和条約を結ぼう」と提案したが、安倍首相はその場では答えなかった。
 これについて総裁選挙では、石破茂氏が「領土交渉が振り出しに戻った」と批判したのに対して、安倍首相は「ロシアはいろんな変化球を投げてくるが、ただ恐れていてはだめだ」と否定的ではなかった。1956年の日ソ共同宣言から動かなかった北方領土問題は、今度は動くのだろうか。
北方領土は「日本固有の領土」か
 多くの日本人は「歯舞・色丹・国後・択捉の北方4島は日本固有の領土だ」という政府見解を信じているだろうが、問題はそれほど自明ではない。歴史的には、この4島に日本人が住んでいたことは事実だが、国境線は動いた。
 外務省ホームページによると、1855年、日魯通好条約で、択捉島とウルップ島の間の国境が確認された。1875年の樺太千島交換条約では、千島列島をロシアから譲り受ける代わりに樺太全島を放棄したが、1905年のポーツマス条約では日本が南樺太を譲り受けた。
外務省ホームページより
 1945年2月のヤルタ会談で南樺太と千島列島をソ連の領土にするという密約が結ばれたが、これには法的根拠がない。1945年7月のポツダム宣言では、日本の主権が「本州、北海道、九州及び四国並びに連合国の決定する諸島」に限定されると規定したが、この宣言にソ連は署名していない。
 日ソ中立条約に違反して1945年8月に参戦したソ連は、北方4島を武力で占領したが、その後も日本とは平和条約を結んでいない。1951年のサンフランシスコ平和条約で日本は「千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄」したが、この条約にソ連は参加していない。
 1956年の日ソ交渉では、領土問題について日ソ間で意見が一致する見通しが立たないため、戦争状態の終了と外交関係の回復を定めた日ソ共同宣言を締結した。このとき「歯舞群島及び色丹島は平和条約の締結後、日本に引き渡す」と明記されたが、国後・択捉については何も決まっていない。いつまでも日ロ関係を混乱させている北方領土問題とは、この2島の問題に過ぎないのだ。
2島返還論という「変化球」
 プーチン大統領の提案は「平和条約を結んでから領土問題を話し合おう」というものだが、2島を「平和条約の締結後、日本に引き渡す」という約束を実行するなら検討に値する。彼は「いま思いついた」と言ったが、このように重要な問題について思いつきで発言するとは考えにくい。おそらく日ロの事務レベルでは合意できなかったので、彼の独断で提案したのだろう。
 その真意は分からないが、最近のロシア経済の苦境から推定すると、平和条約を結んで経済を回復しようということかもしれない。ロシアはずっと「クリル諸島(千島列島)はすべてロシアの領土だ」と主張しており、クリル諸島には北方4島がすべて含まれているので、歯舞・色丹を返還するだけでも彼らにとっては譲歩だ。
 だが日本政府の定義では、4島は千島列島に含まれないので、2島だけ返還すると「固有の領土」である国後・択捉を放棄することになる。2島返還論は外務省がずっと否定してきたもので、自民党も反対してきた。ところが今回、自民党でも右派と見られていた安倍首相が、これに前向きともとれる態度を取ったのは意外だ。
 日本政府が4島返還の原則を変えない限り平和条約は締結できないが、国後・択捉を返還されても日本人が移住することは困難で、経済的メリットはほとんどない。割り切って考えると、安全保障と2島の領有権のどっちが重要かというバランスの問題だろう。
「4島か2島か」より大事な問題
 2島返還論は、この62年間タブーだった。「それは戦後のドサクサにまぎれてソ連が不法占拠した主権侵害を事後承認するものだ」という主張は、筋論としては正しいが、それが日本政府の一貫した方針だったわけではない。
 サンフランシスコ条約で「千島列島」の領有権を放棄したとき、国会で吉田茂首相は南千島(国後・択捉)は千島列島に含まれると答弁した。日本も一時は、2島返還で平和条約を結ぼうとしたという説もある。
 2016年の日ロ首脳会談のときプーチン大統領は、1956年の日ソ交渉のとき、アメリカのダレス国務長官が重光外相に「もし日本がアメリカの利益を損なうようなこと(2島返還)をすれば、沖縄は完全にアメリカの一部となる」と述べたと記者会見で語った。つまりアメリカは2島返還で平和条約を結ばないよう、日本に圧力をかけたというのだ。
 これが「ダレスの恫喝」といわれる話で、プーチン大統領がそれを引き合いに出したのは、「日本も本当は2島返還を考えていた」と言いたいのだろうが、そういうアメリカ政府の方針は外交文書で確認できない。そういう経緯があったとしても、2島返還を正当化する根拠にはならない。
 それより大事な問題は、もし歯舞・色丹が返還されたら、そこに自衛隊や米軍の基地を設置するのかということだ。これはロシアにとっては脅威になるが、日本にとっては2島返還でも基地を置くことができれば重要な意味がある。領土問題は国家主権の問題であるとともに、日米同盟の問題である。
 原則論としては、4島返還が正しい。ここで日本が妥協すると、今後ロシアとの外交交渉でなめられるという懸念もあるだろう。だが日本とロシアのような大国間で平和条約が締結されていない状況は異常であり、安全保障の上で問題がある。
 平和条約では領土を確定するので、そこに2島返還を書けばいい。かつて日ソ中立条約を破って参戦したロシア人だから約束を守らないかもしれないという不信感もあるが、そういうことを言い出したら外交交渉はできない。このへんは外交テクニックの問題だろう。むしろ障害は、これまで固く2島返還を拒否してきた外務省にある。
 北方領土は、プーチン大統領と信頼関係を築いた長期政権の安倍首相にしか解決できない厄介な問題だ。そろそろタブーは解禁し、2島返還論を議論してもいいのではないか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54174

 


潜水艦の南シナ海派遣、安倍首相は知っていたか
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
防衛戦略は難しい局面に

2018年9月21日(金)
田原 総一朗


潜水艦の南シナ海への派遣は、安倍首相に事前に知らされていたのか(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
 9月13日、防衛省が海上自衛隊の潜水艦を南シナ海へ向けて極秘で派遣。東南アジア周辺を長期で航海中の護衛艦部隊と合流させ、訓練を実施したという。海上自衛隊の訓練は、通常は日本の周辺海域で行われる。南シナ海での訓練は初である。

 一体、何のためにこんなことをしたのか。

 今、中国が南シナ海で軍事拠点化を進めていることに対し、日本は危機感を抱いているといわれている。確かに例えば、中国の南シナ海進出によって、日本の船舶の往来が阻害されているなら確かに問題である。しかし、そんなことは起きていない。日本の船舶は、南シナ海を自由に移動している。

 僕は先日、防衛省の元防衛大臣ら2人に「こんな訓練をやる必要はあるのか」と問い質した。すると、2人とも「その必要はない」と答えた。日本は、対中国戦略をどこまで進めるのか。

 さらにいくつか気になる報道があった。9月18日、エジプト東部のシナイ半島で、イスラエル軍とエジプト軍の活動を監視している多国籍監視軍(MFO)に、陸上自衛隊2人の派遣が検討されていると報じられた。

 また、日本政府が導入を決めた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」が、北朝鮮が2017年8月に予告した米領グアム島周辺への弾道ミサイル発射の迎撃に使われる可能性があるという話もある。

 僕は元防衛相らに、「自衛隊は、どこまで防衛戦略を推し進めるのか。特に対中戦略は、どうなっているのか」と聞いた。すると彼らは、「日本政府は、対中戦略をほとんど持っていない」と答えたのである。

 最大の問題点は、ここからだ。

 冒頭に挙げた海上自衛隊が潜水艦を南シナ海へ極秘派遣した訓練について、報道には「防衛省の指示」とある。しかし、元防衛相らの話によると「防衛省はこんなことを許可していない。当然のことながら、安倍首相も知らないだろう」と言うのである。

 つまり、この訓練は、海上自衛隊が独自の判断で実施したということである。さらに言えば、日本では海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、3者の連携も弱いという。これでは戦前の状況に重なるのではないか。

 それほど重要なことを、なぜ歴代の防衛大臣は総理大臣に問題提起しないのか。元防衛相に尋ねると、「あまりにも大変な問題で、触れるのがこわいから」と答えた。

難しい問題、困った問題は、なかったことにする
 日本人は、大変なことは「なかったことにする」傾向がある。その典型例が、原発問題だ。かつては原発は「絶対に事故は起こらない」といわれていた。事故を想定しなかったから、東京電力はしっかりした避難訓練すら実施しなかった。

 なぜ、やらなかったかといえば、そうした避難訓練をするということは、事故の可能性があると同義になってしまうからだ。そんなことがあれば、地元の原発反対の声が高まりかねない。こうして東電は、事故が起きる可能性を否定したのである。

 しかし、実際はどうだろうか。2011年3月、東日本大震災の影響で福島第一原発の事故が発生した。いまだに、事故の収束は見込めない状況だ。

 このように、日本は同じようなパターンを繰り返している。困ること、大変なことは、「ない」ことにするのである。

 太平洋戦争時にも、同様のことは言える。米国と戦争をして、勝てると思った日本人は誰もいなかった。しかし、なぜ日本は米国との開戦に踏み切ったのか。

 軍隊というものは、勝てないと分かっていても、戦えるなら戦うものなのだ。

 これに対して、竹下登氏が首相になった時、僕は「日本には自衛隊というものがあるけれど、戦えない軍隊じゃないか。それでいいのか」と尋ねたことがある。すると、竹下氏は、「だからいいんだ。だから日本は平和なんだ」と答えた。

自立論はあまりリアリティがない
 今、日本の防衛戦略は、非常に難しい局面に差しかかっている。

 日米安保条約が結ばれたのは、冷戦時代のことだ。当時、日米はソ連と敵対していたが、日本だけでは軍事的にソ連に対抗することはできない。そこで、日本が他国から攻められたら、米国は日本を守るという約束をした。ただし、米国が他国から攻められたら、日本は何もしない。

 なぜ、このような内容が成立したかといえば、米国は日本ではなく、「極東」を守るという思惑があったからだ。日本は、完全なる対米追従の構図となる。

 そして冷戦が終わると、風向きが変わる。「日本は対米従属から自立すべきではないか」という声が上がり始めたのだ。一方で、「冷戦が終わったから、米国は日本を守る必要がなくなったのではないか。このままでは日本は米国に見捨てられる可能性がある。対米関係を強化しなければならない」という主張も出始めた。

 自立論と日米関係強化論の対立が起こり始めたのである。ただし、自立論はあまりリアリティがない。

 では、日米関係を強化するのであれば、どこまでやるべきか。

 オバマ大統領の時代は、安保関連法の成立により、米国からの要求は収まった。ところが、トランプ大統領は「米国第一主義」を掲げ、日本に防衛費の引き上げや米国からの高額な武器の輸入などを要求されている。そのトランプ大統領からの要求に、日本はどこまで応えるのか。

大変な問題で、このまま放置できる話ではない
 一方で自衛隊におけるシビリアンコントロールには大きな問題がある。潜水艦の南シナ海への派遣だけでなく、2003年12月から09年2月までのイラク派遣、2012年1月から17年5月までの南スーダンの派遣も同様だ。

 これは大変な問題である。このまま放置できる話ではない。自民党幹部らも問題視しているが、解決策を見出せないようだ。

 大きな問題ほど、皆、ふたをする。日本の防衛戦略をどのようにしていくのか。自衛隊におけるシビリアンコントロールが全く利いていない状況をどうしていくのか。もっと議論すべきではないかと思う。

『AIで私の仕事はなくなりますか?』(講談社+α新書) 田原 総一朗著

 84歳になったジャーナリスト・田原総一朗が、人工知能=AIに挑む。

 AIは社会をどう変えるのか/AIは日本人の雇用を奪い、「勝ち組」と「負け組」の格差を拡大させる悪魔の技術なのか/世界の企業はグーグルの下請けになるのか/日本の産業を「小作人」化の悪夢からどう救うか/銀行のビジネスモデルは崩壊寸前?/中国の「情報独占」の恐怖……などの疑問を、世界最先端の研究者たちに真正面から問う。

 グーグル=グレッグ・コラード、プリファード・ネットワークス=西川徹、トヨタ・リサーチ・インスティチュート=ジェームス・カフナー、東京大学=松尾豊、ドワンゴ人工知能研究所=山川宏、経済産業省=柳瀬唯夫ら世界を代表する面々が総登場する、驚異の一冊!


このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。

 

日本人の「慰安婦像キック」で大弱りの台湾・民進党
統一地方選を前に「政権叩き」の材料に
2018.9.21(金) 安田 峰俊

台湾・台北で行われた、日本政府に台湾人慰安婦への謝罪を求める抗議集会(2018年8月14日撮影)。(c)AFP / SAM YEH〔AFPBB News〕
 日本では「親日的」とみなされがちな国・台湾にまで設置された慰安婦像。もちろん日本としては看過できない問題だが、無分別な抗議活動は逆効果をもたらす。右翼系活動家の日本人が、あろうことか慰安婦像にキック。この一蹴りが台湾で大問題に発展し、与野党間の政争の材料にまでなる事態に陥っている。1人の日本人の蛮行は、一体なにを引き起こしたのか。ルポライターの安田峰俊氏が報告する。(JBpress)
与野党両党を巻き込む大きな国際問題に
 今年(2018年)9月6日、日本の右派系市民団体「慰安婦の真実国民運動」の藤井実彦(ふじい・みつひこ)幹事(当時)が、台湾(中華民国)台南市内の中国国民党施設敷地内に設置されていた慰安婦像を蹴りつけるようなポーズを取った。
 この日、藤井氏はもともと、像を設置した台南市議の謝龍介議員(国民党)に対して抗議に出向き、要求書を手渡して像の即時撤去を求めていた。「像蹴り」はその後に発生し、謝議員が自身のフェイスブック上で監視カメラの映像を公開したことで広く知られることになってしまった。
藤井氏が慰安婦像を蹴りつける様子を報じる現地TV局『台湾電視』の報道
 その後、日本台湾交流協会台北事務所(事実上の日本大使館の代替機関)に対する抗議デモが起き、事務所にペンキが投げつけられる事件も発生した。台湾メディアの報道量はかなり多く、事態は民進党・国民党の与野党両党を巻き込む大きな国際問題となっている。
 藤井氏のバックグランド(新宗教団体・幸福の科学の信者とされている)や、その宗教的・政治的な動機については、宗教ジャーナリストの藤倉善郎氏が詳しい記事を発表している(参考:「台湾『慰安婦像キック問題』の背後に『右派カルト』。大手メディアは沈黙」、ハーバー・ビジネス・オンライン)。
 本記事では主に、台湾側の反応や、事件が現地社会にもたらした影響について詳しく紹介していくことにしよう。
「邪教」の信者と報じられる
 今回の像蹴り事件は、対日歴史問題への関心が強い藍色陣営(国民党系、中台融和派)のメディアのみならず、『自由時報』『蘋果日報』をはじめとした緑色陣営(民進党系、台湾自立派)の媒体でも盛んに報じられた。台湾の日本報道の特徴は、日本語ができる人材がメディアの内部にいるケースが多いことから、日本のネット記事や問題当事者のSNSの投稿などが豊富に引用されることだ。
 今回の件でも台湾の大手ケーブルTV局傘下のニュースサイト『ETtoday新聞雲』が、藤井氏が自身のFacebook上で「足が痺れていたのでストレッチをおこなっただけ」と釈明したことを報道。さらに、藤井氏が自身のページに抗議コメントをつけた台湾人に、慰安婦像は「disgusting(胸糞が悪い)」で、慰安婦問題は韓国人による「blackmail(恐喝行為)」であると英語で回答したこと、その後に投稿の大部分を非公開にして「逃亡」したことまで、詳しく報じている。
 また、藍色陣営系の中天電視のWEB版『中天快点TV』はさらに踏み込み、9月11日付けで「国際的に札付き! 藤井実彦はかつて慰安婦漫画展を阻止しようとしていた」と題した記事を掲載。右派系の市民運動「論破プロジェクト」を主催する藤井氏が、2013年にフランスのアングレーム国際漫画展に慰安婦問題を否定する内容の漫画を出品して韓国側出品の慰安婦漫画への「反撃」を図ろうとしたものの、主催者側に困惑されて出展を断られたことまで伝えている。
 同記事には藤井氏のバックグラウンドについての言及もある。以下に大意を紹介しよう。
“アニメや漫画を重視する日本の若い世代は、藤井実彦氏の(上記の慰安婦漫画の件について)騒ぎを起こす行為をまっとうなものであるとは見ておらず、彼が無理にトラブルを起こしていると見なしている。今回、藤井氏が台南の慰安婦像を蹴るポーズを見せた事件を含めて、ツイッター上では批判一色となっており、ついでに彼の「幸福実現党」の身分まで掘り出されることになった”

“もともと「幸福実現党」とは、1984年に成立した現代宗教の「幸福の科学」をルーツとしており、教義の内容は特に厭世的だったり終末論的だったりはしないが、守護霊とコミュニケーションしてつながることができると言っており、多くの日本人からはオウム真理教の後を継ぐカルト宗教組織であると見られている。多くの人は敬してこれを遠ざけ、彼らと関わり合いになりたいと思っていない”

 ほか、香港の伝統的な中国語紙『大公報』のWEB版も、9月12日付けで「藤井実彦を徹底解明、カルト宗教メンバーと見られていた」と題する記事を発表。やはり幸福実現党や幸福の科学について言及し、「日本右翼分子藤井実彦」が所属する「邪教(=カルト宗教)」であると断じている。
統一地方選を前にした政権叩きの材料に
 台湾において、慰安婦問題は与野党を問わず国民的な問題だが、対日歴史問題の追及に熱心な野党・中国国民党など藍色陣営のほうが、高い関心を持っているのも確かである。藍色陣営は、これまでも「親日」「媚日」をキーワードに蔡英文政権を攻撃することが多かった(もっとも、国民党の馬英九前総統も、実は経済や民間交流の面では相当に「親日」的だったのだが)。
 そのため、今回の慰安婦像蹴り事件は、今年11月の統一地方選での巻き返しを狙う藍色陣営に政権攻撃の材料を与え、また地方選候補者たちが知名度アップを図るための格好のアピール材料になっている。
 例えば、像蹴り事件の直前に藤井氏から抗議文を手渡された国民党所属の台南市議・謝龍介議員は、日台交流協会への抗議デモの主催や、事実上の台湾駐日大使である謝長廷氏に向けて安倍総理への公式な抗議声明の発表を求めるなど、問題の「当事者」であることを世間一般に知ってもらおうと、非常に華々しい動きを見せている。
 ほか、馬英九政権時代の総統府スポークスマンで、次回の台北市議選に国民党から立候補予定の羅智強氏は、自身のFacebook上で「蔡英文と謝長廷のいずれが、像蹴り事件の元凶か?」と題したアンケートを実施。いずれにしても民進党叩きが目的のアンケートなのだが、6600人近い回答を得る(投稿自体にも2900人以上の「いいね」などの反応が付いた)など、この問題をうまく利用して支持者固めや政権与党叩きに結びつけることに成功している。
羅智強氏がFacebook上に投稿したアンケート。完全に政権叩きの道具になっている
拡大画像表示
 また、過去に靖国参拝反対運動をおこなうなど、対日強硬派で知られる藍色陣営寄りの立法委員(国会議員に相当)の高金素梅氏も、今回の一件を受けて怪気炎を上げている。
 高金氏は、かつて沖縄戦で犠牲になった台湾人日本軍兵士を追悼する石碑に蔡英文が揮毫した行為を、日本の侵略行為を肯定する振る舞いだとして批判。その文脈のなかで、像蹴り事件についても「たまたま起きたものではない」と述べ、「(日本に媚びる)民進党は台湾を裏切った失政集団だ!」と、激烈な政権批判に結びつけている。
 藍色陣営系の媒体のほか、「反・蔡英文」を打ち出すネット上の政治グループはこぞってこの問題を批判的に取り上げており、彼らのFacebookのポストには数百件近い怒りの書き込みが殺到する例も珍しくない。道義的に考えて明らかにひどい問題(緑色陣営の支持者でも不快感を抱かざるを得ない問題)が起きたことで、像蹴り事件は藍色陣営の支持者の団結を固める効果をもたらしているようだ。
グダグダのコメントを出す民進党候補
 対して困っているのが与党・民進党の側である。像蹴り事件が起きた台南市はもともと、民進党の固い地盤のひとつで、日本への好感度も高い地域だ。民進党は対日歴史問題については国民党ほど厳しい姿勢を取っていないが、いっぽうで台湾という土地への愛着を訴え、かつリベラルな価値観を前面に打ち出している党である。
 台湾人の女性が過去に意に沿わぬ苦しみを被った点や、フェミニズム的な観点からは、民進党としても慰安婦問題にそれなりの誠実さを示さないと支持者に申し訳が立たない。いっぽう、国民党のような対日歴史問題批判は票につながらないし、このジャンルで国民党と勝負しても民進党の強みは打ち出せない。
9月13日、市内の飲食店への訪問後にメディア取材に囲まれる、民進党の次期台南市長候補の黃偉哲氏(左)。エプロン姿で深刻な話をする。『中天電子報』より
 民進党の現立法委員で、次期台南市長選に立候補予定の黃偉哲氏は、緑色陣営系メディアの『自由時報』の9月11日付け記事のなかで以下のように話している。実に歯切れの悪いコメントだが、大意を訳すことにしよう。
“慰安婦事件は簡単に言えば、戦時中に日本軍部が台湾・韓国などの国家の女性を軍中の慰安婦の仕事に就かせたもので、どのようにして(女性らが慰安婦に)なったにせよ、ともかく相当多くの女性は非自発的(な就業)だったのであり、これはおそらく日本政府に対して厳しく非難をおこなうべきものだ。ただ、このことと現在の日本政府には関係がないわけだが、しかしながら日本政府の態度は非常に重要なのであり、(日本政府が)歴史に向き合うことを望むかどうか、これが実に重要だ”

“しかしながら、いかなる政党もこのこと(=像蹴り事件)で政治的な操作をおこなったり、選挙のなかでの利益を得ようとすることは好ましくない”

 2016年の女性総統誕生ブームの熱気も沈静化した昨今。蔡英文や民進党の支持率が頭打ちになり、今年11月の統一地方選をどう切り抜けるかで頭を悩ませている大変なときに、日本から来た市民活動家が「いらんこと」をやりやがって・・・、と内心で苦々しく思っているのであろう。
*  *  *
 日本国内で保守的な論調をとる日本会議系や幸福の科学系の政治活動家やそのシンパには、中国への反発感情ゆえか「台湾好き」(≒「親日」とみなされがちな民進党・緑色陣営好き)を公言する人が少なくない。だが、そうした人たちの行動が逆に、民進党陣営を思い切り追い詰める結果を生んでいるのが、今回の像蹴り事件というわけだ。
 与野党の別を問わず、台湾のみなさんに大変ご迷惑をおかけしている今回の一件。日本国内での報道量は決して多くないのだが、決して同様の事態が再発することがないように祈るばかりである。

 

平和と日本を愛するマハティール首相、国連で吠える 欧米の唯我独尊を厳しく追及、戦争のない世界を訴える
2018.9.21(金) 末永 恵
来日中のマハティール首相、TPPは「再交渉必要」
東京都内で開催された国際会議「アジアの未来」で演説するマレーシアのマハティール・モハマド首相(2018年6月11日撮影)。(c)AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI 〔AFPBB News〕

 「コフィ・アナン氏の訃報に、心から哀悼の意を表する」

 マレーシアのマハティール首相(以下、マハティール氏)は8月に80歳で死去したコフィ・アナン元国連事務総長の死を受け早々に、こう弔辞を表明した。

 日本のメディアは「アナン氏は平和を愛し、紛争解決に尽力。中でも事務総長として最も高く評価されたのが、米国のイラク攻撃に対し、非難声明を発表したこと」と、その“偉業”を称えた。

 イラク戦争は、2003年3月に開戦。米国が国連安保理の同意を経ずに、戦争に単独で踏み切った。アナン氏が事務総長に就任してから6年目のことだ。

 国連への最大分担金を支出する最大支援国の大国・米国に対し、「法を破った行為であるとともに、憲章への違反行為」と非難した国連事務総長は、後にも先にもアナン氏以外、いなかったからだ、ということらしい。

 そうした一般的な評価とは一線を画して、当時のアナン氏を厳しく非難したのが小国・マレーシアのマハティール氏(当時、4代目首相)だった。

 アナン氏を名指しで、国連を無視し、イラクへの開戦に踏み切った米国を止められなかったアナン氏に「辞表を突きつけ、抗議するべきだ」と直言したのはマハティール氏のみだった。

 アナン氏は回顧録の中で、「事務総長時代の最悪の経験は、イラク戦争を阻止できなかったことだ」と国際社会での評価とは裏腹に、後悔の念を深く滲ませた。

 マハティール氏の一喝は、心に深く、暗く重石となって横たわっていたに違いない。

 マハティール氏は2003年10月末に22年間のマレーシア最長となる首相職を自ら退いたが、その1か月前の国連総会での最後の演説でも、大国・米国や国連を厳しく非難した。

 「(イラク進攻は)欧州帝国主義の再来だ。経済的締め付けと金融の無力化で、新興独立国が屈服させられ、再植民地化されることはあった」

 「だが今は、外国の軍隊が、諸外国を『占領』するという事態が現実となって起きている」

 このようにジョージ・W・ブッシュ政権(当時)の一国覇権主義の対外・経済政策などを痛烈に批判した。

 さらに国連についても、「国連は、足元から崩壊している。貧困や弱者を救済できなくなっている。そういう国や人々は、無視され、脇に追いやられている。国連が創立された時の原点に戻り、信頼を取り戻す必要がある」と力説し、新興国や発展途上国の指導者から喝采を浴びた。

 あれから15年。世界最高齢(93歳)の首相として再び政界に返り咲いたマハティール氏は、今月28日に再び、ニューヨークで開催の国連総会の演壇に立つ。

 5月に政権交代を果たして以後、初の欧米への外遊となる。米国(ニューヨーク)訪問後、30日には旧宗主国・英国(ロンドン)入りする。テレサ・メイ首相とは、国連総会時に首脳会談を行う予定だ。  

 マハティール氏は国連では、新生マレーシアの外交方針を発表する(マレーシア政府筋)。

 9月11日の米国同時多発テロの追悼覚めやらぬニューヨークで、平和的解決による世界的繁栄を訴える中、国連改革の推進を訴える。

 「拒否権を誇示する国連安保理常任理事国などの大国主義の再考」

 「途上国のアフリカ諸国との連携」

 「経済貿易の保護主義を否定。トランプ政権のアメリカ・ファーストやアジア軽視を牽制」

 さらには、「中国などの新植民地主義に警笛」を鳴らし、経済で台頭するアジア的価値観の重要性についても言及するとみられる。

 実は、マハティール氏はこうした国際的な表舞台だけではなく、22年間の首相時代とともに、2003年10月の引退後も、積極的に「裏舞台」でも世界情勢への提言や苦言を世界の指導者に発信続けてきた。

マハティール首相と世界の指導者との書簡を集大成した「ドクターMより:世界のリーダーへの書簡」
 中でも世界のリーダーに向けた私信(書簡)が、影響力を強く発揮してきたといえる。

 その書簡で最も多いのが超大国の米国との指導者たちとのやりとりだ。

 『ドクターMより:世界のリーダーへの書簡』(2012年、2015年発刊。写真添付)にまとめられた書籍の中では、米国を含めた世界のリーダーとの何千通にもなる書簡から厳選されたものが紹介されている。

 象徴的な書簡のやり取りは、コフィ・アナン元事務総長が人生最大の後悔と悔やんだイラク戦争や米国のアフガン軍事介入などで、平和的解決で紛争や戦争を回避するべきと主張するマハティール氏の訴えと願いが込められたものだ。

 前任の首相時代から(1981〜2003年)核の再処理や廃棄物問題など、原子力の人類への脅威を理由に、「反原発」を長年一貫して主張し、米国による日本の原爆投下を厳しく非難。

 ハスマ夫人と何度も長崎や広島の平和記念式典に出席している同氏が、人生を通して、訴えてきたのが、恒久的な世界平和だ。

 英国の統治下で多感な少年期を過ごし、悲惨な戦争体験を身にしみて味わってきたからこそ、主権国家として平和を統治することの重要性を痛感しているからともいえる。

 実際、英国領土であった植民地下のマレーシアでは、英国人を「マスター」(雇い主、主人)に相当する「トゥアン」(マレー語)と呼ばなければならなかった。

 マレー人は常に英国人に見下されたが、「私は決して『マスター』とは呼ばなかった。自分の国では自分がマスターであるべきだからだ」と述懐する。

 とりわけ、世界の覇権を一手に掌握する米国が介入する戦争への苦言に容赦はない。

 「米国の大統領が第三世界の指導者の苦言に耳を傾けるとは思えないが・・・」と前置きしたうえでイラクへの軍事介入を示唆するジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)に書簡を送った。

 「サダム・フセインの大量化学兵器密造の国連による立証がなされなかったにもかかわらず、戦争に突入する意味は全くなく、何の解決にもならない」

 「最も重要なのは、互いの憎しみと怒りを取り払うことで、それが最大の解決策だ。軍事介入は何の解決をももたらさないどころか、新たな憎しみを助長する」

 これに対して、ブッシュ氏は「軍事介入しなければ、米国民の安全、ひいては国際社会が危険にさらされる」とマハティール氏に往簡したという。

 また、9月11日の米国同時多発テロ直後の2001年10月には、アルカイダの指導者、オサマ・ビン・ラディン容疑者の大捜索戦に銘打ったアフガンへの軍事介入に対しても、「軍事介入は悲劇をもたらすだけ」とブッシュ氏に書簡を送っている。

 マハティール氏は、ビル・クリントン大統領(当時)にもボスニア紛争で同様の書簡を送っている。

 また、バラク・オバマ大統領就任直前にも、アフガン戦争に対して「私はあなたの有権者ではないが、あなたの言動行動は、私や私の国に多大な影響を及ぼす」として、戦争を避けるよう忠告している。

 「米国人は今や世界で最も嫌われている、欧州人からもだ。世界から称賛される国は、植民地支配から撤退する国と指導者だ」

 こうした書簡の効果があったのか、のちに米国は国内からも批判が上がった泥沼の戦いに終止符を打つことになった。

 ここで、マハティール氏が小国であっても大国に物申す彼独自の世界観を描いた演説の一端を紹介したい。

 「日本なかりせば」

 マハティール氏が1992年10月、香港で開催された「欧州・東アジア経済フォーラム」での演説だ。

 「日本の存在しない世界を想像してみたらいい。もし、『日本なかりせば』、欧州と米国が世界の工業国を支配していたい違いない」

 「欧米が基準と価格を決め、欧米だけにしか製造できない製品を買うため、世界中の国はその価格を押しつけられていただろう」

 「貧しい南側諸国が輸出する原材料価格は、買い手が北側のヨーロッパ諸国だけなので最低水準に固定。その結果、市場での南側諸国の立場は弱まる」

「多国籍企業が安い労働力を求め南側の国々に投資したのは、日本と競争せざるを得なかったからだ。日本との競争がなければ、南側・開発途上国への投資や経済発展はなかった」

 「日本と日本の成功体験がなければ、東アジア諸国は模範にすべきものがなかっただろう。欧州が開発・完成させた産業分野では、自分たちは太刀打ちできないと信じ続けていただろう」

 「もし、『日本なかりせば』、世界は全く違う様相を呈していたに違いない。富める北側は淀みなく富み、貧しい南側は淀みなく貧しくなっていただろう」

 「北側の欧州が、世界を永遠に支配し、マレーシアのような国は、ゴムを育て、スズを掘り、それを富める工業国の顧客の言い値で売り続けていたに違いない」

 冒頭のこの演説から、白人(white manとマハティール氏は記述)の政府関係者が憤慨して、プンプン顔を赤らげ、退席していったという。

 マハティール氏はアジア通貨危機でも、IMF(国際通貨基金)からの支援申し出を断り、通貨取引を規制した。

 欧米諸国やメディアは「自由市場を冒涜する無知な指導者」と批判。しかし、のちに、世銀やIMFはマハティール氏の固定相場制導入を評価した。

 その後に起こったロシア経済危機では、米国の投機家が損失を出すと、米国政府が巨額資金で救済する事態となった。

 これを見て、西側諸国は通貨取引安定化のため監督強化を図った。マハティール氏に“追随”したわけだ。

 民主選挙で選ばれながら、欧米諸国やメディアからは「独裁者」と叩かれ続けた。しかし、独自の政策でマレーシアを東南アジアの「ハリマオ(マレー語で『虎』)」に育てたマハティール氏を「鉄の女」サッチャー元英国首相は「アジアの歴史を代表する宰相」にの筆頭に挙げた。

 首相に返り咲いたマハティール氏は中国に続き、今回の西側への外遊で再び、大国に「耳の痛い訓示」を浴びせるだろう。

 「マハティールなかりせば」

 国際社会でのアジアのプレゼンスは、今よりはるかに弱いものになっていたのではないだろうか。

(取材・文 末永 恵)

 
ザンビアに忍び寄る新たな債務危機 危機の背後に中国の影、他のアフリカ諸国への警鐘
2018.9.21(金) The Economist

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(英エコノミスト誌 2018年9月15日号)

熱帯農業科学技術協力了解覚書に署名した中国熱帯農業科学院とザンビア開発庁(撮影日不明)。(c)新華社/劉ケ〔AFPBB News〕
政治の腐敗と低利のローンは危険な組み合わせだ。
 ザンビアの首都ルサカでは、自動車が普段にも増してゆっくり走っている。あちこちに隠されたスピード違反取り締まりカメラにドライバーが怯えているためだ。
 ザンビア政府は資金難に陥っており、そのためスピード違反者が高額な罰金をふっかけられている。
 政府はこれ以外にも、井戸やインターネット電話、さらには天気予報にまで課税すると発表している。
 「一般庶民にしわ寄せが来ている」
 タクシー運転手のジョン・フィリさんはこうこぼす。「どれもこれも、政府がカネを借りすぎたせいだよ」
 街角の不安は市場にも反映されている。
 ブルームバーグ・バークレイズ新興国国債インデックスという指数を見ると、組み入れられている75カ国の国債のうち、2018年に入ってからザンビアほど値下がりしている銘柄は存在しない(図参照)。


2. 2018年9月21日 19:38:43 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1531] 報告
[1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日ロ関係/米中ロ関係〜プーチン大統領といち早く平和条約を締結することが、安倍首相の唯一最大の貢献

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日ロ関係 一切の前提条件設けず日ロ平和条約締結を提案
米中ロ関係 プーチン氏、打算の中国接近

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▼北方4島について、日本政府はずっと国民を騙している
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ロシアのプーチン大統領は12日、安倍首相に対して、
一切の前提条件を設けずに2018年末までに
日ロ平和条約を締結するよう提案しました。
これは安倍首相が平和条約や領土問題の解決について
「アプローチを変えなければならない」と述べたのに対し、
プーチン大統領が賛同したもので、
まず平和条約を締結した上で
友人同士として意見の隔たりがある問題について
解決していこうというものです。

このプーチン大統領の提案について、日本のマスコミは
「なぜ安倍首相は反論しないのか?」と指摘していますが、
安倍首相としては「真実」を理解しているだけに
歯がゆい思いをしていることでしょう。
河野外相は日本とロシアの北方領土に関する真実について、
どこまで理解しているのかわかりませんが、
安倍首相はプーチン大統領との20回を超える
ミーティングなどを通して理解しているはずです。

日本の方針は
「北方4島の返還を前提にして平和条約を締結すること」
であり、これは以前からずっと変わらないもの。
菅官房長官などもこの趣旨の発言をしていますが、
そもそもこの認識が間違いであり、
日本政府がずっと隠してきている「嘘」なのです。

ロシア側の認識は
「北方4島は第二次大戦の結果、ソ連に与えられたもの」であり、
日本は敗戦国としてその条件を受け入れたわけだから、
固有の領土かどうかは関係がない、というもの。
ラブロフ外相もプーチン大統領も、
このような見解を示しています。
そして、このロシア側の主張が「真実」です。

終戦時にソ連と米国の間で交わされた
電報のやり取りが残っています。
ソ連のスターリンが北海道の北半分を
求めたのに対して、米国側は反発。
代わりに北方4島などをソ連が領有することを認めました。

この詳細は拙著「ロシア・ショック」の中でも紹介していますが、
長谷川毅氏の「暗闘」という本に書かれています。
米国の図書館などにある精密な情報を研究した本で、
先ほどの電報などをもとに当時の真実を
見事に浮かび上がらせています。

すなわち、北海道の分割を嫌い、
北方4島をソ連に渡したのは米国なのです。
今でもロシア(ソ連)を悪者のように糾弾する人もいますが、
犯人は米国ですからロシアを非難すること自体がお門違いです。

さらに言えば、日本が「北方4島の返還を前提」
に固執するようになったのも、米国に原因があります。
1956年鳩山内閣の頃、重光外相がダレス国務長官と会合した際、
日本はソ連に対して「2島の返還を前提」
に友好条約を締結したいと告げました。
しかし、ダレス国務長官がこれを受け入れず、
「(ソ連に対して)4島の返還」を求めない限り、
沖縄を返還しないと条件を突きつけました。

つまり、米国は沖縄の返還を条件にしつつ、
日本とソ連を仲違いさせようとしたのでしょう。
この1956年以降、日本では「北方4島の返還」が前提になり、
それなくしてロシア(ソ連)との平和条約の締結はない、
という考え方が一般的になりました。
1956年までの戦後10年間においては「4島の返還」
を絶対条件とする論調ではありませんでしたが、
この時を境にして一気に変わりました。


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▼プーチン大統領といち早く平和条約を締結することが、安倍首相の唯一最大の貢献
─────────────────────────
今回のプーチン大統領の提案に対して、
マスコミも識者も随分と叩いているようですが、
1956年以降日本の外務省を中心に
政府がずっと国民に嘘をついてきた結果、
真実を理解せずに批判している人がほとんどでしょう。
プーチン大統領の提案は理にかなっています。
日本政府の「嘘」を前提にするのではなく、
とにかくまず平和条約を締結することから
始めようということです。

プーチン大統領の提案通り、まず平和条約を締結すれば、
おそらく「2島の返還」はすぐに実現すると思います。
残りの2島については、折り合いがつくときに返還してもらう、
というくらいで考えればいいでしょう。
相手がプーチン大統領であれば、
このように事を運ぶことはできるでしょうが、
別の人間になったら「1島」も返還されない可能性も大いにあります。

今、安倍首相は「とぼけた」態度を貫いています。
真実を理解しながらも、周りにはそれを知らず
理解していない人も多いでしょうし、
長い間日本を支配してきた自民党が国民に嘘をついていた
という事実をどう説明するか、
など悩ましい状況にあるのだと思います。

安倍首相に期待したいのは、
ロシアに対して経済協力などを続けながら、
とにかくいち早くロシアとの平和条約を締結して欲しい、
ということです。今回の自民党総裁選に勝利した場合、
それが実現できれば、安倍首相にとって唯一にして
最大の貢献になると私は思います。

北方4島の全てが返還されなくても、
それによってどれほどマスコミから叩かれても、
安倍首相とプーチン大統領の間で、
平和条約の締結を実現すべきです。
菅官房長官などは知ったかぶりをして、
4島返還について日本政府の方針に変わりはない
などと発言していますが、全く気にする必要はありません。
プーチン大統領の次を誰が担うのかわかりませんが、
仮にメドベージェフ氏が大統領になれば、
2島返還ですら絶対に容認しないでしょう。
プーチン大統領が在任中にまず平和条約を締結することは、
極めて重要だと私は思います。

というのも、中国がロシアに接近しつつあるので、
ロシアにとって日本の必要性が低下し、
このままだと日本にとってさらに厳しい状況になるからです。
今回の東方経済フォーラムを見ていても、
プーチン大統領と中国は明らかに接近したと私は感じました。

中国は巨大な人口を抱える東北三省の経済状況がよろしくありません。
その対策として、極東ロシアへの投資に向けて動いています。
中国とロシアの国境を流れる黒竜江(アムール川)をまたいで、
現在両国を結ぶ橋を建設しています。
中国側とロシア側でそれぞれ資金を出し合っていて、
橋の建設には中国の技術が活用されています。

中国とロシア間の動きが活発化し、
中国から極東ロシアへの投資が拡大すると、
その貢献度はかなり大きなものになります。
今回、安倍首相とプーチン大統領で見学に行った
と言われているマツダのエンジン工場のレベルではないでしょう。
また中国とロシアは、同じく米国にいじめられている立場として、
ボストーク2018で巨大な軍事演習を予定しています。

日本も目を覚まさないと、全て中国に持っていかれてしまいます。
少なくともプーチン大統領は内心では親日派なので、
今のうちに早く動くべきです。最後にもう1度述べておきます。
安倍首相には、自民党総裁選に勝利したら、
どんな批判を受けても悪役になろうとも、
何が何でもロシアとの平和条約の締結を
実現させて欲しい、と思います。


---
※この記事は9月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

シリアに関するロシアの身勝手な提案

2018/09/21

岡崎研究所

 シリア内戦は、アサド政権側が、かつて「イスラム国」が支配していた領域の大部分を取り返し、反政府勢力が支配していた南西部のダマスカスに近い部分も制圧した。今やアサド政権の支配下にないのは、北西部のイドリブを中心とする地域と、北東部のクルド支配地域だけと言ってよい状況になっている。さらに、イドリブ県に対してもロシアが激しい空爆を加えている。ロシアとイランの支援の下、戦争犯罪人ともいうべきアサドが、内戦にほぼ勝利したと言える。


(luplupme/Cartarium/iStock)
 この状況を踏まえ、ロシアは、欧州にとっての頭痛の種であったシリア難民の帰還、それと同時にEU、米国などがシリア再建に資金を出し、アサドとの関係も正常化するように、という提案を行っている。このロシア提案は、アサドに難民帰還を受け入れさせること、シリア再建資金は米・EUが出すこと、自らが支援したアサド政権に政権としての正当性を付与することを求めているが、相当身勝手な提案である。

 提案の実効性についても疑問がある。フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのガードナーは、次の3つの問題点を指摘する。

 第1:アサド政権が安定性をもたらすと前提するのは賢明ではない。アサド政権は自国民、スンニ派多数派に全面戦争を仕掛け、50万人が死亡し、人口の半分は避難民になった。その上、アサド政権の政策は過激派を作り出す。シリアは2003年のイラク戦争の時にイラクにジハード主義者を送り込んだし、シリアでの反乱の初期に刑務所から何百人のジハード主義者を釈放し、反乱の主導権を彼らがとるようにするなど、過激派を使った。

 シリアのイランとの同盟は40年も続いている。ヒズボラは1982年ダマスカスのイラン大使館で生まれた。

 第2:アサドはシリアの難民が帰還することについてロシアなどと同じ考えをしていない。彼はスンニ派が支配的な人口構造の復活を阻止したいとしているように見える。

 第3:もっとも憂慮されるのは、アサドの軍がロシア空軍と共に北西シリアの最後の反対派拠点、イドリブを奪取する軍事作戦に乗り出そうとしていることである。イドリブにはアルカイダ系の何万ものジハード主義者がおり、300万の住民の半分は反体制派地域から逃れてきた難民である。この二つのグループは作戦が始まれば、トルコの国境に押し寄せることになり、通貨危機や、米国と対決しているトルコに安全保障・難民問題を提起する。

出典:David Gardner,‘Russia launches a diplomatic offensive on rebuilding Syria’(Financial Times, August 22, 2018)
https://www.ft.com/content/e89d42f0-a539-11e8-8ecf-a7ae1beff35b

 アサドが大量のスンニ派住民の帰還を認めないのではないかという、ガードナーの指摘は、その通りであろう。また、米国では、リンゼイ・グラハム上院議員(共和党・サウスカロライナ州選出)が、シリアの破壊はイラン、ロシアの介入の結果ひどくなったのであり、その再建資金を米国に要求するのは筋違いである、ロシアはシリア再建に関心はなく、アサドがシリア全土を制圧することを望んでいる、と批判している。

 オバマ政権時代、化学兵器使用について米国がシリアを攻撃しようとした際に、ロシアが米国に対し「我々がシリアに化学兵器を廃棄させる」と言って、米国を止めたことがあった。シリアについての米欧の思惑とロシアの思惑は基本的に違うのであり、ロシアと協力してシリア情勢を何とかしようとの発想は、うまくいかない。今回のロシア提案についても注意深く対応すべきであろう。

 トランプの本音は、何とか早くシリアから撤退したいということであり、そう公言している。軍などの助言を受けて、やむを得ずシリアにとどまっているのであろうが、迫力を欠くことおびただしい。トランプは米国が毎年シリアに出していた2億3000万ドルの安定化基金拠出を「ばかげている」として、やめてしまった。米のシリア情勢への影響力は縮小している。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13936

  
 

オトナの教養 週末の一冊

中露関係は「離婚なき便宜的結婚」

『ロシアと中国 反米の戦略』廣瀬陽子教授インタビュー
2018/09/21

本多カツヒロ (ライター)

 中国の一帯一路にロシアのユーラシア連合構想。その実現はさておき、両国には壮大な構想がある。共産圏や巨大な国土、独善的なリーダーという共通点を持ち、近隣の国である両国は現在いかなる関係を築いているのか。『ロシアと中国 反米の戦略』(ちくま新書)を上梓した慶應義塾大学の廣瀬陽子・総合政策学部教授に、中露関係や関係する旧ソ連の中央アジア諸国などについて話を聞いた。


中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/AP/アフロ)
――今回のテーマは中国とロシアの関係についてです。両国ともに、絶大なリーダーシップを発揮する指導者がいるわけですが、互いにどのように相手国をみているのでしょうか?

廣瀬:プーチン大統領自身が、中国が好きかと問われれば決してそうではないと思います。ただ、国として戦略的に協力しなければならないという認識でしょう。

 中国側にしても、ロシアとの関係は不可欠というほどではないと考えられます。ただ、一帯一路の成否が国際社会の評価を左右する現状において、その一地域である中央アジアで成功するためにも、ロシアとの関係は戦略的にも良好に保ちたいところでしょう。

――中露関係は、互いに戦略的な意味合いが強いと。

廣瀬:中露関係は「離婚なき便宜的結婚」などと言われます。利害では、反米、かつアメリカの一極支配ではなく、多極的な世界の維持を望んでいる点で一致している一方、お互いに不信感を抱いている。周囲の人たちが「そんなに信頼していないなら別れればいいじゃない」とアドバイスしても、別れない夫婦のようなものです。

――もともと同じ共産圏ですが、現在のような状況はいつ頃からなのでしょうか?

廣瀬:ソ連時代に遡ると、最初は良好だった中露関係が、約50年間の反目の時代をへて、2004年頃から再び関係を改善化、そして緊密化していったと言えます。ソ連は中国の建国を支持し、軍事技術も惜しみなく供給していました。しかし、1956年のソ連共産党大会で、フルシチョフ共産党第一書記のスターリン批判を契機に、両国間にイデオロギー対立が起きます。この対立は長らく続き、1968年の中ソ国境紛争で関係悪化がピークに達しました。ソ連解体後も微妙な関係でしたが、当時のエリツィン大統領と江沢民主席が、戦略的パートナーシップを掲げた共同宣言に調印すると、1996年に後の上海協力機構の前身にあたる上海ファイブを結成します。

 2000年にプーチン大統領が就任すると、国境問題などのトラブルになる事案はなるべく早めに解決するスタンスを鮮明にします。そこでかねてからの懸念だった中露の国境問題を、2004年に等分割することで解決します。

 08年にロシア・ジョージア(グルジア)戦争が起き、ロシアは国際社会で孤立します。特に、アメリカはロシアに激しく反発したため、ロシアはアメリカへの対抗意識をより鮮明にしますが、ロシア1国ではとてもではないが敵わない。そこで、徐々に関係が良好になりつつあった中国との仲をより深めようとします。

 ただ、2000年代半ばに経済面でピークを迎え、国力にも勢いがあった当時のロシアは、中国と協力姿勢を取りつつも、強気な態度でした。そうした態度が明らかに変わったのが、14年のウクライナ危機です。それまではロシアから中国への天然ガス輸出問題でも価格面で相いれず、交渉が決裂していたのが、ウクライナ危機が起きると、欧米からの経済制裁と石油価格の暴落などにより、ロシアは経済的に苦境に立たされました。中国側の譲歩もあったと言われていますが、ロシアも譲歩し、天然ガスの価格問題が妥結しました。その天然ガスの輸送のために、「シベリアの力」という新しいパイプライン計画が発表され、現在建設が進んでいます。

――ロシアも中国もアメリカにとって代わり、世界の覇権を握りたいとは考えていないのでしょうか?


『ロシアと中国 反米の戦略』(廣瀬陽子、筑摩書房)
廣瀬:おそらく両国ともに、一国では不可能だと考えているでしょう。しかしながら、国としてのプライドは保ちたいし、何より米国の単独優位は許せない。そうなると、多極化しか道はない。多極化とは、いくつかの国が勢力を互いに保ちつつ、国際的な均衡を保つ状況です。ロシアは、アメリカ、ヨーロッパ、中国、ロシアの4つの勢力で多極化できればと考えているでしょう。

 プーチンのブレーンであり、多大な影響を受けているアレクサンドル・ドゥーギン(元モスクワ大学教授、ユーラシア党党首)という地政学者がいます。彼は、ヨーロッパをフィンランド化、つまり中立化させることが重要だと考えています。日本に関しては、ドイツ同様にロシアの味方につけたい考えです。

――それはなぜでしょうか?

廣瀬:日本をロシアの味方につけ、日米同盟が崩れれば、アメリカのアジアにおける覇権は大きく崩れますから。そのためには、日本に北方領土を返還するべきだとさえ彼は言っています。

――先程もお話が出ましたが、中国は一帯一路を進めています。一方のロシアも「ユーラシア連合」構想を持っています。現在、どんな状態なのでしょうか?

廣瀬:ユーラシアは、ヨーロッパとアジアを合わせた地域で、現在のロシア外交のキーワードになっています。「ユーラシア連合」構想については、プーチンが3期目の大統領就任以前から構想を掲げていました。

 ソ連解体後に生まれた独立国家共同体(CIS)をはじめとし、政治、軍事、経済的な地域の協力組織を基盤としたのが「ユーラシア連合」構想です。簡単に言えば、バルト三国を除いた旧ソ連諸国をベースとしたEUのようなものです。このロシア版EUが、本来のEUとアジアをつなぐ結節点になればいいなという構想です。

 そこで、前段階としてEUと同様に、「経済連合」から始めようとしていますが、現在正式加盟している国は、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスのみで、ロシアの経済状況が悪いこともあり、上手くいっていません。

――地域的に見ても、中国の一帯一路とかぶるようと思うのですが。

廣瀬:はい、両構想は、地域的には中央アジアなどとかぶります。

 他方、内容で考えますと、「似て非なる構想」だと指摘されていまして、実際、2つの大きな違いがあります。

 まず、ロシアのユーラシア連合構想は、国家間の条約・契約を前提としているのに対し、一帯一路は国家との関係に基づくのではなく、地域を緩やかに捉えています。交渉なども、行うとすれば、地域や企業との交渉となります。たとえば鉄道網を計画する場合、その国よりも鉄道会社と交渉するというような形になり、国家間交渉にまではいかないというようなことです。このように一帯一路の計画はかなり曖昧なのですが、その曖昧さが、一帯一路が支持されている一因ともいわれています。

 もう一点は、中露両国が分業を確立してきたということです。ロシアが軍事と政治を担当し、中国が経済を担当するといった具合です。ただ、最近の中国の勢いは凄まじく、経済のみならず、政治や軍事面でも進出し始め、分業体制は崩れています。その状況は、ロシアの許容範囲を超えていると思われますが、国力の落ちてきているロシアは黙認せざるを得ない状況にあるといえそうです。

――ユーラシア連合構想は、かなり先行き不透明ですね。

廣瀬:ロシアにとって、他にも厄介な点があります。ひとつは、中央アジアの国々は、これまでロシアに強く依存し、石油や天然ガスもロシアにしか輸出できない状況でしたが、経済力をつけ、多くのエネルギーを必要とする中国がこの地域に進出してきて、中央アジア諸国の対中資源輸出が増えてきているということです。これにより、中央アジアの対露姿勢も以前より強気になっているように見えます。

 また、これらの国々の動向で目立つのが、欧米への接近です。なかでも目立つのがウズベキスタン。権威主義だった同国の大統領、イスラム・カリモフが16年9月に亡くなり、新大統領に就任したシャヴカト・ミルズィヤエフは、権威主義から外交の多角化へ舵を切り、アメリカとの関係を深めています。ウズベキスタンは、05年に起きた国民を虐殺したアンディジャン事件以降、アメリカとの関係が悪化していました。それが改善に傾き始めた。それに慌てたのが、カザフスタン。今年3月に、アメリカのアフガニスタン作戦のために、米軍がカスピ海にある2つの港を使用することを認めたのです。これに対し、ロシアは相当激怒しています。

 このことは、20年以上続いた、カスピ海の領海問題、つまりカスピ海を海と考えるか、湖と考えるかという論争に一応の終止符を打つ大きなきっかけになったと思っています。海だと定義された場合は国際法(「海洋法に関する国際連合条約」)が適用され、つまり「領海」の原則が適用され、天然資源については、自国の「領海」でしか開発できなくなるのですが、自国「領海」に資源を有するアゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタン、ロシア(自国「領海」に資源が見つかってから)が海であると主張してきました。他方、湖だと定義された場合は、国際的な慣習により、カスピ海は沿岸国の共同管理になり、資源なども共有財産として均等に分配されることになります。このような論争が20年以上続いていたわけですが、今年の8月12日のカスピ海サミットでようやく「玉虫色」ながら一応の合意が生まれたのです。

 長くなるので詳細は避けますが、カスピ海を海でもなく、湖でもないという「特別な法的地位」を有する大陸内水域とし、沿岸から15海里は領海/同25海里は漁業専管水域とし、海底パイプラインは関係国の合意によって敷設可能としたことが主要なポイントとなります。ロシアは自国を迂回する海底パイプラインが敷設されることには反対でしたが、今回の同意で、その可能性を認めてしまったことになりました。

 とはいえ、海底パイプラインの敷設には事前の環境アセスメントとその結果に対する沿岸5カ国の合意が必要となるのですが、その際に、ロシアが海底パイプラインの敷設を妨害する可能性があることは危惧されています。他方、外国軍のカスピ海渡航禁止ということが合意され、5カ国の結束を対外的にアピールしたことはロシアの決定的な外交的勝利だといえます。それほど、ロシアは米国に勢力圏を脅かされることを警戒しているともいえるでしょう。また、このことは、ユーラシアに影響力を拡大している中国に対しての牽制の意味も持っているはずです。

――旧ソ連の中央アジア諸国は、これまでロシアばかりを見ていたけど、他にも貿易相手はたくさんいることに気がついたと。

廣瀬:開眼させたのが中国です。他にもトルクメニスタンは、ロシアと価格交渉で決裂し、ロシアに天然ガスの輸出ができなくなりましたが、対中輸出は伸びていまして、中国の存在感がますます大きくなっています。

 エネルギーの買い取り価格に関しても、ロシアは中央アジア諸国から安く買い叩き、そこに相当なマージンを乗せ、ヨーロッパへ輸出していました。しかし、ロシアへの制裁の影響で、以前ほどヨーロッパでは売れなくなったようです。

――そうなると、中露が再び対立しそうですが。

廣瀬:対立に火種は色々とあると思います。ただし、経済力が落ちているロシアは中国に対して強気に出られないというのが実情です。

――中央アジアには、旧ソ連諸国があります。なかでも中露関係を考えるうえで重要なのは、どこの国なのでしょうか?

廣瀬:もっとも重要なのはカザフスタンですね。国土が広く、中露両国に国境を接している。しかも、中国側の国境にはウイグル自治区があり、中国とカザフスタンが共同でウイグル対策をしていたことの意味は大きいです。

 他方、ロシアにとって真の盟友と言える国が、先のユーラシア経済連合にも最初から加盟していることからもわかるように、カザフスタンとベラルーシです。地理的にも中露に挟まれ、政治的にもカザフスタンはバランサーとして重要な役割を果たしてきました。

――カザフスタンもエネルギー資源は豊富なのでしょうか?

廣瀬:石油も天然ガスも豊富で、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、中国を結ぶパイプラインが完成し、カザフスタンも中国にエネルギー資源を輸出しています。

――他にも中露関係で、重要な国はありますか?

廣瀬:ウクライナですね。ウクライナとジョージアはもともと親欧米で、NATOやEUへの加盟を目指していました。それが実現すると困るのがロシア。ウクライナのNATO加盟を阻止するためにユーラシア連合構想が生まれたとすら言われるほどです。だからこそ、ウクライナ危機が起きたのです。

 中国は、ウクライナと軍事的なつながりが非常に強い。中国はウクライナから多くの軍事装備品や技術を得てきましたが、ウクライナ由来の軍事装備品の代表格が空母「ワリャーグ」で、中国で改良され2012年に「遼寧」として生まれ変わりました。そもそも、ウクライナ危機で混乱しているウクライナ東部は、旧ソ連時代から軍需産業の集積地です。ウクライナ危機が起きてから、国内の経済が悪化し、軍事工場も稼働できなくなりました。そのために、ウクライナの軍事工場や技術者たちははなりふり構わず、中国などに技術や軍事装備品を売るようになったのです。

――さらに、北朝鮮の核弾頭ミサイル開発にもウクライナの軍事技術が関わっているとの指摘もありますね。

廣瀬:ウクライナ危機後、北朝鮮のミサイル技術が急速に発展しました。相当数のウクライナ人エンジニアが北朝鮮へ渡ったとも一部では言われています。

――ロシアから中国が武器を輸入することはないのでしょうか?

廣瀬:ロシアが中国へ輸出したほぼすべての戦闘機がコピーされ、他国に売却された過去があり、ロシアは相当な不信感を抱いていました。しかし、ウクライナが軍事機密を中国に売ってしまうこともあり、2〜3年前からロシアも中国へ武器を売るようになりました。

――中露は親密なのかどうか本当によくわかりませんね。ところで、中露関係が、国際社会に今後どんな影響を与えていくと考えられますか?

廣瀬:ここまでのように中露の動向だけを見ていると、さまざまな影響がありそうですが、世界規模で見ると大した影響はないと思います。その一番の要因は、やはりロシアの国力の低下、プーチン人気の陰りなどが挙げられます。

――嘘か真かはわかりませんが、プーチン大統領の支持率は常に高い数字ですよね。

廣瀬:プーチン大統領が就任した当初はバラマキ政策や、14年のクリミア編入により支持率は80%以上を維持していました。経済制裁やルーブルの下落で経済状況が悪化した際にも、プーチンはアメリカが経済制裁を行い、石油価格を操作しているために経済が悪化していると説明し、支持率が落ちなかった。ところが、ロシアワールドカップ期間中に年金受給年齢を徐々に引き上げるという法案を発表したことで、国民の反発を買い、公式の支持率が67%、民間のシンクタンクの調査では37%まで落ちました。ロシアの平均寿命は66歳であるにもかかわらず、年金受給年齢を2028年までに男性が60歳から65歳、2034年までに女性が55歳から63へ引き上げると発表したからなのですが、その後、猛烈な反発が生じたため、8月末に女性の受給年齢は、8歳ではなく5歳引き上げ、つまり60歳とするというのは緩和案を発表しましたが、それでも国民の怒りは収まっていません。

――中露と近い朝鮮半島への影響もあまり大きくはありませんか?

廣瀬:韓国への影響はありますね。今年6月にアメリカのトランプ大統領が、金正恩委員長とシンガポールで会談しました。今後、米韓合意を破棄するとトランプなら言いかねません。もしそうなった場合、韓国は中国に飲み込まれる可能性がある。そこで、韓国はロシアへ接近しています。事実、ロシアワールドカップ期間中、ムン・ジェイン大統領は、自国チームの応援という名目でロシアへ飛び、ロシアから北朝鮮、韓国を結ぶ鉄道とパイプライン計画に合意したのを始め、プーチンと話し込み、さまざまな事案で合意に達したと言われています。ロシアとしても、韓国とのディールが結実すれば、朝鮮半島全体にエネルギー、輸送インフラによって影響力を行使できるため、対中、対米戦略の上でも極めて重要な意味を持ちます。

――廣瀬先生は昨年フィンランドに1年間滞在されていたとのことですが、ヨーロッパから見た中露関係とは、日本から見るそれと違うのでしょうか?

廣瀬:フィンランド滞在によって、中露関係に関してより俯瞰的に見ることができたと思います。たとえば、中国に関してヨーロッパの人たちがどのように見ているか。一帯一路のなかで、陸と海のシルクロードの他に、近年では北極圏のシルクロードも入ってきました。3年前に北極圏で現地調査をした時点では、中国の進出に対し好意的でした。しかし、昨年聞いてみると、かなりの割合の人が批判的な意見になっていた。

――ロシアに関してはどうでしょうか?

廣瀬:まず、ロシアはご存知のような広大な国土の国で、モスクワやサンクトペテルブルクなどの主要都市は東欧にありますが、その他の約70%はアジア地域です。

 ヨーロッパの国々のロシアへ対する反応は温度差がある。たとえば、顕著にロシア嫌いな国としては、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国とポーランドが挙げられますが、逆に親ロシアなのが、イタリア、ハンガリー、ギリシャ、キプロスなどです。時期や時のトップによって態度を変えてきたのが、ドイツやイギリス、フランスなどだと言えるでしょう。例えば、イギリスの場合、金融界にロシアの新興財閥が深く関わっているため、以前はロシアに対してかなり配慮しているように見えました。

――他にも、サッカープレミアリーグの名門チェルシーのオーナーは、ロシア人石油王のアブラモビッチですしね。

廣瀬:今年3月に、イギリスで起きた元ロシアの二重スパイの暗殺未遂事件で神経剤ノビチョクが使われたと言われています。事件発覚後、イギリス政府は自国の外交官を引き上げたり、ロシアの外交官を追放したりしたほか、諸外国にも対露制裁を呼びかけるなどかなり厳しい態度に出まして、現在は米国と並ぶ世界で最もロシアに対して厳しい態度をとっている国になっています。しかし、その影響で、アブラモビッチにもビザが下りず、彼の資金によるサッカースタジアム改修計画が頓挫したとも聞いています。

 一方で、イギリスはプーチンと敵対し、ロシアから亡命してきた新興財閥のオーナーたちを匿ってきました。たとえば、故・ボリス・ベレゾフスキーや、ミハイル・ホドルコフスキーなどです。特に、ホドルコフスキーは現在、資金を提供し、ロシアの悪事をジャーナリストに暴かせたりしています。先日、中央アフリカでロシア人ジャーナリスト3人が殺害されましたが、そもそも中央アフリカに行ったのは、ホドルコフスキーが依頼した仕事のためで、仕事中に殺害されたのでした。

――最後に、どんな人に本書を薦めたいですか?

廣瀬:一帯一路やユーラシア連合構想は、日本とも直接関わる問題です。また、近年、北極圏の資源などをめぐり争奪戦が起きています。なかでもロシアが目立ちますが、北極圏以外の国では中国の動きも目立っています。実は、日本も北極圏の問題に積極的に関わっているのですが、そのことはあまり広く知られていない気がします。しかし、中国の一帯一路のようなユーラシアを広く見据えた戦略に対抗していくためには、より広い地域を戦略的に捉えてゆくことが不可欠です。もっと広く地域を見る感覚は、日本人の参考になると思うので、本書がその一助になれば嬉しいですね。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13997

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