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米政府に関税をかけられた米企業が戻りたくないほど米国は荒廃している
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201809110001/
2018.09.11 櫻井ジャーナル
アメリカのドナルド・トランプ大統領はアップルに対し、アメリカで生産するように呼びかけた。同大統領は重い関税をかけ始めているが、それが向けられている先には国外で生産するアメリカ系企業も含まれる。そうしたアメリカ系企業の象徴的な存在が中国で生産しているアップルだ。
2011年2月、アメリカ大統領だったバラク・オバマはサンフランシスコのエレクトロニクス産業、いわゆるシリコン・バレーの幹部たちと食事をともにし、その際、アップルのスティーブン・ジョブスに対し、同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけた。同社はiPhoneだけでなく、iPadやほかの製品の大半を国外で作っている。
それに対するジョブスの返事は、アメリカへ戻ることはないというものだった。アジアでは生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実、そして労働者の技術水準が高いという理由からだという。賃金水準の低さは問題の一部にすぎない。
アップル側の推計によると、iPhoneを生産するためには約20万人の組立工と、そうした人びとを監督する約8700人のエンジニアが必要で、それだけの陣容をアメリカで集めるためには9カ月が必要。それが中国なら15日ですむ。
アメリカでは最高レベルの教育は維持されているものの、生産現場で必要な中間レベルの技術を持つ人を育成してこなかった。これが致命的になっているという指摘がある。同じ現象は日本でも引き起こされていて、かなり前から日本でも技術系学生のレベルが落ちているという声を聞く。そこで、企業は中国やインドの学生に目をつけていた。
そうした状況に陥った最大の理由は教育システムの破壊だ。思考力のある人びとは支配システムの不正に気づき、批判の声を上げる。私利私欲で動く支配層にとって目障りな存在だ。そこで1970年代から日本では「考えない庶民」を作る政策が継続されている。考えるのは一握りのエリートだけで良く、残りは支配層へ盲従すれば良いということだ。そうした政策のキーワードが「愛国心」である。
教育課程審議会の会長を務めた作家、三浦朱門は自分たちが考え出した「ゆとり教育」について次のように語っている:「平均学力が下がらないようでは、これからの日本はどうにもならんということです。できん者はできんままで結構。戦後50年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。百人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです。」(斎藤貴男著『機会不平等』文藝春秋、2004年)
日本の生産活動は中小企業で働く優秀な職人に支えられていた。その職人の技術は徳川時代までに培われたもの。その技術力が急速に低下したのは1980年代からだろう。1970年代に庶民の購買力が減少、物が売れなくなり、企業は「財テク」に走った。金融マジックの世界へ入り込み、生産を軽視するようになったのだ。
日本経済の強みは中小企業で働く技術水準の高い職人にあることを理解していたアメリカ支配層は「ケイレツ」を問題にして下請けシステムを潰しにかかる。そしてアメリカ支配層が仕掛けた円高は日本のシステムに大きなダメージを与えた。そして金融スキャンダル。前から知られていた不正が突如、問題化した。日本の支配層が腐敗している状況を利用しての攻撃だったと言えるだろう。
アメリカの貿易赤字を生み出している最大の要因は1970年代以来、歴代アメリカ政府が製造業を国外へ移転させる政策を推進してきたからにほかならない。日本や中国が原因ではない。
1970年代の半ば、アメリカの議会は「多国籍企業」の問題を取り上げていた。その象徴的な存在がフランク・チャーチ上院議員だが、1980年の選挙で落選、84年1月に脾臓腫瘍で入院、4月に59歳で死亡した。
1970年代、アメリカの議員は国境を越えた活動を展開する巨大資本の危険性を理解していたが、そうした議員の動きは潰されてしまい、国境を越えた資本の移動が自由になり、金融取引の規制はなくされて無法化していく。それを西側では「法の支配」と呼んでいる。
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