2018年9月7日 / 14:34 / 30分前更新 焦点:中国の半導体企業、高待遇を武器に台湾の人材引き抜き Yimou Lee 4 分で読む[台北 4日 ロイター] - 大幅な給与アップと年8回の帰省費用、そして手厚い家賃補助付きマンション──。台湾のエンジニアにとって、これらは夢のようなオファーであり、とうてい抗うことはできない。 ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)(2303.TW)など、台湾トップ半導体メーカーで築いた豊富な経験を持つエンジニアは昨年、中国政府の支援を受けた半導体メーカーから勧誘され、現在は中国東部のウェハー工場で小人数のチームを率いている。 好況に沸き、急成長する中国の半導体産業で働く、台湾出身の上級プロフェッショナルは増加しつつあり、このエンジニアもその1人だ。 中国にとって、台湾からこうした人材を引き抜く重要性は高まっている。同国は現在、国内半導体産業を加速度的に成長させ、スマートフォンから軍事衛星に至るあらゆる製品に欠かせない重要なチップの海外依存度を下げようと努力しているからだ。 2014年に始まった中国の取り組みは、今年に入りさらに強化されている、と採用担当者や業界関係者は指摘する。米中通商摩擦がエスカレートする中で、外国製半導体への過剰な依存が懸念されている。 中国は2017年、2600億ドル(約29兆円)相当の半導体を輸入しており、これは同国の原油輸入額を上回っている。中国半導体産業協会(CSIA)によれば、国内需要に占める国産半導体のシェアは同年で、20%未満にとどまった。 台湾から中国の半導体メーカーに転職した上級エンジニアは今年に入り300人を超えた。中国政府が2014年に半導体産業育成のために220億ドル規模のファンドを創設して以来、トータルで1000人近くが中国本土に渡っている、と台北の転職支援企業H&Lマネジメント・コンサルタンツは推計する。 熟練エンジニアを巡る争奪戦を受け、台湾では、経済の重要なけん引役を、政敵の中国に奪われてしまうのではないかとの懸念が高まっている。とはいえ、中国は、ローエンドの半導体製造においては前進がみられるものの、半導体の設計・製造という面では、台湾より何年も遅れているとアナリストは分析している。 今年、米国が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)(0763.HK) (000063.SZ)に対する半導体の販売を禁じたことで、中国の半導体産業育成計画は加速したと、事情に詳しい中国高官は4月、ロイターに語った。 米国政府が160億ドル相当の中国製品に関税を課したことで、中国製半導体は打撃を受けた。同製品への税率は現在25%だ。 これにより中国製半導体の競争力は、台湾製や韓国製に比べ低下しており、中国の半導体産業育成に向けた野心に水を差す可能性がある。中国政府が目指しているのは、2025年までに、国内半導体需要の少なくとも4割を国産半導体で満たすことだ。 中国の人材不足を裏付けるかのように、2つの国営機関は8月、国内集積回路セクターで働く専門スタッフは2017年末時点で約40万人にすぎず、2020年までに必要とされる推定72万人を大幅に下回っている、と発表した。 人材不足に対処するため、中国は韓国や日本のエンジニア獲得を狙っているものの、採用担当者によれば、最大の成功を収めているのは、共通の言語や文化を有する台湾だという。 数十億ドル規模の半導体産業育成ファンドからの潤沢な資金支援を受けた、中芯国際集成電路製造(SMIC)(0981.HK)などの中国半導体メーカーが提示する高額の給与と充実した諸手当、そして社内での高い地位が、台湾のエンジニアを魅了している。H&Lでマネジャーを務めるリン・ユーシャン氏はそう指摘する。 「彼らが言うには、台湾で10年かけて得る収入を、中国では3年で稼げる。その分、早く引退することができる」とリン氏。 台湾で半導体集積回路を設計するノバテック・マイクロエレクトロニクス(3034.TW)のスティーブ・ワン副会長兼社長は、過去2年間で従業員の数パーセントが退社し中国に渡ったと語り、中国のライバル企業が提示する条件に対抗することは難しいと認めた。 冒頭で紹介した中国のウェハー工場で働く台湾出身エンジニアの場合、5年以上勤務することを条件に、3ベッドルームの新築マンションを相場より4割安い賃料で提供され、さらに当時の給与の5割増しの金額を提示されたという。具体的な数字は明かさなかった。 「中国はいくらでもカネを出そうとしているが、台湾企業の場合はリソースが限られている」とこのエンジニアは言う。 <対抗戦略> 中国北東部に新設された半導体メーカー芯恩(青島)集成電路の上級幹部は、最近採用した120人のエンジニアのうち、約3分の1が台湾出身だと明かした。 「資金面での不足はない。足りないのは人材だ」と同幹部は匿名で語った。 同幹部によれば、中国を代表する半導体メーカーSMICの創業者リチャード・チャン氏が率いる芯恩では、新規採用者に対して、港湾都市青島での割安な不動産物件や、2カ国語学校向けの魅力的な学費補助などの待遇を提示しているという。 「台湾出身のエンジニアは最も経験が豊富であり、国内での人材育成を助けてくれる」と同幹部は語る。「台湾からエンジニアを引き抜く動きは、拡大し続けるだろう」 こうしたエンジニア流出によって最大の打撃を被っている中には、台湾の著名な半導体設計企業や半導体受託生産(ファウンドリー)も含まれており、人材確保のための支出増を強いられている。 台湾で時価総額上位10社の財務諸表に基づいてロイターが試算したところ、代表的な半導体設計・製造企業において、過去2年間の収益が21%伸びているのに対して、給与や諸手当を含む人件費は35%も膨らんでいる。 <営業秘密は守られるのか> 中国による引き抜きに、台湾はますます警戒感を募らせている。 台湾では長年、米アップル(AAPL.O)の主要サプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)などの半導体メーカーに対して、最先端技術を中国の製造拠点に移転することを禁じてきた。そうした技術が中国のライバル企業に渡ることを防ぐためだ。 また台湾では、中国半導体産業の急速な発展によって、過去に太陽光発電パネルや液晶ディスプレイといった分野で発生したような、過剰供給による価格急落といった悪循環が再現されるリスクを懸念する声も多い。 中国の集積回路設計企業が計上した2017年の収益は310億ドルに達しており、すでに台湾ライバル企業の220億ドルを凌駕している、とバーンスタインのアナリスト、マーク・リー氏は説明する。 激しい人材争奪戦によって、このギャップがさらに広がるのではないかと懸念が広がっている。 United Microelectronics Corp 15.55 2303.TWTAIWAN STOCK EXCHANGE -0.75(-4.60%) 2303.TW 2303.TW0763.HK000063.SZ0981.HK3034.TW 台湾行政院(内閣)は7月、トップクラスの人材を引き留めるため、従業員持株制度にを巡る税制上の規制緩和を約束した。 「中国共産党は、わが国の人材を引き抜いている」と、台湾で経済政策などの立案を担当する国家発展委員会の陳美伶主任委員(閣僚)は語った。「企業が人材を維持しやすくなるよう、法令を改正している」 台湾知的財産局で法務部長を務めるHo Chan-cheng氏は、「不適切な引き抜き」は営業秘密の漏洩につながる可能性があり、政府は台湾の重要なテクノロジー、すなわちウェハー当たりのチップの歩留まりを増大させる能力を保護するために努力している、と述べた。 台湾企業側もまた、独自インセンティブの提示に努めている。 台湾で活動する半導体設計企業ファイソン・エレクトロニクス(群聯電子)の広報担当アントニオ・ユー氏は、同社には「中国企業のように金に物を言わせるだけの資金力はない」が、従業員にとって「安心できる環境」をつくり出そうと努力しているという。 長年継続される現金賞与や、無料法律相談などの制度、同社のケイ潘健成会長との対話集会などをユー氏は挙げた。 「私たちは従業員を家族のように扱っている」とユー氏。 こうした取組みがあるとはいえ、台湾のエンジニアにとって中国企業が提示するインセンティブには抵抗しがたい魅力がある。 台湾の半導体エンジニア、トミー・フアン氏(37)は2016年、中国南部のユナイテッド・セミコンダクターに入社した。ここは台湾のUMCと中国政府の支援を受けた提携企業による合弁事業だ。 台湾側の人材引き留め策は、自分にとっては有効ではなかった、とファン氏は言う。「台湾に残っていたらチャンスは来ない」 中国側は、5歳の子どもの学費補助として年間最大6万元(8689ドル)と、台湾時代の2倍に相当する給与を提示したという。「私たちは、中国に来ることに希望を賭けている」 (翻訳:エァクレーレン)
中国は「現代版プラザ合意」で元高を飲むのか 日経平均よりも米中貿易戦争の行方に注目 平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト 2018年09月10日 日本株の行方は、日米交渉もさることながら、やはり米中貿易戦争次第か。筆者は「これから急激な元高が進む可能性もある」と予測する(写真:AP/アフロ) 日本株が再び下落基調だ。日経平均株価は、久々の8連続高で喜んだのもつかの間、直後には逆に6連続安。7日の終値は2万2307円となり、下値の支持線として機能していた3つの移動平均線(25、75、200日移動平均)を一気に下回ってしまった。 日米貿易問題への過度な懸念は不要? 一方、極めて形が悪くなったアメリカのナスダック指数の今後も不安だ。その原因の1つ、同国における半導体について、先行き弱気論が台頭していることが気になる。 半導体の動向は日本株に大きな影響を与えるため、投資家心理を冷やしてくるからだ。そして、同国のトランプ政権のターゲットは、「いよいよ来たか」というべきかもしれないが「次は日本」のようだ。日経平均は2万3000円抜けの期待から一変、2万2000円の攻防戦になりそうな気配だ。 だが、筆者は「日米貿易問題はそれほど大きくはならない」と思っている。主な理由は3つだ。@以前ほどアメリカの対米貿易赤字は大きな額ではないAその赤字額よりも、在米日本企業の輸出によって生み出される貿易黒字額の方がアメリカにとってはるかに大きいB世界が的のようになっているトランプ政権にとって唯一「ポチ」の存在のような日本(恐縮だが市場ではこう呼ばれている)を遠くに追いやることは好ましくない、との意見が政権内に多い、との3点だ。 しかし、一方で、米中貿易戦争はさらに深刻になると考える。先週末に、ドナルド・トランプ大統領が中国からの輸入に対して2670億ドルの追加の制裁関税を課すと報じられ、ニューヨークダウは一時180ドル近く下落した。 今すぐにも出る可能性のある「第3弾」2000億ドル対中制裁関税のうえに、さらに「第4弾」2670億ドル相当の関税品目が上乗せされると、中国輸入品のほぼすべてに関税を課すことになり、中国との貿易戦争はますます激しいものになる。やはり、米中対立の本質は貿易問題ではなく、「覇権戦争」だからだ。 「現代版プラザ合意」で米中問題を一気に解決? WIPO(世界知的所有権機関、国際連合の専門機関)によると、2017年国際特許出願件数は、アメリカ5万6624件に対して、中国4万8882件と、両国の差が急接近、このままならおそらく数年で逆転しそうだ。それに対してのアメリカの危機感はそれこそ「ハンパない」ものがある。これは「アメリカから学んだ(盗んだ)知的財産が基になっている」とトランプ大統領は考えている。 実際、アメリカは何十年も、中国人留学生(彼らだけではないが)に、惜しげもなくハイテク技術を教え、国家機密レベルにも場合によっては接近させた。なぜなら「将来アメリカナイズされた彼らが国に帰り、中国を民主主義国家に変えてくれる」と考えたからだ。 だが、現実は違った。彼らの知識で中国は強くなり、ますます共産主義国家として強大になろうとしている。「『中国製造2025』など許すまじ」と、トランプ大統領は考えたようだ。 「歴代の大統領は何を考えて来たのだと腹立たしく思っている」と大統領のツイッターにもある。もちろん、中国の習近平体制の命とも言うべき「中国製造2025」撤回などあるはずはなく、米中双方とも引くに引けない近代戦争が続くことになりそうだ。 そこで、中国の政権維持と、アメリカの貿易赤字・知的財産保護政策を同時に解決するのが「人民元切り上げ」だとも言われる。簡単に言ってしまえば「現代版プラザ合意」だ。今はむしろ元安が進行しており1ドル=7元に迫る現在、極めて奇異に聞こえるが、ニッセイ基礎研究所など、すでに複数のレポートで、アメリカがこうした戦略をとる可能性があることを指摘している。 ここで改めて若い読者のために、プラザ合意を紹介しておこう。同合意とは、33年前、アメリカのドル高是正を解決するため、アメリカの呼びかけで、NYプラザホテルに先進国5カ国(日・米・英・独・仏=G5)の財務相と中央銀行総裁が集まり、ドル安に向けた協調がなされたことを言う(1985年9月22日)。 「1ドル=3元」はないが、今後の為替の行方に注目 ドルに対して、参加各国の通貨を一律10〜12%切り上げるために各国が協調介入を行うというものだったが、当時の実質的なターゲットは主に円であり、日本の対米貿易黒字だった。結果的にわずか2年でドル円は1ドル=250円前後から約120円まで急速に円高が進んだ。 日本は円高不況を避けるため、強力な金融緩和政策を実施。これがいわゆるバブル景気を招く。今回は、もしあれば「米中二国間での合意」となるが、もちろん元高を了承すれば中国は「輸入増加、輸出減少、国内景気は元高不況」となる。それを防ぐために、国内景気喚起、財政拡大、インフラ整備に今までよりも強力な政策が必要となるが、そのモデルは33年前の日本にあるので、実現は不可能ではないはずだ。 しかも、そのターゲットは「1ドル=3元」という説まである。日本では2年で、プラザ合意前のドル円が250円から120円になったので、その比率でザックリ行くと1ドル=6.8元が2年で1ドル=3元だというわけだ。だが、この辺になるとかなり乱暴な話に聞こえるし、そこまではさすがに無理だと思うが、いずれにしても今後に注目したい。 さて、当面の日経平均はどうなるか。前述のごとく、サポートラインを割れ、形の悪さが目立ってきたが、「ステルステーパリング」が噂されている日銀のETF(上場投資信託)買いは、9月に入っての連続買いで「年6兆円ペース」に戻っている。 また外国人投資家は現物+先物で2週連続買い越しとなり、その額は5389億円だ。現物のみでも5週ぶりの買い越しとなった。業績が順調にもかかわらず、年初からの急落・低迷相場のため、日経平均と予想EPS(1株利益)の相関係数は、36週移動平均ベースで−0.7前後まで低下している。 つまり増益なのに株価が下がっているわけだが、このマイナス数値の大きさは、2016年末から始まった「トランプ相場」の直前レベルとほぼ同じだ。業績と株価の相関関係は「反転近し」を告げている。今週の日経平均予想レンジは2万2000円前後―2万2700円とする。 「悪魔の仕事場」から米国を救う 怠惰はトランプ大統領の敵であり、世界の味方だ 2018.9.10(月) Financial Times (英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年9月7日付) 米政権高官ら、匿名寄稿を次々否定 トランプ氏は氏名公表を要求 問題の論説の寄稿を否定したトランプ政権高官ら(2018年9月6日作成)。(c)AFP〔AFPBB News〕 米国のドナルド・トランプ大統領について最近リークされた情報のうち最も衝撃的なのは、ホワイトハウスのスタッフの1人が大統領の寝室を「悪魔の仕事場」と呼んでいたことだ。 この描写には、ホワイトハウスがノイローゼに苦しんでいる理由を知るために必要な情報がすべて詰まっている。 トランプ氏が正真正銘の自己をさらけ出す場所。それは、口うるさい側近の目や耳が届かないホワイトハウスの2階である。 自身の権力の中心地においてさえ、トランプ氏は排斥されている少数派だ。 片手でテレビのリモコンを握り、空いた手でツイッターにメッセージを送る同氏の寝室は、さながら映画「スタートレック」に出てくるエンタープライズ号のブリッジ(司令室)だ。 オーバルオフィス(大統領執務室)に下りてくるのは、写真撮影があるときと毎日1、2回開かれる会議のときだ。 これに次いで不穏なのは、トランプ氏を敬うスタッフがほとんどいないという事実だ。しかしそれでは、同じ話を繰り返し語ることになる。 最新の事例が、米ニューヨーク・タイムズ紙に匿名記事を寄せ、政府内部でも大統領に抵抗する動きがあることを明らかにした現職の政府高官だ。 この記事によると、トランプ氏は「反民主的」で「せっかち」で「敵対的」なうえに、「狭量」で「知識も不足」している。 大統領のスタッフのほとんどは、トランプ氏の衝動的な行動から米国を守るためだけに仕事を辞めずにいるという。 この記事には、米国の最高司令官がその打撃のほとんどを寝室から繰り出しているとは書かれていない。だが、この点はどんな論考においても最重要視するべきだ。 筆者自身は、トランプ氏がバスローブ姿でチーズバーガーをほおばりながら、怒鳴り散らすように命令を出しても何ら問題はないと思っている。 エチケットは過大評価されている。しかし、物事のプロセスは、特にトランプ氏によって過小評価されている。この状況が長く続くことを願う。 というのも、決断を下すことと命令を下すこととの間には、天と地ほどの違いがある。 トランプ氏は数多くの決断を下している。 例えば、ジム・マティス国防長官に「連中を殺してしまえ」と命じたことがあるとされる。この「連中」とは、バシル・アサド大統領をはじめとするシリア人のことだ。 もしトランプ氏が合法的な命令書を書いていたら、マティス氏がこれをやり過ごすことは難しかっただろう。しかし、口頭での命令なら国防総省は簡単に無視できる。 怠惰はトランプ氏の敵であり、世界の味方だ。 そのことが強く実感できるのが、つい先日報じられた2件の暴露情報だ。 伝説のジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏の近刊『Fear: Trump in the White House』と、前述したニューヨーク・タイムズ紙の匿名記事は、互いの内容を補強し合う。 最もショッキングなのは、これらの内容が少しもショッキングでないことだ。すでに誰もが知っていることだった。同じパターンが何度も繰り返されている。 トランプ氏は「小学5年生か6年生」程度の理解力しかない「ばか」だという閣僚の発言が引用される。 すると同じ閣僚が、そんなことは言っていないと否定する。こうした否定発言がある1人の聞き手のために用意されていることは、誰もが承知しているところだ。 例の匿名記事の著者は、自身の同僚もトランプ氏の「コメントや行動」に「日々信じがたい気持ちを覚えることを内々に認めている」と書いている。 ここで「コメント」が先に来ていることには意味がある。トランプ氏の具体的な行動を特定するのは、発言を特定するよりも難しいのだ。 ウッドワード氏もこの匿名の人物も、「核のボタン」が入ったカバンを隠してしまうというような著しい抵抗の事例は示していない。 ウッドワード氏の本には、そのままにしておけば北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓自由貿易協定から米国が手を引く事態になった書類を、スタッフがトランプ氏の机から持ち去った話が書かれている。 それでも、これらの書類をそのままにしておいたらどうなったかは明らかではない。どちらも性急な行動ではあっただろうが、連邦議会や裁判所からの抵抗に遭ったはずだ。 戦争行為が回避された唯一の事例は、外国の指導者を暗殺せよというトランプ氏の求めにマティス国防長官が耳を貸さなかった一件だ。 トランプ氏がこの求めを繰り返すことはなかった。炎と怒りをお見舞いしてやると自分のベッドから脅しをかけることは簡単だが、実際に炎を空から降らせることははるかに難しいのだ。 とはいえ、過去を振り返ればトランプ氏が次に取るかもしれない行動が分かり、安心できるというわけではない。 ウッドワード氏の近刊に対する大統領の反応は、この伝説の書き手の情報源を突き止める「魔女狩り」を命じることだった。 匿名記事に対しては、「反逆罪か?」というコメントをツイッターに投稿した。いずれも結局は同じことを意味する。 トランプ氏は今後、官僚の能力を片っ端から利用して、自分に忠実でない人物をあぶり出しにかかるだろう。おそらく、無益な犯人捜しになる。 内部調査を誰が指揮するのかという難問を別にしても、だ。 そもそもトランプ氏は、内部調査の担当者がホワイトハウス内での抵抗運動に参加していないかどうかを、どうやって判別するのだろうか。 また、仮に犯人が見つかったとしても、そんな情報はトランプ氏の孤立を際立たせるだけだ。 実の娘のイヴァンカ・トランプ氏とその夫もジャレッド・クシュナー氏――そして、筋金入りの若手スタッフ数人――は別として、誰かがトランプ氏に対する忠誠心を持っていると想定することは困難だ。 ファーストレディーのメラニア・トランプ氏でさえ例外ではない。 トランプ氏はここからどこに向かうのだろうか。実は、同氏にはお気に入りの逃げ場がもう一つある。遊説だ。 寝室と同様に、演壇に立てば顧問弁護士や長官たちの監視の目から逃れることができるのだ。 だが、トランプ氏がまず考えるのは、例の2階に引っ込むことだろう。引っ込んでしまえば、裏切られる心配はなくなる。 そして、そこからなら、自分の思うままに大統領らしくなれる。国の統治よりも、そちらの方がはるかに楽しい。 By Edward Luce
テクノロジー2018年9月10日 / 13:31 / 19分前更新 日立、中国テンセントと戦略的提携で合意 1 分で読む [東京 10日 ロイター] - 日立製作所(6501.T)は10日、中国のインターネットサービス大手、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)(0700.HK)とIoT(様々なモノがインターネットに接続される)分野における戦略的提携で合意したと発表した。 今回の合意に基づき、日立グループとテンセントは長期的な提携関係の下で、スマートシティの構築や製造・物流分野におけるスマート化など幅広い事業分野でのIoT化に向かって、両者が有する技術・資源を活用し、新市場の開拓に注力していくとしている。 具体的には、中国政府が推進する「一帯一路構想」を背景に、「健康中国」、「美麗中国」、「ネットワーク強国」などの活動に参加していく。 現在、昇降機や空調設備、生体認証技術などでテンセントのIoTシステム導入を検討しているが、今後は健康養老やスマート製造、スマート物流などでも、技術交流・協力を進めていく。 中国における日立グループの売上収益は、2017年度で1兆0410億円とグループ全体の11%を占めている。 Hitachi Ltd 707.1 6501.TTOKYO STOCK EXCHANGE +6.50(+0.93%) 6501.T 6501.T0700.HK 今回の戦略的提携での合意を踏まえ、18年度の売上収益を1兆1000億円に拡大させるとしている。 *内容を追加しました。 田巻一彦
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