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NAFTA再交渉「カナダ抜き」の屈辱 ナイーブ過ぎたトルドー首相(ニューズウィーク) 
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/790.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 9 月 05 日 18:39:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

NAFTA再交渉「カナダ抜き」の屈辱 ナイーブ過ぎたトルドー首相
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/nafta-14.php
2018年9月4日(火)19時30分 ジョナサン・ケイ ニューズウィーク


外交ナイーブで老獪なトランプに弄ばれている、と批判の的になってしまったカナダのトルドー首相 Tatyana Zenkovich/REUTERS


カナダのトルドー首相が「友達」だと思っていたメキシコは、さっさとトランプとディールを結んでしまった。これ以上の屈辱はない。だが、まだ手はある

8月27日、メキシコとアメリカの二カ国間で行ったNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉で大筋合意したことは、二つの格言を思い出させる。一つは19世紀にイギリスの首相を務めたパーマストン卿による「国家には永遠の友人も同盟国もない。あるのは永遠の国益だけだ」。もう一つは「正直者がばかを見る」だ。

ドナルド・トランプ米大統領のツイッターがメキシコに対する非難や「国境の壁」問題に溢れていた昨年、カナダのジャスティン・トルドー首相とクリスティア・フリーランド外相は、メキシコを裏切ってアメリカと二国間協定を結ぶことはない、1994年に発足した北米3カ国間の自由貿易協定であるNAFTAを維持する、と勇ましかった。2016年にバラク・オバマ大統領(当時)、トルドー、メキシコのペニャニエト大統領の3人が結束をアピールした北米3カ国首脳会談を思い起こさせる団結ぶりだ。

当時、トランプの保護主義的な攻撃によって打撃を受けるのはメキシコだと考えられていた。そこでカナダが誠実な仲介者の役割を果たし、メキシコにも公平な取引をアメリカに要求することになるはずだった。

■ 今後は「米メキシコ貿易協定」に?

だが気まぐれなトランプは、大統領就任2年目に攻撃対象をカナダに変え、その貿易慣行を批判。トルドー個人をも侮辱した。そして8月末、メキシコは「友人」を裏切って国益を追求した。

メキシコのルイス・ビデガライ・カソ外相は合意について次のように言った。「我々には、カナダとアメリカの政治的な関係をコントロールすることはできない」「一方、アメリカとの貿易協定を失うことは、メキシコ経済にとって許容しがたいリスクだ。数百万人の雇用がアメリカ市場に依存している」

トランプは新たな協定について、NAFTAの名称を用いず「米メキシコ貿易協定と呼ぶことにする」と表明した。カナダとの協議がまとまらなければ、二国間だけで協定を発足させるという意味だ。その場合は、カナダからの輸入車に25%の高関税を課すという脅しもちらつかせた。専門家はこの関税が発動された場合、カナダは16万人の雇用を失い、景気は後退し、カナダ・ドルは米ドルに対して大幅に下落することになるだろうと予測する。

こうした展開に、カナダではマスコミによるトルドー叩きが始まった。トルドーはこれまでも、外交にナイーブで世界の指導者たちの手玉に取られる首相として、たびたび風刺画のネタになってきた。あるコラムニストはカナダ国営放送のウェブサイトで「(トルドー率いる)カナダ自由党は、アメリカの大統領が今もオバマかヒラリー・クリントンであるかのような考えで外交政策を行っている」と批判した。

その指摘にも一理ある。一貫性のない不満をぶちまけたり交渉姿勢をコロコロ変えたりするトランプに対して、トルドーは時に貿易問題まで得意の社会正義の問題であるかのように扱った。たとえば2017年には、トロントで開催された女性の権利をテーマにした会議の場では、ジャーナリストに対して、NAFTAを改定するならジェンダーの平等の全面的な保証が盛り込まれるべきだと発言した。カナダの交渉担当者は先住民の権利についての一章もNAFTAに追加しようとしているとも報じられた。こんな提案にトランプ政権が乗ってくると思うこと自体がナイーブと言われる所以だ。

■「無傷」での危機克服に期待も

米メキシコ貿易協定についての報道に、カナダは危機感を覚えている。合意の草案に、自動車部品の域内調達率の引き上げなどカナダが反対してきた条項がが含まれているだけではない。国家のメンツの問題として、自国を除く二カ国がまとめた合意をおとなしく受け入れて署名するのは、カナダにとって耐えがたい屈辱だ。

それでも、危機感はあるがまだパニックにはなっていない。8月末のカナダのS&Pトロント総合指数はおおむね横ばいを維持。カナダ・ドルの価値も(1カナダ・ドル=約0.77米ドル)1カ月前と変わらない。これはトルドーが──そしてもっと重要なことにカナダが──その尊厳にも経済にも傷を付けることなく、この危機を乗り越えられるという期待があるからかもしれない。期待の理由3つを紹介しよう。

まずNAFTA再交渉の「期限」は8月31日とされてきたが、カナダはさほど焦っていない。それは、新たな貿易協定は米連邦議会の承認を受ける必要があり、そのプロセスには何カ月もの時間がかかる可能性があるからだ。うまくすれば、審議が行き詰まる可能性もある。

一連のプロセスに連邦議会が携わるという事実は、トルドーにとってかなり有利だ。トランプが大統領に選出された瞬間から、トルドーのチームはワシントンでさまざまな工作をし、アメリカの議員や企業のロビイスト、州知事の間に貿易促進派の強力なネットワークを築いてきたからだ。既に彼らの一部が、米メキシコ貿易協定やカナダに対する最後通牒に抗議し始めている。共和党のパトリック・トゥーミー上院議員はトランプに対して「トランプ政権はカナダと合意に達するべきだ」と主張、「NAFTAはそもそも3カ国の合意に基づく協定だ」と警告した。

第二に、アメリカとメキシコの合意のなかで金額的に最も大きい条項の1つは、自動車の40〜45%は時給16ドル以上を稼ぐ労働者によって作られなければならない、というもの。これは低賃金のメキシコから高賃金のカナダに生産をシフトさせるもので、カナダに有利だ。

■乳製品開放はカナダのためでもある

第三に、トルドーはトランプが欲しがるカードを持っている。しかもそれは、カナダ経済にとってもよい効果があるものだ。トランプの瀬戸際外交を言い訳にトルドーは、時代遅れで非効率でカナダの消費者から金を巻き上げる慣行を止めてしまえばいいのだ。

その慣行とはもちろん、カナダの乳製品カルテルだ。卵や乳製品の生産企業は、価格維持、生産割当、関税などあらゆる手段を使って消費者からお金をだまし取っている。ある研究によると、カルテルのおかげで平均的なカナダ人世帯は年間150米ドル以上を余分に乳製品に支払っている。ここ数十年、この慣行をつぶすのはどんな政権にとっても自殺行為だと言われてきた。だが今、NAFTAの存続のために支払わなければならない代償が、国産乳製品のカルテルを解体しアメリカの乳製品を買うことだと言ったら、それに反対するカナダ人はほとんどいないだろう。

From Foreign Policy Magazine


 

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