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ドル体制が揺らぐ中、米大統領が安倍首相に対して真珠湾を持ち出したと報道
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201808290000/
2018.08.30 櫻井ジャーナル
ドナルド・トランプ米大統領は6月に安倍晋三首相とホワイトハウスで会った際、「私は真珠湾を覚えている」と口にし、日本の経済政策を厳しく批判したとワシントン・ポスト紙が伝えている。日米間の貿易、特に牛肉や自動車の取り引きがアメリカ側に有利な物になるように求めたという。この報道を日本政府は否定しているようだ。嘘つきと嘘つきの言い争いで、どちらが本当かはわからないが、日本とアメリカとの間に亀裂は入ったのかもしれない。
日本に限らず、アメリカ政府は貿易赤字の責任を他国に押しつけている。日本は1980年代にもアメリカから激しくバッシングされ、「ケイレツ」が問題にされていた。日本経済の強さは官僚主導の経済計画と中小企業で働く有能な職人たちの力で支えられていた。この構造をアメリカの支配層は第2次世界大戦の際の分析で把握していたという人もいる。無能な上層部の尻拭いを有能な下層部が行うのは日本の伝統と言えるかもしれない。
1980年当時も指摘されていたが、アメリカの貿易赤字は自らの経済政策に起因している。第2次世界大戦でドイツがヨーロッパで略奪した「ナチ・ゴールド」、日本が東アジアで略奪した財宝をアメリカは大戦後に押さえる。
こうしたこともあり、大戦直後のアメリカは世界の金の過半数を握ったようだ。それを世界戦略に使うのだが、1971年8月にリチャード・ニクソン大統領はドルと金との交換停止を発表する。いわゆるニクソン・ショックだ。そして1973年から変動相場制へ移行する。
ニクソン・ショックの前年から金の産出状況が大きく変化している。それまで圧倒的な比率を占めていた南アフリカの産出量が急速に減少しはじめたのだ。2007年には中国がトップに躍り出る。
南アフリカの金は米英金融資本にとって重要な利権。1899年から1902年にかけての南アフリカ戦争でイギリスはトランスバールとオレンジを併合、これにケープ植民地とナタールを加えて南アフリカは作り出された。その後、オランダ系のボーア人とイギリス系の白人は手を組んでアパルトヘイト(人種隔離政策)を推進、有色人種を支配するシステムを作り上げていくのである。金を支配することになった米英の支配層が金本位制を世界に押しつけたのは必然だった。
ところが、その構図が1970年から崩れ始める。このシステム変更により、アメリカはドルを金に束縛されることなく発行できるようになるが、金という裏付けをなくしたことから何も対策を講じずに発行を続ければ、ドルは基軸通貨としての地位から陥落してしまう。そこで、アメリカの支配層は流通するドルを吸い上げる仕組みを作った。
その仕組みのひとつとして、アメリカはサウジアラビアを始め主要産油国に対し、石油取引の決済をドルに限定させた。どの国もエネルギー資源は必要であり、その需要が膨らんでいくことは明白で、各国は石油を買うためにドルを買い集めた。
そうしたドルは産油国に集まり、産油国はアメリカの財務省証券や高額兵器を買うという形でドルをアメリカへ還流された。還流したドルをアメリカ支配層は地下へ沈め、固定化させる。いわゆるペトロダラーだ。
投機の規制緩和も通貨を実社会から吸い上げるために機能している。つまり、安倍晋三政権の「量的・質的金融緩和」、いわゆる「異次元金融緩和」は相場を引き上げたり下支えすることが目的。
1970年代からアメリカは製造業を放棄し、金融マジックを導入した。そのマニュアルが新自由主義だ。アメリカへ還流してきた資金が実社会へ流れ出ては意味がない。金融マジックを機能させるためには賃金の引き上げや社会福祉の充実を避ける必要がある。
1991年にソ連が消滅するとアメリカの支配層は自国が唯一の超大国になったと認識、自分たちは何をしても許されると考えるようになり、国連を無視して単独行動を始める。世界を手中に収めたと考えたのか、アメリカ支配層は自国の製造業を中国などへ移転させていき、貿易赤字が膨らむことになるのだが、それは国を想定しての話。資本の移動を自由化、関税をゼロへ近づけることに成功した彼らにとって国境は消えている。
ところが、21世紀に入ってロシアが再独立に成功すると、アメリカ支配層は自分たちがまずい状況に陥っていることに気づいただろう。そこでバラク・オバマ政権はムスリム同胞団やサラフィ主義者などを使ってシリアやリビアを侵略、ネオ・ナチを使ってウクライナでクーデターを実施した。
支配の基盤を強化し、ロシアを潰そうとしたのだろうが、裏目に出る。ロシアと中国を接近させることになり、両国は現在、戦略的な同盟関係にある。強力な軍事力を持ち、エネルギー資源を持つロシアと金融と製造の分野で急成長している中国が手を組んだ意味は大きい。今の中国は日米欧の企業が生産する場所だが、自国企業の育成を進めている。
アメリカはこうした窮地から脱出するために世界を恫喝しているが、ジョージ・W・ブッシュ政権、オバマ政権、そしてトランプ政権が行った政策は全て裏目に出ている。こうした恫喝は配下のEUや日本をもアメリカから離反させかねない。
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