米国の自動車関税、結論先送りか 商務長官が表明 ドイツのブレーマーハーフェン港で船積みされるメルセデス・ベンツ車(2017年7月23日)By Jacob M. Schlesinger 2018 年 8 月 21 日 21:46 JST トランプ米政権は輸入自動車に対する追加関税を検討しているが、実際の発動に向けた調査が当初予定より長引いている。欧州連合(EU)やメキシコ、カナダといった主な自動車輸出国との協議がいまだにまとまっていないという。 ウィルバー・ロス米商務長官が20日に行われたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで明らかにした。 ロス長官は7月下旬、自動車輸入が国家安全保障に与える影響に関する調査結果と勧告内容を「おそらく8月中に」取りまとめられると記者団に語っていた。 だがロス氏はWSJに対し、「報告書を8月末に公表できるか不透明だ」と述べた。その理由として、EUやメキシコ、カナダとの協議がまだ続いていることを挙げた。 ロス氏は、追加関税に反対する国内外の自動車メーカーから提出された大量の資料の分析にも、想定より多くの時間がかかっていることを示唆した。 自動車各社から返送された質問書は「きめ細かい」内容が記され、ページ数も多いため、「8月中に間に合わなくなりつつある」という。 ロス氏は自動車関税について結論を出す日程について、新たな見通しを示すことは控えた。法律上では来年まで時間的猶予があるとしている。 米国は主な自動車輸出国とより良い条件で合意できる可能性が浮上したことから、追加関税を急ぐ必要性が低下したもようだ。 ロス氏は、ドナルド・トランプ大統領が7月下旬に、欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長との間で、さまざまな工業製品の関税や政府補助を巡る交渉を始めるまで新たな関税は導入しない約束を交わしたことに言及した。米国とEUの担当者らは20日、この方針に基づく最初の会合をワシントンで開き、枠組みの策定に乗り出した。 ロス氏は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に臨んでいるメキシコとカナダに対しても「(トランプ氏が)同じことを暗に約束したと思う」と話した。米国とメキシコの担当者らは今週中に会合を持ち、8月末までに何らかの合意を取り付けることを目指す。 ロス氏によると、自動車の輸入に関する報告書が8月中に発表できると考えられていたのは、NAFTA加盟国やEUとの話し合いに前進が見られる前のことだった。 関連記事 米自動車業界が団結、トランプ氏に関税案の撤回要求 米ビッグスリーが見通し下方修正 関税が圧迫 トランプ氏の貿易交渉、国別に見ると
バロンズ】米株アウトパフォームの要因 米国株がアウトパフォームしている理由とは By Vito J. Racanelli 2018 年 8 月 21 日 07:09 JST • 仮想通貨の行方 仮想通貨は今年に入って暴落した。調査会社のファンドストラットによると、その相場は昨年末から70%近く下落している。代表的な仮想通貨であるビットコインも昨年12月半ばに付けた1万8675ドルの高値から、6463ドルと3分の1程度まで値崩れした。仮想通貨市場の総資産は約2000億ドル。数百兆ドルとされる世界の投資総額に比べれば、依然としてたたきつぶされたハエのような薄っぺらさだ。 別に昨年12月のコラムで懐疑論を唱えた先見の明を勝ち誇っているわけではない。いや、そういう部分が全くないとは言わないが、筆者は決していわゆる“ノーコイナー”ではない。オンラインのスラング辞書であるUrban Dictionaryの定義によると、ノーコイナーとは「ビットコインを保有していない人。(社会主義者、弁護士、あるいはエコノミストなど)詐欺だと思っていたがためにビットコインを安値で買うチャンスを逃し、悔しがっている人。その憂さ晴らしに『ビットコインは暴落する』と絶えずケチをつけ、保有者に八つ当たりしている人」。筆者は確かに仮想通貨を保有していないが、そんな敵意は持っていない。 やはりウォール街も動き始め、関連商品を売り出そうとしている。ところが最近、米証券取引委員会(SEC)はビットコイン上場投資信託(ETF)の販売許可に関する決定を9月30日まで先送りすることにした。許可が下りれば、仮想通貨は大きく値を上げる可能性が高い。さまざまな特徴や奇怪な名前を伴う各種仮想通貨ETFが、いずれ追随することだろう。許可が下りなければ、ビットコインやイーサリアム、リップルその他は、さらなる下落に見舞われることになりそうだ。 残念なことに、仮想通貨の潜在価値の証明は、弱気相場あるいは景気後退が訪れないことには難しいかもしれない。そんな状況は誰も望まないだろうが、市場に大きなストレスがかかって資金がビットコインに流れ込むとすれば、仮想通貨は価値の貯蔵手段たり得ることが証明される。今のところ、仮想通貨は交換媒体でもなければ、価値の尺度でもない。通貨の3つの基本機能をいずれも満たしておらず、ウォーレン・バフェット氏の「ビットコイン(購入)は投資にあらず」という言葉にならって「ビットコインは通貨にあらず」といえよう。 ノーコイナーならさらに舌鋒(ぜっぽう)鋭く、「仮想通貨は模擬テストもパスできなかった」と主張するかもしれない。確かに、最近のリラ下落に伴う世界的な相場下落の間も仮想通貨は値を下げ続け、資金の逃避先にはなれなかった。金相場も世界的に下落したものの、震源地のトルコでは上昇した。そしてドルも買われたようだが、ビットコインはさえないままだった。 • アメリカ例外主義 米国外の株式市場は今年、仮想通貨ほど下落したわけではないが、米国株には(一部では大きく)後れをとっている。メキシコとノルウェーを除けば、年初来の値動きを示す株価ボードが緑に染まっているのは米国くらい。世界的には下落を示す赤が目立つ。 【バロンズ】米株アウトパフォームの要因 MSCI米国指数が今年に入って6%上昇した一方、MSCI全世界(米国除く)指数は5%近く下落した(いずれもドルベース)。ドル高も一因ではあるものの、それだけで差を説明することはできない。現地通貨ベースでも、日本、中国、ドイツの主要株価指数はいずれも米国をアンダーパフォームしている。例えばドルベースで10%下落したドイツの株式相場は、ユーロベースでも5%下げている。 中国経済や欧州連合(EU)の一部の経済発展も目覚ましいが、米国株のアウトパフォームにはそれなりの理由がある。経済や企業利益の成長が他国に比べてはるかに底堅い、というグローバル投資家なら誰もが知っている事実だけではない。米国がグローバル企業の得意先であり続けていることも、株価パフォーマンスの差として表れている。個人投資家には分かりにくいかもしれないが、関税や貿易をめぐる緊張が高まる中、市場はこれを感じとっている。 「米国は今なお世界経済の音頭をとっている」。USトラストの市場戦略部門長であるジョセフ・キンラン氏は、このように指摘する。同氏は世界の18の主要株価指数(時価総額は世界市場全体の約60%)について、各国企業の国別売上高を調べた。その結果、いずれの国(または地域)においても米国がトップ3に入っていることが判明した。 例えばユーロストックス指数とドイツ株価(DAX)指数では、米国は構成企業の売上先のそれぞれ19%と22%を占め、最大となっている。DAX指数ファンドを買うことはドイツ経済への投資のように思えるが、実はグローバル市場へのエクスポージャーの方が大きいのだ。 対照的に、米国は自立している。S&P500指数構成企業の売上先の62%は国内で、その次に大きい中国でも5.5%。3%を超える国はほかにない。平たくいえば、急ピッチで成長するため、アメリカが世界を必要としている以上に、世界はアメリカを必要としている。 中国もおおむね自立している。MSCI中国指数構成企業の売上先の92%は国内で、米国は2.2%にすぎない。それでも3位には大差をつけている。キンラン氏いわく、中国は米国と貿易でつながり、中間財や構成部品を頼っているだけに、米国の貿易戦争のターゲットとされたことが今年の株安の大きな要因になっている。ただし、譲歩を引き出そうとするトランプ大統領の高圧的な姿勢が、米国株のアウトパフォームに貢献し続けるとは限らない。貿易抑制の圧力が高まり、報復関税の応酬が果てしなく繰り広げられるリスクもある。 長期投資で好成績を挙げるにはリスク分散が欠かせない。キンラン氏の予想によると、今年下半期の世界経済は「そこそこ成長するが、上半期ほどではない。世界的な景気の同時拡大のピークは恐らく過ぎた」。しかし短期的には逆転もあり得る。ビスポーク・インベストメント・グループのリポートによると、1984年以降、MSCI米国指数のMSCI全世界(米国除く)指数に対するリードが現在のように過去最高に達すると、3カ月後には常に米国指数がアンダーパフォームしている。1年後には米国指数が再び優勢となるのだが、米国株にはそれ以外にも強気派が過剰というマイナス材料がある。バンクオブアメリカ・メリルリンチの調査では、グローバルファンドのマネジャーによる米国株偏重は、2015年1月以来の高水準に達している。 資本は保護の手厚い場所へ向かうものだが、米国株式市場がいかに深く、強いとはいえ、テフロン加工が施されているわけではない。保護主義が制御不能なまでに進むことになれば、誰もが負け組となる。そしてキンラン氏は、その可能性は十分にあると考えている。
米S&P500種、日中の過去最高値を更新 By Georgi Kantchev and Allison Prang 2018 年 8 月 22 日 03:44 JST 21日午後の米国株式市場でS&P500種指数が一時、前日比0.6%高の2873.23ドルまで上昇し、取引時間中の過去最高値を更新した。このまま引ければ終値ベースでも過去最高値を更新する。 これまでの最高値(終値ベース)は今年1月26日につけた2872.87。 エネルギー関連株や一般消費財銘柄が買われ、相場の上げを主導している。 関連記事 米株市場の長期展望、弱気になる理由 【バロンズ】米株アウトパフォームの要因
史上最長の強気相場、米国株投資家の心得とは 2009年3月以降、現在まで強気相場が続いてきた By Jason Zweig 2018 年 8 月 22 日 04:02 JST あなたがもし、多くの投資家と同じ考えなら、リスク資産を減らす時だと思っているかもしれない。 S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズによると、株価が暴落でもしない限り、S&P500種株価指数は22日に史上最長の強気相場を記録する。2009年3月以降、株価は弱気相場入りの定義とされる20%の調整も経験せず、力強く上昇してきた。そして、2000年3月まで10年近く続いた強気相場を超えようとしている。 今回の強気相場が始まって以来、配当込みのリターンは400%を超えた。米国株は割安とは言えなくなっている。イエール大学の経済学者、ロバート・シラー教授がまとめた統計によれば、株価収益率(PER)は長期的な平均利益(インフレ調整済み)の約32.8倍に達しており、1881年以降の典型的な水準を倍近く上回る。 一方、アナリストは金利上昇を見込んでいるほか、主力ハイテク株の一角が下落している。それに加え、貿易戦争が拡大する兆しを懸念し、新興国市場も失速している。株価急落の可能性に備えて資産を守る行動をとるべきだろうか。 まず、投資家には常に心配の種があることを心に留めておくべきだ。 How We Got to the Longest Bull Run in History
ウォール街は今、史上最長の強気相場に向かっている(英語音声、英語字幕あり)Photo illustration: Heather Seidel/The Wall Street Journal 確かに今年は不透明感に覆われ、株価暴落を引き起こしかねない危険な兆候にあふれている。17年もそうだった。16年も、15年も、14年も、―― つまり、1970年代初頭に株式仲買人が初めてニューヨークに集まった時から毎年、そうだった。 だからこそ、大抵の時と同じように、長期投資家が今とるべき正しい行動は ―― 何もしないことだ。 だが、もし「アルマゲドン」が近いと確信しているなら、その恐怖心はおそらく投資計画を見直す時を知らせていると受け止めるべきだろう。結局のところ、本当に暴落が起こったとして、心配を抱えていたのに何も行動を起こさなかったなら、自分を責めるであろうし、市場から完全に手を引いてしまうかもしれない。 ノーベル賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマン氏がよく言うように、長期的に投資を成功させる一つの鍵となるのは、将来起こり得る後悔を最小限に抑えることだ。あなたがより大胆かつより頻繁で、急な行動を取れば取るほど、振り返ってみれば間違いだったと後悔する機会を増やすことになる。 市場や地政学的な動きに悪い予感がするなら、何かしたほうがいい。あなたが正しかったとなれば、どんなささやかな動きだったとしても、行動して良かったと思うだろう。ただし、いかなる行動であれ、万が一間違っていたときのために、小さくて段階的な、後戻りできる行動が望ましい。 そうした小さな一歩の行動を幾つか取るだけで、混乱期に得られる心の平安は大きく変わってくる。 手持ちの現金に余裕があって、住宅ローンもあるなら、現金をローンの支払いや早期完済に充てられる 手始めに、ポートフォリオに潜むリスクをできる限り大局的に捉えることだ。手持ちの現金に余裕があって、住宅ローンもあるなら、現金をローンの支払いや早期完済に充てられる。金利4%の住宅ローンがなくなれば、リスクゼロで4%のリターンを得るようなもので、これほどいい投資はない。それに、景気後退期に借金が引き起こす不安も取り除くことができる。
ハーバー・フィナンシャル・グループのエリゼ・フォスター氏によると、遺産を相続したり家を売ったりしてカネが転がり込んで来たなら、株価暴落が目前との恐怖心を和らげる心理的な緩衝材として、現金で持っておいてもよさそうだ。 投資助言会社プランコープのピーター・ラザロフ共同最高情報責任者(CIO)は、ドルコスト平均法で毎月定額のファンドや株式を購入している場合、積み立てを一時停止することができるとアドバイスする。ただ、ファイナンシャルアドバイザーと相談して、再開する日を例えば6カ月後などに決めておくべきだ。あるいは、仮に株式相場が20%超下落すればそれを利用できるよう、自動的に積み立てを再開することを申し合わせておくことだ。 ニュースレター購読 また、変動の激しい成長株の持ち高を減らし、売却資金をより保守的な銘柄などに投資する手もある。全体で株の持ち高は維持しつつ、暴落した場合の損失を抑える方法だ。 まだ夜中に眠れないというのであれば、株式への投資比率が高過ぎるのかもしれない。比率を下げればよいが、あくまで少しずつだ。例えば、あなたとファイナンシャルアドバイザーが、ポートフォリオに占める株式の比率を70%から50%に下げることを決めた場合、6カ月ごとに5%ずつ減らすか、毎月1%ずつ減らすことができる。センシブル・フィナンシャル・プランニング・アンド・マネジメントのリック・ミラー氏は「人は後悔を避けるために少しずつ変更することを好む」と指摘する。 証券アナリストのベンジャミン・グレアムは著書「賢明なる投資家」で、感情を抑えるのが難しい時には、「感情が鬱積(うっせき)しないようにはけ口が必要だ」と記している。小さな一歩の繰り返しなら、時間がたってから後悔するような大きな一歩を踏み出さずに済むだろう。 関連記事 【バロンズ】米株アウトパフォームの要因 米株市場の長期展望、弱気になる理由 米金融街で消滅、技術者とトレーダーの垣根
マレーシア、中国「一帯一路」プロジェクト凍結 マレーシアのマハティール首相(左端)は、中国の習近平国家主席(右端)らに対し、中国が支援するインフラ整備計画へ支出する財政的な余裕はないと述べた By Chun Han Wong 2018 年 8 月 22 日 00:22 JST 【北京】マレーシアのマハティール・モハマド首相は中国が後ろ盾となっている220億ドル(約2兆4000億円)相当のインフラ整備計画について、延期あるいは中止する考えを示した。 マハティール氏は5日間の訪中日程の最終日となった21日の記者会見で、公的債務を減らす必要があり、少なくとも現時点ではこれらのプロジェクトに資金を投じる余裕はないと習近平国家主席をはじめとする中国政府首脳に説明したことを明らかにした。 そのうえで、「彼らはわれわれがなぜ債務を減らさなければならないのか理解した」と述べた。 マハティール氏が5月の総選挙で首相に返り咲いてから中国を訪れたのは初めて。同氏は選挙期間中から中国主導の大型プロジェクトを批判し、南シナ海で領有権を主張する中国の動きにも反発している。 マハティール、習両氏のほか、李克強首相も同席した会合に関する中国の公式発表は、マレーシアでのインフラ開発計画が議論されたことに触れていない。 ニュースレター購読 中国外務省の陸慷報道官はマハティール氏の発言について「2つの国が協力する中で、いくつかの問題や意見の違いが浮上するのは避けられない」と述べた。両国の首脳が友好的に違いを乗り越えていくことで合意したという。 習氏が掲げる「一帯一路」構想の一環として、マレーシアでは200億ドルをかけた鉄道の建設や、パイプライン2本の敷設が計画されていた。だがマハティール政権は高すぎる契約価格や過度な借り入れを理由に、これらの凍結を決めた。いずれも2016年に当時のナジブ・ラザク首相が合意したものだった。 マハティール政権は、マレーシアの政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」が抱えていた債務の支払いに、こうしたプロジェクトの資金が使われた可能性について調べている。 1MDBの汚職疑惑で中心的な役割を果たしたとされるマレーシアの資産家ジョー・ロー氏は現在、逮捕を避けるため中国に滞在している。マハティール氏は21日、中国にロー氏の引き渡しは求めなかったと述べた。 ロー氏の代理人は今月、同氏が引き続き無罪を主張していると話していた。 関連記事 【社説】中国「一帯一路」の新たな人質 【社説】中国「一帯一路」の被害者モルディブ 中国「一帯一路」構想、パキスタンで暗雲
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