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人口減少より人口爆発、2055年に100億人になると何が起こるか
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2018/07/2055100.php
2018年07月03日(火)18時45分 グレン・カール CIAが視る世界 ニューズウィーク
ILLUSTRATION BY SHUTTERSTOCK
<人口増加は止まらず、2055年には100億人を突破。温暖化と資源枯渇で地球が悲鳴を上げている。先進国の少子化どころじゃない。問題は人口減少よりむしろ人口爆発だ。本誌7/10号(7/3発売)「2055年危機 100億人の世界」「2055年危機 100億人の世界」特集の記事「100億人の世界人口が文明を破壊する」より抜粋>
明日の朝には、地球人の数が今日よりも22万7000人ほど増えている。読者がこの記事を読み終えるまでに20人以上の赤ん坊が生まれる。現在の経済・社会的趨勢から計算すると、人類は地球の持続可能なレベルを5割も上回るペースで資源を消費している。
国連の世界人口予測2017年版によると、地球の総人口は現在の75億5000万人から30年には85億5100万人に達し、55年には100億人を突破すると考えられる。全ての人類がアメリカ人並みの生活を送るとしたら、地球5個分の資源が必要になる。このままではエネルギーの枯渇は必至で、世界的な資源不足で緊張・対立が深まり、資源の争奪戦が勃発するだろう。
とはいえ、勇気づけられる傾向もある。半世紀前の専門家たちは、人口爆発によって深刻な飢餓と社会崩壊が起きるというマルサス学説に基づく悪夢を予測していた。
しかしその後の教育レベル(とりわけ女子への教育)が上がったおかげで、出生率は先進国を中心に低下してきた。エネルギーの消費効率も向上しているため、同量の製品を生み出すのに使うエネルギーは50年前の40%で済むようになった。農業生産量も60年代以降は毎年2.3%の伸びを見せ、人口増加率の1.7%を優に超えてきた。
過去半世紀を見ると、飢餓の犠牲者よりも多くの人々が貧困から脱し、有史以来の健康と長寿がもたらされている。1973年の世界の平均寿命は60歳だった。今は71歳で、2050年には77歳になると推定される。
進歩したのは間違いない。とはいえ地球温暖化、都市化、高齢化など、21世紀の社会が取り組むべき巨大潮流の中で、最も重大な問題は人口増加だ。この問題は都市化、家族の人数、個人資産、エネルギー使用、戦争と平和など、人間の生存に深く関わる分野を大きく変化させ、富裕層から貧困層まで、あらゆる人々に影響を与える。
■人口増加は1700年頃から
地中海沿岸の素晴らしい景色と気候は、私たちを魅了する。オリーブの木が並ぶゴツゴツとした岩と砂の大地。夏は暑いけれどカラッとし、冬は温暖。ホメロスがたたえた海の色はブルーグリーン。樹林は少なく、大地は大きく浸食されている。
実はこの気候と地形は人類が図らずも生み出したもの。5000年近く前に書かれた古代オリエントの王の冒険物語『ギルガメシュ叙事詩』で、王は現在のレバノンにある緑豊かな杉の樹林を手に入れようとする(かつてのレバノンは「杉の国」だった)。しかし地中海沿岸の人口が少しずつ増加して土地が開拓されると、気候が変化して乾燥するようになり、古代の物語とは全く異なる景色になった。
本誌7/10号「2055年危機 100億人の世界」特集より
本誌7/10号「2055年危機 100億人の世界」特集より
同じくイギリスの清教徒たちが初めて北米大陸に上陸した1620年、アメリカの大地は東海岸から2000キロ先のミシシッピ川までびっしりと森に覆われていた。しかし入植者たちが木を切り倒したため、20世紀にはだだっ広い平原と化していた。
地中海沿岸とアメリカがたどった道は多くの面において、近代における人口爆発の避けられない結果だ。2000年前の地中海の人口は4000万人だったが、今では4億3000万人。アメリカの人口は、白人の入植以前は数百万人程度だったが、今は3億2400万人もいる。
地球は悲鳴を上げている。私たちはエネルギーや水の消費などによって地球の資源に負担を掛け続け、ついに人間の生活を支えてくれるこの星の能力の限界を超えてしまった。
世界の人口は毎年8300万人も増えている。西暦1世紀頃の世界人口は、2億人程度で安定していた。それが18世紀には6億8000万人まで増えた。当時は早死にする人が多かったので、一家族の人数は多かった。農作業をしたり、老人の世話をしたりするのに大家族である必要があったし、そもそも「家族計画」という考え方は存在しなかった。大半の人々が必要最低限の生活を送り、しばしば飢饉に見舞われていた。
しかし18世紀には医療が進歩し、農業の生産性が向上したため、人口の増加に勢いがついた。1800年には10億人、1987年には50億人、2011年には70億人の大台を超えた。
「金持ちはさらに金持ちになり、貧乏人は子だくさん」とよく言われる。これは正しい。ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、日本(そして現在の中国)といった豊かな国はおしなべて出生率が下がり、遠からず人口減少という事態が待ち受けている。
今後数十年で増加する世界人口の50%以上はアフリカに集中する。また全世界の人口増加分の50%以上はインド、ナイジェリア、コンゴ(旧ザイール)、パキスタン、エチオピア、タンザニア、アメリカ、ウガンダ、インドネシアの9カ国が占める。唯一の先進国であるアメリカでさえ環境、社会ストレス、経済成長の釣り合いを取ることに苦労するはずだから、ほかの国では社会、経済、政治への負荷はより深刻だろう。
Human Population Through Time
(参考情報:YouTube-American Museum of Natural History)
<先進国の少子化どころじゃない。人類の大問題は人口減少よりむしろ人口爆発だ。本誌7/10号(7/3発売)「2055年危機 100億人の世界」特集では、資源、環境、ゴミ問題がどうなるかを検証。人口爆発が顕著なアフリカからの「反論」を掲載し、火星移住の現実味も探った>
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