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ロシアや中国を後ろ盾にして韓国が朝鮮との話し合いを進める中、米政府は朝鮮に毒饅頭を提示
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2018.05.13 櫻井ジャーナル
文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は今年(2018年)4月27日、板門店で会談した。これを実現する上で最も重要な役割を果たしたのは韓国政府だろう。その韓国政府はロシアや中国と緊密な関係を維持してきた。それに対して東アジアにおける軍事的な緊張を高めてきたのは朝鮮。核兵器の爆発実験や弾道ミサイル(ロケット)の発射実験を繰り返し、アメリカの軍事的な緊張を高める口実を提供してきたのだ。その朝鮮が韓国との話し合いに応じた。アメリカ支配層にとって不都合な展開である。
文大統領と金委員長が会談する前日、アメリカ政府はCIA長官だったマイク・ポンペオが朝鮮で金委員長と握手する様子を撮影した写真を公表した。4月1日頃に撮影されたようだ。ポンピオが朝鮮を訪れる直前、3月26日に金正恩委員長は特別列車で北京へ入り、釣魚台国賓館で中国の習近平国家主席と会談、27日に帰国している。朝鮮半島の問題で主導的や役割を果たしているのはアメリカ政府だとポンペオはアピールしたかったのかもしれない。
韓国と中国は朝鮮に対し、核兵器開発の放棄と引き替えに経済援助を申し入れたと伝えられている。すでにロシアは高速鉄道やエネルギー資源を運ぶパイプラインでロシア、中国、そして朝鮮半島をつなぎ、東アジアを安定化させて一大経済圏にしようという計画を持っている。
ロシアのドミトリ・メドベージェフ首相は2011年夏にシベリアで金正日と会談、朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をすることで合意、14年にロシア議会はこの合意を承認した。2011年の会談で15年の行われる対ドイツ戦勝利70周年記念式典へ金正日が出席することも決まったが、2011年12月に死亡してしまう。その後、朝鮮はロシアの構想にとって好ましくないこと、つまりアメリカにとって好都合なことを繰り返した。その流れが変化したことを文大統領と金委員長の会談が示している。
そうした中、国務長官になったポンペオは朝鮮に対し、経済支援を持ちかけたという。中国やロシアに対抗してのことだろうが、過去を振り返ると、アメリカの「経済支援」は一種の「毒饅頭」であることがわかる。
例えばポーランドの場合、国民の不満を緩和する目的で、1970年代に西側の銀行から240億ドルという国家規模から見て不相応な額の融資を受けた。1980年代の半ばには外国からの債務は500億ドル、GDPの3分の2近い。アメリカの罠に陥ったということだ。1989年のインフレ率は年間250%に達した。こうした経済浸食と並行してアメリカは配下のNGOや労働組合を使ってターゲット国を破壊していく。
ドナルド・トランプ政権の国家安全保障補佐官に就任したジョン・ボルトンは朝鮮半島の非核化について、リビア・モデルを主張した。核兵器開発を放棄させた上で軍事侵略するということだ。リビアのケースと同じと言うことは傭兵を送り込み、アメリカ配下の軍隊が空爆するということになるのかもしれない。これまでアメリカは東アジアを不安定化させるために朝鮮を利用してきたが、朝鮮半島を属国化することに成功すれば、中国を制圧して略奪する拠点になる。アメリカが旧ソ連圏で行ってきたことだ。
しかし、金正恩やその側近たちがよほどの「お人好し」でないかぎり、アメリカの提案へ簡単には乗らないだろう。トランプ米首相は5月8日にJCPOA(包括的共同作業計画)からの一方的な離脱を宣言したが、これもアメリカが信用できない国だというメッセージとして捉えるだろう。
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