ロシア政治経済ジャーナル 米英仏、シリア攻撃〜真のターゲットはプーチン 2018年04月16日 北野です。 皆さんご存知と思いますが、
アメリカ、イギリス、フランスが、シリアを攻撃しました。 ↓ <米ミサイル攻撃105発 シリア化学兵器施設3拠点に
朝日新聞DIGITAL 4/15(日) 1:11配信 トランプ米政権は13日、シリアでアサド政権が化学兵器を使 用したと断定し、報復として米軍が英仏との共同作戦で化学兵 器関連施設3拠点をミサイル攻撃し、破壊したと発表した。 米国防総省は14日に会見を開き「全てのミサイルが目標に到 達した」と強調。 一方、アサド政権を支援するロシア軍に損害が出ないよう攻撃 対象は慎重に選ばれたが、ロシアは強く反発しており、米ロの 緊張が高まるのは避けられない。> アメリカがシリアをミサイル攻撃するのは、昨年の4月につづ いて2回目。
前回も、「アサドが化学兵器を使ったこと」が名目上の理由で した。 前回と今回の違いは、イギリスとフランスが攻撃に参加したこ とですね。 この話、「今日はここまで、さようなら」ともいえる話です。
しかし、「過去からの流れ」と「グローバルな動き」を見ると、 何が起こっているかはっきりわかります。 ▼「米ロ代理戦争」としての「シリア内戦」
振り返ってみます。
シリア内戦は、2011年にはじまりました。 「アラブの春」が流行っていた頃です。 欧米、サウジアラビア、トルコなどは、「反アサド派」を支持 しました。
一方、ロシア、イランは、アサドを支援しました。 この内戦は、最初から大国同士の「代理戦争」だったのです。
ロシアとイランがバックにいるので、アサドはなかなか倒れな い。 我慢の限界に達したオバマは2013年8月、「アサドを攻撃 する!」と宣言します。 ところが、同年9月、「やっぱりアサド攻撃やめた!」と戦争 をドタキャンし、世界を仰天させました。 これでオバマは、「史上最弱のアメリカ大統領」と批判された。 なぜ「ドタキャン」したのでしょうか?
理由は二つありました。 一つは、プーチンが、「アサドは化学兵器を使っていない!」 という情報を大拡散したこと。 <プーチン大統領は記者会見で「シリア政府がそのような兵器 を使ったという証拠はない」と述べた。
また、シリア反体制派に武器を提供するという米の計画を批判 し、「シリア政府が化学兵器を使ったとの未確認の非難に基づ いて反体制派に武器を提供するという決定は、状況をさらに不 安定化させるだけだ」と語った。 プーチン大統領はまた、反体制派が化学兵器を使ったことを 指し示す証拠があるとし、「われわれは化学兵器を持った反 体制派がトルコ領内で拘束されていることを知っている」と述 べた。 さらに、「反体制派が化学兵器を製造している施設がイラク で発見されたという同国からの情報もえている。 これら全ての証拠は最大限真剣に調査される必要がある」と 強調した。> (ウォール・ストリート・ジャーナル2013年6月19日) 世界ではいまだに、「アメリカは
『イラクに化学兵器がある!』とウソをついて戦争を開始した」 記憶が新しい。 それで、「オバマは、ウソをついてるんちゃうの?」と慎重に なった。
そして、第2の理由は、イギリスがオバマを裏切ったこと。 <シリア軍事介入 英、下院否決/米、対応苦慮/仏、参加崩 さず
【ベルリン=宮下日出男、ワシントン=小雲規生】 シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑で、英下院は軍事 介入に道を開く政府議案を否決した。 有志連合による介入を準備してきたオバマ米政権には痛手とな る> (産経新聞 2013年8月31日) こうしてオバマは、「プーチンのせいで」戦争ドタキャンに追 いこまれた。
「オバマはうそつきだ!」と大胆に主張するプーチン。 オバマは、激怒したことでしょう。 「戦争ドタキャン事件」から2カ月後の2013年9月、
ロシアの隣国ウクライナで、「反ヤヌコビッチ大統領デモ」が 起こります。 ヤヌコビッチは、「親ロシア」。 そして2014年2月、革命が起こり、「親ロシア」ヤヌコビ ッチが失脚。
激怒したプーチンは、同年3月、「クリミア併合」をして世界 を仰天させました。 「シリア戦争ドタキャン直後」に起こったこの事件。
普通に考えても、「偶然じゃないよね」と思えるでしょう そのとおり。 「ウクライナの革命は、俺がやったのだ」とオバマは、認めて います。 「ロシアの声」2015年2月3日付から。
<オバマ大統領 ウクライナでの国家クーデターへの米当局の 関与ついに認める
昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕に ついて、オバマ大統領がついに真実を口にした。 恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろ う。 CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウク ライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。 別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況 に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、 米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を 確認したわけである。 これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や 外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。 これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴ ィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、 ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきた からだ。> 「う〜む本当だろうか〜〜???」
それでも信じることができない人は、「You Tube」で
「Obama admits he started Ukraine revolution」を 検索してみてください。 シリアに話を戻します。
シリアには、「アサド派」と「反アサド派」があった。 ところが、「戦争ドタキャン」後、新たな勢力が台頭してきた。 それが、いわゆる「イスラム国」(IS)。 ISは、「反アサド派」から独立し、勢力を急速に拡大していき ました。 ISは、残虐行為とテロを繰り返す。 オバマも放置できなくなり、2014年8月、「IS空爆」を開 始します。 ところが、ISは、依然として「反アサド」でもある。 それで、「ISは、敵で味方」という変な状態になった。 結果、アメリカの空爆はまったく気合が入らず、ISの勢力は拡 大する一方でした。 2015年9月、プーチン・ロシアがIS空爆を開始。
プーチンの目的は、「同盟者アサドを守ること」。 オバマのような迷いがないので、ISの石油関連施設を容赦なく 空爆した。 それで、ISは、弱体化したのです。 ▼「戦術的勝利」をおさめたプーチン
さて、シリア、ウクライナにおける米ロ代理戦争は、現状どう なっているのでしょうか?
思いだしてください。 ロシアは、アサドを支援する。
アメリカは、反アサドを支援する。 アサドは、いまだにサバイバルしています。
フセインやカダフィのように殺されてもおかしくないのに、ま だ政権を維持している。 それどころか、アサドは、ロシアとイランの支援を得て、IS, 反アサド派を駆逐し、ほぼ全土を掌握するまでになっています。 そう、プーチンは、シリアで「米ロ代理戦争」勝っているので す。
実際、彼は2017年12月11日、シリアで「勝利宣言」を 行い、ロシア軍撤退を命じています。 ウクライナは?
まず、ウクライナからクリミアを奪った。 東部ドネツク、ルガンスク州は、事実上の独立状態を維持して いる。 こちらの方も、勝っています。 ▼アメリカのターゲットは、プーチン しかし、プーチンは、一瞬たりともリラックスできません。
なぜ? クリミア併合後、ロシアは、「経済制裁」と「原油価格暴落」 ボロボロになってしまった。 2018年3月1日、プーチンは、「裏世界史的大事件」を起 こします。
年次教書演説で、フロリダ州を攻撃する映像を見せ、アメリカ を脅したのです。 <「フロリダ州を核攻撃」のビデオ、プーチン大統領が演説 に使用
CNN.co.jp 3/2(金) 10:40配信 (CNN) ロシアのプーチン大統領は1日に行った演説の中 で、無限射程の核弾頭が、米フロリダ州と思われる場所を狙う 様子をアニメーションで描写したコンセプトビデオを披露した。 フロリダ州には米国のトランプ大統領の別荘がある。> <プーチン大統領は演説の中で、極超音速で飛行でき、対空シ ステムも突破できる「無敵」ミサイルを誇示。 「ロシアやロシア同盟国に対する核兵器の使用は、どんな攻撃 であれ、ロシアに対する核攻撃とみなし、対抗措置として、ど のような結果を招こうとも即座に行動に出る」と強調した。 プーチン大統領が披露したビデオでは、何発もの核弾頭が、フ ロリダ州と思われる場所に向けて降下している。>(同上) この演説で、欧米の指導者たちは、「反プーチン」で一体化し てしまいました。
3月4日、ロシアのスパイでありながらイギリス諜報に情報を 流していた「ダブル」スクリパリさん殺害未遂事件が起こりま す。
メイ首相は、即座に「これはロシアがやった!」と宣言しまし た。 3月18日、プーチン、大統領選で圧勝。
3月26日、欧米を中心に25か国が「ロシア外交官追放」の 決定を下します。
ロシアは、即座に報復しました。 4月6日、アメリカ財務省は、対ロシアで新たな制裁を発動。
<米国>対露制裁対象に38個人・団体 対決鮮明に
毎日新聞 4/6(金) 23:45配信 【ワシントン高本耕太、モスクワ大前仁】米財務省は6日、2 016年米大統領選介入を含むサイバー攻撃などロシアの対外 「有害活動」に関与したとしてロシアの計38個人・団体に対 する制裁措置を発表した。 オリガルヒ(新興財閥)関係者や政府高官らプーチン大統領の 周辺人物の多くを対象としており、ロシアとの対決姿勢を鮮明 にした。> この制裁ですが、すでにアメリカ国内で「資産凍結」がはじま っているようです。
そして、「プーチンの友人たち」がターゲットになっている。 4月14日、アメリカ、イギリス、フランスは、ロシアの同盟 国シリアをミサイル攻撃。
アメリカは、さらにロシア制裁を強化する方針です。 <米、露企業に制裁方針…シリアの化学兵器関連
読売新聞 4/16(月) 1:33配信 【ワシントン=大木聖馬】ヘイリー米国連大使は15日、米C BSテレビのインタビューに対し、シリアのアサド政権の化学 兵器開発・使用をロシアが支援していたとして、米政府が16 日にも独自の制裁を発動する方針を明らかにした。 ロシアが反発し、米露関係がさらに冷え込むのは必至だ。> ▼アメリカの巧妙な戦略
プーチンに対するアメリカの戦略は、非常に巧妙です。
〇情報戦 = プーチン悪魔化せよ!
例をあげれば、 ・プーチンは、国家ぐるみのドーピングを指示した? ・プーチンは、化学兵器を使って、裏切り者を消した? ・プーチンは、アサドに化学兵器を使わせた? 〇外交戦 = プーチンを孤立させろ!
・スクリパリ暗殺未遂を受け、25か国がロシア外交官を追放 ・今回は、アメリカ単独ではなく、英仏がシリア攻撃に参加 〇経済戦 = 制裁をますます強化し、ロシア経済を破壊しろ!
・クリミア併合 ・ロシアによるアメリカ大統領選介入疑惑 ・スクリパリ暗殺未遂 ・アサド支援 などなど、とにかく口実を見つけ、どんどん制裁を強化してい く。 プーチンが、アグレッシブになれば、またそれが「制裁強化」 の口実になる。 アメリカは、「軍事力」を使わずに、プーチンを追いつめて いる。 皆さん、「なんでアメリカは、アサド排除を目指さす、一日 で攻撃を止めたのだろう?」
と考えませんでしたか? 別にアサドが政権にいてもいいのです。 彼が次回、シリアにわずかに残った反アサド派を攻撃する。 すると、米英仏は、「アサドは、また化学兵器を使った!」と いって、ミサイル攻撃するでしょう。 そして、またロシアが反発する。 欧米は、「ロシアは、アサドが化学兵器を使うのを容認してい る!」と宣言し、ますます制裁を強化するでしょう。 今のアメリカの対ロ戦略は、80年前の対日戦略と変わりませ ん。 http://archives.mag2.com/0000012950/
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