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トランプ米大統領がシリアから軍隊を撤退させると語ると、有力メディアから石油を手放す気かと批判
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804020001/
2018.04.02 櫻井ジャーナル
ドナルド・トランプ大統領は3月29日、アメリカ軍をシリアから引き揚げるという意思を明らかにした。政府内でも同じ指示を出しているという。昨年(2017年)7月にトランプ大統領はバラク・オバマ政権が始めたCIAの秘密作戦を中止する決断をしたと伝えられたが、周囲からの圧力の中、その考え方は変化しなかったようだ。
オバマ政権はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために「穏健派」を支援しているとしていたが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は2012年8月にホワイトハウスへ出した報告の中で、反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、AQIだとしていた。この当時、DIAの局長を務めていたのがマイケル・フリン中将、つまりトランプ大統領が最初に国家安全保障補佐官に選んだ人物だ。
AQIはイラクのアルカイダを意味し、シリアで活動していたアル・ヌスラの実態もAQIだと指摘している。実際、AQIもアル・ヌスラもタグに過ぎず、中身は確かに同じだ。オバマ大統領が主張していた「穏健派」は存在しないということでもある。
DIAの報告はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告しているが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。ダーイッシュもAQIやアル・ヌスラと本質的な違いはない。
DIAが予測していたにもかかわらずダーイッシュの出現を防げなかった責任をフリンは退役後の2015年8月、アル・ジャジーラの番組で問われたが、ダーイッシュの勢力を拡大させた政策を実行すると決めたのはオバマ政権だと反論している。
報告が提出された後もフリン局長はジハード勢力を支援するのは危険だとオバマ政権に警告し続けたが、無視される。そして2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧している。このとき、アメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認していた。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンはDIA局長の職を解かれた。当時の統合参謀本部もDIAと基本的に同じ考え方をしていたのだが、2015年9月25日に統合参謀本部議長はマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードに交代になった。同年2月には国防長官も戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦派のアシュトン・カーターへ入れ替えられている。
オバマ政権は自らが売り出したダーイッシュを口実にしてアメリカ軍にシリアを攻撃させる。勿論、シリア政府は軍事介入を承認していない。つまりアメリカによるシリア侵略だ。アメリカ軍の主なターゲットはシリア政府軍やシリアのインフラで、ダーイッシュは打撃は受けていない。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュの支配地域が急速に縮小するのは2015年9月30日、アメリカの統合参謀本部議長が交代になった5日後にシリア政府の要請を受けてロシア軍が介入してからだ。
アル・カイダ系武装集団やダーイッシュが敗走するとアメリカはクルドを新たな手先にするが、これによってトルコとアメリカとの関係が険悪化、アメリカの目論見通りには進んでいない。
新たな武装勢力を編成する動きがあるほか、フランス政府が軍隊をシリアへ派遣するという情報が流れている。言うまでもなく、これも侵略だ。3月29日にはクルド系のDFS(シリア民主軍)の代表がフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談したという。アメリカ政府内でネオコンの力が衰える中、ロスチャイルドと近い関係にあるマクロンが前面に出てきた。
アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢見るトルコ、天然ガスのパイプライン建設を拒否されたカタールなどが始めたシリア侵略だが、トルコやカタールは離脱済み。アメリカが軍隊を撤退させるなら、イギリスやフランスが出てこざるをえないのだろう。
シリアを侵略する理由はいくつかある。イスラエルの現政権の大イスラエル構想、さらにユーラシア大陸の周辺からロシアや中国を締め上げ、最終的には支配するという長期的な戦略もある。
シリアとイランを制圧して中東を完全な支配下に置いてエネルギーを支配するという計画、石油支配はドルを基軸通貨とする支配システムの防衛にもつながる。ワシントン・ポスト紙にシリア侵略の目的は石油支配にあり、アメリカ軍の撤退は支配権をイランへ渡すことだとトランプ大統領を批判する記事が掲載されたが、本音だろう。トランプは国内でも戦いが続きそうだ。
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