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米朝協議は北朝鮮ペース トランプはまた過ちを繰り返すのか(NEWS ポストセブン)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180318-00000012-pseven-kr
3/18(日) 7:00配信
トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の提案に応じ、史上初となる米朝首脳会談を開く意向を明らかにしている。報道によると、北朝鮮には非核化の意志があるということだが、果たしてアメリカの目論見通り進むのだろうか。トランプ大統領はティラーソン国務長官を更迭するなど、対北朝鮮外交には暗雲も漂い始めている。近著に『日本の情報機関は世界から舐められている』(潮書房光人新社)がある元自衛官で朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏がレポートする。
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今回のトランプ大統領に対する金正恩の提案は、経済制裁がかなりダメージを与えていることが背景にあるのだろう。しかし、北朝鮮が核開発計画を完全に放棄し、非核化を実現する可能性は極めて低い。
最大の理由は、非核化の前提条件として、アメリカが北朝鮮へ将来にわたり軍事的脅威を与えないと約束する必要があるからだ。このためには、アメリカは北朝鮮と「平和条約」を締結する必要がある。同時にこれは、休戦状態にある朝鮮戦争を終戦にすることを意味する。
しかし、「平和条約」を締結しただけでは北朝鮮の不安はぬぐえない。現在、事実上、在韓米軍司令官が握っている戦時における韓国軍の指揮権(戦時作戦統制権)を韓国に返還するだけでなく、在韓米軍の撤収を北朝鮮は求めるだろう。しかし、これは北朝鮮側が要求しなくても文在寅大統領がアメリカ側に強く要求するだろう。
果たしてトランプ大統領は北朝鮮の求めに応じて、在韓米軍の撤退を含む「平和条約」締結までやる気なのだろうか。もし何の問題もなく朝鮮戦争を終戦へと導き、朝鮮半島に本当の平和をもたらすことができたら、トランプ大統領は偉大な大統領として歴史に名を残すことができるかもしれない。
だがアメリカは北朝鮮に対して同じ失敗を繰り返してきた。トランプ大統領は2017年10月7日、ツイッターに〈歴代の大統領や政権は、北朝鮮と25年間話し合いをしてきて、合意に達したり、多額の金が支払われたりしたが、効果がなかった。合意は、インクが乾かないうちに破られ、米国の交渉担当者はばかにされてきた〉と投稿している。
トランプ大統領の言葉どおり、実際に米朝関係が「安定していたかに思えた時期」は、米朝対話や南北対話が進んでいた時だけで、しかも、その「安定」は瀬戸際外交の結果として北朝鮮が作り出したものだった。そして米朝間で締結された合意は、経済支援などの実利を獲得した後、北朝鮮側から反故にしている。
北朝鮮は最初からアメリカとの関係を改善する気はなく、独裁体制維持のためにアメリカとの対立と対話を循環させていたに過ぎない。今回も昨年の激しい対立から、急転直下で対話へと転じようとしている。表向きは金正恩の提案という形にはなっているが、北朝鮮外務省が描いた筋書きにもとづくものと考えるべきだろう。
米朝首脳会談後の実務レベルでの交渉では、今月になって外務次官に就任した崔善姫(チェ・ソンヒ)氏が中心となるだろう。北米局長を歴任していることもあり、過去の対米交渉の戦術も教訓も熟知しているはずだ。
これに対してアメリカは、オバマ政権当時に北朝鮮担当特別代表に就任したジョセフ・ユン氏が先月辞任した。ユン氏の辞任は国務省に対北朝鮮交渉の難しさを熟知している人物がいなくなった事を意味する。
過去の米朝交渉では、北朝鮮は姜錫柱(カン・ソクジュ)、金桂冠(キム・ケグァン)といった手強い外交官がアメリカとの交渉にあたってきた。アメリカはよほど周到な準備をしたうえで交渉に臨まなければ、これまでと同様に北朝鮮のペースで事が進むことになる。
北朝鮮外務省が長期的な対米戦略を持っていると書くと、違和感を感じる向きも多いだろう。しかし、アメリカの圧力を跳ねのけて、三代世襲までして独裁政権を存続させることは並大抵のことではない。
北朝鮮は常に「強国に取り囲まれている」という認識を持っており、このような危機感から北朝鮮の外交手法は、交渉相手の出方を見て極端に硬軟を使い分ける傾向がある。交渉で敗北することは独裁体制の崩壊に直結するからだ。
◆過去の教訓は生かせるのか
ここで直近の危機である「第2次核危機」の流れを簡単におさらいしたい。「第2次核危機」は、2003年1月に北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明し、核開発を継続する姿勢を明確にした時から始まっている。
当時の米国の大統領はジョージ・W・ブッシュ(子)、韓国の大統領は金大中(キム・デジュン)と盧武鉉(ノ・ムヒョン)だった。この2人の韓国大統領は、現在の文在寅大統領と同様に北朝鮮との対話を推進し、南北首脳会談を実現させた。金大中大統領はその功績でノーベル平和賞を受賞している。
NPTからの脱退を表明したことで、「第1次核危機」の終結となった「米朝枠組み合意」(1994年10月21日調印)は完全に崩壊したのだが、2003年8月27日から北朝鮮の核問題を協議するために、日本、アメリカ、中国、ロシア、韓国、北朝鮮で構成する「6者協議」が開始された。
2005年9月13日に開催された第4回6者協議では、6 者協議で初の合意文書となる「共同声明」が発表された。この中で、北朝鮮はすべての核兵器と既存の核計画の放棄を行うこと、核拡散防止条約(NPT)及び国際原子力機関(IAEA)などの保障措置に早期に復帰することを約束し、アメリカは北朝鮮に攻撃や侵略を行う意図を有しないことを確認した。
6者協議が進行している間、韓国は食糧と肥料、日本とアメリカは食糧の支援を行った。しかし、北朝鮮は「約束」を守ることなく、2006年7月5日に7発もの弾道ミサイルを連続発射し、同年10月9日に1度目の地下核実験を実施した。
前代未聞の弾道ミサイルの連続発射と核実験の強行という最悪の事態になったにもかかわらず6者協議は継続され、2007年2月13日に核放棄プロセスに合意し、重油や食糧の支援が行われた。さらにアメリカは、2007年12月20日と2008年2月6日に北朝鮮に対するエネルギー支援予算を計上した。
しかし北朝鮮は、アメリカからの援助を得た後、2009年5月25日に2度目の核実験を実施、さらに同年7月4日(アメリカの独立記念日)に再び7発の弾道ミサイルを発射した。こうして北朝鮮は「危機」を乗り越え、現在に至っている。
◆核開発よりICBMが問題
今後行われる米朝交渉の過程でも核実験が行われるかもしれないが、そもそも、アメリカが強硬姿勢を取るようになったのは6度にわたる核実験ではなく、アメリカ本土を攻撃可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成が現実的になったからである。
核兵器の運搬手段であるICBMがなければ、アメリカ本土が北朝鮮の核の脅威にさらされることはないからだ。
核兵器開発計画の放棄を求めるにしても、そもそも「非核化」とは具体的にどのような状態を意味するのかが問題となるだろう。北朝鮮が「核開発計画を放棄する」と宣言しても、本当に放棄したのかを検証しなければならないため、検証の手順に関する交渉を行わなければならない。
検証作業には相当な年月を要するだろう。しかも、北朝鮮が全ての核関連施設をアメリカやIAEAに見せるという保証はないし、多くの施設が地下にあるだろうから、偵察衛星の画像だけでは全ての核関連施設を特定することもできない。
すべての交渉と検証作業が終わるまでの間、北朝鮮は必ず見返りを求める。文在寅大統領は一方的に北朝鮮への援助を続けるだろうし、中国も再開するかもしれない。さらにアメリカは気分を良くしたトランプ大統領が「大盤振る舞い」しないとは断言できない。
しかし、日本は拉致問題を抱えているため、北朝鮮への援助はもとより、経済制裁の緩和も難しいだろう。米中韓との共同歩調を取れない日本は「置いてきぼり」にされかねない。その時、日本はどのような姿勢で北朝鮮と接するのだろうか。
今年も日本はトランプ大統領の発言と行動に振り回されることになるのだろう。
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