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衛星画像で見つける金正恩「最大の弱点」とは
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/02/post-9597.php
2018年2月23日(金)18時10分 高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載 ニューズウィーク
金正恩の時代になって収容所の実態把握は困難になってしまった KCNA-REUTERS
<衛星画像の解析によって政治犯収容所の実態が解明できれば、金正恩体制にとって最大の弱点となる>
米国の情報機関である国家地理情報局(NGA)が、衛星写真や航空写真を非政府組織(NGO)や研究機関に提供する予定だと、米国の外交専門誌フォーリン・ポリシーが21日に伝えた。
NGAの軍事アナリストであるクリス・ラスムセンは同誌とのインタビューで、NGOとの最初の協力は、北朝鮮に焦点を当てたものになると述べている。
これまで北朝鮮における人権侵害を追及するNGOは、商業衛星写真や脱北者の証言などに基づき、政治犯収容所に代表される北朝鮮の人権蹂躙の証拠を見つけてきた。
<参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」...残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認>
しかし、商業衛星は軍事衛星に比べれば解像度で劣るし、購入費用も非常に高くついていた。NGAが今後、どこまで鮮明な画像を提供するかはわからないが、コスト面だけでもNGOにとっては大きな助けとなろう。
とくに期待されるのは、政治犯収容所の実態解明である。
北朝鮮で「管理所」と呼ばれる政治犯収容所には以前、有期刑の囚人を収容する「革命化区域」と、無期刑の囚人が入れられる「完全統制区域」が存在していた。そのため、革命化区域から釈放され、脱北した人々の証言により収容所の実態が外部に知られることになったのだ。
しかし金正恩党委員長の時代になり、北朝鮮は革命化区域をなくし、収容所すべてを完全統制区域にしてしまった。これにより、収容所の実態把握が困難になってしまったのだ。
また政治犯収容所だけでなく、強制送還された脱北者らを収容する施設も、人権侵害の現場となっている。そこで行われていることは、被害者たちの証言に繰り返し触れながらも、日本の常識ではなかなか信じられないほど凄惨なものだ。
<参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態...「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も>
さらには、北朝鮮が過去に行った国民に対する大量殺戮の証拠も見つけなければならない。例えば、1993年に発覚した「フルンゼ軍事大学留学組」によるクーデター未遂や、1995年に起きた6軍団のクーデター未遂などの事件が起きると、そこに連座したとみなされた人々はことごとく銃殺され、その一族郎党が管理所に送られた。そうして殺された人々の亡骸は北朝鮮の野山に埋められており、その場所を特定することが必要なのだ。
北朝鮮は無謀な核・ミサイル開発によって国際社会の追及を受けているが、これは彼らの抱える最大の問題ではない。核兵器や弾道ミサイルは、政治決断によりいつでも放棄できるし、そうすれば国際社会との関係も改善する。
しかし、過去に行った人権犯罪は消すことができない。これこそが、金正恩体制が抱える最大の弱点なのだ。NGAの民間に対する資料提供が本格的に行われれば、北朝鮮は経済制裁にも増して、大きな脅威を感じるかもしれない。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
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