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迫りくるハイテクバブルの崩壊
一角獣かチェシャ猫か、2000年との大きな違いは資本市場の変化
2019.1.30(水) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年1月28日付)
各国の早急なデジタル・テクノロジー普及を提言 ダボス会議でアリババ研究機関
スイスで開催された世界経済フォーラム会場(2019年1月22日撮影)。(c)CNS/彭大偉 〔AFPBB News〕
先週の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)と現実世界の間には、多くの食い違いがあった。
最も目を引く食い違いの一つが、多くの会議参加者が示したハイテク楽観主義で、市場自体が今年ハイテク業界について見込んでいることと著しいコントラストを成していた。
特に、今後相次ぐ新規株式公開(IPO)は危なっかしく見える。
配車アプリ大手ウーバーテクノロジーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)はダボスを駆け回り、間近に迫った同社のIPOについて盛んに宣伝していた。
だが、その話には、どこか切迫感が漂っていた。
ウーバーは同業のリフトのほか、スラック、エアビーアンドビーなどの未上場ハイテク大手とともに、早めに株式を上場しようとするだろう。
それも迫りくる景気後退や振れの激しい市場のためだけではない。
非公開市場での資金調達であまりに図体が膨れ上がったために、市場が会社のバリュエーションを支えられるかどうか不透明だからだ(例えばウーバーの企業価値は1000億ドルと評価されている)。
こうした企業にしてみれば、得られる金額が大きいうちに、お金を手に入れたい。
この状況は、世紀の変わり目に起きたドットコム・バブルとその崩壊と似ているところもあれば、似ていないところもある。
当時、筆者はロンドンのベンチャーキャピタル(VC)に勤めていた。
仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの出資を受けたオンライン小売企業ブー・ドットコム――その後破綻したブーは欧州版のペッツ・ドットコムのような企業――といった企業は豪華な広告に莫大な資金をつぎ込み、自称起業家はネットワーキングイベント「ファースト・チューズデー」で楽に手に入る資金を漁り回った。
誰もが襟につけなければならなかった、投資家は赤、起業家は緑のシールを皆さんは覚えておいでだろうか。
あの当時は、今と同じように信用サイクルが終盤に入っており、過剰なお金が足りない価値を追い回していた。
そして当時も今と同じように、投資家は、相次ぐ人気IPOが明らかに過大評価された市場にもう少し油を注いでくれることを当てにしていた。
大西洋の両岸で、あれがどんな終わりを迎えたかは、誰もが知っている。
といっても、当時、何の価値も生み出されなかったということではない。今も価値は生み出されている。
ドットコム・バブルの崩壊で廃業に追い込まれた高級Tシャツ業者や失敗に終わったドッグフード小売企業が1社あるごとに、何キロものブロードバンドケーブルが敷設され、グーグルのような企業が今活用しているインフラを作り出した。
現在のシェアリングエコノミー(共有経済)には、かつて全く存在しなかった市場と利便性がある。
この2つの時代の本当の違いは、資本市場そのものにある。
VCの資金は2000年を境に激減した後持ち直し、金融危機後に再び減少し、2014年以降、記録的な水準まで持ち直した。
新規スタートアップ企業の数は劇的に増えた。だが、IPOの件数は減っている。これは、あるパラドックスのせいだ。
技術のおかげで会社を立ち上げるコストが安くなったが、成功するには以前よりお金がかかるようになっているのだ。
なぜか。株式時価総額が10億ドルを超える次の「ユニコーン(一角獣)」新興企業を築き上げようとする軍拡競争が起きているためだ。
カリフォルニア大学の学者、マーティン・ケネディ、ジョン・ジスマン両氏がまもなく発表するスタートアップ企業の資金調達の変化に関する論文「ユニコーン、チェシャ猫、そして起業ファイナンスの新たなジレンマ」で指摘しているように、「それぞれのスタートアップ企業が、首の骨が折れそうな、ほぼ必ず赤字の成長を特徴とし、多くの場合、それと分かる黒字転換への道筋がない急拡大を通じて勝者総取りの力学に火をつけようとしている」。
過去5年ほどで、VCの支援を受けたユニコーンの数が劇的に増加した。
ウーバー、リフト、スポティファイ、ドロップボックスといった企業は、赤字を好きなだけ垂れ流しながら、なおバリュエーションを伸ばし続けることができる。
実際、これが新しいビジネス力学の一部になっている。
低い参入障壁の結果、競合企業がひしめき合い、市場シェアを獲得するために使えるだけのお金をつぎ込む競争が繰り広げられるようになった。
この非生産的なサイクルから出現する非上場企業の図体が膨れ上がるだけでなく、VC自体も肥大化する。
かつては聞いたこともなかった10億ドル規模のベンチャーファンドが、今では当たり前のように存在する。
昨年、有力VCのセコイア・キャピタルは80億ドルのシードファンドを調達し、ソフトバンクは何と1000億ドルのファンドを立ち上げている。
規模は、もちろん、規模を呼ぶ。
いよいよ多くの重量級VCがスタートアップ企業の価値を競り上げると、ほかのVCも追随を余儀なくされる。これは競るか、降りるかのどちらかだ。
その結果生じたのは、IPO市場の新たなバブルだけではない。利益について心配しなければならない多くの上場企業の弱体化にもつながった。
典型的な例が、ウーバーがひっくり返したタクシー業界や、エアビーがひっくり返したホテル業界だろう。
帳簿上で膨れ上がったユニコーンの価値を利用し、さらに資金を調達し、さらに運用報酬を稼ぐことができる一部のVCにとっては、これは良いことかもしれない。
だが、どうすればこれが全体的な経済的価値にとって好ましいのか、筆者には分からない。
独占企業を築き上げるために、赤字企業を莫大なデットファイナンス(銀行借り入れや社債、私募債発行による資金調達)で支えることは、一部の起業家と投資家にとって利益になるかもしれないが、資本市場と労働市場を歪めるし、反競争的でもある。
投資家が成長を評価尺度として受け入れる意思がある限り、音楽が鳴り続ける。
だが、カリフォルニア大学の学者たちが指摘しているように、「ユニコーンは伝説上の生き物」だ。
今年、こうした企業の財務の現実や現在の資金調達モデルの持続可能性が真価を問われる待望の局面が訪れるだろう。
誇大喧伝されている新たな顔ぶれの企業集団の一部はいずれ、「不思議の国のアリス」に登場する例のチェシャ猫と化して姿を消し、バブル崩壊前に手を引いた人たちのニヤニヤ笑いだけが後に残ることになるのかもしれない。
By Rana Foroohar
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55344
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