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2019年1月24日 加藤 出 :東短リサーチ代表取締役社長
マイナス金利政策、深掘りなら金融機関は「究極の選択」を迫られる
2016年1月末、日本銀行はマイナス金利政策の導入を決定。政策開始前の同年2月9日には史上初めて長期金利(10年物国債金利)がマイナスとなった Photo:kyodonews
日本銀行のマイナス金利政策は、間もなく4年目に突入する。
黒田東彦総裁が主導する量的質的金融緩和策(いわゆる異次元緩和策)が2013年4月に始まったとき、日銀はインフレ率を2年程度で目標の2%に押し上げると宣言した。ところが、2年以上たっても目標達成は見通せず、かつ国債買い入れの増額といった主力の追加緩和策は技術的な限界に直面した。
追い詰められた日銀はろうばいし、それまでやらないといっていたマイナス金利政策を16年1月の金融政策決定会合で突如決定。2月に導入した。だが、熟慮の上に提案された政策ではなかったため、同会合では9人中4人もの政策委員が反対票を投じた。現時点で振り返れば、この4人の見識は正しかったといえる。
物価への効果は極めて怪しい。生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数の前年比は、16年1月は0.9%だったが、18年11月は0.3%へ低下した。日銀は粘り強く続ければ目標は達成できるというが、展望は開けない。
また、世界経済に不透明感が表れてしまったため、日銀はマイナス金利政策をやめるにやめられなくなった。だが、この政策による市中金利低下の長期化によって、金融機関の収益悪化はこの先、より深刻になっていく恐れがある。
以前にも本欄で触れたが、日本は世界で最もマイナス金利政策の効果が表れにくい国といえる。高齢化と生産年齢人口の減少により、金利が低下しても借金をして消費を増やす世代が少なくなっている。しかも、日本の超低金利は長期化している。金融緩和の最大の効果は「将来の需要の前借り」だ。
緩和状態が長く続くと、需要を前借りしようとしてもそれはすでに使われていたことになり、刺激効果は弱まってくる。人口減少社会では需要が先細るのでなおさらだ。また、預金金利の低下は高齢者を不安にさせ、かえって財布のひもを固くさせてしまう。
ところが、スウェーデンやデンマークなどの福祉国家におけるマイナス金利政策は、日本と様子が異なる。大半の国民は社会保障制度が手厚いため、将来不安を抱いていない。高齢者は預金金利の低下を心配しない。その環境下で金利が低下すると、消費ブームが発生する。人口が近年急増したスウェーデンでは住宅価格が暴騰した。
なお、欧州の銀行はマイナス金利政策下で企業等の預金金利をマイナスにし、その政策の負担を顧客に転嫁している。例えば昨年11月、デンマークの銀行における平均預金金利は、一般企業向けがマイナス0.29%、政府向けはマイナス0.34%、保険会社・年金基金向けはマイナス0.5%だ。
もし北欧の銀行に「日本の銀行は預金金利をマイナスにするのは避けている」と教えたら、「どうやって生き残っているのか?」と目を丸くするだろう。
この先、日銀が万が一マイナス金利を深掘りしたら、日本の金融機関は“究極の選択”に悩まされる。欧州のように企業等の預金金利をマイナスにしたら、日本では猛反発を受けそうだ。保険会社や年金基金の資金運用がそれで打撃を受ければ、それを聞いた家計は将来不安を募らせる恐れがある。
かといって、コストを顧客に転嫁しなければ破綻のふちに近づく金融機関が増える。今後の黒田日銀に求められるのは、金融政策の限界を正面から受け止め、インフレ目標を無理に追求しない姿勢に、より傾いていくことだろう。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
https://diamond.jp/articles/-/191758
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