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大前研一氏、東京五輪後に残るのは不要なインフラと巨大施設だけ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190122-00000005-moneypost-bus_all
マネーポストWEB 1/22(火) 16:00配信 SAPIO2019年1・2月号
開催決定から5年経ち、経費は膨らみ続けている(ZUMA Press/AFLO)
文字通りの「新しい時代」が幕を開ける2019年。それに相応しい国づくり、人づくりが必要なことは言を俟たない。ところが現実は、五輪や万博など、一瞬の打ち上げ花火で終わるような「イベント頼み」経済が続くばかりだ。大前研一氏が、2020年の東京五輪について展望を述べる。
* * *
大阪万博の開催が決定し、政財界が沸いている。2020年の東京五輪から2025年の大阪万博への流れは、1964年の東京五輪から1970年の大阪万博という半世紀前のデジャブ(既視感)であり、皆がそれに象徴される「高度成長期」の再来を夢見ているかのようだ。
周知の通り、日本経済は1950年代後半から1970年代前半にかけて飛躍的に成長した。その間に東京五輪や大阪万博などによる“特需”があり、「神武景気」「岩戸景気」「いざなぎ景気」などが次々に起こり、やがて日本は世界第2位の経済大国になった。
「その夢よ、もう一度」とばかりに政府、東京都、大阪府は算盤を弾いているわけだが、2020年東京五輪と2025年大阪万博は“捕らぬ狸の皮算用”に終わり、後に残るものは何もないだろう。
東京五輪は、もともとできるだけ既存の施設を活用して新しいハコモノを造らず、コストをかけない「コンパクト五輪」がコンセプトだったはずである。ところが、会計検査院は2017年度までの5年間に国が支出した関連経費が約8011億円に上ったことを明らかにした。2018年度以降も多額の支出が見込まれるため、大会組織委員会と東京都が見込んでいる事業費計2兆100億円を合わせると、経費の総額は3兆円以上に膨らむ可能性が高くなっている。まさに“青天井”だ。
しかし、どれだけ莫大なコストをかけたところで、しょせん東京五輪は広告代理店やゼネコンなどが儲けるだけの「禿山の一夜」(*注)に終わるだろう。
【*注:モデスト・ムソルグスキー作曲の管弦楽曲。「聖ヨハネ祭前夜、禿山に地霊チェルノボグが現れ手下の魔物や幽霊、精霊達と大騒ぎするが、夜明けとともに消え去っていく」というロシアの民話を元に作られた】
たとえば、メインスタジアムとなる新国立競技場は、五輪が真夏に開催されるのに、予算をケチったせいで屋根も冷房もないという理解不能な代物だ。あるいは、江東区青海の東京港中央防波堤内側および外側埋立地間の水路に新しく整備されるボート・カヌーの「海の森水上競技場」などは、大会後も有効利用されるとは思えない。
一方、2028年のロサンゼルス五輪は、公費を1セントも使わない計画だ。閉会式が終わったら不要になるような新しい競技施設は造らず、1932年と1984年の五輪でもメイン会場になったロサンゼルス・メモリアル・コロシアムをはじめ、プロスポーツチームのスタジアムや大学の体育施設など既存のインフラを活用する予定なのだ。
選手や観客の移動手段には、すでにプロジェクトが進行している大量輸送システムを利用するという(ライトレールなど公共交通網の整備・拡張を五輪を利用して実現しようとしている)。また、必要最低限の新しい施設については、民間からアイデアを募集し、最も優れたものを採用して任せる。つまり、その経費を民間資金だけで賄うわけだ。
こうした工夫によって、計画通りにいけば4億〜5億ドルの黒字で大会を終えることができるとみられている。実際、ロサンゼルスは過去2回の五輪でも黒字を出した実績がある。
東京五輪の場合は、国、大会組織委員会、東京都がそれぞれいくら負担してどうのこうのとやっているが、公費(税金)を使う時点で最初から歪んでいるのだ。したがって、東京五輪は短い宴が終わったら、残るのは不要な巨大施設や利用者の少ない交通インフラと、国民にツケが回る大赤字だけだろう。
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