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ゾゾタウンから有名アパレルが一斉に逃げ出す兆候…ゾゾに出品する必要性低下か
https://biz-journal.jp/2019/01/post_26315.html
2019.01.19 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
「ゾゾタウン HP」より
昨年末、アパレル大手のオンワードホールディングスが衣料品通販サイト「ゾゾタウン」への衣料品の出品を停止したことが話題になった。日本経済新聞によると、サイト運営会社のZOZO(ゾゾ)が昨年12月25日から始めた定額会員サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」(以下、ARIGATO)において、出品社に割引の参加を求めたことなどで条件が折り合わなかったことが理由だという。オンワードは「23区」や「自由区」など百貨店などに展開するブランドの衣料品をゾゾタウンに出品していた。
さらに1月17日には大手子供服ブランドのミキハウスも出品を停止したとのニュースが駆け巡った。
ARIGATOは年間3000円(税別)または月500円(同)の会員料を払うと、ゾゾタウンで常時10%引きで買い物ができるというもので、割引分はゾゾ指定の団体へ寄付したり、購入先ブランドに還元したりもできる。割引分はゾゾが負担するのでブランドが経済的な損失を被ることはない。
だが、オンワードは値引きによるブランド価値の低下を危惧し、出品停止に踏み切ったと考えられる。また、ゾゾタウンでは、これとは別に恒常的に割引セールが実施されており、それを嫌気した側面もありそうだ。
オンワードのような高価格帯のアパレルブランドにとって、ブランド価値は販売において重要な意味を持つ。「高級感がある」「ハイブランドだから」といった理由で購入されることが少なくない。そういったブランドが「いつも安売りしているブランド」と思われてしまったら、そのブランドは愛されなくなり、売れなくなってしまう。そういったことを避けるため、高価格帯のブランド各社はブランド価値を保つためにさまざまな施策を講じている。そのひとつが、売れ残り商品の廃棄だ。
昨年、ブランド価値を保つために、売れ残った新品の衣料品を大量に廃棄している事情が明らかになり、社会問題化したことが記憶に新しい。衣料品の廃棄は多くのアパレルブランドで行われており、日本だけで推定年100万トン近くが廃棄されているとされている。繊維業界では「6割売れれば大成功」といわれ、売れ残りの在庫を過剰に抱えることが常態化しているが、ブランド価値を重視するところは値引き販売を嫌い、影で大量廃棄を行っているのだ。
英高級ブランドのバーバリーが、衣料品や香水など約42億円相当を燃やして捨てていたことが昨年明るみになった。ブランド価値を守るための措置だが、厳しい非難の声が上がった。この批判を受けて、ブランド価値の低下を恐れた同社は、廃棄をやめて再利用や寄付に回すことを表明せざるを得なかった。皮肉にも、ブランド価値を守るための行為がブランド価値を毀損する行為になってしまった。
一方で、恒常的な値下げ販売で在庫を処分し、それによりブランド価値が低下したアパレルブランドがある。それはギャップだ。ギャップは頻繁に値引きセールを行っており、たとえば米国では現在、オンラインで最大75%オフになるセールを実施している。こういったセールの乱発で安っぽいイメージを消費者に与えたほか、恒常的な値下げ行為が消費者に不信感を与えており、ブランド価値が著しく低下している。これが一因で客離れが起き、北米では大量閉店の憂き目に遭っている。
ギャップは販売不振により値下げしなければ売れなくなっており、さらなるブランド価値の低下を招くという悪循環に陥っている。
オンワードとしては、ゾゾタウンから徹底することで、そういったブランド価値の低下を回避したい考えだ。
■“脱ゾゾタウン”進む
オンワードが出品を停止したのは、自社のECサイトが育っていることも大きい。ネット通販事業のうち自社サイト経由の売上高の割合は、2018年2月期で75%と高い水準にある。商品への問い合わせ対応などサイトの使い勝手を高める取り組みが実を結んだかたちだ。ゾゾタウンから徹底したとしても、業績への影響は限定的で、ブランド価値を低下させてまでゾゾタウンで販売する必要はないと判断したようだ。
オンワードのように自社のECサイトが育っているところは増えている。たとえば、「グローバルワーク」などを手がけるアダストリアの18年2月期の自社サイト経由の販売割合は5割強にも上る。前の期と比べて割合は拡大している。同期末の自社ECサイトの会員数は約700万人となり、前期末から140万人増えた。利便性を高めたほか、全国にある実店舗での会員獲得を強化したことが奏功した。
ゾゾタウン開設当初から参加しているユナイテッドアローズも、自社のECサイトが育ち、脱ゾゾタウンが進んでいる。18年3月期の自社サイト経由の販売割合は23.2%だった。一方でゾゾタウンの割合は57.0%だった。現状、ゾゾタウンの割合のほうが大きく、ゾゾタウンに強く依存しているが、自社サイトの割合は前の期から3.1ポイント向上した一方、ゾゾタウンは2.4ポイント低下しており、脱ゾゾタウンが進んでいるといえるだろう。
このように自社サイトが育っているところを中心に、ゾゾタウン離れが進む可能性がある。もっとも、オンワードやアダストリアのように自社サイト経由の販売割合が過半を超えているところはごく一部に限られる。雪崩を打つかたちでゾゾタウン離れが急速に進むことはないだろうが、ゆっくりと増えていく可能性は十分ある。
ゾゾタウン以外の衣料品通販サイトが登場していることもゾゾタウン離れにつながる要因となりそうだ。
「アースミュージック&エコロジー」などを展開するストライプインターナショナルはソフトバンクと組み、昨年2月にネット通販モール「ストライプデパートメント」を立ち上げた。オンワードやレナウン、イトキン、三越伊勢丹などが参加している。百貨店を中心に展開するブランドが多いのが特徴だ。ゾゾタウンの主要な顧客は30歳前後の若い世代だが、ストライプデパートメントは30歳代後半から40歳代をターゲットとしている。高級志向の趣があり、オンワードのようにゾゾタウンでのブランド価値の低下を嫌うブランドの受け皿になる可能性がある。
アマゾンジャパンは、通販サイトでアパレルの販売を強化している。07年にサイトでファッションカテゴリーを立ち上げ、アパレルの充実化を図ってきた。ただ、ゾゾタウンと比べると見劣りしている感が否めなかった。掲載画像は簡素で味気なく、サービスも充実していなかった。そこでアマゾンは昨年3月、東京・品川に専用の撮影スタジオを設け、より高精度な写真や動画を掲載できるようにした。サービスの充実化も進めており、たとえば昨年10月、有料会員向けに衣料品を購入前に試着できる無料の通販サービス「プライム・ワードローブ」を始めたと発表している。このようにアパレル機能が充実してきており、存在感が高まっている。
三井不動産が17年11月に立ち上げた衣料品通販サイト「Mitsui Shopping Park &mall(アンドモール)」は、実店舗と連携したサービスを提供することでゾゾタウンとの差別化を図っている。
三井不動産が展開する商業施設「ららぽーと」に入居するブランドの大部分に参加してもらった。サイトで実店舗各店の在庫が確認できるほか、店舗スタッフが提案した服のコーディネートをサイトに掲載するなどネットと実店舗の融合を図っている。
これまではゾゾタウン1強だったため、参加ブランドのほとんどはゾゾの意向に逆らうことができなかった。しかし、オンワードは自社サイトが育ったほか、ゾゾタウン以外の通販サイトが誕生・充実化しているため、ゾゾから要請されたARIGATOへの参加を拒否することができた。これに触発され、ほかのブランドが追随することも十分考えられる。
果たして、これが蟻の一穴となってゾゾ離れが加速するのか関心が高まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
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