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対中投資:積極攻勢に出る日本企業
2019.1.17(木) 瀬口 清之
日本なら16%以上の成長に匹敵する市場で売れる日本車
中国自動車大手、米市場進出を先送り 広州汽車、貿易戦争で誤算
北米国際自動車ショーに出展された中国自動車大手、広州汽車集団(GAC)のコンセプトカー「Entranze」(2019年1月14日撮影)。(c)TIMOTHY A. CLARY / AFP〔AFPBB News〕
1.中国市場での日本車販売の好調
中国での日本車販売の好調が続いている。
2018年は昨年末まで実施されていた排気量1.6リットル以下の乗用車を対象とする自動車税の減税措置が停止されたため、その反動で乗用車販売が伸び悩んだ。
2018年1〜11月累計データを見ると、乗用車販売台数全体では−2.8%、商用車を含む自動車全体でも−1.7%と減少した。
しかし、日本車全体では、2018年1〜11月累計前年比は+5.3%と前年を上回った。
前年を上回ったのは日本、ドイツ(同+4.3%)と韓国(同+5.3%)だが、韓国は前年の大幅減の反動である。実質的に好調が続いているのは日本とドイツの2か国の乗用車のみである。
その他は、中国地場系企業同−6.0%、米国同−15.9%、フランス同−27.2%など、軒並み前年を下回った。
主要国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数)を見ると、日本とドイツの好調がよく分かる(図表1参照)。
図表1 国別ブランド乗用車販売シェア (工場出荷台数)<単位・%>
(注)2018年のデータは1〜11月累計ベース。(資料:マークラインズ、CEIC)
日本車の足許の販売好調が続いている背景は、日本車は前述の昨年末までの自動車税減税対象車種が少なかったため、駆け込み購入の反動が生じにくかったことが大きい。
加えて、ここ数年、中国人のニーズに合わせたデザイン、品質、価格等を総合的に追求してきた成果が現れたものと考えられる。
2016年頃以降、尖閣問題に端を発する日本車敬遠のムードがほぼなくなったのも影響している。
先行きについては、トヨタ自動車が昨年央以降、中国での販売戦略を一段と積極姿勢に転じた。
ホンダは昨年リコール対応の関係で販売台数が伸び悩んだが、本年はそうしたマイナス要因がなくなるため、堅調持続が予想される。日中関係の改善も好材料の一つだ。
また、急速に拡大しつつある中古車市場でも日本車とドイツ車の人気が高く、下取り価格が他国メーカー比高い。
このため、買い替えを意識すれば、下取り価格が高い分だけ割安感が生じる点も今後の新たな追い風要因の一つになると考えられる。
ある大手日本車メーカーの関係者は、数年後には、日本車のシェアが現在の19%弱から25%程度にまで増大する可能性は十分あると語った。
2.日本企業の対中投資姿勢が積極化
日本企業の対中投資の約半分は自動車関連であると言われている。
自動車産業は裾野が広く、鉄、アルミ、樹脂、ガラスといった素材分野、エンジン、電子部品、タイヤ、内装関連といった部品関連分野など極めて多岐にわたる産業が内包されている。
しかも、それらの幅広い分野の日本企業は日本車メーカーのみならず、中国地場自動車メーカー、欧米・韓国メーカー向けにも供給している。
これらの自動車関連企業が上述の日系自動車メーカーの販売好調などの影響を受け、対中投資額を増加させる傾向にある。
この間、中国における人件費の急速な高騰を背景に、中国企業を中心に合理化投資が増加し、日本企業の得意分野であるロボット・工作機械の需要も好調が続いている。
昨年7月以降は、米中貿易摩擦の激化を背景にロボット・工作機械の受注が突然停滞し、多くの日本企業が衝撃を受けた。
しかし、足許の中国国内の雇用の安定状況を考慮すれば、人手不足を背景とする賃金上昇は今後も続く可能性が高い。
となれば、生産コスト引き下げのための合理化投資需要は今後も伸び続けると予想されることから、足許の合理化投資関連受注の停滞は一時的なものであると考えられる。
以上を考慮すれば、今後も自動車関連、およびロボット・工作機械関連需要は中長期的に堅調が持続すると考えられる。
そうした先行きの需要予測もあって、上記関連の日本企業は引き続き積極的な投資姿勢を持続していくものと予想される。
この間、それ以外の分野の対中投資姿勢については、2017年までは総じて積極性が強くなかったと言われていた。
しかし、そうした他分野の日本企業の対中投資姿勢についても、最近は積極化に転じる変化が見られているという話を耳にすることが増えている。
日本企業が対中投資姿勢の修正を考慮する場合、まずは日系金融機関に相談して情報を入手する。
そのうえで中国現地視察を行い、投資環境を判断し、経営戦略を練り直す。現地視察の際にも日系金融機関のお世話になるケースが多い。このため、日系金融機関の責任者は日本企業の投資動向に敏感である。
そうした日系金融機関の責任者によれば、日本企業の現地視察が昨年以降、顕著に増加している。特に、以前に比べて頻度が増えたのみならず、視察に来る人々のランクが上がったと聞く。
さらには、以前は足を延ばす人が少なかった成都、武漢など内陸部の主要都市にも視察に来る人々が増えているのが最近の特徴である。
日本企業は横並び意識が強いのが従来からの特徴である。
対中投資に関しても、日本国内が反中ムードに支配され、メディアなどがポジティブな情報を意図的にシャットアウトしていた時期には、大多数の日本企業が中国経済はリスクばかりが大きいと誤解していたため、中国ビジネスについてまじめに検討しようとしなかった。
中国国内の中間所得層が急増し、日本企業の製品・サービスに対する潜在的需要が急拡大していたことにも気づかず、視察にすら行こうとしなかった。
そうした状態が2012年9月の尖閣問題発生後、2016年まで続いていた。2017年から徐々にその雰囲気が変わり、2018年は久しぶりに対中投資額が明確に増加に転じた(図表2参照)。
図表2 国別対中直接投資額(単位・億ドル)
(注)18年のデータは1〜11月累計前年比を基に年率換算により算出。(資料 CEIC)
上述のような自動車、ロボット・工作機械およびその他の産業分野の企業の対中投資姿勢の変化が広がりつつある状況、そして足許の日中関係の改善が当面は続く見通しにあることなどを考慮すれば、今後しばらくは対中投資の増大が続く可能性が高いと予想される。
3.データを見る限り欧米企業も投資姿勢が弱まっていない
図表2のグラフを見ると、日本企業の対中直接投資額の回復が顕著だが、同時にドイツ、英国の投資が2018年に急増しているほか、米国、フランスも決して目立って減少はしていないことが分かる。
これは、最近多くの欧米企業が中国ビジネスに対して慎重になっている状況と矛盾しているように思われる。ではどうしてこのようなことが起きているのだろうか。
第1に、対中直接投資の統計データの計上時期は、実際の投資動向に対して通常1年近く遅れるという性質がある。
2015年、2016年の2年間は中国地場系民間企業の設備投資の鈍化を中心に中国の内需が停滞したため、外国企業の業績も伸び悩んだ。
しかし、2017年以降、再び内需が回復し、外国企業の業績が回復したため、投資姿勢が積極化したと考えられる。
第2に、欧米企業が中国ビジネスに対して急速に慎重化したのは2018年以降である。
このため、その影響が統計データ上に明確に表れるまでには1年程度のタイムラグがあり、2019年のデータからその変化が反映されると考えられる。
加えて、中国経済は2018年夏場以降、1年半ぶりに再び緩やかな減速局面に入った。
今後米中摩擦がさらに激化すれば、減速はより顕著となる。そうした中国経済の変化が影響するのも2019年以降になる。
第3に、一部の欧米企業は引き続き対中投資に積極的である。ドイツの石油化学企業や英国の石油精製企業などが巨額の投資を行っている。
中国市場の規模が以前の数倍に拡大し、外資企業の中国ビジネスの売上や利益も大幅に増加している。
そのため、特に競争力の高い企業の投資額は以前に比べてはるかに巨額になり、そうした一部の企業の投資規模増大が国別の投資額を押し上げるケースが増えている。
こうした事情を背景に、国全体としては対中投資に慎重な企業が大部分を占めていても、一部の積極的な企業だけで投資額を押し上げる状況も見られている。
以上のような要因から、欧米企業の投資額が2018年に増加していると考えられる。
4.先行きの日本企業の対中投資
先行きを展望すれば、本年6月には大阪で開催されるG20サミットに合わせて、習近平主席の訪日が実現する可能性が高い。
それに合わせて、日中双方が民間経済交流を一段と強力に促進するための様々な協力案件や規制緩和政策を準備すると考えられる。
加えて、中国の中央地方政府は、投資姿勢が慎重化している欧米企業より、積極化しつつある日本企業を重視して誘致活動に注力している。
それにより、従来では日本企業が参入できなかった事業分野への参入が可能となるほか、規制緩和や許認可の面でも従来では得られなかった優遇措置を享受できる可能性が高まっている。
加えて、米中摩擦の副産物として、知的財産権の保護強化や技術移転強要の緩和といった、日本企業にとっても好ましい投資環境の整備が進むことが期待される。
こうした日中関係の改善や米中摩擦といった政治的要因を背景とする投資環境の改善に加え、前述のような日本企業自身の投資姿勢の積極化が相まって、今年はこれまで以上に対中投資が積極化する可能性が高いと考えられる。
多くの日本企業は2012年以降、数年間にわたって中国国内市場の大きなビジネスチャンスを見落としてきたため、当面は次々と新たなチャンスに気づかされるケースが続くことが予想される。
2018年の中国のGDP(国内総生産)規模は日本の2.7倍に達した(IMF世界経済見通し2018年10月推計)。
今年の中国のGDPは確実に6%成長を達成すると見られているが、そこから新たに生まれる市場規模は日本のGDPの16%以上の成長率から生まれる市場規模に匹敵する。
そのうえ、以前は中国市場のニーズは安価で付加価値が低い製品・サービスが中心だったのに対して、最近は日本企業が得意とする高付加価値で値段も日本並みあるいはそれ以上のものが中心である。
このため、日本企業にとっての中国市場の規模は表面的な経済成長率よりさらに急速に拡大しており、中国市場で得られる利益額も以前とは比較にならない規模になっている。
このように中国ビジネスの成功が日本企業、ひいては日本経済に与えるインパクトは以前に比べてはるかに大きい。
中国経済の減速や米中摩擦の激化など懸念材料はあるが、中国の巨大市場で的確なマーケティングにより販路拡大に成功すれば、巨額の利益を得ることは十分可能である。
今年こそこうした恵まれた市場環境を生かす日本企業が顕著に増加し、日中両国のウィン・ウィン関係が一段と明確になっていくことを期待したい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55210
まだ昭和の常識でアジアを見ている人はいませんか
平成の次の時代に日本が受け入れるべき厳しい現実
2019.1.17(木) 川島 博之
アジアで桁外れにリッチな人が増えている。ベトナム・ホーチミンの夜景
平成の次はどんな時代になるのだろう。ここではアジアをキーワードに、この問題を考えてみたい。まず、アジアにとって平成とはどんな時代だったのか考えてみよう。
現在、日本にとって身近なアジア(西アジア、中央アジアを除く)には40億人が住んでいる。それは世界人口の53%、世界の半分以上の人々が私たちの周辺に住んでいる。
アジアの国々を1人当たりGDPによって、「高位」(1万ドル以上)、「中上」(5000ドルから1万ドル)、「中下」(1000ドルから5000ドル)、「下位」(1000ドル以下)の4種に分類した。1989年(平成元年)と、直近のデータが得られる2017年の分布を見てみよう(下の図)。1989年の時点では下位に属する人々が圧倒的に多かった。その割合は当時のアジア人口の91%に達していた。
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/9/5/500/img_95b2c0e091c2d4b363eccbdb8b1a588521886.jpg
アジアの所得別人口分布(単位:億人、データ:世界銀行)
人間が生きていくためにはいくら必要か
ここで「1人当たりGDP=1000ドル」が意味することについて少し説明したい。それを語るには穀物価格が重要になる。過去30年間、2008年に起きたリーマンショックに伴う価格高騰の一時期を除いて、穀物の価格は1トン200ドルから400ドル程度で推移してきた。
人間が生きていくためには1日3000kcal程度が必要になる。少し大胆な仮定になるが、穀物だけで必要熱量を摂取すると、1日1キログラムほど食べなければならない。1年間に365キログラムの穀物を摂取するには、70ドルから150ドルほどのお金が必要になる。
平均所得は1人当たりGDPの約半分である。そう考えると、1人当たりGDPが200ドルの国では、食糧を十分に手に入れることは難しい。1989年の段階ではアジアでもベトナム、ラオス、ネパール、バングラデッシュなどがそのような状況にあった。
このことから分かるように、1人当たりのGDPが1000ドル程度になれば、食糧の入手に困らなくなる。もちろん、それぞれの国に格差があるから、貧しい人はそれでも食糧の入手に困ることだろう。ただ、それは各国の国内問題と言ってよい。
このことを理解した上で、図をもう一度見ていただきたい。2017年になると、1人当たりGDPが1000ドルを下回る国はネパールだけになった。そのネパールも835ドルだから、絶対的な貧困は脱したといってよい。飢えに苦しむ人が劇的に減った。これが、アジアにおいて平成の30年間に達成されたことである。それは、長いアジアの歴史において画期的な出来事と言えよう。
日本がダントツ1位だったのは一瞬だけ
現在、中国とタイは「中上」に分類されている。インド、インドネシア、ベトナム、バングラデッシュは「中下」にいる。中国の成長速度は明らかに減速しており、今後、順調な成長が続くとは思えないが、それでも2017年のGDPが8827ドルである。おそらく近い将来、先進国の入り口とされる1万ドルを越えることになろう。
また、インドやベトナムなど現在「中下」に所属する国々は、近年、年率7%程度で順調に発展しているから、そう遠くない将来に5000ドルのラインを突破することになる。中進国入りである。
平成になったとき、「上位」に入っていたのは日本、ブルネイ、香港、シンガポールだけだった。2017年にはそれに韓国とマカオが加わった。1989年の段階では、日本はダントツの1位であったが、2017年になるとマカオ、シンガポール、香港の後塵を拝するようになった。
1989年の時点では日本人と香港、シンガポールなどに住む人だけが豊かであり、アジアの大半の人々は貧しかった。しかし、平成の30年間の間にアジアの国々は急速に発展し、その状況は一変してしまった。
消えつつあるアジアの「貧しい開発途上国」
そして、もう1つ重要な点がある。アジアに日本とは比べものにならない格差社会が出現したことだ。これは、過去30年間、アジアを歩いてきた人間の実感である。
多くの国で急速に富裕層が増え始めた。彼らの多くは企業経営者やその周辺に住む人々(中国では政治家も含まれる)であり、日本のサラリーマンのように給与をもらっているわけではない。それゆえに所得を把握することが難しい。そんなわけで信頼できるデータが公表されることがないから、日本であまり議論されることはないが、彼らは平均的な日本人よりもずっと豊かである。ベンツなどの高級車を当たり前のように乗り回している。
アジアの人口は40億人だから、そんな富裕層が全人口の1%であったとしても、その総数は4000万人にもなる。
このような状況は、多くの日本人が引きずる「1989年の常識」に変革を要求している。極論になるが、もはやJICA(国際協力機構)はその使命の大半を終えたと言ってもよい。日本ではいまだに「開発途上国の人々は貧しく、助ける必要がある」という昭和の観念から抜け出せない人も多いが、ことアジアを見る限り、援助すべき国はなくなりつつある。もし、貧しい人がいたとしても、彼らを助けるべきなのは、その国に住むベンツを乗り回す人々だろう。
日本の高級住宅街はアジアの富裕層だらけに?
平成の次の時代、日本は確実にアジアの普通の国の1つになる。特に優越した豊かな国ではなくなる。そんな日本は、急増するアジアの富裕層とどう付き合えばよいのであろうか。これは、平等を尊ぶ日本にとって、極めて難しい課題になる。
現在、アジアの富裕層は銀座のデパートで高級品を爆買いしている。中国人が多いとされるが、これからは東南アジアや南アジアから来る人も確実に増えるだろう。すでに客単価はベトナムからの観光客が最も高いというデータもある。
今後、日本の高級住宅街はアジアの富裕層が住む場所に変わるかもしれない。それを多くの日本人はどのような目で見るのであろうか。「日本が買われる」と批判的にみるのか、「爆買い」をビジネスのチャンスと見るかによって、対応も変わろう。いずれにせよ、これまで以上に、日本は格差拡大とともに発展するアジアとの距離感に悩む時代になる。
昭和の感覚で次の時代を生きることはできない。今年は、新たな年号の下で将来について語る機会も増えると思うが、その際には、大きく変わったアジアの状況を頭のどこかに入れて議論してほしい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55158
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