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ソフトバンク、巨額負債削減のため上場強行→株購入者全員に損をさせた孫正義の倫理的責任
https://biz-journal.jp/2019/01/post_26211.html
2019.01.12 文=編集部 Business Journal
ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長(ロイター/アフロ)
ソフトバンクグループ(SBG)の通信子会社ソフトバンクは2018年12月19日、東京証券取引所第1部に上場した。
SBGはソフトバンク株の売却で、株式の新規公開として史上最大となる約2兆6000億円を市場から調達した。だが、株価は初日から公開価格(1500円)を大きく割り込んだ。1株1463円で初値をつけると、その後は下落。終値は1282円と公開価格を14.5%も下回った。新規公開株を買った全員が上場初日に含み損を抱える“異常事態”となった。
12月10日、ソフトバンク株の売り出し価格が1500円に決まると「高すぎる」との声が噴出した。
「企業価値の指標であるEBITDA(税引き前利益+支払い利息+減価償却費)を基に算出すると、NTTドコモとKDDIの株価がEBITDAの5倍なのに対し、ソフトバンクは7倍近い。業界平均の5倍で計算したら1株1000円程度が妥当。上場後に公開価格割れとなれば、クレームが殺到する」と、アナリストたちは不安を口にしていた。
そして不安は的中した。ソフトバンクのIPO(新規公開)で儲かったのはSBGの孫正義会長兼社長だけだ。ソフトバンク株を買った個人投資家は全員、含み損を抱え、証券会社の営業担当者は顧客に謝って回るはめになった。
ちなみに、12月28日(大納会)のソフトバンクの終値は1358円。上場来安値は12月20日の1176円だった。
■いっぺんに噴出したソフトバンクに対する不安材料
なぜソフトバンク株は、これほどまでに不人気だったのか。それはソフトバンクに対する不安要素が、いっぺんに出てきたからだ。
10月に発生した在トルコ・サウジアラビア領事館での記者殺害事件は、SBGにとって大きな不安材料となった。孫氏は、記者殺害を指示したとされるサウジのムハンマド皇太子(本人は全面否定)と「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」と名付けた10兆円ファンドを設立した。「事件を受けて、サウジマネーを忌避する投資先が出ている」(国際金融筋)という。
さらに、ソフトバンクにはネガティブな材料が山盛りだ。2018年8月、菅義偉官房長官が「携帯電話料金は今より4割程度下げられる」と発言。業界への値下げ圧力が強まるなか、NTTドコモが10月末、「2019年度以降の大幅値下げ」を発表した。対抗上、ソフトバンクは値下げを迫られ、収益の悪化が懸念される。
上場直前の12月6日には、大規模な通信障害を起こした。この障害発生後5日間で、約1万件の解約があった。そのため、市場関係者の間では上場延期が囁かれていた。
そして、株価への影響がもっとも大きかったのは中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)問題だった。
12月5日、米国の要請を受けたカナダ当局がファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を「対イラン制裁違反」容疑で逮捕した。
12月10日、日本政府は中央省庁や自衛隊が使う通信機器の調達に関する指針をとりまとめ、ファーウェイと中国の通信端末大手ZTE(中興通訊)の排除を、企業名は明記しなかったが事実上、決定した。翌11日、ソフトバンクは「政府の方針に準拠する」とのコメントを出した。
ファーウェイとZTEの製品は、米国が8月に政府機関やその関係企業での使用を禁止。11月には「日本を含む同盟諸国にもファーウェイ製品の使用と購入を中止するよう要請している」と、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。米国政府の働きかけもあって、日本政府は情報漏洩など安全保障上の懸念のある機器を排除することにした。
■トランプ政権が「ファーウェイを排除しろ」と警告
その際、米政府はSBGに「ファーウェイを排除しろ」と警告を出していたという。日本の大手メディアは報じなかったが、米国在住の起業家でブロガーの中島聡氏がメルマガ「週刊Life is beautiful」(2018年12月18日号)で米国の報道を紹介している。
携帯電話のスプリントとTモバイルUSとの合併に懸念を示す声が、米国政府内で出ているという内容だ。SBGはスプリントを買収し、TモバイルUSの買収を計画したが、結局、主導権をTモバイルUSの親会社、ドイツテレコムに渡すかたちで合併を進めていた。
「ここに来て、米国政府が米国内の無線通信ネットワークのインフラにファーウェイの通信機器を使うことに大きな(国防上の)懸念を示しており、5G無線通信網の構築に関してファーウェイと近い関係にあるソフトバンクが影響力を持ったままスプリントとTモバイルを合併させることには問題があると見ている人がいるのです」(中島氏のメルマガより)
12月11日、ソフトバンクが「政府方針に準拠する」というコメントを出した背景には、こういった米政府の圧力があったからとの見方だ。
同月17日、対米外国投資委員会(CFIUS)が携帯電話3位のTモバイルUSとSBG傘下で4位のスプリントの合併を承認した。合併承認には米司法省と米連邦通信委員会の承認も必要になるが、まずは最初の関門をクリアした。「ファーウェイ製品の排除をSBGが約束した見返りに、合併を認めた」と、米国の通信業界の有力者は受け止めている。
■有利子負債削減策としてスプリントを連結決算から切り離す
孫氏は、熱しやすく冷めやすい。米携帯電話3位のスプリントを買収したときは4位のTモバイルUSも串刺しで買収して、世界の「携帯電話王」になる野望を抱いた。だが、TモバイルUSの買収は、米当局の不許可判断もあって頓挫。携帯電話への熱意は消えた。
AI(人工知能)革命を起こす投資が、孫氏の新たな情熱の対象となった。サウジのムハンマド皇太子をパートナーとして設立したSVFがAIの先進企業に資金を注ぎ込む。サウジマネーを活用して第2、第3の10兆円ファンドを構想している孫氏にとって、全米4位に転落したスプリントは、今や重荷でしかない。
SBGの連結有利子負債は2018年9月末時点で18兆円近くに上り、利払い負担は18年3月期に約5100億円に達した。格付けは投機的水準だ。有利子負債のうちスプリントが4兆6100億円と4分の1を占める。有利子負債の削減をするためスプリントを連結決算の対象から外すことにした。
スプリントはSBG、Tモバイルはドイツテレコムが、株式の大半を握る。合併は約6500億円規模の株式交換方式で行う。スプリントは新生Tモバイルの100%子会社になる。これにより、SBGは新生Tモバイルの株式を一部保有することになるが、スプリントは子会社ではなくなる。
■社債が発行できず子会社上場で資金調達か
有利子負債削減のカードは、もう1枚あった。それがソフトバンクの上場だ。SBGの社債の格付けは「投機的」水準である。これ以上、社債を発行しようとしても、有利な条件で資金調達はできない。ソフトバンクを新規上場させ、市場から調達するのが早道だった。
SBGの有利子負債18兆円のうち、1年以内に返済や償還を迫られる長期借入金と社債は2兆5000億円。台所は火の車だ。SBGはソフトバンクの上場で2兆6000億円を調達した。投資家に損をさせてでも高値での公開の方針を貫いたのは、SBGの台所事情があったという指摘が多い。
ファーウェイ製品のリプレイス(置き換え)によるコスト増が重くのしかかる。ソフトバンクは国内通信大手で唯一、ファーウェイとZTEの基地局を使っている。ソフトバンクは中国製の基地局を数年かけて、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの製品に順次切り替えていく。2019年春以降に整備を始める次世代通信5Gの基地局も、中国製を排除し北欧2社に発注することになるという。
ソフトバンク技術担当の宮川潤一副社長は12月19日の新規上場後の会見で、基地局の一部で使用しているファーウェイ製品の置き換えによる影響について、「最悪の話をすると1000億円ぐらいになる」と述べた。すべてを交換すると更新投資が1000億円に膨らむことを示唆したとみられている。とてつもないコスト増を投資家は憂慮している。
ソフトバンクは、悪材料が降り積もるなかで新規上場に踏み切ったわけで、“強行上場”との声もあがっている。
■SBGの保有株の下落で露呈した株価頼みの経営の危うさ
18年12月26日の東京株式市場でSBGの株価が、一時前日比3%安の6803円まで下がった。7000円の大台を割り込むのは16年12月以来2年ぶり。SBG株は26日まで6日続落で、6日間の下落率は19%。同じ期間の日経平均株価の下落率(10%)を大きく上回った。なお、大納会の終値は7305円だった。
米国発の世界的な株安が、投資会社としての性格を強めるSBGに逆風になるとの見方が強まり、保有株の下落を懸念した売りが膨らんだ。
SBGが傘下の投資ファンドを通じて保有する米半導体エヌビディアは11月末比22%安。アリババ集団の米預託証券(ADR)も18%安に沈んだ。
保有株の下落は、SBGの利益計画を狂わせることになる。保有株が上昇するという前提で収益計画を立てているからだ。
「『来年(2019年)は日本経済が経験したことのないレベルの営業利益が出せる』。SBGの孫正義会長兼社長は(18年)11月、決算発表時に豪語した」(18年12月9日付日本経済新聞)
トヨタ自動車の19年3月期通期の営業利益は2兆4000億円の見込み。それを上回る営業利益を叩き出して「日本一」になると宣言した格好だ。
SBGの18年4〜9月期の連結営業利益は1兆4207億円。このうち4割弱はアリババ集団株式などの「未実現評価益」が占める。投資先の企業価値を四半期ごとに評価し、値上がり分を会計上、利益として計上する“孫マジック”である。持ち株を売らなければ実現益にはならず、キャッシュ(現金)は生まない。投資先の未実現評価益を積み上げていけば、トヨタでさえも達成したことのない営業利益を確保できると豪語したのだ。
大化けする可能性がある一方、損失を出す恐れもあるのが、株式の評価益の宿命だ。保有株の下落が続き、もし、保有株の評価損が出るようなことがあれば、「営業利益日本一」の野望は、あっという間に潰える。
保有株の株価に頼った“孫氏の商法”の欠陥が、はからずも露呈した。
(文=編集部)
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