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逆イールドは本当に「恐怖の使者」なのか FRBはいずれにせよ債券投資家の声に耳を傾けるべき
https://diamond.jp/articles/-/190643
2019.1.11 The Wall Street Journal ダイヤモンド・オンライン
Photo:Reuters
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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「イールドカーブの逆転」と題する新たなホラー映画がやって来た。ウォール街を席巻するこの映画の目玉は、身も凍るような正体不明の力だ。それは人々の心の中に忍び込み、ケーブルTVのニュースに一喜一憂させ、金融市場にパニックを起こす。
長期債の利回りが低下して短期債の利回りに近づくにつれ、われわれが幾度となく思い起こすのは、過去5回の景気後退(リセッション)に先立って逆イールドが発生していたことだ。調査会社プラトルの分析によると、企業の電話会議(特に金融機関)では、イールドカーブ(利回り曲線)に言及する回数が着実に増えている。だがどの程度心配すべきかについては、逆イールドが本当に景気後退の予兆となるのか、または景気後退を引き起こすのか、あるいはその両方なのかということが決定的な要因となる。
短期金利は米連邦準備制度理事会(FRB)が決定し、長期金利は債券市場の投資家が決める。FRBが雇用とインフレを安定させながら景気の「ソフトランディング」を目指し、金利を緩やかなペースで引き上げる中、イールドカーブは過去2年にわたりフラット化の傾向にあった。だがこの数カ月のフラット化を主導したのは債券利回りの低下だった。一般的な解釈は次のようなものだ。投資家はFRBが利上げを急ぎすぎており、経済を景気後退に陥らせる恐れがあると考えている。
これは、イールドカーブがリセッションを予兆しているという意味だ。しかし利回りが反映するのは将来の見通しだけではない。利回りは債券の需給に応じて変動する。2000年代初め、中国などの貿易黒字国は手にした資金を米国債につぎ込んだ。このいわゆる「過剰貯蓄」により債券価格は高止まりし、利回りは低下した。2008年以降は、FRBや各国・地域の中央銀行が景気刺激策として数兆ドル規模の国債買い入れ(いわゆる量的緩和=QE)を実施した。FRBのアナリストの推定では、QEにより2017年末時点で利回りは約0.85ポイント低下した。
その効果はFRBが保有資産の縮小を進めたことで若干弱まった。だが一方で、欧州中央銀行(ECB)は先月まで債券の購入を続けていたし、日銀は今も資産を積み上げている。要するに、QE以前の時代ほど、逆イールドは不吉な前兆ではなくなっている。
ただ、こうした「今回は違う」的なロジックには注意が必要だ。FRBは2006年に逆イールドを先の「過剰貯蓄」を理由に軽視していた。とはいえ、イールドカーブを読み取る際は需給状況を排除するよう心掛けるべきだろう。昨年、FRBのエコノミストはこれを実行すべく、現在の短期金利と、市場が予想する18カ月後の金利水準(投資家が考える経済の短期的な見通しをより純粋に示すもの)を比較した。このスプレッド(金利差)は、従来のイールドカーブよりも景気後退のシグナルとしての信頼度がはるかに高い。そしてこの時点で景気後退の兆しはなかった。
残念ながらその後、この金利差もフラット化している。投資家は実際、リセッションのリスクが相当高いと考えていることがうかがえる。だがここでもう1つの疑問が持ち上がる。投資家はFRBと同じニュースやデータを入手している。それなのに投資家の方がFRBより景気動向をよく理解していることがあり得るのか? JPモルガンのエコノミスト、ジェシー・エドガートン氏は、経済指標はリセッションの予兆としてイールドカーブより優れた実績を残していることを示した。現在、経済指標はイールドカーブよりも景気後退の可能性が低いとみている。
そこでもう1つの可能性が浮上する。債券投資家とイールドカーブは、単にリセッションの予兆なのではなく、自らそれを引き起こすのではないかということだ。例えば貸出金利(債券利回りに連動)と預金金利(短期金利に連動)のスプレッドが縮まれば融資の利ざやは縮小するからだ。
あるいはイールドカーブが心理的に作用し、景気後退の一因となるのかもしれない。景気循環においては常に「心理」が重要かつ予測不能な役割を果たす。特に市場にパニックが発生してる時期はそうだ。投資家は安全な逃避先として債券に殺到し(そして利回りを押し下げ)、リスクの高い株式や社債を売り払う。その結果、信用供給がひっ迫し、家計資産が縮小して経済への直接的な打撃となり、さらに不安が助長されて間接的な打撃にもなる。もし投資家や企業、消費者がリセッションの足音を間近に感じれば、投資も支出も雇用も減らすだろう。こうなると、リセッションが一段と現実味を帯びる。
FRBが最近行った調査では、金融機関の融資担当者の多くが、逆イールドが発生すれば貸し出し基準を厳しくすると答えた。単に融資による利益が減るだけではなく、景気悪化やローンの質低下のシグナルとなるからだ。
もし本当に重要なのがファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)だけならば、FRBはいまウォール街で上映中の「イールドカーブの逆転」を無視してよいはずだ。だが、リセッションは自己実現的予言となる可能性がある。だから最後まで席を立たずに注視しなければならない。
(The Wall Street Journal/Greg Ip)
逆イールドは本当に「恐怖の使者」なのか
— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) 2019年1月10日
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— 走ざ(案山子のしもべ) (@S_orza) 2019年1月10日
債券投資家とイールドカーブは、単にリセッションの予兆なのではなく、自らそれを引き起こすのではないかということだ。
金融学者の先生たちに聞いていても色々な意見がありました。
— SKJ (@skj_kazuki) 2019年1月11日
僕としては、マーケットが感情に左右される以上、多少なりとも影響ありだと思います。
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対中貿易ばかり論点になりFRBの動向は後追いになっている気がするが、張りぼての好況があっさり剥がれ落ちる危惧。
— みけ✪snow tail (@rukia_mike) 2019年1月11日
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