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市場が混乱すると円高になるのは「円が安全資産」だからではない理由
https://diamond.jp/articles/-/190576
2019.1.11 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
Photo:PIXTA
円が安全だから
買われるというわけではない
昨年12月から年初にかけて、世界的に株価が暴落したが、同時に円高となった。世界的な株安と円高の同時進行は今回に限ったことではなく、世界の金融市場が動揺すると「投資家のリスク回避のために、安全資産である円が買われた」という報道とともに円高になることが多い。
しかし、円が安全資産だという説明には、違和感を持たざるを得ない。世界最強の軍事力を持つ米国に守られている国であり、政府の借金が巨額で財政破綻を心配している人もいるという国の通貨が、ドルやユーロより安全だとは到底思えないからだ。
リーマンショックのときには円高となり、「安全通貨の円が買われた」と説明されても、違和感はなかった。当時は、米国と欧州が金融危機に苦しんでいる一方、日本の銀行は相対的に健全で、日本は金融危機には陥らなかったからだ。恐らくそのときの「成功体験」を引きずった人々が、同じ表現をその後も使い続けているのだろう。
そうした人の中には、金融危機などで円高になる本当の理由を知らない人も、知っているけれども説明が長くなるのを避けたい人も、両方いると思われる。
輸出企業の持ち帰った
ドルを買うのは誰か
日本は、数十年にわたって経常収支の黒字が(若干の例外を除けば)続いてきた。その間、輸出企業などが持ち帰ったドルを銀行に売りに行ったが、それを買ったのは誰だろう。一部は輸入企業などが買ったが、経常収支が黒字だということは、それだけでは買い手が足りないということだからだ。
典型的なのは、「米国債の方が、日本国債より金利が高い。米国債を買うためには円をドルに替える必要があり、そうすると為替リスクを抱えることになるから、うれしくはないが、リスクを取ってでも高い金利を受け取ろう」という投資家だ。
そうした投資家たちは、気分によって「多少のリスクはあっても儲けを狙いたい」と考えるときと、「儲からなくてもいいからリスクを避けたい」と考えるときがある。前者は「リスクオン」と呼ばれ、特に心配事がないときに多く出現する。前者は「リスクオフ」と呼ばれ、何か悪いことが起きそうな予感のするときに多く出現する。
リスクオフになると、過去に円をドルに替えて米国債を購入していた日本人投資家たちが米国債を売却し、ドルを売却して資金を日本に持ち帰り、じっと静かに嵐が通り過ぎるのを待つ。この過程におけるドル売りが円高の主因なのだ。
米国の銀行からドルを借りて米国株式に投資している投資家が、邦銀から円を借りた方が金利が安いので、邦銀から円を借りてドルに替えて米国株式を購入することがある。これを「キャリートレード」と呼ぶが、原理としては同じことだ。
「円高になると、邦銀に返済するときの負担が重くなる(多くのドルを円に替えないといけない)のでリスクはあるが、低い金利で借りられるメリットを享受しよう」ということだからだ。
こうした投資家は、リスクオンのときは増加し、リスクオフのときは減少するので、市場全体がリスクオフになると円高が進むのだ。
キャリートレードの場合には、円高が進むと貸し手の銀行が、借り手の返済能力を不安に感じるようになって返済を要請するといったことも起き得る。そうなると、円高がさらなる円高を招くといったことにもなりかねない。
「美人投票」が
円高を加速させる
戦争や金融危機が起きるかもしれないといったとき、投資家たちはリスクオフになってドルを円に戻す。それが円を高くすることを知っている他の人々(例えば普通の米国人投資家)は、あらかじめドルを円に替えておくことで利益を得ようとする。
為替や株式の短期売買においては、「他の投資家が何をしそうか」ということを皆が考えながら行動しているので、「皆が円高を予想していると、皆が円を買うので実際に円高になる」ということが起きるのだ。これは、「美人投票」といわれる現象だ。
彼らもリスクオフではあるのだが、確率的に円高になる確率が十分高いと判断すれば、「円安になるリスクを取っても、円高になるチャンスを狙おう」とするわけだ。
こうした動きは、投機家といわれる人々に限られるものではない。例えば日本の輸入企業は、円高を予想するので海外に送金するドルをギリギリのタイミングまで待ってから買うであろうし、場合によっては銀行からドルを借りて海外に送金するだろう。
ドルを借りた場合の銀行に払う金利は高めだが、銀行に返済するときまでに円高になっていれば、結局、トータルの返済負担は小さいことになるからだ。
経常収支黒字国の
金利が低い理由を考える
ここからは余談だが、日本政府は巨額の財政赤字を続けていて、将来は破産するかもしれないと考えている人も多いようだ。だが、極めて低い金利で国債が発行できている(借金することができている)。なぜだろうか。
それは、もしも日本国債の利回りが、米国債と同じだった場合に何が起きるかを考えてみれば理解できよう。日本人投資家は、日本国債を買っても米国債を買っても同じ利回りが得られるので、米国債を買うインセンティブがない。米国債を買うためにドルを買うと、為替リスクを負うからだ。
日本政府が破産する可能性は、長期的には否定できないが、短期的にはその可能性は極めて低いから、投資家はドルを買うことによる為替リスクの方を嫌う。
そうなると、輸出企業などが持ち帰ったドルが売れ残ってしまうので、結局は「投資家たちが米国債を買いたくなるまでドルが値下がりし、日本国債の利回りは、米国債の利回りを下回る」のだ。
将来、日本国債の利回りが、米国債の利回りを上回る可能性としてはいくつかのケースが考えられる。
「日本の経常収支赤字が続き、日本政府が外国から借金をしなければならなくなった場合」「日本政府が近日中に破産するかもしれないと多くの投資家が真剣に考えた場合」「資本逃避が本格化して、投資家たちが円をドルに替えて資金を外国に持ち出そうとした場合」などだ。
もっとも、いずれも近いうちには決して起きないと思われる。「南海トラフ大地震が起きます」という警報が出た場合はこの限りではなかろうが。
本稿は以上である。なお、金融取引には上記の他にもさまざまなものがあるが、金融関係者ではない一般読者におかれては、「いろいろあるようだが、本質的には同じものだ」と考えて大きな問題はないといえる。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
市場が混乱すると円高になるのは「円が安全資産」だからではない理由 | 重要ニュース解説「今を読む」 | ダイヤモンド・オンライン https://t.co/jd3HLIQ3Gj
— Baatarism/ちゃんぷるー (@baatarism) 2019年1月10日
ふむ。
— 今川哲矢 Tetsuya Imagawa (@TetsuyaImagawa) 2019年1月10日
>>
リスクオフになると、過去に円をドルに替えて米国債を購入していた日本人投資家たちが米国債を売却し、ドルを売却して資金を日本に持ち帰り、じっと静かに嵐が通り過ぎるのを待つ。この過程におけるドル売りが円高の主因なのだ。 #NewsPicks https://t.co/VTK7GHXkJS
「リスクオフになると、過去に円をドルに替えて米国債を購入していた日本人投資家たちが米国債を売却し、ドルを売却して資金を日本に持ち帰り、じっと静かに嵐が通り過ぎるのを待つ。この過程におけるドル売りが円高の主... #NewsPicks https://t.co/hw7NgKVSuz
— Kazuhisa Shibayama (@Kazu_Shibayama) 2019年1月11日
おぉ〜これは金融や投機の素人にも解かりやすかったです。
— Satoru Kawasaki (@windpic) 2019年1月11日
注)やってないしやらないけどwhttps://t.co/m7Jd61RMPj
市場混乱時に円高になる理由
— 小松 由和 / Yoshikazu Komatsu (@komaty1210) 2019年1月11日
・円が安全だから買われるわけではない
・リスクオフになると、過去に円をドルに替えて米国債を購入していた日本人投資家たちが米国債を売却、ドルを円転して嵐が通り過ぎるのを待つ。
・この過程におけるドル売りが円高の主因であるhttps://t.co/r2xE9NfRx6
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