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平成に積み残した3つの宿題、技術革新が新時代のカギ 日本人の思考は3つのパターンで乗っ取られる 日本経済のリスクシナリオ
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/469.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 07 日 21:28:18: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 債券反落、リスク選好の流れで売り優勢−日銀買いオペ結果も重し トレーダーが米国債ロング大幅縮小−雇用統計受けた利回り急騰 投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 07 日 21:24:03)

コラム2019年1月4日 / 15:02 / 2日前 オピニオン:

平成に積み残した3つの宿題、技術革新が新時代のカギ

武田洋子 三菱総合研究所 チーフエコノミスト
5 分で読む

[東京 4日] - 日本は平成30年間の大部分をバブル崩壊後の負の遺産への対応に追われ、低賃金の若者を生み出し、それが少子化という現在の社会的な構造問題を作り出したと、三菱総合研究所・チーフエコノミストの武田洋子氏は指摘する。

負の遺産の処理は進み、デフレではない状況まで経済は回復したものの、次の時代には持続可能な財政と社会保障制度の構築、国際競争力の回復という、未来に対して責任ある政策に取り組む必要があると話す。日本社会が人口減少に直面する中で、こうした問題を解決するには技術革新が欠かせず、労働市場の改革がカギになると分析する

同氏の見解は以下の通り。

<「就職氷河期」という人的資源の損失>

平成の30年間は日本にとって試練の時代で、大きく2つの特徴がある。

1つは1991年のバブル経済崩壊がもたらした負の遺産の処理に、多大な年月を費やしたことだ。1997年の山一証券、1998年の日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の破たんは、不良債権問題がいかに深刻であったかを示している。りそな銀行が実質的に国有化された2003年辺りから株式市場はいったん回復に向かったが、デフレという失われた20年が続いたのも、結局はバブル崩壊の後処理に膨大な時間がかかったことに起因する。

重要なのは、これが単に金融システムの問題にとどまらなかったことだ。日本企業は「雇用を守った」と言われるが、それはあくまで既存の雇用についてであり、新卒採用は相当抑制された。若者が希望の仕事に就けない「就職氷河期」を生み、非正規雇用も拡大した。

彼らが今、40歳代になっている。人的資源の大きな損失だ。バブル崩壊のしわ寄せは、好景気の恩恵を受けた世代を通り越して次の世代に行った。当時の経営者は、目の前にある雇用は守ったものの、その下の世代を犠牲にしたことをはっきりと認めなければならない。

このことが社会にもたらした悲劇は大きい。日本の人口ピラミッドは団塊の世代と、その子供たちである団塊ジュニアが2つのこぶになった「ひょうたん型」をしている。団塊ジュニアの子供世代がもう1つこぶを作っているべきだが、そうなってはいない。雇用が不安定化し、賃金も抑制された結果、団塊ジュニアの世代で出産が増えなかったためだ。日本の人口構造のゆがみはバブル崩壊と無関係に見えるかもしれないが、実はそれぞれ底流でつながっている。

2つ目は自然災害だ。1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災、ほかにも多数の大地震や水害が発生し、もはや自然災害は異常事態ではなくなりつつある。多くの人命を奪った災害が相次いだにもかかわらず、その教訓はあまり生かされていない。

日本は高度成長期に住宅地を無制限に拡大させてきたが、人口減少社会を迎える中、今後も続くであろう災害を想定した国土利用を検討すべき時期に来ているのではないだろうか。

<積み残した宿題>

平成の終盤で安倍晋三首相が打ち出した経済政策によって、バブル崩壊後の負の遺産の処理は進み、デフレではない状況まで経済は回復したが、次の時代に積み残した課題も多い。1つは財政健全化だ。政府債務残高の対国内総生産(GDP)比は、2018年に236.0%と、第2次世界大戦末期の水準を上回っている。持続可能でないことは明らかだ。

高齢化社会への対応も求められる。現在の医療・社会保障制度は、平均寿命が72歳だった50年以上前に作られたものだ。現在は寿命が84歳に延びる一方、団塊ジュニアに子供が少ないため、確実に支え手が減っていく。

団塊の世代が75歳以上になる2022年以降、医療費の自己負担が原則1割という後期高齢者の仕組みを続けられるのか、早急な見直しが必要だろう。同時に、生涯を通じて現役でいられる社会が実現できるよう地域レベルでシニアが活躍する場を作るほか、自立生活支援ロボットや、予防医療・介護のためのバイタル・データの有効利用など新技術の活用促進を組み合わせることが肝要だ。

さらに国際競争力の回復も焦眉の課題だ。スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力調査によると、日本のランキングは平成元年(1989年)の1位から2018年には25位まで低下した。

最近では、次世代通信規格「5G」などを巡る米中の激しいつばぜりあいが注目を集めている。究極的には世界の覇権争いだ。日本は技術面で脅威を与える存在ではなくなってきているため覇権争いに巻き込まれていない、という側面があることを深刻に受け止めるべきだ。

中国は2017年に国際特許出願件数で日本を抜き、米国に迫ろうとしている。量子コンピュータと人工知能(AI)では米中がしのぎを削り、次世代のスーパーコンピュータは中国が優位と言われている。

人口が減少していく日本は今後、経済規模でのプレゼンス後退は避けられない。世界への投資という点でも中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗できるような影響力の行使には限界がある。その中で日本が国際的なプレゼンスを維持するには、自由貿易の旗振り役としての姿勢を世界に示し続けること、そして、技術力・国際競争力の回復が重要になる。政府は次の世代に向け、ここに徹底的に力を入れるべきだ。

<避けて通れない労働市場改革>

日本経済は人口減少という厳しい逆風にさらされてはいるが、労働や資本の量の伸び以外の全要素生産性(TFP)の伸びが、先進国のなかでも低いのは説明がつかない。社会的な課題を解決するために技術革新(イノベーション)を起こすことが、企業が追い求める成長の意義であり、そうしたイノベーションの結果として、大きな新市場を生み出すという考え方が大事だろう。

次々とイノベーションを生むために日本がもっとも構造を転換しなければならないのは、労働市場の在り方だ。職種間・企業間で円滑な労働移動が進まない限り、これからの環境変化に対応できない。

まず、少子高齢化や長寿化から労働供給の構造が変化する。また、需要面では、AIやロボティックスなどの新技術が人間のタスクを代替していく動きが広がる一方で、技術を活用し新たなビジネスを生み出す人材の需要が高まる。

これらの労働需給の両面を考慮した三菱総合研究所の分析では、労働需給の不足超過幅は2020年代前半まで広がるが、後半は不足幅が縮小し、2030年には解消に向かうとの試算結果が得られる。

しかし、問題は職種別のギャップだ。事務職や生産職における雇用の余剰感が増す一方、専門人材が170万人不足するとの結果が得られる。つまり、日本の労働市場の本質的な課題は、「人材の大ミスマッチ時代」を迎えることにある。

三菱総研では、今後必要となる人材像を明確化するため、「タスクの特性」に着目して人材を二軸上にマッピングし、日本の人材ポートフォリオの姿を描き出すことを試みた。日本では「定型的・手仕事的なタスク」の占める割合が44%と高い一方、「創造的・分析的なタスク」は16%と低い。モノのインターネット(IoT)やAI、ロボットよる業務自動化が進むことを考えれば、より創造性が求められる仕事にシフトしていかなければならない。

その対策として、まず、仕事の内容を細かく規定した「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」の明確化が必須となる。そのうえで、質の高い学び直しを奨励し、新たに習得したスキルや知識を企業が評価する処遇制度へと、雇用慣行を見直し、より柔軟な労働市場を実現していく必要があろう。

平成の時代は負の遺産の処理に追われてきた分、これから迎える次の時代では、より持続可能な社会を求め、前向きな挑戦をしていく流れを作る必要がある。

安倍政権の「アベノミクス」で、負の遺産の処理は進み、現在の経済情勢は大幅に改善した。ここからは未来に対して責任ある政策がより重要となる。包括的で持続可能な社会を作るために長期的なビジョンを描き、企業も個人も、意志を持って、次の時代を切り拓いていく。そのような新時代の幕開けとなることを願っている。

武田洋子 三菱総合研究所 チーフエコノミスト (写真は筆者提供)
*武田洋子氏は、三菱総合研究所 政策・経済研究センター長、チーフエコノミスト。1994年日本銀行入行。2009年三菱総合研究所入社。米ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了。

*本稿は、ロイター特集「平成を振り返る」に掲載されたものです。武田洋子氏の個人的見解に基づいています。

(聞き手:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/opinion-yoko-takeda-idJPKCN1OY08E

 

【第11回】 2019年1月7日 鈴木博毅 :ビジネス戦略コンサルタント・MPS Consulting代表

日本人の思考は3つのパターンで乗っ取られる

日本人は相対的に問題に対処することが苦手だ。公害が起きれば、「公害=絶対悪」で、絶滅すべき、工場は全部止めろという破壊的な結論になりがち。これでは現実的な対処はできず、どちらかを叩き潰すまで続き、問題は一向に解決できない。こうした思考は、日本人が「空気」に操作されやすい特徴と大きく関係している。15万部のベストセラー『「超」入門 失敗の本質』の著者・鈴木博毅氏が、40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する。


「空気による支配」の3つの基本構造
 「私たち日本人は「空気という妖怪」に、どう支配されてしまうのか。山本七平氏は、「空気支配」の3つのパターンを挙げています」

[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
[2]命題を絶対化する「言語」による支配
[3]「新しい偶像」による支配

 空気支配は基本的に、「臨在感」「感情移入」「絶対化」などの心理的効果を背景にして生まれています。

 空気支配の力は、いずれも人の心から生み出されているのです。心に芽生える恐怖・救済への希望・依存したい心理などを、人間を拘束して操る物理的な力に変えているのが、空気の支配手法(技術)だと言ってもいいでしょう。

 では、空気による支配の3つの基本構造とは何か、順に見ていきましょう。

日本人が人骨に感じる特別な感情とは?
支配構造[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
 一つ目は、人骨などへの感情移入・臨在感によって起こる原始的な空気支配です。

 日本人とユダヤ人が共同で、毎日のように人骨を運ぶことになった。それが約一週間ほどつづくと、ユダヤ人の方は何でもないが、従事していた日本人二名の方は少しおかしくなり、本当に病人同様の状態になってしまった(*1)。

 遺跡の発掘現場で人骨が大量に出土しました。人骨を運搬する作業を続けると日本人だけが病人のようになり、人骨投棄の作業が終わると、二人ともケロリと治ったのです。

 この二人に必要だったことは、どうやら「おはらい」だったらしい(*2)。

 日本人の二人は、人骨に特別な文化的感情を持っていました。いわゆる穢れという意識、忌避すべき対象、あるいは人骨に魂が宿っているなどの感覚です。

 その上で、「感情移入の絶対化」すなわち、自分たちの心や感情が現実であるという思考が強くなっていけば、「穢れや恐れを人骨に感じる」→「感情が現実であり、自らが穢れや呪いなどにかかる」という状態を招いてしまうのです。

 一方、人骨に日本人のような文化的感情を持たないユダヤ人は何ともありませんでした。この場合は、日本人の伝統と感情の結び付けが、空気の支配を生み出したのです。

(注)
*1 山本七平『「空気」の研究』(文春文庫) P.32
*2 『「空気」の研究』P.32
敵が滅ぶか自分が滅ぶかという破滅的な思考
支配構造[2]命題を絶対化する「言語」による支配
 2番目の、命題を絶対化する言語による支配とは、一体どんなものでしょうか。まず、命題を絶対化することで生まれる空気支配について見ていきましょう。

 対象の相対性を排してこれを絶対化すると、人間は逆にその対象に支配されてしまうので、その対象を解決する自由を失ってしまう、簡単にいえば、公害を絶対化すると公害という問題は解決できなくなるのである(*3)。

「公害=絶対悪」と捉えると、どの辺りで折り合いをつけていいかわからなくなります。公害が絶対悪ならば絶滅すべき、工場は全部止めろ! となってしまうのです。

 命題の絶対化は、敵が滅ぶか自分が滅ぶかという破滅的な思考につながります。

 相対化できると、住民の健康を絶対に害しない状態まで汚染レベルを下げることが一旦の解決策、つまり公害=悪とならない条件として現実的な思考が可能になります。

【命題の絶対化】
AはBである、という前提を絶対化して他の可能性を考えさせない

 現実の世界では、Aは条件次第でBになる場合もあれば、Cになる場合もある。成立の条件を明確化して、「実は検討していない」別の可能性を広く探るのです。

 逆に、人を誘導し拘束したい場合は、命題を絶対化して他の可能性を検討させません。そのために、AはCである場合や、他の可能性を考える者を弾圧して、徹底的に「AはBである」という、誘導のためにつくった勝手な前提だけを絶対視させるのです。

真っ赤なウソのラベルで大衆を騙す
 では、言葉の絶対化で空気をつくり上げるとは、どんな状態でしょうか。

 例えば、法案成立の目的が自動車への「増税」にある場合。中身を反映するなら、法案の名称は「新たな自動車増税法案」でしょう。

 しかし、1970年代に、実際に議論された法案には、大気汚染と関連する「日本版マスキー法」の呼称が付けられました。マスキー法とは、自動車の排出ガスを現状から90%削減するというアメリカの大気浄化法改正法です。当時は大気汚染の科学的な検証が確立しないままに、増税ではなく環境問題に関連した法案として成立したのです(ただし、法案の成立は日本の自動車技術の革新を促すことに大きく寄与しました。山本氏は議論の過程における空気の存在を指摘)。

 ラベルに書いてあるのは文字、単なる名称です。ところが名称を絶対化する、名称を感情的に理解させると、成立条件を考えずに、貼り付けたラベルが「そのまま中身を示している」と考えてしまうのです。

 単なる空き瓶に「劇薬」と大きく書かれた紙を貼り、どくろのマークをイラストとして描けばどうなるか。歩道にそのビンがあれば、人はそれを避けて通るでしょう。場合によっては警察や役所に通報するかもしれません。

 名称(ラベル)やイラストなどの図像は、人間の思考を強力に拘束します。命題や名称による空気の支配を発揮させるのは簡単です。最初に、真っ赤な「ウソのラベル」を貼るのです。AはBである、という命題をつくり、本当はCやDである中身を隠すのです。

 大衆をだますために、中身とまったく違う名称のラベルを最初にビンに貼っておく。これで、大衆は中身がラベルとまったく違うとは、疑わなくなるのです。命題や名称をある種の前提として機能させて空気を生み出す典型的なウソ、詐術です。

(注)
*3 『「空気」の研究』 P.63
日本人は「言葉に隠された前提」に気づけない
 ところで、言葉の絶対化は、なぜ空気に結び付くのでしょうか。最大の理由は、多くの言葉の中に実はすでに「前提」が隠されているからです。

 例えば、「日本版マスキー法」というラベル=言葉には、アメリカの環境改善法をモデルにした法案という前提があります。逆にいえば、この法案が環境問題を意識してつくられたという“意図された前提”が潜んでいるのです。

 先の劇薬というラベルなら、危険であるという一般的な前提があり、さらにはラベルと中身が一致しているという前提も隠されています。

意図的に設計された言葉には、「隠された前提」があり、言葉の成立条件を疑わないことは、相手の醸成したい空気(前提)に誘導され、操られることを意味するのです。言葉による空気の詐術は、言葉に隠された前提を利用して人を騙しているのです。

狂気の「大本営発表」で破綻した旧日本軍
 事実と異なる発表を、現在でも「大本営発表」と表現することがあります。本来は、1937年11月から1945年8月まで行われた、戦況に関する発表を指しています。

 大本営発表のデタラメぶりは、実に想像を絶する。大本営発表によれば、日本軍は太平洋戦争で連合軍の戦艦を四十三隻沈め、空母を八十四隻沈めたという。だが実際のところ連合軍の喪失は、戦艦四隻、空母十一隻にすぎなかった。つまり、戦艦の戦果は十・七五倍に、空母の戦果は約七・六倍に、水増しされたのである(*4)。

 書籍『大本営発表』(辻田真佐憲・著)では、実際にサイパン島での戦闘に参加して重傷を負い、米軍の捕虜になった平櫛少佐の戦後回想の言葉も紹介しています。

『必勝の信念』『大御心を奉じ』『一億一心』『八紘一宇』『聖戦完遂』『断乎撃滅』『向うところ敵なく』『勝利はあと一歩』……何というむなしい言葉の羅列であろう。官僚の作文だけでは戦争はできない。こういう無内容・無感動の言葉を適当に操作していれば、知らぬまに勝利がころげこんでくる、とでも思ったのであろうか(*5)

 発表された言葉や数字は、現実と一致していなければすべて虚構(真っ赤なウソ)ですが、日本人は、「言葉=現実として絶対化する」、言霊信仰のような思考をしがちです。しかし一部の大衆は、戦局の悪化に気付いており、噂は全国に広がっていました。

「今日本は負戦さばかりだそうですね。発表ばかり勝つた様にしてゐるが、本統[ママ]は負けて居るとの事だ」(1942年12月28日、熊本県内の投書)(*6)

「サイパンに出撃した連合艦隊は全滅した」「『ラヂオ』を聞いてどうするか。軍報道部の『ニュース』は嘘ばかりだ」(*7)

 言葉=現実という感覚を持つ日本人は、言葉と現実を突き合わせる習慣が希薄です。

 しかし、言葉と食い違う現実は常にあり、思いや思考と現実も、本来まったく別の存在です。言葉の絶対化、感情移入の絶対化は、大本営発表を異常な魔法に仕立て上げ、現代でも日本人を口先だけで何度も騙すことができる状況をつくり上げているのです。

[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
[2]命題を絶対化する「言語」による支配

 二つの空気は、人の心の中で結び付けられた、何らかの意味や感情を、拘束力に変換することで、空気として大衆を誘導し、視野を狭める効果を発揮します。

 日本人は、命題や言葉、心の中で結び付けられた意味と現実を同一視する、原始的な感覚を保持したまま、技術革新を成し遂げて近代化に成功した稀有な国です。

 このような国で、言葉と行動がまったく違っても、恬として恥じないウソつきがいれば、社会に大混乱を引き起こし、国家を未曽有の破滅に誘導できてしまうのです。

 山本七平氏が挙げた空気支配の3つ目のパターン、[3]の「新しい偶像」による支配については、次回、解説するようにします。

(注)
*4 辻田真佐憲『大本営発表』(幻冬舎新書) P.4
*5 『大本営発表』P.196〜197
*6 『大本営発表』P.145
*7 『大本営発表』P.194〜195
(この原稿は書籍『「超」入門 空気の研究』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)
https://diamond.jp/articles/-/189044


 

前向きに読み解く経済の裏側

日本経済のリスクシナリオを考える

2019/01/07

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 今回は景気楽観派を自認する久留米大学商学部教授の塚崎公義が、今年の日本経済を考える上でのリスクシナリオについて考えます。

 今年の日本経済も、メインシナリオとしては順調な拡大を続けると考えて良いでしょう。しかし、昨年1年間で複数のリスクの芽が現れて来ましたので、今年の経済を考えるに際しては、リスクシナリオにも目配りしておく必要がありそうです。そこで今回は、リスクシナリオについて考えてみましょう。


(Delpixart/Gettyimages)
メインシナリオは好調持続
 日本経済は、緩やかながら拡大を続けています。労働力不足が深刻化してきたことに加えて、「この労働力不足はしばらく続く」との認識が広まって来たことなどにより、企業が省力化投資を活発化させ始めました。これは景気を更に拡大させる要因として注目されます。

 消費税増税は、前回(5%→8%)より小幅ですし、様々な対策も講じられるようですから、景気の腰を折ることはないでしょう。欧米の景気を心配する市場関係者は多いようですが、米国も欧州も中央銀行が金融を引き締め方向に動かしていることを考えると、欧米の中央銀行はそれほど景気を心配していない模様です。

 中国の景気は対米輸出の減少などで減速するでしょうが、過度な懸念は不要です。米国が中国からの輸入を他の途上国に振り替えると、その途上国の景気が拡大するので、世界経済全体としての景気悪化は限定的なものとなるからです。

 しかし、リスクシナリオとして、可能性は低いけれども留意しておくべきリスクの芽は複数見られます。代表的なものを挙げておきましょう。

中国経済の極端な悪化が急激に進む可能性
 米国は、中国との覇権を懸けて「冷戦」に突入しています。中国を痛めつけるためなら自分が痛みを負っても構わない、という本格的な対中強硬論が支配的となりつつあります。

 そんな中、中国の大手企業の幹部がカナダで逮捕され、直後に中国で複数のカナダ人が逮捕されました。これが仮に中国政府の報復だとすると、中国在住の他のカナダ人が身の危険を感じて帰国するかもしれません。カナダ企業も撤退するかもしれません。そして、それがカナダ以外の西側諸国全体に広がったとしたら、中国経済は一気に落ち込むことになるでしょう。

 西側企業が中国から撤退した分を他の途上国に移すのであれば、世界経済全体としての落ち込みは限定的でしょうが、動きが急すぎると、代替工場が立ち上がる前に中国の工場が大量に閉鎖されることとなり、世界経済が混乱に陥る可能性もあるわけです。

 また、中国からの資本逃避の動きが一気に加速して人民元相場が暴落し、それを予想した投機筋の人民元売りも重なって中国経済は深刻な事態に陥るかもしれません。

 そうなると、中国国内の政局も一気に混乱しかねません。筆者は中国の政治はわかりませんが、政治家と国営企業の密接な関係があるとすると、政争に敗れた政治家と関係の深い企業は「粛清」されるのかもしれませんね。

 まあ、最悪のシナリオは考えればキリがありませんが、起きる可能性は小さいので、過度な懸念は不要でしょう。

米国の景気が急激に後退する
 米国の景気は、メインシナリオとしては拡大を続けると思いますが、リスクを指摘する市場関係者も多いので、それ自体が景気を後退させてしまうリスクには要注意でしょう。

 債券市場の投資家は、何らかの理由で景気悪化を予想しているようで、長短金利が逆転しそうです。ちなみに、10年物金利と2年物金利の逆転を長短金利の逆転と呼ぶ人が多いので、正確ではありませんが、本稿もそれに従っておきます。

 それを見た株式市場の参加者が景気悪化を予想して株を売り、企業経営者が景気悪化を予想して設備投資を手控えることで、本当に景気が悪化する可能性があるとすれば、それはリスクでしょう。

 さらに深刻な問題となり得るのは、金融機関が景気後退を予想して与信に慎重になる可能性です。最悪の場合は「美人投票的な信用収縮」が発生するかもしれません。

 株の世界での美人投票は「皆が売るだろうから、値下がりするだろう。その前に自分も売ろう」というものですが、こちらは「皆が融資を絞るだろう。倒産が増えるかもしれないから、融資には慎重になろう」と皆が思う、というものです。

 その結果、皆が本当に融資に慎重になり、本当に倒産が増え、皆が一層融資に慎重になる、といったことが起きる可能性があります。

 まあ、最悪のシナリオは考えればキリがありませんが、起きる可能性は小さいので、過度な懸念は不要でしょう。

過度な懸念は不要だが、目配りを
 それ以外にも、英国のEU離脱が何の合意もなく実行されたら、英国とEUの経済に大きな打撃が生じるかもしれません。フランスのデモが拡大して収拾がつかなくなれば、フランス経済が麻痺してしまうかもしれません。欧州と日本の貿易はそれほど活発ではありませんから、影響は限定的だと思いますが。

 中国や欧州では、金融機関の経営が傾いたりして金融危機が発生する可能性もあるでしょう。そうなると、中国や欧州で資金の取引が困難となり、信用の収縮が発生するかもしれません。

 もっとも、基軸通貨である米ドルで信用の収縮が発生したリーマン・ショックとは異なり、仮に信用が収縮しても影響は地域内に限定されるでしょうから、世界経済が大きく落ち込んだリーマン・ショックのようなことにはならないでしょう。

 本当に怖いのは米国での信用収縮で世界中の資金取引が凍りつくことですが、2019年についてはそうした可能性は非常に小さいと筆者は考えています。

 以上のほかにも、リスクシナリオは、いくらでも思いつきます。そうしたリスクシナリオは、想像力を掻き立てますし、話し手が「さまざまな可能性を検討している賢い人」に見えることもあって、好んで口にする経済評論家も多いのですが、あくまでもリスクシナリオですから、そのつもりで接しましょう。

人間はとても小さな可能性は実際よりも大きく感じるもの
 それから、行動経済学によれば、人間はとても小さな可能性は実際よりも大きく感じるものだそうです。飛行機に乗るのが怖い、というのも、その一環ですね。

 それと同じように、リスクシナリオは実現する可能性が非常に小さいにもかかわらず、なんだか実際に起きそうな気がして、シナリオを聞いた途端に不安になって持っている株を狼狽売りしてしまう投資初心者もいるようですが、狼狽売りをする前に、リスクシナリオが実現する可能性がどれくらいあるのか、冷静に考えてみるべきでしょうね。

 ちなみに筆者は、それほど可能性が大きくないと考えていますから、狼狽売りはしないつもりですが、読者におかれましては、投資は自己責任でお願いします。

 なお、今年のメインシナリオが順調な拡大であることについて、詳しくは拙稿「2019年の日本経済が間違いなく好調を持続するワケ」をご参照下さい。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14908


 

 

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コメント
1. 2019年1月08日 19:01:50 : HgAfM67keU : 2dc4xaZBFuM[64] 報告
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