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米利上げ早期停止か、それでも円高になりにくい訳 苦境のパウエル議長、市場の痛み続けば経済全体に感染 FRB自動操縦と決別
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/228.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 21 日 20:05:33: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

外為フォーラムコラム2018年12月21日 / 10:50 / 8時間前更新

米利上げ早期停止か、それでも円高になりにくい訳

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
3 分で読む

[東京 21日] - 米連邦準備理事会(FRB)が、2019年中の利上げ停止に動く構えをみせている。12月18─19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されたドットチャートは、2019年の利上げ見通しを従来予想の3回から2回に減らした。中立金利に相当する中長期の金利見通しも、3.0%から2.75%へ下方修正した。

一方、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は、2.00─2.25%から2.25─2.50%へ引き上げられた。中立金利まであと1─2回の利上げで到達する水準であり、2019年のどこかで緩和的ではない状態に移行する。

<円高に振れてもおかしくない>

FRBの姿勢が変化したのは、経済減速に備えてのことだ。足元の景気は絶好調でも、2019年に入るとトランプ大統領による法人減税の効果は一巡し、米経済の成長率は減速してくるだろう。

インフレ率が加速しないという前提で、利上げペースも緩やかにするのが自然である。今回のFOMCを受けて、2019年の利上げは1回、またはゼロ回と予想する市場参加者が増えたため、直後の10年債利回りは2.7%まで低下した。

米長期金利の低下は、為替相場を大きく動かしてもおかしくない。長短金利差が縮小し、米国の景気減速が間近にあるというシグナルになるためだ。金利差縮小は以前から認識されていたことだが、ここまで長期金利が低下すると、景気減速はより意識される。

しかし、ドル/円だけに注目すると、長期金利が低下している割に円高に振れていない。円も買われるがドルも買われ、日米長期金利差がドル/円レートを決める図式にはなっていない。とりわけドルのほうが強く、流れは円安傾向にある。

筆者はこの背景に、東アジアの緊張を一時期高めた地政学リスクの後退があると考えている。米朝首脳会談が行われた今年6月以降、北朝鮮問題は落ち着きを取りした。それからというもの、ドル/円は110円を上回る円安水準が定着している。

この安定した構図が崩れるとすれば、米国経済が実際に減速するときだろう。ドル高は是正され、円高がやって来る。

<原油急落という支援材料>

では米経済が減速するとすれば、いつごろ、何がきっかけになるのか。1つの可能性は、米中貿易戦争だ。両国は2019年3月1日まで協議し、解決策を見出せなければ米国が制裁関税を引き上げる。ほかにも欧州連合(EU)離脱を巡る英国内の混乱など、リスクイベントは来年前半に集中する。

この間に、今年10月以降の米株価下落が個人消費に響いてくる可能性もある。トランプ減税の効果はいずれ剥落するが、そのタイミングがここに重なるかもしれない。

一方で、原油急落という支援材料が出てきたことは注目すべきだ。ニューヨーク市場のWTI(ウェスト・テキサス・インターミーディエート)原油先物は1バレル50ドルを割りこんだ。家計にとって減税と同じインパクトがある。

利上げの早期打ち止め観測が強まってきたことも、米経済にとってプラスと言える。利上げ停止が円高を招くという見方より、米経済を下支えしてドル高が維持されるという側面に目を向けても良いのではないだろうか。長期金利の低下も、停滞する住宅投資の下支えとなる。

米国の景気減速は一気に起きるのではなく、徐々に進む可能性が高いと筆者はみている。その中でドル安/円高が急進するとすれば、ゆっくり変化する米経済に合わせてではなく、大きなイベントの先行きが不透明になったときと考える。

大きなリスクイベントが目白押しの2019年前半は、その点で注意を要する。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト (写真は筆者提供)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hideo-kumano-idJPKCN1OK05Y

 


 
苦境のパウエル議長、市場の痛み続けばやがて経済全体に感染も
Christopher Condon、Sarah Ponczek
2018年12月21日 15:29 JST
• 連日の株安、「わずかなボラティリティー」とパウエル議長は認識
• 消費者心理や企業の景気信頼感への打撃、景気鈍化引き起こす恐れ

Pedestrians wear ponchos while walking past the New York Stock Exchange (NYSE) in the rain in New York, U.S., on Wednesday, Feb. 24, 2016. Photographer: Michael Nagle
「わずかなボラティリティー」の高まりでは経済にダメージはない。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長はこうした見解を明らかにした。だが今後も株安が続き、傷口がさらに広がった場合はどうなのか、疑問の声は大きくなるだろう。
  パウエル議長は19日、金融政策の策定に当たって市場の動揺を重大視しない姿勢を示した。これを嫌気して株価は20日も続落し、米市場では今週に入り約1兆ドル(約111兆円)相当が失われ、ボラティリティーは10カ月ぶりの水準に上昇した。
  こうしたサイクルからは1つのリスクが浮かび上がる。市場に隔離されているとばかりパウエル議長が考えていたウイルスが、いつか誰もが感染する深刻な大流行につながるというものだ。
  バンク・オブ・モントリオールのシニアエコノミスト、ジェニファー・リー氏は「ダウ工業株30種平均の3桁の下げをメディアで連日のように目にすれば、消費者心理にある時点で打撃となり、人々の間に自制ムードが広がり始めるだろう」と語った。
  マーケットは景気のシグナルであるにとどまらず、それ自体が経済的な力学として作用する。損失が膨らみ続ければ、消費者のセンチメントは損なわれ、借り入れコストの上昇や企業の景気信頼感の圧迫も招く。米金融当局が利上げとバランスシート縮小を続ける中で、資産価格を巡る悪循環の影響から経済がいつまで無傷でいられるか、議論は白熱するだろう。
  ドイチェ・バンク・セキュリティーズのチーフエコノミストを務めるピーター・フーパー氏は、「こうしたトレンドが続いて20−25%の株価下落という深刻な弱気相場になれば、必ずしもリセッション(景気後退)に直行というわけではないが、金融状況の引き締まりをもたらすのは明らかだ」と語った。


Stock Market is Not the Economy...
Analysis shows nearly half the percent of changes in sentiment are explained by swings in stocks
Source: Bloomberg
R-squared = 0.45

原題:The Powell Predicament: When Market Ills Make the Economy Sick(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-21/PK2OED6TTDS001?srnd=cojp-v2


 


外為フォーラムコラム2018年12月21日 / 16:56 / 2時間前更新

「自動操縦」と決別したFRBに必要な対話見直し

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
5 分で読む

[東京 21日] - 米連邦準備理事会(FRB)は、19日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で2018年4回目の利上げを決定した。そのこと自体は広く予想されていた通りであったが、一方で来年の政策運営に関する不透明性は顕著に高まっている。

つまり、慎重ながらも利上げ継続を標榜するパウエルFRB議長に対し、トランプ大統領をはじめとする政権幹部が批判を強めているため、金融政策が政治問題化しつつある。それに加え、こうした批判が特定の利害に基づく主張ばかりでなく、一定の真実を含んでいる点も、金融市場から見た政策運営の不透明性を高めている。

パウエル議長も記者会見で認めたように、企業活動を中心に減速感が生じているほか、経営者のマインドが慎重になっていることは事実である。金融環境も、ドル高や株価の大幅な調整、クレジットスプレッド拡大などによって、タイトな方向へ変化している。もちろん、これらの背後には、欧州や中国をはじめとする海外経済の減速に対する警戒が存在する。

<副作用を深刻化する2つの要素>

パウエル議長もこうした外部環境を意識し、だからこそ今後の政策運営が「経済指標の内容次第(data dependent)」である点を記者会見で強調した。それは、これまでのような「特段の問題が生じなければ緩やかな利上げを継続する」という「自動操縦」との決別を意味する。

ただし、こうしたシフトは必ずしも円滑に進まない恐れがある。頻繁に発表される多様な経済指標に金融市場が振り回され、その都度FRBの政策運営の先行き予想が大きく変化すれば、金融市場のボラティリティが必要以上に高まるリスクがあるからだ。

「経済指標次第」な政策運営がこうした副作用を伴うこと自体は、特に今回の米国に固有の問題ではない。しかし、現在の米国には問題を深刻化させかねない2つの要素が存在する。

第1の要素は、FRBが雇用の最大化と物価安定という2つの目標を既に実質的に達成していることである。

FRBの金融政策が「経済指標次第」で運営される場合、雇用と物価に関連する指標に特に注目すべきことは言うまでもない。しかし、雇用については、足元の失業率が極めて低位であるだけに、今後は多少上昇して「長期」の水準に収れんすることが考えられる。物価についても、総合インフレ率も生鮮食品を除いたコアインフレ率もおおむね2%に達したが、そこから上昇が加速する蓋然性も低い。

実は、FOMCメンバーも今回改訂した経済見通しで、失業率やインフレ率が通常の景気循環とはやや異なる動きを示す可能性を示唆している。FRBが既に政策目標を達成しているだけに、前述した2つの目標に関する経済指標の動きだけから政策運営を推測することは難しく、金融市場が多様な指標に振り回されるリスクが一層高まる。

第2の要素は、FRBが世界金融危機以来、金融市場を特定の方向に導くタイプの政策を長期にわたって多用してきたことである。

つまり、世界金融危機以降の金融緩和と「正常化」の双方の局面を通じて、FRBはフォワードガイダンスを始めとした今後の政策運営に関するさまざまな「予告」を行ってきており、金融市場もそれに追随することに慣れている。

それだけに、金融市場が経済指標の発するメッセージを適切に読み取り、それを基にFRBの政策運営を適切に予測できるようになるには、相応の時間とコストを要する可能性がある。

<コミュニケーションの見直し>

そうした点から、FRBが金融政策に関するコミュニケーションの見直しについての議論を今年秋に開始し、2019年半ばをめどにその成果を実現すると表明していることは注目に値する。

利上げ継続がさまざまなコスト負担を伴うだけに、当初この取り組みには、金融市場だけでなく企業や家計も含めた幅広い理解を得る狙いがあったようだ。しかし、今後の追加利上げの幅や期間が従来に比べて縮小しただけに、そうした趣旨の重要性は低下した。

それでも、「経済指標次第」な政策運営の難しさや、2019年に利上げの減速や停止が必要となる可能性があることを考えれば、金融市場に対するコミュニケーションを再検討することはむしろ重要になっている。

その際に注意すべきことは、「経済指標次第」で政策を行う以上、FRB自身にはゼロ金利政策をひたすら維持したり、政策金利を中立水準にまで徐々に戻したりする際のような固定的な目標やめどが存在しないことである。存在しない以上、コミュニケーションの方法をどう工夫しても、金融市場に示すことはできない。

FRBが伝えることができるのは、金融経済情勢の判断とそれに基づく政策運営の考え方である。このうち前者については、経験則の上でも実証分析からも明らかになっているように、常にFRBが正しいとは限らず、金融市場や企業の方が正確である場合も少なくない。この点は、政策当局が情報優位に立ちやすい金融危機ではない、平時には尚更そうだろう。

従ってFRBには、金融経済情勢の判断を一方的に示すだけでなく、それに対する反応を読み取ることも含めた双方向のコミュニケーションが重要になる。FRBは、国債のプライマリー・ディーラーのような金融市場の伝統的プレーヤーや、地区連銀を通じて地域の有力企業との間で、さまざまな情報交換の枠組みを有している。今の局面では、これらに加えて金融市場と産業界の新興勢力も取り込むことが重要であるように感じている。

一方、政策運営の考え方については、FRBにとって発信方向のウエイトが高くなる。ただし、「経済指標次第」である以上、例えば、「来年末の政策金利は3%」といった固定的かつ具体的な情報として示すことは相容れない。金融経済の先行きについて、一定の蓋然性を有する見通しの幅を示した上で、政策対応をそれらに条件付ける形で示すことが求められる。

金融経済の先行きに関する無数のシナリオを提示し、それらの一つ一つに発生確率とその場合の政策対応を紐付けることができれば合理的だろうが、実用的ではない。代わりに、例えば政策金利の先行きについて、リスクの程度やその方向性を示すことが現実的だろう。

それができるだけでも、FRBメンバーによる金利予想(ドット・チャート)の課題としてパウエル議長が今回の記者会見で指摘した、「平均値」に対する金融市場の過度な着目の是正につながり、FRBと金融市場がともに金融経済の基調に対する理解を共有することを助けるであろう。

FRBにとっては、「経済指標次第」とする政策運営に限らず、また金融市場だけでなく企業や家計も含め、金融政策そのものについて全般的に理解を深めてもらうことも、引続き重要だと付言しておきたい。

具体的な手段として、まずは、世界金融危機後にバーナンキ元FRB議長が行ったような企業経営者や学生などとのタウンミーティングの定期化や、イングランド銀行(英中央銀行)が試行しているような一般向けの情報発信の充実などが想定される。

それにより、利上げであれ金融緩和であれ、金融政策効果のより効率的な波及につながるだけでなく、有権者が適切な見識を有することで、現在起きているような政策運営に対する政治介入を抑制する効果も期待できる。こうした点から、長期的な意味でもFRBにとって意味のある取り組みとなろう。

井上哲也氏
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。  

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/column-tetusya-inoue-idJPKCN1OK0NY
 

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