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納品書や領収証を破棄して売上を隠滅→税務調査で重い処罰!
https://biz-journal.jp/2018/12/post_25939.html
2018.12.16 文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人 Business Journal
元国税局職員、さんきゅう倉田です。税務調査で社長が持っていて嫌だったものは「ワルサー」です。
税金は、その時代の背景や経済を反映したものが多く、ひいては税務調査も時代によって移り変わってゆきます。消費税の導入によって廃止されましたが、かつて日本には「物品税」という税金がありました。基本的に、奢侈品にかけられる税金です。手元に資料が少ないため、おそらくですが、酒税のように製造・移出すると賦課されたと考えられます。つまり、その税が販売価格に転嫁され、エンドユーザーが負担することになる間接税です。
物品税も消費税や法人税と同じく国税なので、税務署や国税局が税務調査を行っていました。今回は、物品税の課税対象だった「猟銃」の製造を行っていた納税者への税務調査事例を紹介します。
法人の役員Aは、猟銃の製造販売を行い、それを銃砲店に販売していました。物品税法では、毎月、猟銃の製造数と価格を税務署に申告するよう定められていました。その申告により、税務署は物品税の課税額を把握し、税金を納めてもらうことになります。しかし、Aはこの毎月の申告を怠っていました。いわゆる「無申告」です。
そうすると、猟銃の製造販売業であることは税務署に補足されているので、「なぜ申告しないのか。本当に製造数が0なのだろうか」と調査官は疑問に思います。店舗や事務所などを確認しに行った可能性もあります。あるいは、取引しているであろう銃砲店に反面調査を行い、証拠を固めたかもしれません。
兎にも角にも、正式にAに対して税務調査が行われることになりました。調査の連絡をし、本店所在地に臨場したところ、提示された帳簿には猟銃の販売記録がありませんでした。それどころか、猟銃の販売を示すような納品書や領収証の控えもありません。すべて破棄していたのです。一般的に行われる売上除外と同じ方法です。しかし、計画的に売上除外をする人々というのは、自分だけのために記録を残したがるもので、Aも猟銃の取引記録を書いたメモを持っていました。これは、調査官の粘り強い調査によって、白日の下にさらされます。
■税逃れが「犯罪」に?
ここで、Aに積極的な逋脱(ホダツ=脱税)の意思があったかなどが裁判で争われることとなりました。現在の税務上の不正では、重加算税を賦課されて終わりで、犯罪として処罰されるのは、国税局査察部の案件となっています。しかし、記録を見ると当時は、どうやら「物品税の逋脱」という罪があったようなのです。
単純な税逃れを意図して行った行為が犯罪として処罰されるというのは、税務調査にあい、不正を認定され、重加算税を賦課された経験のある方たちからすると、寝耳に水かと思います。当時は納税者に厳しかったようです。
逋脱犯の成立には「詐偽、その他の不正行為が積極的に行われること」が要件で、単純無申告はそれに含まれない、とされていました。Aは書類の破棄も行っていましたが、単純無申告の時期もあり、単純無申告であれば逋脱罪に当たらないと主張したのです。しかし、今回のような、事実をまったく正規の帳簿に記載せず、その実態を不明にする消極的な不正行為は、帳簿を破棄する、いわゆる売上除外などで行われる手法と変わらない、それは「詐偽、その他の不正行為」になる、と判断されました。
Aが物品税法に明るかったとは思えず、単純無申告であれば逋脱罪に問われないという事実は知らなかったかもしれません。それまでの判例では、そのようになっていて、弁護士が入れ知恵したのかもしれません。しかし、この事件で最高裁は新たな考えを示すに至りました。税務調査があったのに、税の徴収を困難にする工作を行ったことが認められ、それは逋脱罪に該当する、判例違反ではない、というものです。
軽い気持ちで行った、売上に関する書類の破棄や、申告を忘れてそのままにする行為というのは、条件が揃えば社会的制裁を受ける可能性があります。どんなときも、注力して、正しい申告が望ましいのです。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)
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