http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/812.html
Tweet |
火葬場新時代、35万円の火葬場を利用する人はどんな人?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181209-00000011-pseven-soci
NEWS ポストセブン 12/9(日) 7:00配信 女性セブン2018年12月20日号
外観からも高級感が溢れる四ツ木斎場
かつてのイメージを覆すほどに変化している昨今の火葬場。その新潮流を『いまどきの納骨堂』(小学館)の著者であるノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする。
* * *
2016年12月、都内に斬新な火葬場施設が出来ていた。火葬場は、全国的にほとんどが公設だが、東京だけ例外で、23区内に9か所ある中で、公設は臨海斎場(太田区)と瑞江葬儀所(江戸川区)の2か所だけ。民営7か所のうち6か所は東京博善株式会社(本社、千代田区)の経営で、その1つ、四ツ木斎場(葛飾区)がリニューアル時に設けた「貴殯館(きひんかん)」だ。
島田裕巳著『葬式格差』によると、たいがいの自治体では、1万円前後で火葬できるという。たとえば、建築家の伊東豊雄さんが設計した埼玉県川口市の「川口市めぐりの森」、岐阜県各務原市の「瞑想の森 市営斎場」とも公設だ。火葬料金は市内居住で12才以上なら、前者が3万円(市外在住者10万円)、後者が1万円(同4万円)だが、四ツ木斎場の「貴殯館」は何と35万円である。
葬送ジャーナリスト、碑文谷創さんによると、一体の火葬に、燃料や火葬炉の焼却費、人件費など経費が約6万円かかるという。公設の場合、火葬料金との差額は税金が投入されるが、民間経営は独自に価格設定される。東京博善の経営する6か所の火葬場で最も多いのは5万9000円である。2基の炉が個室形式になった10万7500円の「特別室」と、17万7000円の「特別殯館」もこれまで設置されてきたが、「貴殯館」の35万円は破格だ。
残念ながら、東京博善は取材門戸を開いていない。しかし、広報担当者が「葬儀社の人に伴われた下見客」としてなら、「貴殯館」の見学が可能と示唆してくれたため、旧知の葬儀社・株式会社杉元(文京区)本郷事務所所長の長谷川一さんが便宜を計り、連れて行ってもらった。
四ツ木斎場は、住宅や商店が密集する立地のため、「自然の中に」は望めない。葬儀用の部屋や、一般的な炉前ホールがあるごく普通の建物のフロア続きで、ガラス戸を隔てた場所に「貴殯館」があった。
その入り口で目にとまった、書家・柳田泰山の揮毫だという「貴殯館」の文字を指して、長谷川さんが、「『殯』は、もがりのことですね。貴人の遺体を棺に納め、祀ることを意味します」と教えてくれる。ロビーに歩を進めると、床はふかふかの絨毯で、靴音も吸収する。静寂の別世界が広がっていた。
「2室ございまして、1日4組まで。2時間半、ご利用いただけます」とスタッフが説明する。
メインの部屋に入った。火葬炉と直結し、故人に「最後のお別れ」をする部屋だが、高級感に溢れ、一流シティーホテルのパーティールームとまったく遜色がない。100平方メートルほどあろうか。ゆったりと80人は入れそうだ。天井もうんと高い。壁は肌目の模様が細かな大理石で、ソファなど調度も見るからに高級そう。焼香台の上に置かれた鈴や香炉など仏具はすべてオーダーメイドだという。
◆立派なワンディもできる
スタッフが特徴として挙げたことが3つある。1つは、台車と一体型の棺を使用しており、高さを調整できるため、子供や車椅子利用者も故人の顔を見て「最後のお別れ」ができること。もう1つは、独自開発の最先端火葬炉なので、制限なく棺に副葬品を入れられること。そして、火葬炉に棺を送り出す際、スモークが立ち上がるなど「光の演出」がなされること。
「光の演出によって、故人様が明るい世界へ旅立っていかれる感じになります。会葬者様のご心情がずいぶん違ってまいります」(スタッフ)
故人が好んだものや数々の花などを存分に棺に入れ、まばゆい光の世界へと送り出す──。
「祭壇を作って、僧侶を呼んで、この部屋で立派なワンディもできそうですね?」と長谷川さんがスタッフに聞く。ワンディとは、近頃増えている、通夜をしないで告別式のみを行う「一日葬」のことである。
「はい。50席程度まで椅子もご用意できます」(スタッフ)
死亡場所から直接に故人を運び、葬儀も見送りも骨上げもここ1か所で行うことも可能なのだ。告別式と火葬に各1時間、見送りと骨上げで30分。2時間半でおさまる。同規模の一般的な葬儀会館を借りると、会場費だけで30万円。会館から火葬場への運搬費と、火葬料金も別途かかるので、仮にそういった使い方をするなら35万円は高くないのではないか。
次に案内された2階の待合室がまたすごい。長谷川さんが「あと、庭さえあれば、椿山荘ですね」と評し、そのとおりだと思った。例えば故人のお気に入りだったレストランなど、どこからでも料理を持ち込めるという。
「食事をしながら火葬を待つ、あるいは合計2時間半以内なら、収骨を終えてからここで初七日の食事をすることもできます」(スタッフ)
◆最後の最後だけは贅沢に
ともあれ、どんな人が利用しているのだろう。
「故人がご住職とか、お寺関係の方が選ばれますね。お寺で立派なお葬式をして、ここからお送りになられます」とのことだった。長谷川さんが、「お寺さんには見栄っ張りが多いのかもね」と耳打ちした。貴殯館の情報は、お寺関係には届いているが、一般の人にはまだあまり知られていない。「予約でいっぱい」の状態ではないという。
帰路、長谷川さんに、葬儀社としての感想を聞いた。
「あれほど豪華だと、お客さんに勧めがいがあると思いました。ただし、炉前の部屋でのワンディは難しい。もしも失敗したら取り返しがつかないため、経験のないことを試みるのを葬儀社の人間は嫌うからです」
とはいえ、木の祭壇から花で飾る祭壇へ、儀礼的な一般葬から少人数の家族葬へなどと、葬儀の有り様も変化を遂げてきた。新潮流の突破口は開かれてきているのである。
「弔いは感性です。費用を抑えたいという理由ではなく、小さな葬儀を希望するご家族が増えているからこそ、貴殯館は『最後の最後だけは贅沢に送りたい』と考える層を顕在化させていくかもしれませんね」(長谷川さん)
他の葬儀社の人にも聞いてみた。
「私はお客さんに、『個人的には、あの世にランクなどないと思っていますが、残念ながらこの世はランクだらけです』と申し上げてから、貴殯館を火葬の選択肢としてご案内しています」と言うのは、本郷金子商店(文京区)に勤める高橋朋弘さん。「普通の人と同じ窯で身内を火葬するのは嫌」という高級志向の人たちがいるという。
宗教者として貴殯館で故人を見送った真宗大谷派・蓮光寺(葛飾区)の本多雅人住職は、「大変な時代になってきました。死というものを感じさせない造りのため、逆に私たち僧侶が仏法の場であることを感得し、厳かに勤めることに徹せられるかという課題を突きつけられていると感じます」と話す。
仏教的に死を受け止めるために、「故人の一生を偲ぶ」「自分も死ぬことを知り、いのちの尊さを自覚する」「故人を諸仏の一人として感じる」という3つの要素が必要という。
「葬儀や火葬の場が豪華になればなるほどそれを伝えるハードルが高くなりますが、どのような場になっても、“死すべき身をどう生きるか”という問いに応えていきたい」(本多住職)
◆宗教的感情とは何だろう
墓地、埋葬等に関する法律には、〈墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的〉とあり、本来、火葬場にもお墓にも、宗教的感情を満足させることが求められている。「自分は無宗教だ」と言う人も少なくない昨今、「宗教的感情」は一人ひとり異なる。
私は、お墓を取材し始めた当初、従来の土の上に立つお墓でなければ、心静かにお参りできないのではと思っていたが、多くは「宗派不問」の納骨堂の訪問を重ねるうちに、そうでもないと思い改めた。大切な人を心地良く眠らせてあげたいと思わない人はいない。多様な形を選べるようになったのは喜ばしいことだと。
建て替え等に当たり、新しいスタイルの火葬場が、今後も増える見通しだ。長谷川さんが言った「『最後の最後だけは贅沢に見送りたい』と考える層が増えるかも」との言葉を反芻する。まだまだ地域差がある中、今後、美しさや快適さを優先し、遠くの火葬場まで故人を運ぶ人が、この先出てくるかもしれない、と本気で思った。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民129掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民129掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。