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「借金まみれだが、破産はしたくない」 経営者の悩みに答えます!
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181204-00010002-nkbizgate-bus_all
日経BizGate 12/4(火) 16:00配信
「自分でも理解できない派生商品」に手を出すのは、経営者失格だろう
■今回の悩める経営者:株式会社大島商事 代表取締役社長 大島一哉(おおしま・かずや)(44歳)
※相談内容
先生〜、なんとかなんないすかね〜。倒産だけはしたくないんすよ〜。わかってますよ、返してない、というか、もう返せる額ではない借金あることは。
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でもね、借金のほとんどは、銀行からの借入で、しかも、要りもしないのに、銀行が半強制的に貸し込んでいったものなんです。何ですか、あれ、ですよ、あれ。為替デリヘル? 為替デリバリーヘルス?
え? 違う? 為替でりば・・・てぃ・・ぶ? そうそう、それそれ。そんな感じの、ちょっとエッチな名前のヤツですよ。
1ドル120円超えてたときあったでしょ。あんときに、銀行の担当者の和田部わたべって、エリート臭ぷーんぷんさせたヤな野郎が、「このまま、1ドル150円とかなったらどうします? さらに言うと、200円超えもあるかも。そのときには、御社、どうなさいます? 御社の輸入業は、1ドル120円でも青息吐息なのに、そうなったら、壊滅的でしょ、小島さん」とかおどすんですよ。つか、大島だってーの!
「じゃ、どうすりゃ、いいんすか!?!」って、泣きついたら、「一ついい方法があります」って、その、それ、ほら、あの為替ホニャララを提案してきたんですよ。一時期、125円くらいまで、どんどん円安進んだでしょ。そんとき、「保険のつもりが逆にちょっともうかっちゃいましたね。ここは、児玉さん、もうちょっと、いっときましょうか」とか煽(あお)られちゃって、深みにはまっていったんです。つか、大島だって!
そしたら、英国EU離脱騒動にトランプショックでチョー円高に。トランプショックの後は、結局、円安に戻ったんですが、そんなのわかりっこない。もう、レシオだとか解約とかなんとか言われるがままもてあそばれ、打つ手、打つ手が、全部、裏目。
それで、銀行からの負債がどんどん膨らんでいき、もうどうしょうもなくなっちゃったんです。それで、また、和田部の野郎に相談したら、今度は、「だったら、お金を貸しますよ。銀行は困った会社に貸すのが仕事ですから、中島さん」だって。もう、大島だって! つか、そこに、怒ってんじゃないし!
これで、もう銀行ローンまみれで、借金返す毎日。というか、利息しか返せてませんが。もはや、銀行の奴隷ですよ。
そしたら、そしたら、ですよ。聞いてください、先生! 和田部の野郎、ニューヨークに転勤だって。で、次に担当になった佐々木ってのが、これ、またヤな野郎で。「利息しか返せていないって、どういうことですか! それに、経営に不安があるようですね。8月までにある程度目処(めど)が立たないと、元利一括で返してもらう方向で動かざるを得ませんよ、大畑さん」だって。もう、大島だって! つか、そんな無茶な!
本業はうまく行っているし、利益もちゃんと出てる。というか、あまりにニッチなところで商売やってるのと、仕入先も卸先も私の個人的なつながりで成り立ってるんで、誰も手出しできない。ほら、3月期は、増収増益です。でもね、和田部の野郎にはめられた、為替デリ・・ホニャララのせいで、もう死にそうで。
でね、先生。もう破産しちゃいたい。というか、税理士さんも知り合いも口を揃(そろ)えて破産しかない、とかいうわけ。あとなんでしたっけ、民事再生とか。とにかく、裁判所に行って、会社が倒産したことを世間に公表しなきゃダメってわけ。でもね、破産とかしたくない。民事再生とかってのもヤだ。だって、再生だなんだっていっても、要するに、裁判所に行って倒産するんでしょ。
だってね。悔しいじゃない!
倒産だと、あちこちに迷惑かかっちゃうし、第一かっこ悪い。助けてくれる先輩経営者とかもいるんだけど、倒産しちゃうと、信用なくなって海外からの仕入れが出来なくなっちゃうし、オダブツ。
先生、なんとかなんない? 助けて!
■顧問弁護士 畑中鉄丸の助言
※企業が倒産状態に陥る場面とは?
一般に、ビジネスは、
・新たに価値を創造してこれを売ってカネに変えるか、
・価値ある物を安く仕入れて高く売ってカネをもうけるか、
いずれかの方法で、富を蓄積していく営み、と定義できます。
ところが、「価値を創造した」つもり、「価値ある物を仕入れた」つもりが、陳腐なもので全く売れなかったり、実は価値がなかったことが判明したり、あるいは、高く仕入れて安く売ってしまったり、というアホなことを続けていると、会社からどんカネが流出していき、ついには、「(人間で例えるなら)出血多量」で死に至るような会社が出てきます。
キリスト教世界に地獄があるように、資本主義社会にも倒産という事態がつきものです。神ならざる人間の所業ですから、それこそ、倒産という現象など、掃いて捨てるほど発生します。
また、商売がうまく行っていても、入出金のタイミング、すなわち、カネの後先が反対になってしまい、黒字であっても倒産する、ということもあります。体には、献血しまくれるくらい血がたんまりチャプチャプになるくらい充満しているが、血栓やそのほかの原因で、脳や心臓に血が回らず、そのまま、ぽっくり死んでしまう、といった趣の話です。「1年後に10億円入金されることが確実でも、今月、来月の仕入れ代金や給与や家賃が支払えなければ、倒産してしまう」という言い方でイメージできますでしょうか。
無論、設例のように、商売に失敗したわけではないが、無謀な借金の末、債務が山のように膨らんでしまい、もはや返せる状態でなくなり、さらに、銀行も待ってくれず、倒産状態に陥る、ということもあるでしょう。借金がかさむ(債務超過)、資金繰りが回らない(支払不能)、あるいはその双方によって、企業は死に体(倒産状態)に陥ります。
※倒産状態に陥った企業に残された手段(清算と再生)
じゃあ、企業が倒産したら、すべて、そのまま、お葬式をあげて、形見分けをして、焼き場に行って、焼いて、消滅させるか、というと、全部が全部、そうやって「企業という仮想の法的人格」を消滅させる、とは限りません。
倒産状態に至った企業から相談を受けた場合、我々弁護士は、まず、「企業が運営する事業のうち、債務の支払という問題を一旦脇に置きさえすれば、なんとか、ビジネスが継続できそうなものがあるか?」という点をチェックします。
要するに、借金や未払債務は山のようにあるが、現在行われている事業については、
・新たに価値を創造してこれを売ってカネに変えるか、
・価値ある物を安く仕入れて高く売ってカネをもうけるか、
いずれかの方法で、富を蓄積していく営みが現に適切に行われており、将来的にも十分な維持ないし発展の可能性がある、というケースもあります。
設例においても、「本業と関係の薄い、オーバーヘッジとなっていた為替デリバティブ取引(シンプルにいうと、投機というかギャンブルというか、借金をして為替の当てものゲームに参加した、といった類いの、危険な取引)」の負けが込んで多額の借金を負ってしまったものの、「本業自体は、ニッチで参入障壁もあり、しかも増収増益、ということで、十分な将来性が見込める」ということですから、なんとか助かる方法が描けそうな状況といえます。
無論、「本業も損ばかりで将来性はなく、おまけに借金まみれ、というどうしょうもない状況」ですと、このような企業は、産業社会のお荷物ですから、とっとと、人格を消滅させた方がいい、ということになります(こんな企業がゾンビのように残ると、不良債権問題という形で、金融システムに悪影響を与え、社会全体が迷惑を被ります)。このような会社は、「清算(型倒産処理)」という方法によって、「経済社会における取引人格を消滅させる」ことになります。
他方で、設例のように、「病気は病気だが、病巣部位だけ取り除けば、健康体に戻って、産業社会で活躍できる」ような企業については、「企業再生」という方法を検討することになります。
この、「清算」と「再生」ですが、大まかに言うと、それぞれについて、裁判所を絡ませてフォーマルに行う方法と、裁判所を絡ませず当事者間のネゴでインフォーマルに行う方法が存在します。
裁判所を絡ませてフォーマルに行う「清算」の代表選手が「破産」と呼ばれるものです。
そして、同じく、裁判所を絡ませてフォーマルに行う「再生」の代表選手が「民事再生」と呼ばれるものであり、さらに、企業の規模が大きくなったもので、銀行が有する担保権を裁判所の強力な関与でぶった切って、一種の「チョー大掛かりな外科手術」をするようなイメージで強権的に再生する手法が、「会社更生手続」と呼ばれるものです。
裁判所を絡ませないインフォーマルな方法ですが、こちらは、「清算」「再生」ともに、「任意整理」と呼ばれます。もちろん、細かい話をしますと、「事業再生ADR」や「特別清算」「DIP型会社更生」など、各種マニアックな方法もありますが、ザックリした整理でいうと、上記のような形となります。
※裁判所を利用するも非公開で進める特定調停制度
これだけ、いろいろ方法があるとなると、迷ってしまって困るのは、手続きの利用者です。このあたりは専門家と相談してしっかり理解してすすめるべきです。
今回の設例で言いますと、大島さんのケースの場合、再生型を検討することになる前提で、裁判所を利用する「民事再生」ないし「会社更生」、裁判所を利用しない「任意整理」という方法、という各手続が浮上します。
しかし、大島さんの場合、「とにかく、裁判所に行って、会社が倒産したことを世間に公表しなきゃダメってわけ。でもね、破産とかしたくない。民事再生とかってのもヤだ。だって、これって要するに、倒産でしょ」「信用なくなって海外からの仕入れが出来なくなっちゃう」という心配があるので、“フォーマル“な再生手続である「民事再生」や「会社更生」は使えません。
これらの手続きを申し立てると、実際、官報に公告されますし、会社の規模によっては報道をされることもあります。全債権者を一律かつ公平に扱う関係上、すべて事態をオープンにして、債権者には裁判所経由で通知が行きますので、いわば、公開羞恥の状態に晒(さら)されます。
他方で、「任意整理」となると、バランスシートの負債の部においてもっとも強い立場を有する銀行がだまっちゃいません。といいますか、銀行から「借りたカネ返せないし、いろいろ文句もあるので、グレーに、アンダーザテーブルで、ネゴしようよ」と相談を持ちかけても、一蹴されるのがオチです。
しかし、こんな困った状況にも、朗報があります。
裁判所を利用しながら、かつ、全債権者を一律公平に扱う必要なく、事態をオープンにせず、ネゴベースで、地味にごにょごにょ進める、そんな、姑息(こそく)でズルい方法があるのです。
これは、「特定調停」と呼ばれるもので、完全な破綻者でないにせよ、借金の返済が滞って、「もはやこれまで。このままじゃ破産は必要。だけど、借金を少し負けてもらったり、待ってもらったりして、債権者からお慈悲ある対応あれば、立ち直れる」という債務者(特定債務者)について、裁判所(といっても、簡易裁判所です)が、債務者と債権者との話し合いを仲介し、返済額や返済条件の軽減などの合意が成立するよう働きかけ、借り主が経済的に立ち直れるよう支援する制度です。
簡単にいうと、話し合いベースという意味では「任意整理」と同じだけど、裁判所がやや上から目線で後見的におせっかいを焼いてくれる、という素敵な制度です。
そんなこと言うと、債権者側からすれば、「るせんだよ。そんなアホなことをグタグダ言うんだったら、こちとら強制執行じゃい!」ということになるのですが、この場合も「事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる(特定調停法7条1項本文)」という(債権者側からすれば余計な)制度まで用意されています。
要するに「これ、債権者! その方、いかに証文があろうと、この遠山金四郎が話し合いをお白州で仲介している間は、勝手な取り立てはまかりならんぞ! よいな、越後屋!」という感じで、スゲー強力に「取り立て禁止令」が出せることになっていたりします。
※今回の経営者・大島社長への処方箋
まあ、自業自得、因果応報ですね。
なんですか、為替デリバティブで債務超過って。
バクチするのに、借金してたら、世話ありませんよ。
それにね、為替デリバティブなんて、10年位前に、その危険性が随分喧伝され、もうやっている経営者なんていませんよ。フルヘッジでも危険なのに、オーバーヘッジって、随分無茶なことをしましたよね。
だいたい、為替デリバリーヘルス、って何の話ですか。結局、自分で何に手を出したかすらわかってない、ってことじゃないですか。
変額保険、モーゲージ債、フィルム債に航空機リース、などなど、自分でわからないもの、勉強していないもの、勉強する気もないものに、経営者としては手を出したら絶対だめですよ。
まあ、今回の件ですが、為替デリバティブ取引被害、という立て付けで、まず取引先銀行に、ADRか訴訟提起をして、「銀行から取引被害を被った」という事件にして、被害者的立場を獲得しましょう。
これと並行して、特定調停を申し立て、「本来、今回の負債は銀行の悪行非道が原因なので、そもそも払う言われはないが、万が一、払うべき義務があるとしても、そうなったらそうなったで、破産するほかない。とはいえ、本業が健全なので、立ち直りたいので、借金をチャラにするか、払える範囲でマケてくれ」という形で裁判所の舞台での話し合いに持ち込みます。
銀行がどこかで折れてくれればいいのですが、それも無理であれば、支援をしてくれる先輩経営者に適価で会社をM&Aで買い取ってもらい、そこで再建していくことでしょうね。
偏頗(へんぱ)的・債権者詐害的な会社分割とか言われても困るので、特定調停の場で、適切適正な事業価値鑑定を前提に、「この金額で不満ないなら事業譲渡を実行するし、逆にこれ以上の金額で買ってくれるところがあるなら、銀行の方で紹介するか、これより高い値で買うような酔狂な買い手を連れてきやがれ。異議提出ないし好条件での買い手を連れてくれる期限として1カ月やるから、その期間があっても、うんともすんとも言えないなら、勝手に事業譲渡やるから、後は、詐害行為でもなんでも訴えてこい。こっちはこっちで十分な機会保障したし、価格も適正なので詐害性はない、といって争うから」とブッカまして、銀行の譲歩を引き出すような荒業でも使わないと無理でしょうね。
いずれにせよ、破産も再生も困るというチョーわがままな話ですが、ま、銀行のやり口もちょっと問題がありますので、ここは、特定調停を使って、なるべく表沙汰にならないような暗闘の形で、ネゴやってみましょう。
でもね、もう絶対、欲に踊らされて、自分でもよくわからないものに手を出したらだめですよ! わかりましたね? 島田さん!
(弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸)
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