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忍び寄る「大学倒産」危機 2000年以降すでに14校が倒産している
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2018/12/200014.php
2018年12月3日(月)10時20分 松野 弘(社会学者、大学未来総合研究所所長) ニューズウィーク
taka4332-iStock.
<私立大学の3分の1以上が定員割れという異様な時代が訪れている。定員割れは「倒産」への前触れだ(大学倒産・前編)>
日本私立学校新興・共済事業団の2018年度の私立大学の入学志願者動向の調査結果によると、私立大学のうち約36%が定員割れであったことが判明した。2014年度には定員割れ率は約46%だったものが幾分、改善されたものの、大学の入学者の定員割れ状況はさほど変わっていない。一体、日本の教育はどうなっていくのだろうか。
というのは、定員割れは推薦入試に依存していても起きているからだ。文部科学省が大学に要請している推薦入試枠は入学定員の約半数を上限とするように指導しているが、実際には、大半の私立大学は定員を確保すべく、定員の約8割を推薦入試でとり、約2割を一般入試で合格させている。
その結果、学力の低い学生が数多く大学に入学してきているのが実態なのである。これでは大学がきちんとしたリメディアル教育(補習教育)をしない限り、学力の低い学生を社会に送り出すことになるからだ。
まず、文部科学省が大学の定員についてどのような規定をしているかについて確認し、「定員割れ」が継続していくことになれば大学経営にどのような影響が及ぶか、さらに、「定員割れのような事態に対応していくためには何が重要なのか」についても触れておきたい。
大学の定員数は、文部科学省の大学設置基準で次のように定められている。
大学設置基準 (昭和三十一年十月二十二日文部省令第二十八号) 最終改正:平成二六年一一月一四日文部科学省令第三四号 第五章 収容定員 (収容定員) 第十八条 収容定員は、学科又は課程を単位とし、学部ごとに学則で定めるものとする。この場合において、第二十六条の規定による昼夜開講制を実施するときはこれに係る収容定員を、第五十七条の規定により外国に学部、学科その他の組織を設けるときはこれに係る収容定員を、編入学定員を設けるときは入学定員及び編入学定員を、それぞれ明示するものとする。 2 収容定員は、教員組織、校地、校舎等の施設、設備その他の教育上の諸条件を総合的に考慮して定めるものとする。 3 大学は、教育にふさわしい環境の確保のため、在学する学生の数を収容定員に基づき適正に管理するものとする。 |
このように、大学の定員数は「教員組織、校地、校舎等の施設、設備その他の教育上の諸条件を総合的に考慮して定める」とされている。
大学の使命は学生に対して最高学府にふさわしい高度な教育を行い、社会に送り出すことである。そのためには、十分な規模と質を備えた教育施設が必要となる。
しかし、教育施設はあくまでも「入れ物」であり、それを実際に活用するには、優秀な「教員組織」、すなわち、教授をはじめとする大学教員が欠かせない。まず学生に授業(講義・演習等)を行うための十分な教員の数(大学設置基準上)を揃えることが必要だ。さらに大切なことはその教員の「質」である。
中学校や高等学校の教員とは異なり、大学教授は教育活動と研究活動の両方を行い、自身の研究成果を教育に反映させなければならない。これについては筆者が『大学教授の資格』(NTT出版)で詳しく記しているので、興味をもたれた読者の皆さんは参考にしていただきたい。
教員組織を「量」だけでなく「質」の面でも充実させるためには、優秀な大学教授を集めなければならない。そのためには給与等の待遇面ももちろんだが、彼らが十分に研究活動をできるだけの研究環境も整備しなければならない。
というのは、大学を企業に例えれば、大学の主力商品は「大学教員」だからである。この主力商品をいかに、大学受験市場において売り込み、自らの大学の競争的優位性を確保していくかが、大学の市場価値を高めていくことにつながるのである。
■大学が無分別に学生数を増やせない理由
このように大学教授などの人材、研究環境、教育設備等の教育資源を確保し、維持していくためには、当然ながら、相当なコスト(人件費・教育/研究費等)が発生する。このようなコストをかけて大学を健全に維持、発展させるためには、それに見合う収益が必要となる。
その主なものが授業料だ。学生の数が増えれば、当然授業料収入も比例して増えるが、無分別に学生数を増やすわけにはいかない。教員組織や校舎、研究施設や教育施設には受け入れ限度があるからだ。大学設置基準の第十八条3項が「大学は、教育にふさわしい環境の確保のため、在学する学生の数を収容定員に基づき適正に管理するものとする」と定めている通りである。
こうして、大学は教育インフラや教員組織を維持するためのコストと受け入れ可能な学生数のバランスをもとに、入学定員数を定めている。すなわち、学生数が入学定員数を割り込むと、教員組織や施設、設備を維持することがいずれ困難になることが予想される。
つまり、この定員充足率は、大学の経営健全度を測るためのバロメーターとなるのである。すでに述べたように、日本の大学は学生納付金(=授業料)への依存率が高いので、大学の受験者数や入学者数が減少してくると、大学経営に大きなダメ−ジを与えることになる。
もっといえば、文部科学省が私立大学への補助金額の増減を決めているので(実際は日本私立学校振興・共済財団が各大学に学生数・教員数等を勘案して配分している)、文部科学省に目を付けられないよう大学設置基準をきちんと守るべく、私立大学も必死である。
■最初の大学倒産は1950年、設立わずか1年だった
それでは、このようなダメージによって経営が困難に陥ると、大学はどうなるのであろうか。民間企業であれば「倒産」という言葉が思い浮かぶが、大学が倒産するということはあるのであろうか?
営利企業とは異なり、教育的・社会的使命を担った大学に倒産のイメージが合わないと感じる読者も多いかもしれないが、筆者の調査では2000年以降に経営破綻を主な理由として廃止、または、民事再生法を申請した四年制の私立大学は14校にのぼる。
さらに、学生募集停止を発表して、在学生が全員卒業すると廃止となる見通しの大学もある。なお、文部科学省では、「倒産」という経済用語は使用せず、(1)大学の「廃校」措置、(2)大学の志願者の「募集停止」等の言葉を使用しているが、実際には「倒産」による大学法人の解散である。
2000年以降経営破綻による廃止または民事再生法を申請した大学
(「破綻した年」は廃止した年もしくは民事再生法を申請した年である)
(出所:各学校の大学法人ホームページや文部科学省資料より) ※同じ年に廃止した大学は廃止日順に記載している。同日に廃止した大学は大学名の頭文字五十音順に記載した。
大学倒産の歴史をさかのぼると、1950年の久我山大学の事例にたどり着く。同大学は1949年に設立されたものの、翌1950年には早くも学生募集を停止し、同年12月28日に廃校が認可されている。設立後わずか1年で廃校となり、当然ながら一人も卒業生を出していない。
久我山大学の倒産については当時の衆議院文部委員会でも取り上げられ、「私立学校法ができてからの最初のケースになるのではないか」という指摘と同時に、「いくら経営が困難だからといつて、途中でもつていきなりやめるのは不当だ」という、今日の大学倒産の問題にも通じる指摘が記録されている(衆議院会議録情報 第009回国会 文部委員会 第3号)。
その後も大学の統廃合の事例は存在するが、いずれも系列大学への統合や経営困難以外の理由による発展的な合併がほとんどである。それだけに、2000年に入ってからの相次ぐ大学倒産はやはり異常事態と言わざるを得ない。なぜ、これらの大学は倒産したのであろうか。
(後編に続く)
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