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2018年末の日経平均は、昨年末の終値2万2764円を突破できるか
https://diamond.jp/articles/-/187141
2018.12.1 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
年末までの日経平均とS&P500の行方は? Photo:PIXTA
皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
今日から12月がスタートし、今年も残すところ、いよいよあと1ヵ月となりました。そこで今週は、今年始めからの振り返りや年末にかけての金融市場のリスク要因を整理し、日米の株式市場の展開を予想してみたいと思います。
米国経済の堅調さを背景に
トランプ大統領の強気な通商政策が継続
今年は、トランプ大統領がアメリカファーストな通商政策を展開した1年でした。
今年1月、米商務省は、2017年4月から通商拡大法232条に基づいて調査を進めてきた鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置の調査報告書をトランプ大統領に提出しました。トランプ大統領は90日以内を期日とする判断期間を経て、鉄鋼とアルミニウムの輸入増加が安全保障上の脅威になっていると判断し、3月に輸入制限を発動しました。
さらに、中国に対しては、通商法301条に基づいて知的財産侵害を理由に対中輸入のうち500億ドル分に対して制裁関税を賦課すると発表しました。これに対して、中国も同額の対米輸入に追加関税を賦課するとしたことから、米中の貿易摩擦は激化していくことになります。
その後これらに加えて、米国は2000億ドルの対中輸入に年内は10%の制裁関税(2019年以降は25%の予定)、中国は600億ドルの対米輸入に最大25%の追加関税を賦課しています。また、トランプ大統領はさらに2670億ドルの対中輸入への制裁関税賦課も選択肢として残しています。
現在中国政府は、かつて世界の工場と呼ばれていた重厚長大型の製造業を中心とする「オールドエコノミー」から、サービス産業を中心とする「ニューエコノミー」へと産業構造を転換させる方針を掲げています。なかでも、製造業の高度化を目指す政策である「中国製造2025」では、次世代ITやロボットなど10分野を重点産業に指定しています。
例えば、中国株式市場ではMSCIチャイナ指数の業種別時価総額をみると、テクノロジー業種の割合は、2007年末の2%から、2017年末には41%へと急拡大しています。
こうしたなか、トランプ大統領は中国に対して、ハイテク分野に過剰な補助金を振り向ける「中国製造2025」の撤廃などを要求していることや、対中輸入品への制裁関税が対中輸入額の大半に及ぶことなどから、中国株式は今年大幅に下落しました。
このようにトランプ大統領が強気の姿勢で安全保障政策に臨めるのも、米国経済が非常に堅調だということが背景にあります。現在、米国は2009年7月からの景気拡大局面にあります。雇用環境も良好で、失業率は2018年4月には4%を割り込み、平均賃金の前年比は2018年5月以降+2.8%超となっており、上昇ペースが加速しています。また、トランプ大統領による大型減税政策の効果も景気を刺激しています。ただし、足元では貿易統計などにも強硬な通商政策の影響が出てきている点に注意が必要です。
また、良好な経済を背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)は緩やかな利上げを継続中です。政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)レートは、足元では2.00〜2.25%となっていますが、今月19日〜20日に開催される米公開市場委員会(FOMC)では、今年4度目となる利上げがほぼ確実視されています。
今年は、こうしたFRBの利上げや米国の金利上昇により、新興国では資金流出懸念が台頭しました。特に政情面も不安定なトルコでは、通貨リラが大幅に下落し、4月に8%だった政策金利は直近では24%までに引き上げられています(リラは、足元では概ね急落前の水準まで回復しています)。
ポピュリズムの台頭で
独、英、伊で高まる政治不安
米国でトランプ大統領が展開する「アメリカファースト」な政策は、いわばポピュリズムの表れといえます。このポピュリズムは今年、欧州でも大きな存在感を見せました。
欧州では、中央銀行である欧州中央銀行が今月で量的緩和策である資産購入プログラムの終了を決定しており、来年以降の金融政策が注目されています。量的緩和策の終了に至ることが出来たのは、昨年末にかけて欧州経済が好調だったことが背景にあります。しかし、その欧州経済も、今年に入り堅調さは維持しつつも、成長ペースは減速しています。なかでも、ポピュリズムの台頭を背景とした政治的な不安要素が増している点が注目されます。
まず、ドイツでは昨年9月の総選挙でメルケル首相が辛くも再選したものの、2015年に欧州で深刻化した難民問題への不満の高まりをきっかけとして、メルケル首相の求心力は低下しています。最近では、与党が州議会選挙で連敗したことの責任をとり、メルケル首相は今月7日に行われる与党・キリスト教民主同盟(CDU)の党首選への不出馬を表明しました。首相職は2021年の任期まで務めるとしていますが、後任の党首によってはメルケル首相の求心力維持は難しいと見られています。
一方、2016年の国民投票によりEUからの離脱(Brexit)を決めた英国では、先月ようやく英国とEUの交渉官レベルで離脱協定案が暫定合意しました。英国政府は直ちに臨時閣議を開き、これを閣議了承したものの、その後閣僚が相次いで辞任するなど、メイ政権は難しい舵取りを迫られています。今月11日には、英国議会で離脱協定案の採決が予定されていますが、これも一筋縄ではいかなさそうです。
また、イタリアでは今年3月の総選挙によりポピュリズム政党の五つ星運動と極右政党の同盟による新政権が誕生しました。この新政権は、拡張的な財政政策を公約に掲げています。このため現在、欧州委員会に提出している2019年度の予算案は、EUの財政ルールに反するとして、EUサイドは制裁手続きに入ることが適正としており、今月上旬のEU財務相理事会で制裁手続きへの着手を勧告すると見られています。
予算と言えば、米国でも次年度の歳出法案はまだ一部しか成立していません。予算が成立しない場合には、政府閉鎖のリスクがあります。これを避けるためには、今月7日までに臨時予算を成立させる必要があります。
先月の中間選挙により、上院は共和党、下院は民主党が勝利し、米国議会はねじれ議会となっています。米国ではねじれ議会となることは珍しくないものの、トランプ大統領は暫定予算成立に向けて民主党の協力を得る必要があり、今後の発言や対応が注目されます。
スキャンダル後も安倍総裁が3選
日本は政治的な不安要素はあまりなし
さて、ここまで先進国を中心に今年の主な政治経済イベントを振り返ってきました。それでは日本の政治経済はどのような年だったのでしょうか?
日本の政治を見てみると、9月の自民党総裁選で安倍総裁が3選を果たしました。政界では森友・加計問題などいくつかのスキャンダルがあり、そのたびに支持率の低下が懸念されることもありました。しかし、現在は衆議院・参議院ともに6割以上を与党が占めており、自民党総裁への3選と合わせて、安倍政権の長期化が見込まれていることから、政治的な不安要素は大きくないように思われます。
一方で、今年は年初から大雪や寒波の影響により景況感も冷え込みました。また、夏以降は7月に発生した西日本豪雨や、複数の大型台風の来襲、北海道胆振東部地震など自然災害が多発しました。これにより、今年1‐3月期の実質GDP成長率は、実に9四半期ぶりに前期比でマイナス成長に転じ、4‐6月期に一旦プラス成長へと回復したものの、7‐9月期には再びマイナス成長となりました。
天候要因は予測できないことではありますが、基調としては世界経済の拡大を背景に企業業績は拡大を続けています。こうした中、やはり懸念されるのは、米国とも中国とも貿易関係の深い日本企業への米中貿易摩擦の影響であり、「アメリカファースト」な通商政策を掲げる米国との2国間の貿易交渉である日米物品貿易協定(TAG)の交渉の行方と言えるのではないでしょうか。
今年の日米株式市場は、
昨年末の終値を上回れるか
さて、株式市場の動向を過去の経験則に照らし合わせてみると、今年2018年のように西暦の末尾が“8”の年は、日経平均株価は1949年以降の過去6回中で4回上昇しており、比較的上昇が期待される年です。一方、米国のS&P500は過去6回中で5回上昇しました。
昨年末の日経平均株価は2万2764円94銭、S&P500は2673.61ポイントでした。そして今年11月末の終値は、日経平均株価が2万2351円6銭、S&P500は2737.76ポイント(S&P500は11月29日の終値)でした。
ここでもう1つ、過去の12月の騰落を見てみます。12月の日経平均株価は、同じく1949年以降の過去69回中で43回上昇しました。また12月のS&P500は1941年以降の77回で59回上昇しました。
加えて、相場にはいろいろな格言がありますが、干支で見ると、今年の戌年は「笑う」です。上昇下落で言えば上昇が期待される年です。
こうした過去の経験則のように、あと1ヵ月で日米の株式市場は昨年末の終値を上回ることができるのでしょうか?
当初、トランプ大統領によるアメリカファーストな通商政策は、トランプ大統領が11月の中間選挙に向けて強い存在感を示している意味が大きいとの見方もありました。しかし中間選挙では、自動車や鉄鋼などを主要産業とする、いわゆるラストベルト地帯において州知事選や上院選で大敗を喫しました。もとより民主党の地盤であるこうしたラストベルト地帯の支持を獲得できたことが先の大統領選挙でトランプ大統領が勝利できた大きなポイントでしたが、今回の中間選挙の結果を見ると、通商政策をはじめトランプ大統領は次の大統領選挙に向けて戦略を練り直す必要があると言えそうです。
この原稿が発行される12月1日には、20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)にて、トランプ大統領が最も強硬な通商政策で臨んだ中国との首脳会談が予定されており、双方がどのように歩み寄るのかが注目されています。
また、日米の貿易交渉であるTAGは年明け以降に交渉が開始される見込みであり、こちらも注目です。そのほか、今月は、上述したように米国暫定予算の成立期限、ドイツ与党CDUの党首選、Brexitに関する離脱協定案の英国議会採決、イタリアの次年度予算案を巡るEUとの対立などが株式市場の変動に影響を与えそうです。
(三井住友アセットマネジメント 調査部 脇坂理恵)
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