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消費増税対策は「やり過ぎ」、ポイント還元や商品券は無駄金だ
https://diamond.jp/articles/-/186757
2018.11.28 森信茂樹:東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 ダイヤモンド・オンライン
Photo:PIXTA
安倍首相は消費税率を2019年から10%に引き上げる際の対策として導入するポイント還元制度について、還元率を5%にし、増税後、2020年の東京オリンピックまでの9ヵ月間、実施する考えを表明した。
「今度引き上げに失敗すれば、二度と消費増税はできない」「純額で増税になる消費増税の成功体験を作りたい」ということから、経済に与える影響を緩和するために検討されているさまざまな対策の一つだ。
だが前回の増税に比べて景気への影響は大きくはないし、軽減税率が導入される上に、プレミアム商品券やポイント還元などをするのはやり過ぎだ。
税率10%引き上げで
家計の負担増は2兆円と少ない
消費税率の8%への引き上げ、さらに10%に上げる増税は、税・社会保障一体改革で行われる、「初めてのネット(純額)増税」だ。
消費税導入時や、税率3%から5%への引き上げの時は、ともに所得減税とセットだったので、経済への影響は基本的に中立だった。
14年4月の税率8%への引き上げが、駆け込み・反動減などの混乱を招き、景気回復に時間がかかったことは事実だ。消費増税は今回だけに終わらないだけに、今回の引き上げで経済への悪影響は避けたい、何とか消費増税の「成功体験」を持ちたいという政権の気持ちは理解できる。
しかし今回は、税率引き上げ幅は2%である。
14 年度は増税幅が3% 、家計の負担増は 8.2 兆円とされた。消費や景気の落ち込みを防ぐ対策は打たれたが、公共事業中心で一般国民にはほとんど還元されなかった。
だが今回の10%増税では、食料品などには1兆円規模の軽減税率(8%)が導入され、また年金生活者支援給付金、教育無償化などが予定されている。日銀レポートでは家計のネット負担額は、2 兆円程度と大きなマイナス効果は予想されないとしている。
多くの民間エコノミストも、世帯当たりの年間負担増は4万円強と計算している。
消費税収の使途変更も行われ、増収分のうち国債償還に充てる割合は減らされ、教育無償化などに使われる。その政策パッケージを見ると、図の通りである。
(ここに図表1消費税率引き上げで実現する政策を置いてください)
幼児教育の無償化は、全ての3歳から5歳までの幼稚園、保育所などの費用を無償化、0歳〜2歳児について住民税非課税世帯には無償化、高等教育についても一部無償化するなど手厚い内容になっている。
焦点が定まっていない増税対策
商品券の効果は限定的
問題は、それに加えて、住宅の取得や改築、自動車などの耐久消費財購入の際の減税や、さらにはクレジットカードなどで代金を支払った利用者に対し、代金の5%をポイントで還元したり、低所得者に対してはプレミアム商品券を配布したりすることもあわせて検討されていることだ。
だが税金を使っての政策である以上、「論理(スジ)が通り、効果が期待され、公平で国民が納得するもの」でなければならない。
今検討されている対策はバラマキ・無駄金と言わざるを得ない。単年度だから許されるというものでもない。
翻って見ると、軽減税率は、多くの食料支出をする高所得者ほど有利な制度で、国民や事業者、国税当局に多大のコストをかけるものだ。欧州では、EU委員会など何度も軽減税率の非効率性を指摘してきた歴史がある。
12年の税・社会保障一体改革の「3党合意」や税制改革法では、「低所得者対策として、給付付き税額控除か軽減税率の導入を検討する、それまでの間は簡素な給付措置で対応する」とされた。
つまり軽減税率は、低所得者への給付・給付付き税額控除の代わりに導入されたものである。
軽減税率に加えて、商品券などの「給付」も行うということになれば、あまりに過剰ではないか。
政策目的も、小売事業者の近代化の促進から、キャッシュレス化の推進(ポイント還元)、さらには地方商店街の振興(プレミアム商品券)など焦点が定まらない。
商品券の交付はキャッシュレス化と明確にバッティングする。どちらを取るのかという優先順位もはっきりしない。
商品券の効果が限定的であるというのは多くのエコノミストのコンセンサスだ。
また小売りの現場などでは、複雑さが増し、中小小売店などの店頭での混乱も予想される。
ポイント還元は、クレジットカードや電子マネーによる利用を想定するというが、ポイントが付かないカードもあるし、対象事業者は中小店で、大手の百貨店やスーパーは対象にならないという。公平で国民が納得するものなのか、疑問が残る。
消費者も混乱するだろうし、5%のポイントを還元すると、消費税率はいまの8%から5%になるようなものだ。軽減税率が適用される食料品などは税負担が3%になるということをどう考えるのか。
「対策」には多くの疑問や課題がある。
「日本型軽減税率」のほうが
まともなアイデアだ
思い起こされるのは、今から3年以上前の15年9月、財務省が提言した「日本型軽減税率」だ。
「買い物時に消費者は10%を支払うが、飲食料品に関しては、後から一定割合分を払い戻す。ただし低所得者に限定する」という案を提案した。下図のような仕組みだ。
核となるのは、会計の際にマイナンバーカードを店舗の端末にかざし、カードに記載されたICチップを読み取ることで本人確認をすることだ。
最大のメリットは、マイナンバーカードを所得情報と結びつけることができるので、「還付対象者を一定の所得以下に絞ることができる」点である。
消費段階だけで判断できるので、あらゆる取引段階で大きなコストを生じさせる軽減税率に比べて、事業者のコスト負担ははるかに少ない。外食サービスも対象に含めていたので、線引きの問題(混乱)は生じない。
なにより、もう1つの政策目標は、マイナンバーやマイナンバーカードの普及だった。
当時は、マイナンバーカードの普及が十分ではないことや、カードをかざすとマイナンバーが漏れる可能性があるという国民のプライバシー上の不安(番号を使うわけではないのでこれは誤解で)などから反対があったが、今から考えれば、はるかにまともなアイデアだった。
マイナンバーカード活用を
税と社会保障の一体化が不可欠
今回のポイント還元などで、莫大な税金を投入して導入したマイナンバー制度の活用が本格的な議論となっていないのは問題だ。今後、税と社会保障を一体的に設計していく上でマイナンバー(番号)とカードの普及は不可欠だ。
マイナンバーカードはいまだ1500万枚程度しか発行されていない。ましてやカードを使って個人が開くマイナポータルに至っては、ほとんど周知されていない。
しかし今後はマイナポータルに医療費支払情報や生命保険料控除の証明書などが入ってくる仕組みに移っていく。
そう考えると、今回、政治的な思惑から、低所得者にポイント還元をするということになれば、マイナンバーカードの普及の促進、たとえばマイナンバーカードを使ってプレミアムポイントを受け取る人はプレミアム率を高くするとか、マイキー(マイナンバーカードに付いている個人認証機能)を使ったポイント制の活用を検討していくべきだ。
政府部内で検討が始まったという報道もある。
今後、税と社会保障を一体的に設計していく上で、マイナンバーカードの普及は、キャッシュレス化の推進より格段に重要な施策だ。
なおマイキー連携については、総務省が以下の説明をしている。
https://www.point-navi.soumu.go.jp/point-navi/summary/mykey;jsessionid=1B88B35014855213881BE1D9C6727E5F
(東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信茂樹)
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