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日産はなぜ「幹部の総退陣」という手を打たなかったのか まずは信頼できる体制づくりが必要では
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58653
2018.11.27 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
この先何が待っているのか
西川廣人社長が率いる日産自動車は先週木曜日(11月22日)、臨時取締役会を開き、有価証券報告書の虚偽記載の疑いで逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者(前会長)ら2人の「代表権」を解く解任決議案などを全会一致で可決した。
ゴーン容疑者らの逮捕からわずか3日後という解任劇に、日産が「機動的な対応をした」と評価する向きは多いかもしれない。新聞やテレビでさえ、次々に出て来るゴーン容疑者らの役員報酬の隠蔽工作や背任・横領容疑を巡るスクープ合戦に忙殺され、経営やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の観点から解任劇の意味を評価する余裕がないようだ。
しかし、一連の西川・日産の対応はあまりにも拙速であり、乱暴だ。ゴーン容疑者らを庇う気は毛頭ないが、西川・日産がゴーン解任の根拠にした会社法上の善管注意義務は、ゴーン容疑者らの犯罪を見逃した日産の取締役全員にかかる義務である。
仮にゴーン容疑者らが有罪ならば、会社法に照らして、西川社長を含む取締役全員が「特別利害関係」を有する取締役にあたり、解任決議に票を投じることはもちろん、取締役会を開くことすら許されなかった疑いが残る。
なぜ、西川・日産は、これほどガバンス不在状態になったのか、この状態の先に何が待っているのか、そして、どうすれば影響を最小限に抑えられるのか。そういった命題を考えてみたい。
拙速の感
まず、事件を整理しておこう。
11月19日の夕方5時過ぎ、東京地検特捜部が、羽田空港にプライベートジェットで乗り付けた、日産自動車のゴーン会長を金融商品取引法違反の容疑で任意同行した、とのニュースが世界中を駆け巡った。
その夜、検察は、ゴーン会長と日産のグレッグ・ケリー代表取締役の逮捕を発表した。2人の容疑は「2015年3月期までの5年間に、ゴーン容疑者の役員報酬が約99億9800万円だったにもかかわらず、約49億8700万円に過ぎなかったとの虚偽の記載をした有価証券報告書を5回(5年、筆者注)にわたり関東財務局に提出(一般に開示、同)した」ことと、背任や横領の疑いがあることだった。
ちなみに、有報の虚偽記載は証券取引の信用基盤を破壊する重罪で、金融商品取引法が「10年以下の懲役か1000万円以下の罰金、またはその両方」を科すことを規定している。翌日の新聞報道によって、今年6月に制度が創設されたばかりの日本版・司法取引が今回の捜査で使われたことも明らかになり、事件への社会的な関心が一段と高まった。
一方、ゴーン容疑者が任意同行を求められたのとほぼ同時刻、示し合わせたかのように、日産も文書でコメントを発表した。
数ヵ月にわたる社内調査の結果、ゴーン容疑者とその側近で代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の2人が、開示されるゴーン容疑者の報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたほか、日産の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為もあり、明らかに取締役としての善管注意義務に違反したと強調する内容だった。
筆者は、この発表文に強い違和感を持った。何十人もの人が作成作業に携わる有報に虚偽の記載をするという犯罪を、ゴーン、ケリーの2容疑者がたった2人で犯したと日産が決め付けたうえ、この段階で早くもゴーン容疑者の会長職・代表権、ケリー容疑者の代表権のはく奪を取締役会に諮る方針まで明記したからである。
違和感を抱いた理由は後で詳述するが、ひと言でいえば、拙速の感を免れなかった。
深刻な欠点
西川社長はその夜、横浜市の日産本社で開いた緊急記者会見で、「断じて容認できる内容ではない」「あまりにも1人に権限が集中し過ぎていた。長年のゴーン統制の負の側面だ」などとゴーン容疑者らの非道を繰り返し非難した。
だが、西川社長は、「ゴーン容疑者の側近」と呼ばれてきた人物だ。2005年に執行役副社長から取締役副社長になり、以後、CCO、副会長、共同最高経営責任者、社長兼最高経営責任者などの重職を歴任してきた経歴も持つ。そんな人物が、自身の経営責任や善管注意義務に言及して非を認めて謝罪する場面がほとんどないことにも、筆者は驚かざるを得なかった。
様々な関連報道のスクープ合戦が続く中で、事件発覚の3日後にあたる先週木曜日。日産は臨時取締役会を開き、4時間に及ぶ議論の末、ゴーン容疑者の会長職、代表権、ケリー氏らの代表権のはく奪を決議した。ところが議論は、それらにとどまらなかった。
豊田正和氏、井原慶子氏、ジャンバプティステ・ドゥザン氏の3社外取締役の主導で第3者委員会を設置して、より良いガバナンス体制についての提言を得ることと、空席になった会長職を選任するため豊田氏を委員長、井原氏、ドゥザン氏の両氏を委員とする委員会を設置して現取締役の中から候補者を選出することも決議したのだ。
会長職は西川社長が兼任の意欲をみせていると報じられていたが、ルノーが譲らず先送ったようだ。その意味では、早くも、日産、ルノー、三菱自動車の3社連合がゴーン容疑者という扇の要を失い、主導権争いが始まったことが浮き彫りになった。
自動運転や電動化、カーシェアリングなど100年ぶりの大変革に直面する自動車産業の中で、フォルクスワーゲンやトヨタ自動車といった既存のライバルだけでなく、グーグルやウーバー・テクノロジーズなど異業種からの新規参入者たちと伍していくためには、日産、ルノー、三菱自動車も3社連合の維持という規模の確保が生き残りに不可欠なことは十分理解しているはずだ。
ただし、どの社が3社連合の主導権を握るかはまったく別の問題で、今後役員ポストを巡る主導権争いが激化するだろう。それを予感させる対立が会長人事を巡って顕在化した。
今回の事件とここまでの経緯で、日産がコーポレート・ガバナンスで会社の存続の是非を問われかねない深刻な欠点を抱えていることも明らかになった。
ゴーン容疑者ら2人は認否を否定して争う姿勢を見せているとされ、捜査や裁判の行方を見守らないと断定できないが、報道ベースも含めて明らかになっていることを勘案すると、2011年3月期以降、実に8年あまりにわたって、日産及び日産の取締役会は、ゴーン容疑者ら主導の役員報酬の過少記載、もしくは記載漏れという有価証券報告書の虚偽記載を見逃してきたことになる。
これだけでも、ワンマン経営者のもとにイエスマンばかりが集まり、トップの暴走に歯止めをかけられない布陣だったことは明らかだ。
異常事態
加えて、グローバル企業を標榜しながら、ガバナンスの組織・体制がお粗末だったことも明白である。というのは、日産はいまだに旧態依然とした「監査役会設置会社」のままで、「監査等委員会設置会社」でも「委員会設置会社」でもないからだ。
「監査役会設置会社」では、仮に、今回の虚偽記載に気付いていた監査役がいたとしても、発言権が弱く是正できなかった可能性が大きい。もし監査等委員会設置会社であれば、過半数の社外取締役を含む取締役3名以上で構成される監査等委員会がこのような経理処理を許さなかった可能性は高い。
さらに、委員会等設置会社に移行していれば、役員報酬の決定も社外取締役が中心になる「報酬委員会」という組織が存在し、きちんとルールを設けて個別の配分もしっかりと決めたはずだ。こうしておけば、大枠だけ取締役会で決めて個人への配分は「ゴーン容疑者一任」などという曖昧な意思決定は許容されず、不正が入り込む余地など無かったはずなのだ。
そうしたガバナンス不在のもとで、ゴーン容疑者らの解任だけでなく、ガバナンス確立のための第3者委員会設置と現取締役の中からの会長を選出する方針を決めた22日の取締役会も、はっきり言って支離滅裂だ。
この日欠席して解任されたゴーン、ケリー両容疑者を除く7人の取締役陣をみると、有価証券報告書の虚偽記載があったとされる8年間に取締役、最高執行責任者職、副会長職を歴任してきた志賀俊之氏や、西川社長はもちろん、副社長の坂本秀行取締役や社外取締役の3人も、この間に取締役の座にあったからである。
報道ベースでは、検察当局は虚偽記載について、日産自動車の会社としての犯罪の立件も視野に入れているという。つまり、日産は7億円以下の罰金を科されてもおかしくない異常事態に陥っている。
ゴーン、ケリー両容疑者が犯罪者で善管注意義務に違反したというのならば、残る7人も善管注意義務を果たせなかったという点で責任を免れない。
少なくとも会社法に照らせば、この7人は「特別利害関係」を有する取締役に該当し得る。この場合、取締役会に出席したり決議案に投票したりする権利がなかったことになる。蛇足だが、仮に7人が刑事処分を免れても、経営責任や民事責任からは逃れることができない。
日産の取締役陣は、決議の前にまず、全員がけじめをつけるべきだった。総退陣が最も妥当な線だっただろう。そのうえで、トップを含めて外部から多くの人材を招へいし、社外取締役中心の取締役会を新たに作る人事案を策定して、株主総会の了解を得ることが必要だった。会長の選出や第3者委員会の設置も、新取締役陣の仕事である。そして速やかに、委員会等設置会社への移行も推進する必要がある。
発行済み株式の43%を握るルノーが会長職を要求し、対抗上、社長職を日産プロパーで抑えたのなら、強い権限を持つ「取締役会議長」職の創設も一案かもしれない。
会長選任も第3者委員会設置も西川体制のもとで行ったのでは、一般株主無視の誹りを免れない。古い体制の温存は、ゴーン容疑者の役員報酬隠しと同様に、株主にとって許容される経営とは言えないのだ。
信頼回復の出発点は、誰が見ても納得できるガバナンス体制作りにあると言ってよい。
日産はなぜ「幹部の総退陣」という手を打たなかったのか https://t.co/ldlVghw35p #マネー現代#カルロス・ゴーン による「犯罪事実」の有無についてはともかく、少なくとも社内クーデターを起こした西川社長ら日産の現経営陣に、ゴーン体制を批判する資格は無い!
— ステイメン@打倒!凶人安倍! (@deskain) 2018年11月27日
西川社長以下が取締役会で特別利害関係を有していたという指摘は結構重要なように思う。/日産はなぜ「幹部の総退陣」という手を打たなかったのか https://t.co/yih460PtJj #マネー現代
— w_kishida (@w_kishida) 2018年11月27日
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