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まさかの無罪も…? ゴーン巡る大マスコミの迷走と混乱
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/242432
2018/11/26 日刊ゲンダイ 文字起こし 特捜部の取り調べにハッキリと容疑否認(C)日刊ゲンダイ カリスマ経営者の電撃逮捕から1週間。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の悪事が堰を切ったように表沙汰になっている。巨額の役員報酬ゴマカシにとどまらず、海外子会社を通じて世界各地に数十億円相当の豪邸を購入。ブラジル在住の姉と実態のないアドバイザー契約を結んだ2002年以降、年間10万ドル前後を横流ししていたこともバレた。日産が「重大な不正行為」と指摘した▼実際よりも少ない役員報酬を有価証券報告書に記載▼目的を偽って私的に日産の投資資金を流用▼不正目的で日産の経費を支出――の3点を裏付ける不正が次々に報道されている。 ゴーンの逮捕容疑は前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者と共謀し、11年3月期〜15年3月期の役員報酬を実際より約50億円少なく記載したことによる金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)だ。巨額報酬のゴマカシは直近の16年3月期〜18年3月期にも及び、虚偽記載の総額は8年度分で約80億円に上る見通し。 SAR(ストック・アプリシエーション・ライト)と呼ばれる株価連動報酬の約40億円も隠蔽し、トータルで約120億円をかすめ取った疑いが濃厚だ。 もっとも、捜査の焦点は逮捕容疑の50億円のチョロマカし方だ。その手法を巡る報道は、二転三転。当初はSARによる報酬の不記載とされたが、退任後に報酬を受け取る契約を毎年交わし、受領を先送りしていた可能性が高まっている。毎年約10億円、5年度分で約50億円という計算である。退任時に顧問などに就く契約を日産と結び、その段階で残額を受け取ろうというスキームだ。東京地検特捜部は契約書が毎年交わされていることから、事実上の隠蔽工作と判断。その都度、役員報酬として有報に記載し、開示する義務があるとみているという。 ルノー支配を強める結果に(C)日刊ゲンダイ
日産を完全に私物化し、あの手この手で報酬をゴマカしていたゴーンは容赦なく断罪すべきだが、問題の50億円が「退任後の報酬」だとすると、筋が変わってくる。これで有罪に持ち込み、ゴーンを収監できるのか。 元特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏は言う。 「報酬の後払い契約とはいうものの、契約を交わした時点で報酬の支払いが確定されたといえるのか。退職慰労金という形式であれば、在任期間の終了に伴って支払われる性質上、確約された報酬と捉えられますが、それとは異なります。しかも、顧問などの形態で新たな契約を締結したことによる報酬という位置づけであれば、在任中の報酬とは断定し難い。そもそも、役員報酬の記載の問題が有報の虚偽記載罪に問われた事例は聞いたことがない。日産の18年3月期連結決算は売上高約12兆円、純利益約7500億円。この経営規模からすると、1期当たり約10億円の虚偽記載額は僅少で、果たして立件に値するのか。逮捕容疑は妥当なのか、起訴できるのか。疑念を持っています」 ゴーン逮捕を巡る情報は錯綜し、報道の軌道修正が相次いでいる。西川広人社長を中心とする日産執行部の動向を巡り、日経新聞は「西川氏、暫定会長で調整」(22日付朝刊)と見出しを打ったものの、ハズレ。朝日新聞も「日本人の代表取締役 追加へ」(22日付夕刊)との見出しで〈臨時の取締役会で、西川広人社長以外の日本人取締役にも代表権を与える提案をすることが分かった〉と報じたが、ハズした。大マスコミは混乱、迷走を極めている。 「ハッキリ言って、今回のマスコミ報道はメチャクチャ。降ってくる情報をロクに精査せず、垂れ流している印象があります。とりわけ、ゴーン容疑者が日産会長職を解任されるまでがひどかった」(郷原信郎氏=前出) この1週間、ゴーン有罪が確定したかのような大騒ぎだった。こうなってくると、ゴーン無罪のマサカの展開もあり得る。大山鳴動してネズミ一匹なんてことになれば、日本の司法は赤っ恥。「推定無罪の原則」を唱えてゴーンのCEO留任を決めた仏ルノー、そのバックの仏政府が黙っているはずがない。
ルノーと日産の経営統合を狙う仏政府の動きは早かった。 ゴーン逮捕の翌日にはルメール経済・財務相が世耕経産相に電話会談を申し入れ、「協力関係を維持していくという日産とルノーの共通の意思への強力なサポートを再確認した」とする共同声明を発表。2025年の大阪万博開催を決定した博覧会国際事務局(BIE)総会出席のためパリ滞在中の世耕を捕まえて直接会談し、「日産とルノーの連合を両国政府は強く支持する」との共同声明を再度出す念の入れようだ。 駐日大使が東京拘置所を訪問し、勾留中のゴーンに面会する異例の対応も見せた。「推定無罪」をタテにゴーンを擁護する姿勢を鮮明にし、離反をもくろむ日産執行部を激しく牽制している。 自動車業界に詳しい経済ジャーナリストの井上学氏はこう言う。 「日産は12月の取締役会で後任会長を選ぶ予定ですが、西川社長の目はない。議決権のある日産株を43.4%保有するルノーの意向を無視した人事案は通りませんし、ルノーの出資比率の引き下げやルノー株の買い増しなどによる資本構成の見直しもはねつけられるでしょう。日産執行部がルノーに対抗するには1%でも多くの議決権をかき集める必要がありますが、大半が一般株主のため現実的に難しい。業を煮やしたルノーが〈このままではルノーと日産のアライアンスは終わる〉とでも声明を出せば、日産はひとたまりもない。販売台数世界2位のグループから二流メーカーに転落することになり、日産株の暴落は避けられない。株主は雪崩を打ってルノーにつき、その提案に乗るでしょう」 ■ゴーン復帰で経営統合前倒しシナリオ 被害者ヅラで記者会見し、「現執行部に影響はない」と断言した西川社長だが、その対応は後手後手に回っているどころか、やることなすこと裏目に出ている。西川・日産のゴーン潰しは完全に目算が狂ってきた。 ゴーンは特捜部の調べに容疑を否認。黙秘する様子はなく、ハッキリと主張しているという。ケリーも「適切に処理した。社内の人間が外部の法律家らの意見を聞いたりしながら処理した」と報酬隠しを否定。法律事務所や金融庁にも問い合わせたとも供述しているという。 「ルノーCEOの任期が今年までだったゴーン氏に対し、マクロン大統領が22年までの続投を認めたのは、〈ルノーと日産の関係を不可逆的なものにする〉と手形を切り、任期満了時点での経営統合を誓約したからです。ゴーン氏の解任見送りも同様で、これほど利用価値の高い人物はいないからです。ゴーン氏が無罪放免、あるいは罰金刑で決着をつけられれば、現場復帰が視野に入る。ルノーCEOはルノー・日産連合のトップ。日産がガタガタ騒ぐのであれば、カムバックしたゴーン氏の手によって一気に経営統合を進めるシナリオです」(井上学氏=前出) 日産執行部が総退陣でハラを決め、次世代に託す姿勢を見せれば、日本の世論への配慮で展開は変わったかもしれない。しかし、サイは投げられた。
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