外為フォーラムコラム2018年11月12日 / 10:47 / 3時間前更新 オピニオン:逆風の対米通商交渉、日本経済の仕組み見直す好機=加藤隆俊氏 4 分で読む[東京 12日] - 米国、メキシコ、カナダがNAFTA新協定(USMCA)に9月合意し、米韓自由貿易協定(FTA)がまとまる中、トランプ米大統領は、次は日本だと意気込んでいるはずだ、と国際金融情報センター顧問の加藤隆俊・元財務官は語る。 トランプ大統領は7日、日本は米国を貿易面で不公平に扱っていると中間選挙後の会見で改めて不満を表明。先の米財務省為替報告書でも、日本が中国と韓国に並んで監視対象国に指定、対米貿易黒字額では中国、メキシコに次いで日本が3番目の大きさだと指摘した。 逆風の中で、日米物品貿易協定(TAG)の交渉が来年年初に始まるが、日本はこれを経済の仕組みを見直す好機として前向きに捉えるべきだ、と加藤氏は説く。 同氏の見解は以下の通り。 <日米TAG、極めて難しい交渉に> 日米TAG交渉では、対米貿易黒字の4分の3を占める自動車及び自動車関連部品について、日本側は関税回避を重視するが、米国としては2020年の大統領選が本格化する前に同交渉をまとめたいという強いインセンティブがある。 次善策として、米国からの輸入を拡大することや、米国が作るインフラ投資の仕組みに日本が協力することなどが考えられるが、他国との通商交渉をみても、米国は相手の懐(ふところ)に飛び込んでFTAをまとめており、日本側にとってTAGは極めて難しい交渉になるだろう。 農産品に対する関税に関しては、日本政府は過去の経済連携協定の内容が最大限だとして、環太平洋経済連携協定(TPP)などで決めた水準を上回る関税引き上げの可能性を否定している。来年7月に参院選を控えている日本としては、農産品について政治的に譲歩することは困難ではないか。農業の分野では、交渉に関わらず、働き手を海外から補充することや、生産の工場化、効率化が喫緊の課題だ。 逆風下の対米通商協議になろうが、防御的になり過ぎず、日本経済の仕組みやあり方を見直す好機として前向きに捉える心構えも必要ではないか。 例えば、日本には古くから物づくりの文化があり、良いものを作ることを美徳としてきた。一方で、ITを中心に物を動かすことには遅れをとっている。 米国が自動車や自動車関連部品の製造を最終的に自国に取り込むつもりならば、日本としてはITと自動車製造を結び付ける分野の開拓・発展を目指す戦略に弾みをつける拍車だと捉えるべきではないか。 <為替条項は誤った認識に基づく> ムニューシン財務長官はTAG交渉を巡り、通貨安誘導を封じる為替条項を日本にも求める可能性を示唆している。たが、為替条項に関しては、通商面に配慮して為替政策が制約を受けることは避けるべきだ。 日本を巡る為替取引の大半は資本取引関連のフローであり、貿易取引関連のフローが為替相場に与える影響は限定的だ。貿易関連のフローが、為替相場を左右するとの認識は「犬のしっぽが胴体を振る」ような話であり、間違った認識に基づく提言は受け入れるべきではない。 また、為替相場は経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移すべきとの国際的な合意は過去40―50年かけて構築されたものであり、日本としては妥協すべきではない。 <米中の「つばぜり合い」は長期化> トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、ブエノスアイレスで今月開かれる主要20カ国・地域(G20)にあわせて米中首脳会談を開催するが、そこでは今後の2国間協議のロードマップが示されるとみている。 中国の7―9月期の国内総生産(GDP)は実質で6.5%に減速しリーマンショック直後の2009年1―3月期以来の弱さとなった。足元でも景気の弱さが続くなか、中国は貿易面でまとめたいという心境であろう。 習主席は8日、米国との問題を対話を通じて解決することを中国は望んでいるが、発展の道筋に関する中国の選択やその利益を米国は尊重する必要があるとの見解を示した。 一方、米国のペンス副大統領は先月4日の講演で、中国が米国の知的財産権を盗むことや、強制的な技術移転をやめない限り、強硬な通商政策を行使せざるを得ないと強調している。 特に、次世代情報技術やロボットなど重点分野を発展させ、先端技術を中心に独自のサプライチェーンの構築を目指す「中国製造2025」について、米国は警戒しており、両者の「つばぜり合い」は長期化しそうだ。 <米国経済は減速へ> 一方、経済情勢に目を転じると、最近の民間調査によれば、世界のファンドマネージャーの多くが世界景気のピークは既に過ぎ去ったとの認識を持っているようだ。 米国についても、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で示された実質GDP成長率見通しは、今年は3.1%、2019年が2.5%、2020年が2.0%と次第に減速する見込みだ。大規模減税の景気浮揚効果も来年にかけて弱まってくるとみられ、追加減税については下院で過半数を奪還した民主党が簡単に首を縦に振らないだろう。 米国経済が高成長期から比べれば次第にブレーキがかかってくることが予想されるが、そのなかでFRBが利上げを進めれば、トランプ大統領との軋轢(あつれき)は増すだろう。 ドル高、米金利高、そして欧米緩和マネーの縮小に伴い、新興国が不安定さを増すことが懸念され、通貨や経済の安定を意図して、一段の利上げを余儀なくされる国々がアジア地域にも現れるだろう。 (聞き手:森佳子) 加藤隆俊氏 国際金融情報センター顧問/元財務官 *加藤隆俊氏は、元財務官(1995─97年)。米プリンストン大学客員教授などを経て、2004─09年国際通貨基金(IMF)副専務理事。2010ー17年公益財団法人国際金融情報センター理事長。2017年10月から同センター顧問。 *本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの「外国為替フォーラム」に掲載された加藤氏へのインタビューです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 https://jp.reuters.com/article/opinion-takatoshi-kato-forexforum-idJPKCN1NH042 トップニュース2018年11月12日 / 12:02 / 2時間前更新 焦点:日独7─9月期はマイナス成長へ、世界経済のリスク露呈か 2 分で読む [フランクフルト 9日 ロイター] - 今週発表される日独両国の7─9月期国内総生産(GDP)はいずれもマイナスになる見込みだ。世界経済は成長のピークが既に過ぎ、全体として落ち込む危険が高まりつつあることを一段と証明する形になる。 日独のマイナス成長はともに一時的要因が影響したかもしれないが、経済の基調的な動きは弱く、先行きも世界的な貿易戦争の発生は言うに及ばずリスクだらけだ。 当面で考えれば、米経済が堅調に推移して2020年にはもう一度上向くとの見方が大勢なので、世界経済がマイナスに陥ると考えるエコノミストはほとんどいない。それでも世界的な景気サイクルは2017年を天井に成熟段階に差し掛かっている中で、下振れ方向のリスクが増大している。 UBSは調査リポートに「世界経済はまた大きなソフトパッチ(踊り場局面)を迎えつつあるようだ」と記し、ソフトパッチは一時的な現象だとみなしながらも「世界中のハードデータとソフトデータの悪化ぶりは、ユーロ圏危機以降で最も深刻になっている」と指摘した。 ABNアムロのチーフエコノミスト、ハン・デヨング氏は「米経済の成長は強く、物価は上振れているので、米連邦準備理事会(FRB)の政策は引き締まり続けている。残念ながら他の地域の経済は、米国の半分ほどの力強さもない」と語った。 同氏によると、そうしたFRBの引き締めが金融市場に及ぼしている影響が他の地域にとって大きな問題を生み出しているという。 <ケース1:ドイツ> 14日に発表されるドイツの7─9月期GDPは前期比0.1%減と、3年余りぶりのマイナスになると予想される。 エコノミストがその原因として挙げるのは、自動車業界が欧州連合(EU)の新排ガス測定基準への対応に苦戦し、何カ月も生産が抑制されている事態だ。年内には生産のボトルネックが解決し、プラス成長に戻るだろうという。 ただしそれはドイツ経済を巡る構図のごく一部にすぎない。コメルツ銀行は「この問題を除外しても、ドイツ経済は今年前半に比べて相当勢いが弱まった」と主張する。 新たな排ガス測定基準への対応とともに懸念されるのは足元輸出の失速かもしれない。そして世界的な貿易戦争リスクを踏まえれば、輸出が昨年の水準を急速かつ確実に取り戻す公算は乏しい。 <ケース2:日本> 内閣府が14日に発表する7─9月期GDP一次速報は前期比0.3%減と1─3月期以来のマイナス成長となりそうだ。 ドイツと同じく一時的な要因が主に作用し、日本の場合は台風や地震といった相次ぐ自然災害が響いた。もっとも、やはりその裏側には基調的な成長軌道の下振れが隠れている。 今年に入ってからの日本の成長率は1%強にとどまり、労働力の減少や財政的な支援の弱まり、金融政策による景気刺激効果の限界を考えれば、今後は経済成長がじりじりと下がっていく可能性がある。 モルガン・スタンレーMUFG証券はリサーチノートで、目先の10─12月期には小幅のプラス成長に回復するとの見方を示した。 (Balazs Koranyi記者) https://jp.reuters.com/article/jpn-germany-gdp-idJPKCN1NH069 外為フォーラムコラム2018年11月12日 / 11:32 / 2時間前更新 米株の強気相場の最終局面へ、中国リスク意識=青木大樹氏 青木大樹 UBS証券ウェルス・マネジメント本部 日本地域CIO兼チーフエコノミスト 5 分で読む [東京 12日] - 米国では対中貿易戦争の影響が産業レベルで出始めている可能性があり、トランプ大統領が姿勢を軟化させて「一時停戦」が実現する公算が高まっている、とUBS証券ウェルス・マネジメント本部の最高投資責任者(CIO)、青木大樹氏はみている。 来年にかけては、米国の金利上昇が一段落し、市場に楽観論が広がることで株価が上昇する可能性が高いものの、その後は景気後退入りする可能性があるため、これが強気相場「最後の1年」となると予測する。一方で、中国の外貨準備高の減少が加速し、人民元安が過度に進めば、リスクの方が強く意識される展開になると説く。 同氏の見解は以下の通り。 <米中は「一時停戦」か> 6日実施された米中間選挙の結果、上院では共和党が、下院では民主党が過半数を占める「ねじれ議会」となり、議会を通じた政策実現が難しくなった。トランプ大統領は自らの権限を駆使して政策を進めることになり、中でも貿易、外交、安全保障の分野に注力するだろう。 最大の注目点は、今月末にも行われる米中首脳会談だ。トランプ大統領が米中貿易合意の草案作成を指示したと一部メディアが2日報じたこともあり、貿易戦争の「一時停戦」で両国が合意する可能性がある。具体的には、来年1月に予定されている、2000億ドル(約22.8兆円)相当の中国製品に対する25%の関税率導入の延期が考えられる。 米国ではマクロレベルでの貿易戦争の影響はまだ確認できない。だが個別の産業セクターをみると、例えば2月にセーフガード措置が発動された洗濯機は中国依存度が高く、2月以降に洗濯設備の価格指数が2割上昇する一方で、売り上げ台数は2割減と、影響が明確に出ている。9月に関税措置が発動された2000億ドル相当の米国製品も中国依存度が高く、産業レベルへの影響が意識され、消費者のセンチメントを通じた政権支持率の低下リスクが高まったことが、トランプ氏の態度軟化につながった可能性がある。 今回の中間選挙を受けて共和党では、対中強硬派や保守派の議員が下院で減る一方、上院では比較的穏健な、いわゆる主流派の議員が増えたようだ。同党内の力学変化により、関税ではなく、対米投資の厳格化や中国への輸出制限強化など、別の方法に焦点が移る可能性も考えられる。 関税強化論の後退を受けて、日本の自動車に対する課税リスクも減退していくとみている。日本側が防衛装備品の購入や農産品の輸入などで譲歩し、自動車メーカーが現地生産を増やすことで、関税を回避できるだろう。 <強気相場の「最後の1年」> 2019年の投資環境を巡るテーマは、世界経済の同時減速が見込まれる中で、米国の金利上昇が終了することに注目すべきだ。 米連邦準備理事会(FRB)の利上げ回数について、市場は20年末までに3.4回しか織り込んでいない。一方で当社は、12月に1回、来年3回と、計4回の利上げを現在予想しており、FRBが示した利上げ回数見通しの中心値は5回だ。 1回の利上げ幅が25ベーシスポイント(bp)であるため、米2年国債金利は3−3.3%に到達する。ただ、10年金利が現状の3.2%から大きく上昇することは難しいとみており、10年金利と2年金利の差が小さくなってイールドカーブがフラット化する。つまり、2019年に米国の金利上昇は終了する。 フラット化すると景気後退という見方があるが、米国株式市場はむしろフラット化が起きた後のほうが上昇しやすい。 1968年以降にフラット化が発生した6回の事例をみると、フラット化する前の12カ月間における米国株式のパフォーマンスは、平均15%の上昇率を示した。一方、フラット化した後12カ月のパフォーマンスは平均29%と、さらに高い上昇率だった。 これ以上の金利上昇がないと認識すると、米株式市場で一旦楽観論が広がりやすいためだろう。だがこれはバブルにつながりやすく、株式バブルや負債バブルの崩壊を経て後退期入りするサイクルを繰り返してきた。したがって、来年から再来年にかけては、リセッションに入る前の強気相場「最後の1年」となる可能性が高い。 気を付ける必要があるのが中国経済の減速だ。当社予測では、来年の中国国内総生産(GDP)成長率が6%と更に減速するが、世界経済の成長率は3.8%と、世界の企業収益を大きく損なうものではない。だが中国の成長率が5%台に落ち込んでしまうと、米金利上昇の終了という株式市場にとってポジティブな材料を打ち消してしまう可能性がある。 そこで注目されるのが人民元の動向だ。中国の景気後退懸念が高まる中で、元と世界の株価(MSCIオールカントリー世界指数)との連動性が過去にないほど強まっており、元安になると株安になりやすい状況になっている。一方で、10月末の中国の外貨準備高は3兆530億ドルと、1年半ぶりの低水準となった。外貨準備が減るなかで人民元安が急激に進んだ2015年のチャイナ・ショックの再来を市場は意識し始めている。 現状、2016年以降に導入された規制により、資本流出による外貨準備の急激な下落は予想していない。しかし、中国の経常収支は赤字化のリスクが高まっており、外貨準備の減少が続くリスクも高まっている。外貨準備減少の問題点は元安だけではなく、中国が現在行っている関税対策としての財政・金融政策の波及効果も相殺してしまうことにもある。外貨準備高が3兆ドル程度の安定した水準で推移するのであれば、元安も一定の水準で収まり、中国のGDP成長率の減速も政策でカバーできる範囲に収まるだろう。 <日銀は動くか> 日銀や欧州中央銀行(ECB)にとっては、異次元緩和政策の終焉はまだこれからの話だ。特に日銀は、低金利が金融機関の収益性に及ぼしている「副作用」に対応するためにも、長期金利の上昇を容認する考えが強いようだ。4月までの間に金利上昇を促す政策を打ってくる可能性がある。現在はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策のもとで長期金利の誘導目標をゼロ%程度の範囲と定めているが、この目標自体を引き上げるか、または国債買い入れのペースをさらに抑えるなどのやり方が考えられる。来年末時点では10年金利が0.3%程度に到達すると予測する。 これは「ハト派的引き締め」と呼べる範囲の金利上昇であって一気に円高を誘うことはないだろうが、市場を動揺させないための十分なフォワードガイダンスが日銀に求められる。 <世界株式の推奨度を引き上げ> 最後に、推奨する投資戦略について触れておきたい。7─9月期の米企業の好調な決算や、米中貿易戦争が「一時停戦」となる可能性を踏まえ、このほど6−12カ月の戦略期間におけるグローバル株式の推奨度を引き上げた。今年7月にリスク警戒から推奨度を引き下げたのだが、今回再び7月前の水準に戻した。 ただ、引き続きボラティリティーが高い状況が続くとみられるので、基本的には自己資本利益率(ROE)が高く安定している企業など「高クオリティ株」への分散投資を推奨している。また、一定価格で売る権利であるプットオプションなどを組み込むことも勧めたい。債券では、利回りの高い新興国債は魅力的だが、通貨が変動しやすいので米ドル建てを推奨している。 日本株に関しては、輸出が中国経済減速の影響を受けやすいことに加え、来年10月に予定する消費増税を控えてセンチメントが圧迫されやすく、さらに安倍晋三首相の関心が憲法改正などに向かっていると思われるため、リスクの方が意識されやすい。ただ、前述した来年後半以降に期待される米国株の最後の上昇の恩恵を受けるための「仕込み」は、来年前半にかけて行うべきだろう。長期的な視点の投資家からすれば、来年は強気相場の終焉に備える年となる。 ドル円相場は当面は1ドル=110─115円が継続されやすいだろう。ただ、今のドルは歴史的にみて異常に高い水準にあり、ユーロや新興国通貨の上昇余地からみれば下がらざるを得ず、1年以降でみた中期的な水準は105円とみている。 *本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載された青木大樹氏へのインタビューです。同氏の個人的見解に基づいて書かれています。 (聞き手:山口香子) 青木大樹、UBS証券ウェルス・マネジメント本部CIO *青木大樹氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の日本における最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミスト。2001年より内閣府で政策企画・経済調査に携わった後、2010年にUBS証券入社。2016年、インスティテューショナル・インベスター誌による「オールジャパン・リサーチチーム」調査の日本経済エコノミスト部門にて5位(外資系1位)に選ばれる https://jp.reuters.com/article/opinion-market-daiju-aoki-idJPKCN1NH05G Washington Files 「トランプ主義」の限界が露呈した米中間選挙 2018/11/12 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長) (iStock.com/flySnow/Purestock) 今年の米中間選挙は、共和(上院)、民主(下院)がそれぞれ勝利し、痛み分けに終わったとする見方がある。これは的外れだ。大統領就任以来、猛威をふるった「トランプ主義」の限界が露呈した選挙でもあったことを見逃してはならない。
選挙結果について、「下院は民主党に奪われたが、上院でわが方が過半数からさらに議席を増やした。全体では双方相討ちだ」(共和党全国委員会幹部)との指摘がある。 中間選挙後の記者会見で質問したCNNの記者を出入り禁止にしたトランプ大統領(REUTERS/AFLO) しかし、これは説得力のある総合評価とは言い難い。なぜなら、共和党の上院での改選議席数は当初から民主党よりはるかに少なく、現状より多少の上積みもある程度織り込み済みだったからだ。これに対し、全員改選の下院で主客が完全に入れ替わり、民主党が議席をかなり伸ばしたことの意義は過小評価できない。
しかも特筆すべきことは目下、アメリカの景気、雇用は着実に拡大、きわめて好調な経済状況下にあるだけでなく、内外情勢も比較的安定しているにもかかわらず、今回このような選挙結果に至ったという事実だ。本来なら、政権与党の共和党が上下両院ともに引き続き過半数を制してもおかしくなかった。その意味を改めて考えてみる必要がある。 「下院で勝利したことをお祝いする。同時にあなたがこれまで示してきた超党派的リーダーシップを評価したい」 民主党の8年ぶりの下院奪回が確実となった6日深夜、トランプ大統領はただちに次期下院議長就任が有力視されるナンシー・ペロシ女史に祝電を入れた。ホワイトハウス関係者によると、ペロシ女史の議長就任については、民主党内にまだ反対意見があり未確定であることから、側近が電話を控えるよう促したが、大統領はこれを無視、早々と野党への融和姿勢を見せた。 その裏には、大統領就任以来、野党民主党の存在をほとんど無視するこれまでの独善的態度のままでは、今後の政権運営もおぼつかないため、早めに予防線を張ろうとする打算が見え隠れする。大統領が電話でわざわざ「民主党下院での超党派的リーダーシップ」に言及した狙いもそこにあった。 言い換えれば、これまで国内外にさまざまな波紋を投げかけてきた破天荒な「トランプ主義」(Trumpism)の限界をはからずもさらけ出したことになる。 「トランプ主義」とは(1)国家の危機をいたずらにあおる(2)人種間の対立をあえてかきたてる(3)常軌を逸脱した言動や独善的政権運営によりつねに有権者の関心を引き寄せる(4)虚言、誇張にみちたツイートやスピーチを繰り返しマスメディアを混乱させる――などからなる彼独特の特異な政治スタイルを指す。 とくに「危機感増幅」については、ごく最近では、中米ホンジュラスからアメリカをめざす6?7000人規模の移民集団(キャランバン)の動きについて「わが国の国家安全保障上の脅威だ」と誇大にあおり、メキシコ国境への1万人近くの軍隊投入まで言明したことに象徴されよう。しかし、軍隊派遣については本来、その性格上、敵国相手の戦闘行為を前提としたものであり、生活難から祖国を見捨てた子連れの家族や多くの未成年貧困者たちからなるキャラバンとの正面対決は筋違いであり、米議会やペンタゴン内部でも異論が渦巻いていた。 また、「白人至上主義」を信奉する大統領は今回の中間選挙を通じ、各地の遊説先で「テロリストの侵入阻止」を口実に中東諸国からの移民、入国制限の重要性を繰り返し訴えてきた。 大統領の「虚言、誇張癖」については、すでに本欄でも指摘してきたが、ワシントン・ポスト紙専門チームの追跡調査によると、これまでの自らのツイートや発言を通じ「事実とは異なる(false)、あるいは誤解を招く(misleading)」発言回数は実に4700回以上にも達している(9月18日付け「先鋭化するトランプ大統領のメディア攻撃」)。 こうした「トランプ主義」に対し手厳しい裁きが下ったのが、今回の中間選挙だった。以下にその結果を詳しく見ていきたい。 まず上院では、共和党が過半数を維持したものの、2016年大統領選でトランプ候補が勝利したウェストバージニアはじめ少なくとも5州以上で民主党候補が今回当選を果たした。2年前トランプ候補当選のカギとなった中西部のオハイオ、ペンシルバニア、ウイスコンシンでも民主党候補が再選された。共和党の伝統的地盤であるアリゾナ、フロリダ両州でも10日現在依然として100%開票にまで至っておらず、民主、共和両党候補が僅差のまま、最終的にどちらに軍配が上がるか、大きな関心を集めている。 下院では、アメリカのハートランド(心臓部)州でもあるアイオワ州で民主党が現職共和党議員から2議席、南部の一角をなすバージニア州でも同じく2議席奪い返したほか、伝統的に共和党の牙城ともされてきたディープ・サウス(深南部)オクラホマ州のオクラホマ・シティ選挙区、ジョージア州アトランタ近郊選挙区でも民主党候補が勝利した。 全体として民主党は下院で、前回より最低でも35議席増となり、最終的には40議席近くまで上積みするとみられる。これは同党にとって、ニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任した1973年以来、中間選挙としては45年ぶりの大躍進となる。 また、ニューヨーク・タイムズ紙によると、全米の票田を細かく分析した政治マップの変化を見た場合、全体の21%にあたる317地区が今回、共和党から民主党支持へと入れ替わったという。 全米の「人民の意思」を幅広く反映した民主党 このように、民主党がかなりの差をつけ多数を制する原動力となったのは、とくに女性、ラテン系、黒人系などのマイノリティ、若年層、高学歴の都市近郊居住者たちだったとされ、彼らがトランプ大統領の女性差別発言、移民蔑視政策、同盟諸国批判、ホワイトハウス内部の混乱などをめぐり、例年以上に大挙して票を投じたことが勝因につながったと分析されている。 もともと州ごとに人口規模に応じて議席数が振り分けられる下院議員は、「州代表」と位置付けられる上院議員と異なり、「人民の代表」といわれており、今回の下院選挙の結果で見る限り、全米の「人民の意思」を幅広く反映したのが民主党だった。 就任以来「ポピュリズム」(人民主義)を売り物にして来たトランプ大統領としては、民主党にそのお株さえ奪われる結果となったともいえる。 しかし、「反トランプ」ムードが最も端的に現れたのは、州知事選だった。 9日現在の集計では、民主党はミシガン、ウイスコンシン、カンザス、ネバダ、ニューメキシコ、イリノイ、ペンシルバニア7州で共和党現職知事を破る一方、民主党現職知事はすべて再選を果たした。このうち、ウイスコンシン、ミシガン、ペンシルバニアの中西部3州は2016年大統領選でトランプ当選を決定づけた重要州と位置付けられていたが、今回、民主党の党カラーである“ブルー・ウェーブ”に飲み込まれたかっこうとなった。 とくにカンザス州知事選では、イスラム教徒排斥、移民制限などの「トランプ主義」を最後まで熱烈に支持し、大統領自身も終盤に応援にかけつけた超保守派のクリス・コバック候補までも敗退、トランプ陣営に衝撃を与えた。 さらに共和党の牙城であるフロリダ、ジョージア両州については、共和党候補が勝利宣言したものの、民主党候補との差が紙一重となっており、場合によっては票の数え直しの可能性もあることから10日現在、選挙管理委員会による最終確定にまでは至っていない。 “buyer’s remorse”(買い物した客の後悔) これらの結果は、2年前の大統領選でトランプ氏に投票したラストベルト(さびついた工業地帯)や農鉱地帯の有権者の間でさえ、すでに“buyer’s remorse”(買い物した客の後悔)と呼ばれる意識変化が起こっていたことを暗示している。 民主党出身の州知事数の増加は、同党にとって2020年の上下院選挙を有利に進めるための重要な布石であり、ひいては関係各州における大統領選の選挙戦略にも多大なインパクトをあたえることにあるだけに、共和党としてもけっして侮れない。 2020年大統領選での再選はありうるのか? ではこうした選挙結果を踏まえ、今後のトランプ・ホワイトハウスの政権運営に具体的にどんな影響が出てくるのか。そして、2020年大統領選での再選は果たしてありうるのか? この点について、共和党関係者の間では、(1)共和党は上院選のうち、とくにテキサス、ジョージアなど南部重要拠点州を死守した(2)選挙戦の最終段階で大統領自らが連日重点的に現地入りし支援演説をした11都市のうち7つの選挙戦で共和党候補が勝利した(3)上院選と州知事選で前回以上の戦果を挙げた―などの判断から、今後も従来通り、保守層に重点を置いた「アメリカ・ファースト」主義を継続していく、との見方がある。 しかし、懐疑論も少なくない。そのひとつの理由として挙げられているのが、下院民主党を中心としたトランプ氏周辺に対するさまざまな疑惑追及との関係だ。 共和党に代わって新たに下院情報特別委員会委員長就任が予定されている民主党のアダム・シフ議員はすでに「来年1月からはロシア疑惑調査を本格化させる」と公言、同司法委員会、監視委員会でも同様の動きが出始めている。 同じく委員長ポストが共和党から民主党に入れ替わる歳入委員会では、大統領就任前までのトランプ氏の納税申告問題にメスが入れられることが確実視され、もし真相究明の結果、脱税または不正申告疑惑が濃厚になった場合、ロシア疑惑問題と合わせ弾劾審議を求める声が下院内で急速に高まることも考えられる。 大統領としてはこうした不利な状況に追い込まれた場合、弾劾に必要な下院の過半数支持をなんとか突き崩す必要があり、そのためには従来のような野党に対する高飛車な態度をある程度軟化させざるを得なくなる。 また、大統領にとって今後の内政重要課題である大規模インフラ投資についても、予算審議の先議権を握る民主党下院の支持とりつけが不可欠であるほか、外交では、民主党議員の中にも同調者が少なくない対中国関税引き上げ問題でも、大統領として幅広い国民の理解を得るため民主党へのある程度の妥協姿勢は避けられなくなる。 トランプ大統領は野党民主党に対し、中間選挙後の記者会見で融和的ポーズを見せる一方で、ロシア疑惑などをめぐる民主党の今後の対応次第では報復も辞さない強気の構えを崩していない。 しかし、前述した通り、これまでの「トランプ主義」は今回の中間選挙で、共和党地盤である中西部を含め手厳しい裁きを受けたことは否めない。もしトランプ氏が、それにもかかわらず従来通りの独善的な政治手法を今後も取り続けるとすれば、2年後の大統領選での再選の道は一層遠のくことになるだろう。 http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14484
安保激変
中間選挙後のトランプ政権、強気発言の裏にある“懸念“とは? 民主党も難しいかじ取りを迫られる 2018/11/12 辰巳由紀 (スティムソン・センター日本部長) (写真:AP/アフロ) 11月6日、アメリカでは中間選挙が行われた。現在、フロリダ州知事選及び上院選で票の再集計をすることが決まるなど、まだ結果が確定していない選挙区が数か所残っているが、基本的には連邦議会は下院で民主党が8年ぶりに多数党に返り咲く一方で、上院は共和党が多数党の地位を堅持する構図となり、2019年1月以降は「ねじれ議会」が生まれる結果となった。
判断が難しいトランプ政権の「中間試験」の成績 新政権発足直後の中間選挙は、一般的に新政権への信任投票の意味合いが濃い選挙で、そのため、大統領が所属する政党にとっては向かい風の選挙になる場合が殆どだ。次の大統領選挙の結果が現在の政権にとっての「期末試験」だとすると、中間選挙はさながら「中間試験」のような意味を持つと言えるだろう。そのような視点で今回の中間選挙の結果を見ると、選挙結果をどのように評価するかは難しい。冒頭で紹介したとおり、上院と下院では選挙結果が真っ二つに分かれたからだ。 そもそも、2017年1月に発足して以来、トランプ政権は、一貫して不支持率が支持率を上回る状態が続いている。失業率が下がり、株価もおおむね上昇を続けており、経済指標だけ取って見れば非常に良い状態であるにも拘わらず、だ。選挙前には、常に安定した選挙予想・政治分析をすることで知られているチャーリー・クック氏をはじめとする複数の政治評論家が「これだけ経済指標がいいのに、これだけ不人気な大統領も珍しい」とコメントしていたほどだ。 下院の選挙結果は、このトランプ大統領の不人気に大きく影響を受けた結果と言えるだろう。選挙結果を詳しく見ていくと、バージニア、テキサス、イリノイなどの州では、大都市に近い郊外の選挙区で、トランプ大統領の言動に失望した有権者が現職共和党ではなく民主党に投票する例が相次ぎ、この結果、20数名の共和党議員が落選した。特に、有色人種、女性、性的マイノリティなど、いわゆる「少数派」に対する蔑視・差別発言をトランプ大統領が頻繁に口にしたことの反動か、下院選では、過去最多の200名以上の女性が全米各地で立候補した。その結果、初のネイティブ・アメリカン女性議員、及び初のムスリム系女性議員も誕生した。 一方、上院選は選挙戦終盤にトランプ大統領が集会を頻繁に開催、てこ入れを図ったことで、多数党の地位を共和党が死守する形となった。現職が有利とはいえ、小選挙区制で2年に一度改選されるため、その時々の有権者の間に存在する雰囲気に結果が大きく左右されやすい下院と異なり、任期6年、各州2人しか選出されない上院選は、選挙の年の雰囲気よりも、その時々の改選議席が民主党現職の席なのか、共和党現職の席なのか、またもともと、その改選が行われる州ではどのくらい民主、共和各党の支持があるのか、などの構造的な要因に左右される部分が大きい。このような上院選で共和党が多数党を維持したことは、トランプ大統領が一定の支持層の間では、いまだに確固たる支持を得ていることを浮き彫りにした。 とは言え、下院で多数党の地位を民主党が8年ぶりに奪回したことで、トランプ政権は残りの任期の政権運営が一層厳しくなる、との見方が大勢を占めていることは事実だ。 自分の身辺の疑惑再燃を恐れるトランプ大統領? 特に気になるのは、2016年大統領選挙選へのロシアの関与や、大統領選時ら問題視されているトランプ大統領の納税記録公開問題などに関する調査の行方だ。下院を民主党が奪回し、各委員会で委員長の地位をすべて取り戻すことで、トランプ大統領に対して、召喚状を発出して、納税申告書の提出、「ロシアゲート」をめぐるFBI報告書の提出、コーミーFBI長官更迭をめぐる一連のやり取りに関する情報公開などを積極的に追及することが可能になる。 中間選挙翌日に大統領が行うことが恒例の記者会見では、これまで以上にCNN記者など、自分の気に入らない質問を繰り返す記者をカメラの前で罵倒するなど、「メディアに対する大統領の姿勢が新たな底打ちをした」(某米大手メディアホワイトハウス担当記者)という状況が生じたが、この記者会見におけるトランプ大統領の逆切れぶりは、上院選で過半数を共和党が維持したことをことさらに強調してはいるものの、やはり下院で民主党が過半数を奪回したことで、来年1月以降、自分の身辺の色々な疑惑が再燃することをかなり恐れていることの現れではないかともいわれている。 特に、2016年大統領選挙時に掲げた所得税大幅減税などは、上下院で「ねじれ」が発生する今後は実現はほぼ不可能になる。大統領令で政策変更できる問題についてはほぼやりつくした感があり、2020年大統領選挙までに何らかの実績を残すためには、民主党と協力する必要があるのだ。それなのに11月7日の記者会見で見せたような敵対的な姿勢を民主党下院指導部に対して取り続ければ、あらゆる法案は膠着し、2019年初頭でトランプ大統領はレイム・ダック化してしまうだろう。 下院民主党も難しいかじ取りを迫られる しかし、下院民主党にも悩みはある。CNN出口調査などによれば、選挙で「民主党候補に投票した」と答えた人の約8割がトランプ大統領弾劾を支持しているという結果を見れば、民主党が下院で多数党に返り咲いた大きな理由の一つは、有権者が下院に対して、政権に対する立法府としての監視機能を再び機能させることを期待していることが挙げられる。投票日翌日にさっそく、ジェフ・セッションズ司法長官に辞任を促し(実質は解任)、長官代行にホワイテイカー同長官首席補佐官を充てる旨発表したが、同長官代行は過去にムーラー特別捜査官の捜査が「行き過ぎ」であるとの意向を公にしている経緯があるため、ムーラー特別捜査官を司法長官や大統領の一存で罷免できないように法律で同捜査官の地位を保護するべきだという声が既に民主党議員の間でも上がり始めている。 一方、召喚状を頻発して、国民の生活に実質的な影響のある問題を立法を通じて解決する道を開けなければ、単なる抵抗勢力としてみなされてしまうリスクもある。そのため、今回の選挙で得た支持を次の選挙、つまり2020年大統領選までで維持するために、トランプ政権を厳しく追及する一方で、国内のインフラ整備、医薬品価格抑制などのような、政権と歩み寄れる余地がある問題についてはいかに協力して、何らかの実績を残すか、下院民主党も今後、難しいかじ取りを迫られることになる。 今回の選挙、特に上院選でトランプ大統領の固定支持層のトランプ大統領への支持の強さが明らかになった。このことは、2020年大統領選挙にトランプ大統領が再選出馬の意向を示した場合、ほぼ確実に本選の候補となることが予想される。 2020年大統領選挙への影響は 中間選挙が終わった今、アメリカ政治は2020年大統領選挙に向けて動き始めた。今回の中間選挙は来る大統領選挙に向けてどのような意味を持つのだろうか。 共和党は、上院で多数党の座を死守することができた最大の要因が選挙戦終盤に入ってからのトランプ大統領による選挙活動だったことで、仮にトランプ大統領が再選に向けて出馬を表明した場合、党内から対抗馬が生まれる雰囲気ではほぼなくなったといっていい。しかし、下院選の結果が示す通り、2017年1月の政権発足以降、大統領選の結果に大きな影響を与える無党派層が急速にトランプ大統領、そしてトランプ大統領に有効なチェック機能を働かせることができない議会共和党離れを起こしていることも明らかだ。共和党の指導部は2020年に向けて頭の痛い日が続くだろう。 対する民主党も、下院で過半数は奪回したものの、選挙終盤の追い込みではやはり、オバマ前大統領の発信力・動員力に頼ることとなり、2020年大統領選挙に向けて不安を残した。その一方で、保守的なテキサス州で現職のテッド・クルーズ上院議員に肉薄、惜敗した弱冠46歳のベト・オローク下院議員や、リベラルであることを公言しながらも、2016年大統領選挙でトランプ大統領が勝利したオハイオ州で楽々と3選を果たしたシェロッド・ブラウン上院議員、同じく中西部のミネソタ州で圧勝したエイミー・クローブチャー上院議員など、大統領選挙に向けて将来性を感じさせる政治家も何名か出てきており、今後の展開が注目される。 内向きが進むアメリカ 日本では、選挙後のトランプ政権の対日政策への影響について関心が集まっているが、今回の選挙で外交政策は全く争点にならなかった。このため、基本的な外交路線は、選挙後も大きく変化はないものとみられる。特に、アジア政策については、対中政策についてはトランプ政権の強硬な政策が議会でも超党派で支持を得ており、大きな変更はない。また北朝鮮政策については、6月のシンガポールにおける米朝首脳会談が拙速に過ぎたという批判は出たものの、その後、核問題をめぐる米朝交渉が膠着するにつれ、トランプ政権が安易な妥協をしないことについては議会でも支持があり、逆に人権問題などでより強硬な姿勢を見せるべきだという声もあるほどであるため、こちらについても大きく変更はないものとみられる。 対日政策についても大きな変更はないものとみられるが、国内問題で成果を上げることが困難になることがほぼ確実なトランプ大統領が「目に見える成果」をあげる必要性に迫られ、通商問題で日本をはじめ、二国間交渉に入っている国に対する圧力をさらに強める懸念は残る。 ただし、最大の懸念は、2019年以降、大統領が国内問題や自身のスキャンダルへの対応に時間をとられ、外交問題に割く時間や関心が限られる可能性が現実味を帯びてきているということである。まずは、ペンス副大統領が日本、シンガポール、オーストラリア、パプアニューギニアの4か国歴訪でどのようなメッセージを発するか、特に、11月17日にAPEC・CEOサミットで行う予定の講演で「自由で開かれたインド太平洋」戦略について何を語るのかを注視する必要があるだろう。 http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14489 ワールド2018年11月12日 / 16:03 / 7分前更新 米民主指導部、司法長官代行にロシア疑惑捜査に関与しないよう迫る 1 分で読む
[ワシントン 11日 ロイター] - 米中間選挙で下院の多数派奪還を決めた野党民主党の指導部は、司法長官代行に指名されたマシュー・ウィテカー氏に対し、2016年の大統領選を巡るロシア介入疑惑捜査の監督役を担うことは控えるよう圧力を強めた。 下院司法委員会の委員長に就任する見込みのジェロルド・ナドラー議員は11日、同委員会の来年最初の証人としてウィテカー氏を召喚する考えを示した。 ナドラー氏は米ABCテレビのニュース番組で「ウィテカー氏は関与を控えるべきだ。彼は同捜査に完全なる敵意を示してきた」と強調。「ウィテカー氏の指名は、モラー特別検察官による捜査に対する攻撃の一環だ」と述べた。 民主の上院トップのシューマー院内総務と下院トップのペロシ院内総務ら指導部の議員は司法省の倫理担当幹部に宛てた書簡で、司法省の倫理専門弁護士がウィテカー氏に同捜査に関与しないよう進言したかどうかを質問するとともに、同氏がこれまで受け取った倫理的指針の詳細を求めた。 書簡は「捜査に真っ向から反対する人物が監督を務めることを認めれば、この極めて重要な事案への司法省の取り組みについて、国民の信頼を著しく損ねることになる」と警告した。 トランプ大統領は前週、セッションズ司法長官を解任し、司法長官首席補佐官だったウィテカー氏を長官代行に指名。これまでローゼンスタイン司法副長官が務めてきたロシア疑惑捜査の監督役を引き継ぐ見通しとなった。 ウィテカー氏は司法省の職に付く前に、モラー氏によるロシア疑惑捜査について否定的発言を数回にわたり行っている。またウィテカー氏は、大統領選でトランプ陣営幹部を務めたサム・クロビス氏とも親しい関係にある。クロビス氏はモラー氏の捜査で証人となっている。 書簡は、クロビス氏を含むウィテカー氏の人間関係は「同捜査を独立した公平な立場で監督する能力があるのかについて、さらなる疑念を生じさせている」と指摘した。 https://jp.reuters.com/article/us-whitaker-idJPKCN1NH0K5
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