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世界不況を呼ぶ「地政学的ショック」の現実味、イアン・ブレマーの警告 イアン・ブレマー ユーラシアグループ社長兼CEOに聞く
https://diamond.jp/articles/-/183763
2018.10.30 週刊ダイヤモンド編集部
『週刊ダイヤモンド』11月3日号の第1特集は、「投資に役立つ地政学・世界史」特集です。今、世界は米中貿易摩擦の激化などで混迷の度合いを深めています。本特集では、国際政治学者で、ユーラシアグループ社長兼CEOのイアン・ブレマー氏に、地政学的なディプレッション(恐慌)の可能性を始め、米中や日米関係などについて話を聞きました。その内容を特別にダイヤモンド・オンラインで公開します。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 麻生祐司)
1969年11月生まれ。米国の政治学者。スタンフォード大学にて博士号(旧ソ連研究)取得。フーバー研究所のナショナルフェローに最年少の25歳で就任。28歳で調査研究・コンサルティング会社、ユーラシアグループ設立 Photo by Yoshihisa Wada
──市場の変動と地政学リスクは必ずしも連動していませんが、これだけ地政学リスクが高まると、市場が危機的な状態に陥ることもあり得るのではないでしょうか。
そうは思いません。市場は短期的であるのに対し、地政学は長期的だからです。IMF(国際通貨基金)は地政学的な状況を背景に、今年と来年の世界経済の成長率予想を3.7%に引き下げました。最近の地政学上の問題は悪いニュースばかりで、その全てが「Gゼロ」(リーダー役不在の世界)に関連しています。ただし、(危機的な状態に)なるまでにはもう少し時間がかかるでしょう。
経済的なリセッション(景気後退)は平均して7年置きに発生していますが、地政学的なリセッションはそう頻繁に起きるわけではないからです。ただ、今起きようとしているのは、地政学的なリセッションです。
──それは、ディプレッション(恐慌)に発展するのでしょうか。
そこまでではありませんが、そうなる可能性はあります。2008年のリセッションのときは、世界の主要国が皆ディプレッションを回避するために、景気刺激策やインフラ整備などを行い、人々を落ち着かせようとしました。
それから10年後の今、地政学的なリセッションに突入しています。戦争につながる可能性があるため憂慮すべき状況ですが、世界中の誰もがこの事態をどうやって避けるかに関心を持っていません。
──軍事的な意味での戦争ということですか。
その通りです。来年か再来年には、リセッションをもたらす地政学的なショックが生じる可能性が高まっています。例えば、イランとサウジアラビアの間で戦争が起きたり、主要国の経済を破壊しかねないサイバー攻撃をロシアが仕掛けたり、米国と中国の間で本格的な貿易戦争が生じるといった具合です。確かなことは、次の経済的なリセッションは、世間が考えているよりもはるかに深刻なものになるということです。
──政治的な対応力が必要ですね。
その通りです。人々はさらに怒りにあふれ、ナショナリズムやポピュリズムに走るでしょう。今は経済が好調なので争いは起こっていませんが、経済が不調になれば彼らは本当に戦いを始めます。そうなると大惨事となるため、憂慮すべき状況といえます。
──それを食い止める方法は?
やるべきことはたくさんあります。例えば、私は拡大するサイバー攻撃に対応できず、経済に大打撃を被るのではないかと強く懸念しています。そこで新しい仕組みとして、サイバー領域に関するNATO(北大西洋条約機構)のようなものをつくります。日本や中国にも参加してもらい、既存のものを壊すことなく、新たな仕組みやルールを作るのです。
ただ、協力できる分野で米国と中国が協議する必要がありますが、実際には行われていません。
──中国を巻き込むのは難しいでしょうね。その中国についてはどのように見ていますか。
われわれ、つまり西側諸国は一つ根本的な間違いを犯していました。つまり、中国が豊かになっていけば、政治的にわれわれに近い存在になっていくだろうと、誤って信じていたことです。
──それは西側の価値観ですね。
そう、政治改革や自由市場といったものは西側の価値観です。中国政府はそうした価値観を望んでいません。米国は自国の価値観を最善のものと考えているので、それを望まない人々がいるとは想像もできませんでした。
中国の今日的なモデルは、特に権力基盤を統合した習近平国家主席の下で、より強力で持続可能性が高いように見えます。中国は多くの問題を抱えていますが、経済は今よりもはるかに大きくなり、世界各地への影響力は多くの点で米国よりも強くなるでしょう。
──古代ギリシャの覇権争いに由来する「トゥキュディデスの罠」(参考文献)は本当だと思いますか。
勃興する勢力と衰退する勢力が衝突すれば、歴史的に戦争に至るのが必然です。ただ、私が短期的にそこまで悲観していないのは、中国が軍事大国ではないことです。中国がその力を国際的に表現する場合、まずは経済、次いでテクノロジーを通じて行います。
一方、米国がその力を示す場合には、第一に軍事力の行使、第二に政治的なイデオロギーや米国の価値観を通じてです。中国人は自らの価値観をまったく輸出しようとしません。
確かに米国が経済、テクノロジー共に優位にありますが、それは政府ではなく、民間セクターにおいてです。結果として、今のところ米国と中国の間には、これまでの大国が味わってきたようなゼロサム的な競争はありません。
今、米中貿易摩擦が注目されていますが、貿易において米中両国は互いを必要としており、貿易戦争になってしまえば双方に大きなダメージが生じるため、私はあまり懸念していません。
しかし互いを必要としないテクノロジーの領域はそうではありません。この領域では、米国と中国はそれぞれ独立したシステムを構築しようとしています。ビッグデータ、クラウド、監視、アーキテクチャー全般、AI──。互いに覇権を争っている状況です。
──米トランプ政権はその点を理解し、中国に対して適切にアプローチしていますか。20世紀的な問題にばかり注目していそうですが。
トランプ大統領はそうですが、スティーブ・バノン元首席戦略官は理解していたと思います。もし中国と戦うのが不可避であれば、自国の規模が大きいうちに戦っておく方がいい、10年、20年たてば、戦いははるかに厳しくなると。
トランプ大統領にしても、多国間の制度やルールの制約がある中で望む結果を手に入れるには、一対一で一方的に中国をたたかなければならないことを分かっています。しかしトランプ大統領は5年後、10年後ではなく、今勝利を得るために何をやるか「取引」として考えるため、長期的な視野に欠けているといえます。
──日米関係において、日本はどのような方針で臨むべきですか。
日米が争わないことが重要ですが、メキシコやカナダ、韓国のように協力していく意思を示すことが重要です。ニューヨークでのトランプ大統領と安倍晋三首相の会談は成功裏に終わりましたが、望んでいなかった2国間交渉に入ることになりましたし、為替に関する協議もどうなるか分かりません。
トランプ大統領がこうした協定を改善しようとして同盟国に対して突き付ける具体的な要求は、さほど重大なものではありません。日本は恐らく大きなダメージを負うことなく、何らかの合意に達することができると思います。
むしろ懸念されるのは、安全保障をめぐる日本の対応です。トランプ大統領は日本に核保有を迫るかもしれません。独自に核を保有することは愚かなことで、日本は軍備に投資すべきではありません。
ただ日本は歴史的に、自国の長期的な利益ではなく、従属的な態度で行動してきました。ですが、米国が誤った選択をした際には、きちんと言うべきです。日本は、国際社会のシステムを支えるためにも、米国の対等なパートナーになるべきだと考えています。
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