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安倍政権の携帯料金値下げ要請、ユーザーに多大な損失…格安スマホ消滅や品質低下の懸念
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25249.html
2018.10.25 文・取材=後藤拓也/A4studio Business Journal
安倍晋三首相(写真:つのだよしお/アフロ)
8月21日、菅義偉官房長官が札幌市内で行った講演会で、国内の大手携帯事業者には競争原理が働いていないと指摘し、携帯電話の利用料金は4割程度下げる余地があると発言したことが、大きな話題を呼んでいる。
菅氏が根拠として挙げたのは、経済協力開発機構(OECD)の調査結果で、日本の携帯料金はOECD加盟国平均の2倍程度であり、主要国と比べても高い水準にあるというもの。また、携帯電話事業への新規参入を示している楽天が、既存事業者の半額程度の料金設定にするプランを明らかにしていることも、既存事業者の定める携帯料金が必要以上に高いことを裏付けているという。
ユーザーにとって携帯料金の値下げはありがたい話ではあるが、同時にサービスの質が下がってしまうのではないかという不安もある。また、市場を見ても、近年勢いを伸ばしている格安スマホ事業者になんらかの影響があることは想像に難くないだろう。
果たして本当に携帯料金は安くなるのだろうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温氏に話を聞いた。
■「4割値下げ」の真意は、自民党による人気取りのパフォーマンス
菅氏は今回の発言の根拠としてOECDの調査結果を挙げているが、そもそもこのデータ自体、信頼性が低いと石川氏は指摘する。
「確かにOECDの調査によると、日本の携帯通信費は世界的に高水準であると結論付けられています。しかし、国によって引き合いに出しているデータ容量がバラバラなうえ、なかにはプリペイドのプランを引き合いに出している国もあるため、はっきり言って参考になるデータではありません。
一方、総務省は毎年、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウルの6都市における通信サービス状況を調査し、『電気通信サービスに係る内外価格差調査』として発表しています。最新版である平成29年度版を見ると、1カ月に2GBや5GBといった一般的な範囲の通信量であれば、東京の携帯料金は世界的に平均的なレベルであると書かれています。信頼性でいえばこちらのほうが圧倒的に高いので、菅氏の発言は根拠に乏しく説得力がないという印象です。また、日本の場合、ネットワークの品質が非常に良いので、不当に高額というわけでもないと思います」(石川氏)
では、菅氏の発言の真意はどこにあるのだろうか。
「一番の狙いは、『自民党政権であれば携帯料金が下がります』という国民へのアピールではないでしょうか。菅氏が所属する自民党は、来夏に参議院選挙を控えた大事な時期にあります。彼らは消費税増税という、国民からは支持されにくいマニフェストを掲げているわけですから、携帯料金値下げによって支持率を集めたかったのだと思います。
また、政府による携帯料金への言及は今に始まったことではなく、2015年にも安倍首相が『国民の家計において、携帯料金の占める割合が高すぎる』と発言しています。携帯の周波数免許を企業に交付している政府からしてみたら、電波は国民の資産であるにもかかわらず、一部企業がそれで過度に儲けるのはいかがなものか、という怒りもあるのかもしれません。結局、安倍首相の発言から3年経っても、携帯料金の値下げはほとんどなされていないわけですから、今回『4割』という具体的な数字を出すことによって、大手3キャリアにプレッシャーをかけているのではないでしょうか」(同)
■“4割値下げ”ではなく“4割以上おトクなプラン”の新設が現実的
政府の思惑はともあれ、ユーザーからしてみたら安いに越したことはない。実際に大手3キャリアが値下げに動くという可能性はあるのだろうか。
「3社とも株式会社なので、政府に言われたから値下げします、なんて簡単にはできません。そもそも3キャリア自身だって収入を落としたくはないでしょうから、今の携帯料金がそのまま4割値下げされる、というのは考えづらいです。考えられる方向性としては、料金体系や通信量は現状を維持しつつも、そこに動画やSNSの見放題といった付加価値を乗せていくことで、4割値下げよりもおトク度の高いプランを打ち出していくのではないでしょうか。
また、実際に値下げする場合には、端末代金は一切値下げしないで、通信料金を値下げしていくかたちになると考えられます。実際、ソフトバンクはすでにこのようなプランを導入しているのですが、端末代金と通信料金が完全に分離されるため、料金体系が非常にわかりやすくなっています。やはり現状の複雑な料金プランでは、全貌がよく把握できていないという方も多いかと思いますので、値下げされるとしたら、料金の透明性もメリットになり得ますね」(同)
ただ、料金値下げとなれば当然デメリットも出てくるだろうと石川氏は続ける。
「本当に4割も値下げをすれば、ネットワークの品質は今より下がることになるでしょう。先日、北海道で起きた大地震のときもそうでしたが、現在の大手3社は、震災があった地域でも迅速に通信を復旧できる体制を構築しています。値下げによって収入が下がれば、そういった非常時の対策コストが削られる可能性は十分に考えられます。結果、震災時に電波が入らなくなってしまったり、その後の復旧に大幅な時間がかかるようになってしまうかもしれません」(同)
■本当に必要なのは値下げではなく、競争が促進される環境整備
また、安易な大手3キャリアの値下げは、むしろ携帯市場を崩壊させる可能性があるのではないかと石川氏は語る。
「現在の携帯市場は、料金は高いが昼間でも通信が安定していて、サポート体制もしっかりしている大手3キャリアと、昼間は通信が安定しないことがあり、またサポートも手薄ですが、その分料金は安い格安スマホとでうまく棲み分けがなされています。
ですが、大手3キャリアの値下げが行われていけば、格安スマホを選ぶ理由はなくなっていきますから、当然、格安スマホ事業者は厳しい立場に追い込まれていくでしょう。ただでさえ格安スマホは薄利多売なビジネスモデルだというのに、さらにユーザーが増えないといった事態になると、撤退する事業者が出てくることも考えられます。結果、格安スマホの事業者がいなくなって、最終的には大手3キャリアしか残らないという状況になってしまう恐れもあります」(同)
では、携帯電話業界の発展のため、政府がとるべき行動とはどのようなものなのだろうか。
「今の携帯電話業界において競争を鈍らせている原因となっているのは、キャリアの乗り換えが容易でないこと。ですから政府は、競争を促進する環境整備をするべきでしょう。
1つ例を挙げるなら、通信キャリアを変更する際、使っている電話番号をそのまま引き継げるナンバーポータビリティ制度などがそうです。仮にA社からB社に契約を変更しようとした場合、アメリカでは、B社に直接行けばナンバーポータビリティの手続きもすべてやってもらえるのですが、現在の日本では、まずA社に連絡をして手続きする必要があり、単純に手間がかかります。そのうえ、A社は引き留めようとポイントのサービスなどアレコレ提案してくるので、けっきょく契約変更自体をやめてしまう人も少なくありません。
単純に値下げを強要するよりも、ユーザーがキャリアを変更しやすい環境を整備するほうが、携帯市場の発展に効果があるのではないでしょうか」(同)
波紋を呼んだ菅氏の今回の発言は、携帯電話業界にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。携帯電話の一ユーザーとしては、業界がさらなる発展を遂げ、よりよいサービスが安価で利用できるようになることを望むばかりだ。
(文・取材=後藤拓也/A4studio)
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