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【消費増税】安倍政権の2%還元策、中小事業者に多大なコスト&デメリットを強制
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25216.html
2018.10.23 文=垣田達哉/消費者問題研究所代表 Business Journal
安倍晋三首相(日刊現代/アフロ)
■法の精神に反する2%還元策
10月15日、安倍晋三首相は閣議で「予定通り消費税を増税する」と表明したが、今回の軽減税率制度は問題が多すぎる。そのひとつが2%の還元だ。まだ、実施は未定でその全容も明らかではないが、根本的な問題がある。
検討されている大まかな内容としては、ポイント還元の対象となる事業者はあらかじめ決められた中小小売店と中小飲食店で(小売店だけの可能性もある)、キャッシュレスで支払った消費者の分のみ。キャッシュレス対応レジシステムを導入していない事業者は対象外で、現金で支払った消費者には2%還元されない(プレミアム商品券の案も浮上している)。対象商品は消費税率10%(飲食料品以外と外食)だけでなく、8%商品(飲食料品と持ち帰り等)も含まれる可能性がある。
購入あるいは飲食した後の会計時に2%分のポイントが付くので、消費者はそのポイントを利用することができる。会計時に2%分の現金を受け取ることと同じなので、10%の消費税が実質8%、8%の消費税が実質6%になる。
この制度には大きな疑問がある。国税庁のホームページの消費税のしくみの項には、「消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税」とある。消費税の主旨(精神)は、公平に課税するということなのだ。ところが、この2%還元策は「特別な店(中小事業者でキャッシュレスレジシステムを導入した店)で、キャッシュレスで清算した消費者だけに与えられる恩恵」なのだ。
これが公平といえるのだろうか。政府が自ら進んで法の精神に反した行為をしようとしているのだ。しかも、この還元制度をつくるのに莫大な税金が投入される。税金の無駄遣いだ。
■事業者にとって本当にメリットがあるのか
対象となる中小事業者は、この還元策を導入するメリットがあるかどうか、慎重に検討すべきだ。
まず、還元されるのは消費者であって事業者ではない。キャッシュレスレジシステムを導入しても、直接的には事業者には売上も利益も一切発生しない。一方、経費はハード(レジやカードリーダー等)とソフト(ポイント及びカード決済システム)の初期費用だけでなく、カード決済のためにクレジット会社に支払う手数料、システム(ハード及びソフト)維持のための費用等のランニングコストが発生する。
では、事業者のメリットは何かというと、大手事業者ではできない2%還元ができることと、キャッシュレス対応を望んでいた顧客が増えるかもしれないということだけである。しかし、実際に顧客が増えてシステム導入前より利益が上がるかというと、そんな簡単なものではない。
なぜなら、食品以外が2%増税されるので、電気・ガス・水道などの光熱費、旅費交通費、通信費、消耗品費などの経費は確実に増えるからだ。増税前と同じ値段で販売個数が同じであれば、利益は減る。キャッシュレスにしたからといって、そんなに簡単に顧客は増えない。商店街のライバル店がキャッシュレスにすれば、顧客は流れてこない。さらには、中小事業者の店でクレジットカードを使うことについて、セキュリティが心配で躊躇する人も出てくる。
では、大手より2%安く販売できるから顧客が流れてくるかというと、ほとんど期待はできない。大手小売店に行っている人が、品揃えが少なくフードコートもない店に来る可能性は低い。大手より2%安いといっても、元の値段が高ければ、実際に払う金額は大手小売店のほうが少なくなるので来てくれない。
しかも、ポイント還元は期間限定なので、事業者が初期投資をしても、半年か1年間という短期間になる可能性がある。こんな制度が、本当に中小事業者のメリットになるのだろうか。メリットどころか非常に大きな負担だけを背負うことにもなりかねない。
■中小事業者を襲うトリプルパンチ
来年10月の消費増税後、1年もたたないうちに東京五輪は終わり、終わった後は不況になると予測する専門家が多い。リーマンショックのような五輪ショックが日本に押し寄せるかもしれない。増税とポイント還元策と五輪ショックのトリプルパンチで、事業の継続が難しくなるかもしれないのだ。
中小事業者は慎重に対応したほうがいいと思うが、相談相手は顧問税理士が一番いい。商工会議所や商工会、組合、業界団体等では、ポイント還元システムの初期投資額やランニングコスト、国からの補助金などについては親切に説明してくれるが、メリットとデメリットについては個々の事業者の経営状況や事業内容を把握していないので、よくわからない。
一方、税理士は事業者の内部事情を知り尽くしている。増税前と増税後では、経費がどのくらい増えるのか、そのためにはどれだけ売上を増やさなければいけないのかなどを親切に教えてくれるだろう。たとえば「増税前の1.5倍の売上がないと厳しい」と指摘してくれるだろう。そうなると、1日100人だった顧客が150人に増えないと経営は難しくなるといった判断ができるかもしれない。
2%のポイント還元策は、本当にメリットがあるのだろうか。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)
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