米ジャンク債、利回りはリスクに見合っているか 先週はジャンク債ファンドから61億ドルの資金が引き揚げられたが2月の流出規模のほうが大きかった By Paul J. Davies 2018 年 10 月 15 日 13:41 JST ――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」*** 米国債の利回りが上昇(価格は下落)するのに伴い、社債も打撃を受けている。それでも、投資家がリスクに見合う利回りを得ていないという危険性は依然としてある。 米国の債券市場をよく見ると、先週の株価急落の最中に全体的なリスク回避が起きたという証拠はほとんどないということが分かる。投資家は社債ファンドから数十億ドルの資金を引き揚げてきたが、近年の水準と比べると利回りはあまり上昇していない。 さらに言えば、より安全な投資適格債ファンドの方が非投資適格債、またはジャンク債のファンドよりも売られてきた。米金融大手バンクオブアメリカ・メリルリンチによると、投資家は先週、投資適格債のファンドと上場投資信託(ETF)から過去最高の75億ドルを引き揚げたという。投資家はジャンク債ファンドからも61億ドルを引き揚げたが、流出額は前回の株価急落があった2月の方が大きかった。 格付け別にみたトータルイールド Source: FactSet Note: Based on ICE BofAML U.S. High Yield andCorporate indexesイールドスプレッドの比較 Source: FactSet Note: Based on ICE BofAML U.S. High Yield andCorporate indexes .ポイントBBBとAAAジャンク級とBBB2017’180.51.01.52.02.53.03.54.0 投資適格債は年初来のパフォーマンスでも非投資適格債を下回ってきた。ICE BofAメリルリンチ米国投資適格債インデックスによると、そのスプレッド(米国債との利回り差)は2月以来拡大傾向にあるという。 その一方でジャンク債のスプレッドは3年近く続いている縮小トレンドから抜け出すほどの拡大をまだ示していない。そのスプレッドは10月初めにICE BofAメリルリンチ米国ハイイールド債インデックスで記録した最低値から0.4ポイント余り拡大したが、今年5月までの期間のほとんどで取引されてきた水準は依然として下回っている。もちろん、ジャンク債の総金利費用は2016年の終わりよりも大きくなっている。米国の金利の上昇で米国債の利回りが高まってきたからだ。 安全な債券とリスクが大きい債券のこうしたパフォーマンスの差からは、投資家がまだ基本的にはリスク資産から逃避していないということがうかがえる。しかし、これにはそれぞれの信用格付け別の内訳も大きく関係している。 その投資適格債インデックスの約半分はぎりぎり投資適格級に入る「BBB」債で占められており、その割合はこの15年以上で最大となっている。投資家にとってはジャンク債に格下げになるリスク、つまりそれによって損失を出すリスクが高くなっているということだ。その一方でジャンク債インデックスに含まれる「BB」債(ジャンク級の中では最高位格付け)の割合は異常に大きくなっている。というのも本当にリスクが高い企業は活況なローン市場で借入を行ってきたからである。 朗報は投資家がある程度これに気付いているということだ。「BBB」債と「AAA」債のスプレッドが拡大している理由もそこにある。 しかしながら、米国と世界の経済がかなり長い成長期を経験していることや、あと数回の利上げが控えていることを踏まえると、投資家は景気が減速したときに格下げやデフォルトが起きるリスクに見合う利回りを得ていないということをもっと懸念すべきだろう。 米社債市場の下落は始まったばかりである。 関連記事 • ジャンク債ぎりぎりの米社債、空前の規模に • 【社説】米国債が示唆する「リスク資産の宴」の終焉 トップニュース2018年10月15日 / 15:55 / 4分前更新 日経平均は大幅反落、円高警戒 トヨタは年初来安値更新 2 分で読む [東京 15日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は大幅反落となった。前週末にムニューシン米財務長官が日本にも為替条項を求める意向を示し、朝方からリスク回避的な売りが先行。安値圏で押し目買いが入り下げ渋る場面もあったものの、大引けにかけて下げ幅を拡大した。 TOPIXは1.59%安で反落。終値ベースでは3月26日以来の安値となった。セクター別では鉱業、空運を除く31業種が下落。値下がり率トップは情報・通信となり、ガラス・土石製品、輸送用機器がこれに続いた。 ムニューシン米財務長官の発言で、早ければ今晩にも公表される米財務省の為替報告書に注目が集まっている。今後の円高リスクが警戒され、自動車株は軟調に推移。トヨタ自動車(7203.T)、ホンダ(7267.T)が年初来安値を更新した。 一方、予定通り来年10月に消費増税が実施されるとの見方が嫌気されたとの指摘もある。菅義偉官房長官が午前の会見で、リーマン・ショック級の出来事がない限り増税する方針に変わりないとした。市場からは「再び延期してくれると思っていた向きの失望を誘ったのではないか」(アイザワ証券の日本株ストラテジスト、清水三津雄氏)との声も出ていた。 そのほか個別銘柄では、ソフトバンクグループ(9984.T)が大幅安となり、日経平均を約80円押し下げる要因となった。サウジアラビアの反政府記者がトルコで行方不明になり、サウジ政府の関与疑惑が出ている。今後のサウジ政府の政策に対する不透明感が拡大。サウジ政府系ファンドが出資者に含まれる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に対する影響を懸念した売りが出た。 東証1部の騰落数は、値上がり223銘柄に対し、値下がりが1852銘柄、変わらずが34銘柄だった。 日経平均.N225 終値 22271.30 -423.36 寄り付き 22501.33 安値/高値 22261.92─22520.59 TOPIX.TOPX Toyota Motor Corp 6450.0 7203.TTOKYO STOCK EXCHANGE -158.00(-2.39%) 7203.T 7203.T7267.T9984.T.N225.TOPX 終値 1675.44 -27.01 寄り付き 1690.73 安値/高値 1675.38─1692.84 東証出来高(万株) 140017 東証売買代金(億円) 25945.10 https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-mid-15-idJPKCN1MP07S ビジネス2018年10月15日 / 15:45 / 15分前更新 ドル111円後半に下落、株安にらみ 米財務長官発言も心理的痛手 2 分で読む
[東京 15日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、12日のニューヨーク市場午後5時時点に比べ、ドル安/円高の111円後半だった。日本や中国の株価が下落する中、上値の重さが意識された。ムニューシン米財務長官が13日、今後の通商協議で、日本にも通貨安誘導を防ぐための為替条項を求めていく意向を示したこともドル買い意欲をそいだ。 ドルは、日本時間午前4時過ぎに112.38円の高値を付けたあと、112.13円まで下落。仲値にかけてはさらに売りが広がって111.94円まで下押しした。111円台では実需を含めたドル買い需要があるとされ、いったんは112円前半を回復したものの、午後は株価の下げ幅拡大などをにらんで上値が重くなり、再び112円を割り込んだ。 米財務長官の前週末の発言は、きょうのドル/円相場に明確な影響を及ぼしていないものの、市場参加者の心理には影響がみられる。 資産運用会社のファンドマネージャーは「アベノミクスが目指したように、超金融緩和による為替相場の円安誘導は事実上封印されるだろう」と指摘。証券会社のディーラーは「結果的に、大幅に円高に振れた場合でも、金額の大きい円売り介入をするのが困難になる」との見方を示した。 茂木敏充経済財政・経済再生担当相は14日のNHKの番組で、米財務長官の発言について、日米間で為替が問題になっていないが、必要な議論は為替が専門である財務相同士で議論していくとの見通しを示した。 英ポンド/円GBPJPY=は146円台後半で軟調だった。日本時間の未明に147.64円の高値を付けたあと、午前6時前に146.75円まで下落した。17日からの欧州連合(EU)首脳会議開催を控えて、英国のEU離脱協議が暗礁に乗り上げていることが背景にある。 EUのバルニエ首席交渉官は14日、英国のラーブ離脱担当相との会談後、北アイルランドの国境管理問題で依然隔たりが埋まっていないことを明らかにした。 EU首脳は17日、11月17─18日の臨時首脳会議開催に向け交渉に十分な進展があったかどうかを判断する。 ドル/円JPY= ユーロ/ドルEUR= ユーロ/円EURJPY= 午後3時現在 111.91/93 1.1550/54 129.28/32 午前9時現在 112.19/21 1.1548/52 129.59/63 NY午後5時 112.19/22 1.1562/64 129.65/69 為替マーケットチーム https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-lateaft-idJPKCN1MP0J0 ビジネス2018年10月15日 / 18:00 / 1時間前更新 アングル:米為替条項要求の波紋、円高緩やかでも日本株大幅安 3 分で読む
[東京 15日 ロイター] - 米国の為替条項要求に日本市場は、一見奇妙な反応をみせた。ドル/円JPY=ではほとんど円高が進まなかったが、日本株は大幅安となったのだ。為替条項の実現性や有効性が疑問視され、円高懸念は強まらなかったものの、「交換条件」としての自動車などの輸出自主規制や輸入拡大に警戒感が浮上。過度な円安期待も後退し、業績拡大シナリオが陰りを見せ始めている。 <為替条項合意後、カナダドルは下落> 「われわれの目的は為替問題だ。今後の通商協定には(それらを)盛り込みたい。どの国ともだ。日本だけを対象にしているわけではない」──。 このムニューシン米財務長官の発言は、9月30日に合意された「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」における為替条項が、念頭にあるとみられている。しかし、その後、カナダドルCAD=は下落。米側が期待するドル安シナリオは、今のところ実現していない。 週明け15日の東京市場でも、米側の強い姿勢に円高警戒が強まったが、ドル/円は小幅安にとどまっている。前週末時点で112円前半だったドル円は111円後半まで下落したが、一時112円台に戻すなど、株安による影響を上回るような円高の動きは示していない。 USMCAの為替条項は「為替介入を含む競争的な通貨切り下げを自制する」とある。しかし、G7(主要7カ国)では為替介入はすでに「ご法度」。韓国やメキシコなど非G7国に対しては、こうした為替条項は有効(米国との合意後、メキシコペソMXN=は上昇)だとしても、日本やカナダなどG7国に対して、どれだけ効果的かは不明だ。 「今回の発言は、一種の口先介入だろう。為替介入を行っていない日本などに対して、為替条項がドル安効果をもたらすかは疑問だ。中国などを念頭に置いた発言とみるべきで、これだけで急激な円高が進むことはないだろう」と、三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏はみる。 <銀行株下落、日銀「出口」予想は強まらず> 市場で懸念しているのは、日米協定に為替条項が入れば、日銀の金融政策に影響が及ぶのではないかという点だ。金融緩和策が事実上の円安誘導だとして攻撃の対象となれば、ドル/円に円高圧力がかかる可能性がある。 15日にも発表されるとみられている米為替報告書。前回4月、名目レートでみた円相場が「過去10年と比較すると、2013年上期から歴史的な平均値に比べて割安である」と初めて指摘した。日銀が量的・質的金融緩和政策(QQE)を導入したのは13年4月であり、市場では日銀緩和策が念頭にあるのではないかとの思惑が根強い。 しかし、この点についても今回のムニューシン発言で、市場の懸念が強まったわけではない。日銀の緩和政策が「出口」が近づくと解釈されれば、多少なりとも日本国債の金利が上昇したり、銀行株が下げ渋ってもいいはずだが、15日の10年国債利回りはわずかながらも低下。銀行株.IBNKS.Tは業種別下落率で5番目に大きかった。 量的緩和策(QE)は米連邦準備理事会(FRB)も行っていた。いまは「正常化」に向けて利上げを続けており、それがドル高/円安の原動力になっている。「ドル高は米側の要因だ。名目上にせよデフレ脱却という国内を目的にしている日銀の金融緩和策に文句をつけるのは難しい」(国内銀行)との見方は多い。 銀行株は、ほとんど動かない日本の金利より、米国の金利に連動している。米長期金利の上昇一服が、日本の銀行株を押し下げた可能性もあるが、いずれにせよ「状況証拠」を見る限りでは、市場が本気で日銀の出口を懸念し始めている動きは乏しい。 <「業績拡大シナリオ」が後退> 中国 上海総合 2568.095 .SSECSHANGHAI STOCK EXCHANGE -38.82(-1.49%) .SSEC .SSEC では、大して円高が進んでいないにもかかわらず、なぜ15日の日本株は大きく下げたのか。 消費税実施の可能性が高まったこともあるが、1つは為替条項を入れない代わりに、日本側が大幅な譲歩を迫られるとの懸念が強まったためだ。「トランプ流の強硬姿勢の下、日銀緩和や円安の是正の代わりに自動車関税や輸出自主規制、輸入拡大を迫られかねない」(国内銀行)という。 15日の東京株式市場で自動車を含む輸送用機器.ITEQP.Tの下落率は、3番目に大きかった。 「業績拡大シナリオ」も後退した。「米国の為替条項要求で、市場の円高懸念が強まったわけではない。しかし、1ドル120円といった過度な円安期待も後退し、日本企業の業績拡大期待もしぼんでしまった」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ投資ストラテジスト、藤戸則弘氏は指摘する。 さらに前週から続いている世界同時株安が大きな背景として存在している。15日の市場で主要株価が下落したのは日本だけではない。上海総合指数.SSECなどアジア株全体が下げている。「9月にグローバルで株を買ったヘッジファンドなど短期筋の売り戻しが続いている」(国内証券)という。 好景気を材料に株価が上がれば、利上げ予想が強まり、金利は上昇、株価は下落する──。 これ自体は健全な金融市場の動きだが、歴史的にみても株価の下落は急激になりやすい。グローバル金融緩和相場の転換点を迎えているだけに、日本株の調整も時間がかかるかもしれない。 (伊賀大記 編集:田巻一彦) 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 ビジネス2018年10月15日 / 18:40 / 14分前更新 為替条項を米側と話し合ったことない=財務長官発言で麻生財務相 1 分で読む [東京 15日 ロイター] - 麻生太郎財務相は15日の臨時閣議後の会見で、ムニューシン米財務長官が今後の通商協議において日本を含めたあらゆる国と通貨安誘導を防ぐための為替条項を求めていく意向を示したことについて、米側と為替問題が貿易交渉に影響を及ぼすと話し合ったことはない、と語った。 為替の議論に関しては、日米首脳間で「専門家(財務相)レベルで緊密に話をしていこうと決められている」とした上で、「為替の話が貿易交渉などに(影響を)及ぼすことについて、話し合ったことはない」と語った。 臨時閣議では、安倍晋三首相が2019年10月の消費税率引き上げに向けた対策検討を指示し、経済への悪影響回避にあらゆる施策を総動員すると表明した。 麻生財務相は首相指示について「今までも(消費増税を)やると言っており、その通り実行されるということだ」とし、増税に向けて前倒しでやるべきことや需要の平準化対策などを各省がいろいろと考えなければいけない、と語った。 臨時閣議で決定された災害の復旧・復興を中心とした2018年度補正予算について、「臨時国会で早期に成立をさせていただくよう、一丸となって取り組みたい」とし、2次補正予算の編成は「1次補正の審議も始まってない段階であり、今は何も言えない」と述べるにとどめた。 伊藤純夫 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 トップニュース2018年10月15日 / 18:30 / 24分前更新 焦点:色あせる中国「一帯一路」、国際金融の舞台で矢面に 2 分で読む [ヌサドゥア(インドネシア) 14日 ロイター] - インドネシア・バリ島で週末に開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会は、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けた。 中国はこの構想をグローバル化推進の原動力と位置付けて脚光を浴びたが、保護主義台頭への不安が広がる中、輝きは褪せてきたようだ。 国際金融協会(IIF)の前会長、チャールズ・ダラーラ氏は総会で「中国はある意味で(国際貿易)体制に便乗しているとの見方が西側で広がっていると思う」と述べ、「1980年代の日本に対する西洋の見方を思い起こさせる。そっくりだ」と続けた。 こうした見方はトランプ政権に限らない。ラガルドIMF専務理事もバリ島での貿易会合で、知的財産保護や競争の確保、行き過ぎた市場支配的立場回避の重要性を訴えた。中国を名指しはしなかったが、いずれもトランプ政権がたびたび中国について指摘する課題だ。 これまでトランプ氏の関税政策について集中砲火を浴びることが多かったムニューシン米財務長官は、今回の会合では従来より自信を増し、「自由で公正な相互貿易」を求めるトランプ氏の望みがより良く理解されるようになったと指摘。さらに、「(同盟国は)中国に圧力をかけるための連合ではない。中国に関連してほぼ共通の課題に直面し、志を同じくする人々の連合だ」と強調した。 <一帯一路> 総会では、中国が期待していたと見られる方向から議論が急転換したため、中国高官らはより守勢に立たされたようだ。 一帯一路に関する世銀のパネル討論会では、この構想に加わった小国の債務の持続性や、小国が中国との交渉力を欠いていることなどについて、中国高官らが質問責めにされた。 ブルッキングス研究所のシニアフェロー、デービッド・ダラー氏はパネルで、「一帯一路プロジェクトが極めて良いものだったとしても、低所得国にとっては過剰な債務を抱える深刻なリスクがある」と指摘した。 中国側の出席者からは、国際機関がトランプ政権の関税政策は阻止できないのに、国際協調を訴える中国の構想は無視されていると不満の声も漏れた。 中国人民大学の幹部は会議の傍ら、「G20、国連、世銀、IMF、WTO(国際貿易機関)を含むすべての会議が強固で生産的なものになり、保護主義や一国主義などあらゆる誤りを抑え込んでほしい」と語った。 (Yawen Chen記者 David Lawder記者) 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 コラム2018年10月15日 / 18:25 / 29分前更新 コラム:「覇権」争う米中、貿易戦争は長期化か 世界経済の曇天続く 田巻一彦 2 分で読む [東京 15日 ロイター] - 米中の「貿易戦争」が、長期化する兆しをみせている。米側が単なる貿易赤字の削減を求めているのではなく、中国の経済的、軍事的膨張を止めようとしており、米中両国による「覇権」争いの色彩を強めているからだ。すでに国際通貨基金(IMF)は、2019年の世界経済の成長率を引き下げており、この先も「曇天」が続きそうだ。両国経済への依存度が高い日本にとって、「火の粉」が降りかかる危険性もある。 <ボルトン補佐官のロジック> ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は12日に放送されたラジオインタビューで、中国は貿易、国際問題、軍事、政治の分野で行動を是正する必要があると指摘し、トランプ政権が対中政策で一段と強硬姿勢を取る可能性を示唆した。 特に注目されるのは、中国の経済的な成長が軍事的な伸張とリンクしているとの見方を明確に示し、中国の経済的な対応について、米国が「違法」と見る範囲内の行為の撤回を求めていることだ。 ボルトン補佐官は、中国が貿易やビジネスの国際規範に違反して、経済力や軍事力を大幅に高めてきたとし「米国の技術を盗むことが許されない状況に置かれれば、中国の軍事力は著しく後退し、中国が引き起こしているとわれわれが考えている緊張の大部分は、緩和されるだろう」と言い切った。 <覇権国交代と経済力> もはや、中国の対米黒字が減少しても、それだけで米中間の和解が進む可能性はかなり低下していると見ていいのではないか。 背景にあるのは、世界の様々なシンクタンクが、2030年代における米国と中国の国内総生産(GDP)逆転を予想していることだ。GDPで米国が中国の逆転を許せば、軍事力で対抗する経済的な土台を失い、覇権国から滑り落ちることになりかねないと認識しているのではないか。 実際、16世紀以降の西欧台頭後の世界に限っても、スペイン、オランダ、英国、米国と覇権国家の推移は、経済力の浮沈と若干のタイムラグを伴いながら連動している。 覇権を巡る綱引きが始まったとすれば、それが短期間で終結することはないだろう。カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、11月のアルゼンチン20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて、米中首脳会談が開催される可能性に言及した。だが、その会談で一気に米中が和解に向かい、大筋合意に達するのは難しいだろう。 <黒田総裁も保護主義台頭に警鐘> 米中の経済的な緊張が長期化すれば、世界経済への下押し圧力も継続することになる。国際通貨基金(IMF)は9日、2018年と19年の世界全体の成長率見通しをそれぞれ、7月時点の3.9%から3.7%に引き下げた。 IMFのラガルド専務理事は11日、貿易戦争や通貨戦争が世界の成長を阻害し、「罪のない非当事国」を傷付けかねないとした上で、各国が貿易摩擦を巡る緊張を緩和し、世界の貿易ルールを放棄するのではなく修正するよう訴えた。 また、日銀の黒田東彦総裁も14日、世界の政策担当者らが「自由貿易の重要性について認識を再確認して」対話を継続するよう求め、保護主義の一段の台頭は、貿易や企業信頼感、世界経済の成長に悪影響を及ぼすと警告した。 そのうえで「世界的な価値の連鎖を通じて世界経済は相互依存を強めており、保護主義的な動きにもっと注意を払うべきだ」と述べた。 <米中対立と日本経済> こうした状況を踏まえると、米中の経済的な対立を起点にした世界経済の「変調」は、長期化すると見た方がいいだろう。 米株上昇に代表される「リスクオン」相場は、直近の下落で調整局面を迎えたが、それが短期で収束するのか、それともしばらく継続するのか、市場の見方は分かれている。 私は、これまで指摘したように、米中の緊張は長期化すると予想しており、「リスクオン」全開相場に戻ることは難しいと予想する。 また、日本の製造業が電機を中心に組み立てから部品供給へとシフトする中で、対中輸出の比率は高まっており、米国の関税引き上げは、日本企業の業績にも大きな影響を与えるだろう。 同時に、米関税引き上げの影響も加わった米物価上昇の影響で、米国の個人消費に陰りが出れば、日本からの対米輸出にもマイナスになる。 株式市場は、こうしたリスク要因を先行して織り込むことになるだろう。とすれば、足元の東京株式市場で多数派を形成している「業績好調で株高」というシナリオが、本当に現実となるのか、もう1回、慎重に見極める必要があると考える。 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 ビジネス2018年10月15日 / 18:15 / 39分前更新 焦点:安倍首相、増税対策で政策総動員 ポイント還元含め反動減抑え込み 2 分で読む [東京 15日 ロイター] - 安倍晋三首相は15日の臨時閣議で、2019年10月の消費税率引き上げに向けた対策検討を指示した。あらゆる施策を総動員すると強調し、前回引き上げ時のような景気落ち込みの回避を最優先に掲げた。ポイント還元という新機軸も対策に盛り込まれ、先進国に比べ立ち遅れているキャッシュレス化への意欲もみえる。景気変動の平準化は果たしてできるのか、この1年間が安倍内閣にとって大きな山場となりそうだ。 菅義偉官房長官によると、安倍首相は臨時閣議で「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と述べた。 安倍首相ら政府首脳の念頭にあるのは、2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際、駆け込み需要とその後の反動減の振れが大きかったことだ。5.5兆円の経済対策をまとめたが、予想を上回る反動減が景気を冷やした。 菅官房長官は15日の会見で、当時の経験について聞かれ「消費税上げ後の反動減が長く続いた」と述べた。 首相周辺のリフレ政策を支援する学識経験者の多くは、14年4月の増税がなければ、アベノミクスは軌道に乗り、デフレ脱却宣言をすることができたとの見方で一致している。 今回は「前車の轍を踏まない」という堅い決意が、安倍首相にあるとみられる。前回はなかった食料品への軽減税率の適用やポイント還元という新しい試みも、消費の落ち込みを少しでも和らげようという「意思」の表れとみられる。 また、経産省内では、2020年の東京五輪開催時までにG7(主要7カ国)で最低水準のキャッシュレス化を推し進めたいとの声が大きかった。今回のポイント還元は、増税時の対策を推進しつつ、キャッシュレス化を推し進める狙いもあるとみられる。 ただ、軽減税率の対象となる食料品が、さらに2%のポイント還元の対象になるのかとの質問に菅官房長官は「しっかり検討して今後、詰める」と述べ、具体的な制度設計に向けた議論は、今後の課題として残っている。 この日の臨時閣議では、追加歳出9356億円の2018年度第1次補正予算案を決定した。西日本豪雨や相次ぐ台風など自然災害への対応が歳出の柱で、冷房設置や倒壊の恐れのあるブロック塀対策など公立学校の安全対策も盛り込んだ。 今回は、災害復旧・学校安全対策に向けた1次補正予算に加えて、国土強じん化を柱とする2次補正予算も年末までに編成し、切れ目ない財政出動で災害復旧と景気対策に備える。 政策総動員によって、消費増税で生じる「穴」を少しでも小さくしようという意図がうかがわれる。 ただ、米中貿易摩擦やその他の対外的な要因で、円高が進んだ場合、今回の対策でカバーしきれない事態も予想され、安倍政権は国内の消費増税、海外の経済的リスクという「両にらみ」の対応を強いられることになりそうだ。 ポリシー取材チーム 編集:田巻一彦 外為フォーラムコラム2018年10月12日 / 11:02 / 22分前更新 コラム:イタリア不安、素人政治の暴走再び=田中理氏 田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト 4 分で読む
[東京 12日] - イタリアの財政運営を巡って市場の緊張が高まっている。政治刷新を目指す五つ星運動と反移民を掲げる同盟のポピュリスト2党が率いる連立政権が発表した向こう3年間の財政計画では、2019年の財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は2.4%と、前政権時代の計画の3倍に膨れ上がった。 その後も20年に同2.1%、21年に同1.8%と赤字削減を見込むが、当初20年に予定していた財政均衡化は棚上げされた。 債務危機時に導入された予算の事前評価制度の下、イタリア政府は15日までに財政計画を肉付けした予算案を欧州委員会に提出する。欧州連合(EU)加盟国の財政運営を監視する欧州委員会は既に、新政権の財政計画が重大な規律違反の恐れがあるとの書簡を政府に送っている。 ただ、新政権の実質的な指導者であるディマイオ(五つ星運動党首)、サルビーニ(同盟党首)両副首相は、財政計画の修正をかたくなに拒否している。近く提出する予算案は却下され、10月末までに再提出を求められることが予想されている。イタリア政府がそのまま欧州委員会の意見勧告に従わない場合、最大でGDP比0.5%相当の制裁金支払いとEU構造投資基金の凍結につながる「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」が開始される可能性が高い。 <楽観的な財政計画> 財政計画を巡るイタリア政府と欧州委員会の見解の隔たりは、見た目の数字以上に大きい。イタリア政府は計画に盛り込んだ最低所得保障、フラット税率導入、年金支給開始年齢の再引き上げ、付加価値税(VAT)の引き上げ撤回、公共投資の拡大などにより成長率が押し上げられ、実質GDP成長率が18年にプラス1.5%、19年にプラス1.6%、20年にプラス1.4%と、ユーロ導入後の平均(プラス0.4%)の4倍近い成長が継続すると予想する。同計画では減税や歳出増加がなかった場合、各年成長率をプラス0.9%、プラス1.1%、プラス1.1%と見込んでおり、一般に考えられているよりもはるかに大きい財政乗数(財政支出や減税がGDPをどれだけ変化させるかの比率)を想定している。 だが、イタリアの成長率は今年に入って減速傾向にあるうえ、このところの金融市場での緊張の高まりが金利上昇などを通じて企業活動にも悪影響を及ぼすこと(いわゆるクラウディングアウト)が予想される。また、VATの増税撤回はイタリア国民の大多数が予想していたことで、追加的な景気刺激効果は期待できない。世界経済のピークアウト懸念も高まっており、財政計画が想定する成長率の前提はどうにも楽観的過ぎる。 実質GDPの想定以上に楽観的なのが名目GDPだ。財政計画では、両計数の差に相当するGDPデフレータの急加速を見込んでおり、名目GDP成長率は19年にプラス3.1%、20年にプラス3.5%、21年にプラス3.1%と、過去10年間に1度も実現していない3%台の定着を想定する。そして、この名目GDPが公的債務残高の対GDP比率(以下、債務比率)を計算する際の分母となる。 新政権の財政計画では、債務比率が18年の130.9%から21年には126.7%に低下すると見込んで、財政再建を強調する。だが、債務比率の低下はもっぱら分母の拡大によるもので、成長率が少し下振れすることで債務の膨張が続くことになる。 例えば、債務残高の数字をイタリアの財政計画のまま、名目GDPを国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しの数字に置き換えて計算し直すだけで、21年の債務比率は130.0%と18年からほとんど下がらない。コンセンサス予想とほぼ一致するIMFの見通しから0.2%ポイントずつ成長率が下振れしただけで、債務比率は逆に上昇していく。 この他にも、新政権の財政計画では、18年から21年にかけてGDP比で1.5%規模の歳出抑制や税恩赦による税収増(納税すれば追徴課税を回避)を想定しているが、123ページに及ぶ財政文書の中にその具体的な方策についての言及はほとんどみられない。つまり、イタリアの財政計画は突っ込みどころが満載で、EU側がこのまま受け入れることは考えられない。 <EUの歩み寄りは期待薄> 来年5月の欧州議会選挙でポピュリスト勢力への追い風となることを恐れ、EU側がイタリアに厳しい要求をすることが難しいとの意見もあるが、それが故にEUが財政規律を曲げることは考えづらい。また、債務危機の再燃を恐れ、EU側もイタリアとの全面衝突を回避するとの見方もあるが、イタリアの緊張が高まった後も他国への波及は限定的で、EU側からの歩み寄りは期待し難い。 新政権の重要な意思決定は、ディマイオ、サルビーニ両副首相を中心に行われており、今回の財政計画でも最終的に2人の意向が反映され、規律重視派のトリア経済・財務相や財務官僚の忠告は無視された。トリア経済・財務相の辞任観測が後を絶たず、政権内では大統領が経済・財務相への就任を拒否したサボナ欧州問題担当相の影響力が増している。 政権の中枢には、トリア氏とサボナ氏を除いて経済・財政分野に精通した人材が少ない。トリア氏は政権内で影響力を失い、一方のサボナ氏は閣僚就任後に極端な主張を封印しているものの、元々は筋金入りのEU懐疑論者だ。前述した財政計画の矛盾を指摘された際に、政権関係者から感情的な反発の声が上がることが容易に想像される。 最終的にイタリア側が折れるには、市場の緊張が一段と高まり、有権者の不満の矛先が政権に向かい始めることが必要となろう。 <ギリシャと利回り逆転するか> 新政権の財政運営を巡る不安から、イタリアとドイツの国債利回りのスプレッドは、防衛ラインとみられた300ベーシスポイント(bps)を突破した。中小企業の経営者を支持母体とし、毎朝スプレッドを確認しながら朝食をとるとされる同盟のサルビーニ党首が、「対独スプレッドが400bpsに達したとしても財政目標を変えることはない」と発言するなど、今のところ政権関係者から譲歩姿勢はみられない。400bpsはギリシャとイタリアの利回りが逆転する水準だ。具体的な水準に言及したことで、政府の限界点がどこにあるのか、金融市場は試しにかかるだろう。この辺りも新政権の市場対話の未熟さを感じざるを得ない。 仮にそこまで拡大すれば、欧州債務危機時にイタリアへの危機波及が不安視され、ベルルスコーニ首相(当時)が退陣に追い込まれた2011年末や、EUの財政救済基金の火力不足が問題視された2012年央以来となる。400bps突破後はエアポケットに入り、2011年末にはわずか2週間後、2012年央には3カ月後に500bpsを突破した。さすがにポピュリスト政権がそこまでの金利上昇に耐えられるとは思えないが、現実路線への転換が遅れれば、市場の信頼を回復することは難しくなる。 緊縮見直しを掲げて2015年に誕生したギリシャのポピュリスト政権が最終的にEU側の要求に屈したのは、銀行の預金封鎖や金利上昇が国民生活に深刻な影響を及ぼすことが明らかとなった段階だった。サルビーニ氏が言う通り、「イタリアがギリシャと同じ運命をたどることはない」だろう。だが、ポピュリストが有権者と交わした約束を破るためには、それを正当化するだけの目に見える混乱が必要なこともまた事実だ。 田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト(写真は筆者提供) *田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。 編集:伊藤典子 https://jp.reuters.com/article/us-china-trade-japan-idJPKCN1MP0W0
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