「金利上昇も悪くない」 米銀決算に見るプラス面 JPモルガンのダイモンCEOは金利上昇に「人々が驚いていることに驚いた」と述べたBy Aaron Back 2018 年 10 月 13 日 03:44 JST ――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」 *** 米国の大手銀行は12日、世界の終わりではないことをタイミングよく思い出させてくれた。 金利上昇を嫌気し、ダウ工業株30種平均はここ2日間に1300ドルを超える下げを演じたが、銀行は当然ながら金利上昇の恩恵を受ける。株価が急落する中でも、JPモルガン・チェース、シティグループ、ウェルズ・ファーゴの3行が発表した7-9月期(第3四半期)決算はいずれも、米経済の基本的な強さを示す形となった。 JPモルガンとシティは利益が市場予想を上回ったほか、不祥事に揺れるウェルズ・ファーゴもコスト削減が寄与してまずまずの内容となった。法人向け融資やクレジットカード融資の金利は預金金利を上回るペースで上昇するため、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げは、大半の銀行にとっては差し引きプラスとなる。JPモルガンはとりわけそれが顕著で、純金利マージンは前四半期の2.46%から2.51%に拡大した。ウェルズ・ファーゴでも利ざやは改善したが、シティは横ばいだった。海外事業の比率が高く、米金利の動向による影響が少ないためとみられている。 銀行幹部は米国債利回りの上昇を楽観しているようだ。JPモルガンのマリアンヌ・レーク最高財務責任者(CFO)は決算会見で「(利回り上昇は)予想していたことであり、望んでいたことだ」とし、「経済が拡大していれば、長期債の利回り上昇は望ましい」と述べた。 同行のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)も、金利上昇に「人々が驚いていることに驚いた」と語った。 JPモルガンのコア融資は7-9月に前年比7%増と、力強い伸びを維持した。レーク氏は金利上昇が顧客に打撃を与えている兆しは見られないと話している。シティグループの融資は、前四半期の4%増から3%増にやや減速した。 ウェルズ・ファーゴでさえ、融資動向は懸念されていたほど悪くなかった。ジョン・シュルーズベリーCFOは先月、法人向けの主要な貸し出し先である商業用不動産(CRE)融資と商工業融資がいずれも4-6月期に比べ減るとの見方を示していた。だが実際には、減少したのはCRE融資のみで、ウェルズ・ファーゴは慎重な見方をしていたためだと説明している。 また、消費者・法人の双方で、返済に窮している兆候が消えた。JPモルガンとウェルズ・ファーゴはいずれも貸倒引当金を引き下げており、両行がデフォルト(債務不履行)が減ると想定していることを示唆している。シティグループも引当金を少し積み増した程度だ。 つまり、消費者も企業も極めて良好な状況にあり、大手銀の収益改善をけん引したということだ。金利の上昇が続けば、株価が下がらないという訳ではないが、米経済にとって破滅的ではないということは言えそうだ。 【第47回】 2018年10月13日 三井住友アセットマネジメント 調査部 FRBは今後も利上げを継続するか?米雇用統計から読み解く行方 FRBの利上げの行方は? 米国では引き続きFRBが利上げを継続する可能性があるのでしょうか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA 皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
米国において、GDP統計と並んで重要な経済指標のひとつが雇用統計です。米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を運営するにあたって負っている二つの使命(デュアル・マンデート)が、「物価の安定」と「最大限の雇用」だからです。雇用統計は米国の金融政策の重要な判断材料になるのです。そこで今回は、10月5日に公表された最新の米雇用統計についてまとめてみました。 雇用統計は、農業を除く40万超の事業所、政府機関を対象とする事業所調査と、約6万世帯を対象とする家計調査の2つのパートからなります。前者の代表的な指標には雇用者数、平均賃金、労働時間等、後者には就業率、失業率等があります。 ハリケーンの影響ありでも力強く雇用は拡大 雇用者数も平均賃金も増加傾向に まず事業所調査の雇用者から見てみましょう。非農業部門に属する事業所の給与支払簿に記載された雇用者の数は、前の月に比べ13.4万人の増加となりました。市場が事前に予想していた同18.5万人増を大きく下回りましたが、もともと雇用者数は月ごとの振れが大きいのが特徴です。 しかも、9月は東海岸を襲ったハリケーン“フローレンス”の影響を受けている可能性が高いと考えられます。事実、家計調査によれば、29.9万人が悪天候の影響による就業不能者とされました(非農業、同統計は未季調、つまり季節調整がかかっていません)。当該事由による10月の就業不能者数の過去10年間における平均は20.0万人ですから、ハリケーンの影響は相当に大きかったといえます。 このように雇用者数は月次の振れが激しいため、3ヵ月および6ヵ月の移動平均をとると、過去2ヵ月の実績値が合計で8.7万人ほど上方修正されたこともあり、それぞれ19.0万人増、20.3万人増となりました。足元の雇用の基調は月平均20万人前後のペースで増加していると判断されます。米国の場合、失業率を悪化させないために必要とされる雇用の増加数は月間10?15万人程度ですから、力強い拡大と言えるでしょう。 業種別の動向を見ると、鉱業、建設、製造業からなる財部門は前月比4.6万人増でした。このうち建設は同2.3万人と増分の5割を占めています。大半が非住宅部門ですから、トランプ大統領の財政拡大策の効果が表れてきたと見られます。一方、サービス部門は同7.5万人増と、前月の同23.3万人増から大きく鈍化しました。特に小売、飲食、教育・医療の悪化が目立ちます。もっとも、ハリケーンの影響によるところが大きく、雇用の基調が変化したわけではないと考えられます。 次に平均賃金は前月比0.3%増となりました。前年比では2.8%増となり、8月の同2.9%増から鈍化しました。昨年9月の賃金がハリケーンの影響で押し上げられたことによるもので、本来なら前年比の伸びは、もう少し高いものになっていたはずです。実際、10月の賃金は、多少の反動により前月比0.1%程度の低い伸びに止まったとしても、前年比の伸びは3%に到達することになります。そうなれば、2009年4月の同3.4%以来の高い伸びになります。 ともあれ、これで前月比0.3%の伸びが3ヵ月続いたことになり、ここ数ヵ月間で賃金の伸びが僅かながら高まってきました。景気拡大のペースが加速するなか、人手不足感がさらに強まっている可能性を示唆するものです。実際、Amazonの最低賃金引き上げ等、賃上げの報も増えているようです。 9月の賃金統計は、ハリケーンの影響を受けていると見られますが、自発的離職者の増加や、フルタイムの仕事が得られず、パートタイムの職を選択せざるを得なかった非自発的なパートタイマーの減少など、賃金にとって前向きな動きが強まっていることに間違いはありません。今後、賃金水準の高いビジネスサービスセクターの賃金増加率が高まってくれば、全体の賃金上昇にも一段と弾みがつくと見られます。 失業率は約49年振りの低さ、 労働需給は相当に引き締まってきている 一方、家計調査の代表的な指標である失業率は3.7%となり、前月の3.9%から大きく低下しました。69年12月に記録した3.5%以来、実に約49年振りとなる低い水準です。労働力人口(労働供給)は増加しましたが、それを上回るペースで就業者数(労働需要)が増えたためです。就業者の内容をみても、正規雇用、パートタイマーともに増加しましたが、正規雇用の伸びがパートタイマーの伸びを上回っています。このほか、週平均労働時間は前月比横ばいの34.5時間でした。天候の影響を受けやすい鉱業や建設の労働時間は減っているものの、他の業種が補ったようです。 以上が特に注目される指標ですが、労働市場の実勢を正確に捉えるには、これらだけでは十分とは言えません。例えば、職探しを断念して労働市場から退出した人々は、統計上は失業者とならないため、失業率を実態以上に低く見せる可能性があります。こうした問題に対応するためには、労働参加率(16歳以上の生産年齢人口に占める労働力人口の割合)や、労働市場からの退場者も含めた広義失業率、経済的理由によるパートタイマー比率、失業者に占める自発的離職者の割合(自己都合による離職者が失業者に占める比率)、失業期間といった指標にも注目する必要があります。 ただし、雇用関連の指標の数は多く、互いに異なる動きをすることもあります。そこで、労働市場の状態を総合的に捉えるために、雇用者数や失業率、賃金上昇率など17の指標(※)を構成要素とする労働市場情勢指数を構築しました。米国に12ある地区連邦準備銀行のひとつカンザスシティ地区連銀が公表している労働市場情勢指数と同様の指数です。 当方で構築した労働市場情勢指数は、2009年10月の▲7.49を当面の底に上昇軌道を辿り、直近18年8月に3.28をつけました。住宅バブルに沸いた07年3月につけた高値2.70を上回り、ITバブル期の01年5月に記録した3.56以来の高い水準です。続く9月は3.08と小幅な低下となりましたが、高い水準を維持しました。労働需給はかなり逼迫してきていると考えられます。 (※)17の指標の内容は、失業率、フルタイム雇用を希望したにもかかわらずパートタイマーとなっている労働者等を含めた広義の失業率、失業保険申請件数、労働参加率、就業率、経済的理由によるパートタイマー比率、自発的離職者比率、長期失業率、失職確率、就職確率、雇用者数、人材派遣業雇用者数、労働時間、賃金上昇率、ISM製造業雇用指数、コンファレンスボード消費者信頼感指数の雇用現状DI、同雇用将来DIです)。 物価は安定、利上げは緩やかなペースで 労働市場の状況から判断する限り、米連邦準備制度理事会(FRB)は、今後も利上げを継続する可能性が高そうです。利上げの着地点は、中立金利(景気を刺激も抑制もしない景気に中立な金利水準)と見なされる3%がひとつの目処になると考えられます。 労働需給は引き締まってきていますが、幸いなことに現在のところ賃金、物価の加速度的な上昇にはつながっていません。FRBの金融政策に対する信頼感等から、インフレ期待が落ち着いていることが大きいと考えられます。いずれにしても、急いで金利を引き上げる必要はなく、FRBは中立金利の3%に向けて緩やかな利上げを継続する見通しです。 (三井住友アセットマネジメント 調査部 磯合隆) https://diamond.jp/articles/-/182093 トップニュース2018年10月13日 / 09:43 / 1日前更新 焦点:ブラジル大統領選、市場は極右筆頭候補の行動力に期待 Rodrigo Campos 2 分で読む
[ニューヨーク 10日 ロイター] - ブラジルで28日に行われる大統領選決選投票で極右候補のジャイル・ボルソナロ下院議員が勝利し、年金改革や民営化を推し進めるとすれば、同国の資産は一段と値上がりする可能性がある──。投資家の間ではこうした見方が広がっている。 ボルソナロ氏は選挙期間を通じて自らの政策の詳細を明らかにしておらず、女性や人種などに対する差別的な態度も見受けられるが、市場はそれほど気にかけていない。ブラジル国内には、既に深刻な分断化や暴力に見舞われている社会がボルソナロ氏の言辞をきっかけにどうなっていくのかを懸念する声もあるが、やはり市場は深刻にはとらえていないようだ。 XPインベストメンツ(マイアミ)のチーフ新興国市場兼グローバル・ストラテジスト、アルベルト・ベルナル氏は「あまりに二極化がひどいのでブラジルには投資しないと言ってきた投資家は1人もいない。ブラジルに存在する二極化は英国やドイツ、米国とそう変わらない。世界はもっと分断が進んでいる」と話した。 ボルソナロ氏の第1回投票における得票率は46%と予想を上回り、2位の左派・労働党候補フェルナンド・アダジ元サンパウロ市長に約17%ポイントもの差をつけた。 投資家が引き続き恐れているのは、労働党が勝って国家主導型経済に戻り、テメル現政権が部分的に手をつけてきた改革がとん挫する事態だけに、第1回投票でボルソナロ氏がアダジ氏に対して優位に立ったことで、資産価格が上昇した。 ゴールドマン・サックスの中南米経済調査責任者アルベルト・ラモス氏は「重大な危険は労働党の介入主義的政策の復活だが、それが実現する確率はゼロでないにしても乏しくなってきている。(株式)市場が改革は実行されるとの安心感を強めれば、さらに大きく上がる可能性がある」とみている。 ストーン・ハーバー・インベストメント・パートナーズの新興国市場責任者ジム・クレイジ氏は、投資家が最も重要視しているのは年金改革だと指摘。これが実現すると確信しているとはまだ言えず、ボルソナロ氏が当選してどんな政権を樹立するかで分かってくるとの見方を示した。 ボルソナロ氏は、財務相の有力候補と目されるパウロ・グエデス氏に経済政策を任せている。グエデス氏はシカゴ大出身で、同大は経済政策について保守的かつ正統的な考えを持つことで知られる。またボルソナロ氏は、閣僚起用に向けて銀行を主体とするビジネス界の関係者とも接触している。 XPインベストメンツのベルナル氏は、ボルソナロ氏について市場は今のところ、グエデス氏が言及している内容の一部は実行し、より現実的に状況に対応できると好意的に解釈していると述べた。 10日には、グエデス氏が国営企業の年金基金が関係する不透明な資金のやり取りをした疑いで連邦検察当局の捜査対象になっていることが判明し、株価や通貨レアルが下落した。 それでもブラジル資産は上値余地がある、というのが専門家のコンセンサスとなっている。 9月半ばにボルソナロ氏が支持率でしっかりしたリードを確保しているとの世論調査結果が出て以降、ブラジル株や債券、レアルは軒並み上昇。ボベスパ指数は最高値に迫り、レアルの過去3週間の対ドル上昇率は10%を超えた。 ただ足元の1ドル=3.75レアル近辺という水準は、過去1年平均の3.52レアルや昨年平均の3.19レアルに比べればまだ安い。iシェアーズ・ブラジル上場投資信託(ETF)は今年の高値を15%程度、過去最高値は60%下回っている。 私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」 https://jp.reuters.com/article/brazil-election-assets-analysis-idJPKCN1ML0DP
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