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ライザップ、「見せかけの利益」水増し経営…赤字のワケあり企業を次々買収は錬金術か
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25090.html
2018.10.12 文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表 Business Journal
RIZAP公式チャンネル(「YouTube」より)
RIZAP(ライザップ)グループの2018年度第1四半期が営業赤字になった。直前の2018年3月期は、通年で売上高1362億円、営業利益135億円と10%もの営業利益を出していた。そこから一転しての営業赤字である。
前年度の第1四半期と比較すると、売上高は286億円から521億円と1.8倍と急拡大し、第1四半期連結累計期間としては9期連続で過去最高を更新しているが、営業利益は27億円の黒字から37億円の赤字になっている。
RIZAPの四半期報告書によると、営業利益の悪化は、グループ各社の積極的な新規出店や、テレビCMを中心とした広告宣伝の強化、RIZAP GOLF等のRIZAP関連事業の新規事業等の積極的な先行投資の結果であり、「期初計画通り」とのことである。そして、「本先行投資の効果もあり、第2四半期連結会計期間以降については、大幅な成長を見込んでおります。」とのことである。
■積極化するM&A
RIZAPといえば、「結果にコミットする」のテレビCMで有名なボディメイク事業の印象が何より強い。それを積極的に展開しているのは事実であるが、実はRIZAPにはもうひとつの顔がある。
それは、投資家としての顔である。次から次へと積極的なM&Aをしているのである。2016年度には、書籍・雑誌出版の日本文芸社、婦人服の製造・販売をする三鈴、超富裕層向けヘルスケアを提供するエンパワープレミアム、体型補正用婦人服下着を手掛けるマルコ、カジュアルウェアの専門チェーンであるジーンズメイト、地域密着型無料宅配雑誌を手掛けるぱどと、合計7社の新規買収をしている。
2017年度には、宝飾品小売りのトレセンテ、洋装品等の製造・販売を行う堀田丸正、国内外で電気部品の加工・販売や各種パッキングの製作販売を手掛けるGORIN、スポーツ用品販売のビーアンドディー、エンターテインメント商品や化粧品などの小売りや携帯電話や音楽・映像ソフトのレンタル業などを営むワンダーコーポレーション、リビング新聞を発行するサンケイリビング新聞社と、合計6社の新規買収をしている。
2018年度は「月に1件はM&Aをする」(RIZAPグループ・瀬戸健社長)との方針のようだ。
■見せかけの利益を押し上げる「負ののれん」
これらのM&Aが、グループの売上高急拡大の大きな原動力になっている。しかし、RIZAPグループの業績判断をする上では、気をつけなければならない会計上の仕組みがある。
それは、M&Aに伴って発生するのれんの処理だ。のれんとは、被買収企業の会計上の評価額と、実際の買収額との差額だ。会計上の評価額には会計上認識される限定的な情報しか反映されていないので、通常はそれを上回る価額で買収するのが普通だ。その場合、のれんはプラスとなる。
しかし、RIZAPグループの場合、大半を会計上の評価額を下回る価額で買収している。その場合ののれんはマイナスになるので「負ののれん」と呼ばれる。2016年度は7社中4社、2017年度は6社中実に5社で負ののれんが発生している。
会計上、正ののれんと負ののれんは扱いが異なる。正ののれんは資産に計上するが、負ののれんは収益として損益計算書に計上することになっている。かつては、負ののれんを負債に計上するというルールの時代もあったが、会計上の評価額を下回る価額で買収するというのは、いわば「ワケあり商品を安く買う」という特別なケースなので、現在は一気に収益として顕在化させるルールになっている。
日本基準においては、負ののれんはその特別な性質から文字通り特別利益に計上することになっている。しかし、RIZAPグループはIFRS(国際会計基準)を採用している。IFRSでは、負ののれんは「その他の収益」として営業利益に含めることになっている。さらに、IFRSでは正ののれんは償却対象外なので、減損の対象にならない限り費用化されない。
■RIZAPの業績は本物か見せかけの錬金術か
かくして、負ののれんの分だけ営業利益が押し上げられることになる。RIZAPグループの2018年3月期におけるその額は87億円。これを除くと営業利益は48億円となり、売上高営業利益率は10%から3.5%になる。これをもってRIZAPグループの本当の収益力と見るべきだ。
そもそも、なぜ会計上の評価額を下回る価額で買収できているのかというと、被買収企業が業績の悪い「ワケあり商品」だからだ。実際、半数企業が赤字企業なのである。今第1四半期は、負ののれんという水増し分がなくなったことによって、その赤字が表面に出てきたともいえる。
RIZAPのM&A戦略は、おそらく業績不振の企業を安く買ってそれを立て直し、グループ全体の業績に貢献させようというものだろう。RIZAPが言う「計画通りの先行投資」が本当にその通りならば、効果が現れるのはこれからだ。また、カルビーの最高経営責任者(CEO)からRIZAPグループの最高執行責任者(COO)に就いた松本晃氏は、「規模を拡大すればいいというわけではない」と言っており、やみくもなM&Aに一定の歯止めもかかりそうだ。
RIZAPグループの業績は本物なのか見せかけの錬金術なのか。その答えは「第2四半期連結会計期間以降については、大幅な成長を見込んでおります」という言葉通りになるかどうかでわかるだろう。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)
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