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【ケフィア破産】高齢者たちから老後資金をむしり取った超高利回り「投資詐欺」の実態
https://biz-journal.jp/2018/09/post_24934.html
2018.09.30 文=編集部 Business Journal
浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ――。
今回、“投資詐欺”の種になったのはオーナー制度だった。干し柿やメープルシロップなどの加工食品のオーナーになれば、半年後に支払額の10%程度を加算し払い戻すとの触れ込みで出資を募り、その挙げ句、多額の支払いがストップしていたケフィア事業振興会と関連会社3社は9月3日、東京地裁から破産開始決定を受けた。4社の負債総額は1053億円で、債権者数は3万3747人。
関連会社3社は、かぶちゃん九州、かぶちゃんメガソーラー、飯田水晶山温泉ランド。
ケフィアの代理人弁護士は9月14日、東京地裁が同日付で同社の関連会社など12法人の破産手続きの開始を決定したと発表した。12社の負債総額は約191億円。
ケフィア事業振興会は鏑木秀彌社長が1992年にケフィアヨーグルトの種菌販売を目的に創業。柿やヨーグルト、ジュースなどの食品を中心とした通信販売「ケフィアカルチャー」を運営し、会員数は220万人に上るとされていた。
息子の鏑木武弥氏が経営している市田柿の生産会社、かぶちゃん農園が2011年、100人規模の人員整理に追い込まれるなど経営が悪化。これを挽回するために取り組んだのがオーナー制度だった。
オーナー制度は12年頃から展開。通販サイトの商品購入者らに勧誘のダイレクトメールを送付していた。契約者の出資金をもとにケフィア事業振興会がかぶちゃん農園など関連会社を通じて加工食品を製造して、通販サイトなどで販売。契約者には出資金に利子をつけて支払うというものだ。
出資対象はリンゴジュース、干し柿、ヨーグルトなど、少なくとも30品目に上る。リンゴジュースの場合、1口5万円の出資に対して5万4000円、干し柿だと1口5万円の出資で5万5250万円を支払う。半年で10%程度の高利回りとなる。
サポーター制度もある。同制度では太陽光やバイオマスなどの発電、電気自動車事業への投資で7〜8%の金利の支払いを約束して資金を集めていた。
大口出資者をつなぎとめるために、歌舞伎公演への招待、世界的に有名なサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」の貸切公演、チャーター機による海外旅行など、サービスに努めていた。
しかし、「半年で10%の利回りを保証する」事業など、そう簡単にできるわけはない。結局、新規に集めた資金を満期がきた元利の支払いに充てる自転車操業に陥った。17年11月頃から支払い遅延が発生し、消費生活センターに相談が寄せられていた。被害者は老後資金を投資した高齢者が多かった。
ケフィアの破産申立書によると、現預金はわずか5477万円しか残っていなかった。
■円天、エビ養殖、和牛オーナー制度
高利回りを謳う“投資詐欺”は、これまで何度も繰り返されてきた。
たとえば、健康食品販売会社、エル・アンド・ジー(L&G)は、「円天」と呼ばれる疑似電子マネーを使って詐欺を行っていた。100万円投資すると3カ月ごとに9万円の配当がつくという「年利36%」の高利回りが謳い文句だった。全国の主婦約5万人から1000億円を超す資金を集めていた。07年11月、破産手続きに入った。
「円天市場」と称して、全国の高級ホテルを会場に食料品から宝石類までが出品され、円天で取引された。会場には、主婦に人気がある演歌歌手を招き広告塔として使った。破格のギャラを得ていた細川たかしは損害賠償訴訟を起こされ、07年の「NHK紅白歌合戦」の出場辞退に追い込まれた。
また、投資会社ワールドオーシャンファームは、フィリピンでのブラックタイガー養殖事業への投資で金を集めた。出資単位は1口10万円以上。「1年3カ月の契約期間で出資金を倍にする」という触れ込みで、3万5000人から850億円をかき集めた。08年5月に破産した。
同社も都内の高級ホテルでパーティーを開催。世間の耳目を引いたのは、元首相・細川護煕氏の夫人の細川佳代子氏を広告塔に担ぎ出したこと。ワールド社の信用にお墨付きを与えた格好となった。
安愚楽牧場は、黒毛和牛への投資で金を集めた。「繁殖母牛に出資すれば、毎年生まれる子牛の売却代金で多額のリターンが望める」とした和牛オーナー制度である。
繁殖母牛は契約終了後に買い戻すという事実上の元本保証で、個人投資家から多額の出資金を集めていた。ところが、宮崎県で10年に発生した口蹄疫や、11年の東京電力福島原子力発電所事故に伴う牛肉の放射性セシウム汚染などで経営が悪化。11年12月、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。負債総額は4330億円、被害者数は7万3356人に上った。
経営が行き詰まっていたにもかかわらず新たに出資者を募ったとして、詐欺の疑いが浮上、告訴が相次いだ。
民主党代表(当時)の海江田万里氏は、彼が経済評論家時代に書いた安愚楽牧場に関する雑誌記事をきっかけに出資したという出資者30人から、約6億円の損害賠償を求める訴訟を起こされた。東京地裁は16年9月、請求を棄却し、海江田氏が勝訴した。
こうした投資詐欺は、間欠泉さながら、一定のサイクルで事件になる。「半年で10%の利回り」「1年間で投資額が倍になって戻ってくる」といった“ウマい”投資話には裏があるのは当たり前ともいえるが、人を欺く連中は、手を替え品を替えて、巧みに人の心に入り込む。
(文=編集部)
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