米対中関税第3弾、自動車部品業界を直撃へ トランプ政権の対中関税第3弾により、中国自動車部品メーカーだけでなく、米消費者も影響を受けそうだ(写真は中国・聊城の自動車部品工場) トランプ政権の対中関税第3弾により、中国自動車部品メーカーだけでなく、米消費者も影響を受けそうだ(写真は中国・聊城の自動車部品工場) PHOTO: /ASSOCIATED PRESS By Trefor Moss and Chester Dawson 2018 年 9 月 20 日 01:57 JST 【上海】トランプ米政権が発表した対中関税第3弾は、中国の自動車部品メーカーに大きな打撃を与えるものの、その影響は値上げを通じて米消費者にも及びそうだ。 来週24日に発動される2000億ドル(約22兆5000億円)相当の中国輸入品に対する追加関税の対象には、クランク軸やスパークプラグ、ワイパーブレードなど、さまざまな自動車関連部品が含まれている。影響はサプライチェーン(供給網)全体に波及する見通しで、新車・中古車問わず価格を押し上げる可能性がある。 業界関係者によると、自動車業界はグローバル化が進み、中国のサプライヤーは供給網で極めて独占的な地位を占めるようになっており、特定の素材や部品については手頃な価格で迅速に調達できる代替先がほとんどないという。 現在、中国企業1000社以上が、米国の自動車メーカーや部品販売店向けに自動車部品を輸出している。ボストン・コンサルティング・グループの最近の調査によると、米国が中国から輸入する自動車部品は年間100億ドル(約1兆1200億円)相当と、メキシコの230億ドルに次ぎ2番目の規模だ。米国の対中関税は当初10%だが、年末までには25%に上がる。 関税により、部品交換にかかるコストも上がりそうだ。例えば、大半が中国で生産されているブレーキロータを交換する場合、25%の関税なら平均コストは280ドルから400ドル近くに跳ね上がる可能性がある。そうなれば、自動車保有者は必要な修理を敬遠しかねない。業界団体オートケア協会はこう指摘する。 関税の影響をすでに心配する中国企業は、追加関税の発表を受けて、競合に米顧客を奪われるとの懸念を強めるかもしれない。 アルミホイールを生産する江蘇珀然股フン有限公司(江蘇省・連雲港)は、トランプ政権が7月に追加関税案を明らかにして以降、受注が半減したという。海外取引責任者、ソン・チェンチェン氏は、関税を回避するため韓国経由での輸出も視野に入れるが、300人の従業員に人員削減はないと話していると明かす。米自動車メーカーが求める品質のものを生産できる部品会社は世界にほとんどなく、米顧客に調達先を変更する選択肢はないとみているためだ。 ニュースレター購読 影響は中国企業にとどまらない。米国内に生産拠点を持ち、部品調達をこうした中国企業に依存する企業や、中国で部品を生産する米企業も無縁ではいられない。 エンジンメーカーの米カミンズは、中国のみでエンジンを生産している。一部の特別な部品が中国でしか確保できないからだ。中国で年間生産するエンジン約25万基のうち1万基以上を米国に輸出する。同社はトランプ政権がこれまで発動した対中関税により、間接的なものも含め、今年1億ドルのコストがかかると予想する。 関税の影響をとりわけ受けやすいのが、米国の部品メーカーだ。原料を中国から取り寄せ、容易には値上げに応じない米自動車メーカーに供給するためだ。部品メーカーを顧客に抱える法律事務所バッツェル・ロング(デトロイト)の弁護士、キャサリン・キャロル氏は「自動車部品メーカーは板挟みの状況で、関税によって引き裂かれる」と話す。 米自動車部品業界のロビイストは、包括的な関税ではなく、反ダンピング(不当廉売)関税など、一段と的を絞った措置を講じるようトランプ政権に要請している。 関連記事 報復関税の応酬、米経済に与える「ゆがみ」 米追加関税の意図せぬ成果:中国の競争力向上 【社説】対中関税に見るトランプ氏の戦略不在 米カルパース、中国に次期CIO候補求める カルパースのマーシー・フロストCEO(2017年2月) カルパースのマーシー・フロストCEO(2017年2月) PHOTO: MAX WHITTAKER/REUTERS By Heather Gillers 2018 年 9 月 20 日 06:22 JST
中国の外貨管理当局の投資担当者が米国最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)の次の最高投資責任者(CIO)の最有力候補に浮上した。複数の関係者が明らかにした。 カルパースは中国国家外貨管理局の孟宇(ベン・メン)氏を次期CIOに選定した。この関係者によると、19日午前の時点で孟氏は内定通知に署名しておらず、同氏のコメントも得られていない。 孟氏は2015年終盤まで7年にわたりカルパースで投資に携わっていた。今回の内定を受け入れれば3600億ドル(約40兆円)規模の資産を運用するカルパースに舞い戻ることになる。 現CIOのテッド・エリオポウロス氏は、期待リターンの下方修正、経費節減、次の景気後退への備えを進める中で、高コストのヘッジファンドへの投資を引き揚げた。エリオポウロス氏は5月に、今年中に辞任する意向を明らかにした。 次のCIOは、カルパースの270億ドル規模のプライベートエクイティ(PE)投資の方向性を巡る協議に加わることになる。カルパースはPEポートフォリオ見直しの一環として、非公開企業の株式を取得する資金プールに多額の資金を委託する計画を探っている。 あわせて読みたい 米地方公務員年金の資金不足、日本のGDPに匹敵 米の高齢化が加速、公的年金を圧迫 【バロンズ】投資家にとって最高のファンドとは 社説】平壌共同宣言の落とし穴 握手を交わす文在寅氏(左)と 金正恩氏(19日、平壌) 握手を交わす文在寅氏(左)と 金正恩氏(19日、平壌) PHOTO: PYONGYANG PRESS CORPS/ZUMA PRESS 2018 年 9 月 20 日 11:45 JST 平壌から伝えられた朗報は、北朝鮮の独裁者がいまでも核兵器を放棄したいと考えていると述べたことだ。しかし金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領による今年3回目の首脳会談後、19日に発表された共同宣言は、友好ムードにもかかわらず、核廃棄の目標に関しては大きな前進をもたらさなかった。 金委員長は、確かにミサイル試験施設の廃棄を約束したが、これは6月にシンガポールで行われたドナルド・トランプ米大統領との会談で話したのと同じ内容だ。ただし今回は、世界各国の専門家による監視を容認するとしている。同じものを別物のように売り込むのは、北朝鮮が得意とするやり方だ。そして、もともと象徴的だった譲歩に若干の要素を追加した、今回の首脳会談で得られた唯一の具体的成果を飛躍的な前進とたたえるのは残念なことだ。 南北問題を注視する一部の人々は、金委員長が核弾頭の中身を生産するための原子炉と遠心分離機を備えた寧辺(ニョンビョン)の核施設を廃棄する可能性にも言及したことに期待感を示した。しかし北朝鮮は、同じことをブッシュ(子)政権の時代にも約束し、それをほごにしている。 しかも、今回は落とし穴がある。米国が最初に、何らかの利益を与えなくてはならない点だ。具体的にどんな利益かは言及されなかった。北朝鮮の要求には、朝鮮戦争の終結を正式に宣言することのほか、国連の制裁措置および米国による一方的な制裁措置の緩和が含まれる公算が大きい。北朝鮮は6月以降、これと同じ非現実的な要求をしている。米国との交渉が停滞している理由はここにある。 最も重要なことは、金委員長が北朝鮮の核施設に関する申告と、その廃棄スケジュールを米国に提供すると約束しなかった点だ。核施設の申告は、最初の重要なステップになる。同国の研究施設、爆弾格納庫、ミサイル発射台や弾頭設計施設の場所が分からなければ、国際社会は非核化のプロセスを監視できないからだ。これは6月の米朝首脳会談後にマイク・ポンペオ国務長官が最初に要求したことだった。だが、北朝鮮は何も提供していない。 文大統領は、金委員長にほとんど圧力をかけなかった。文氏は、南北を経済的に統合するというアジェンダとともに、当局者およびビジネスリーダーから成る200人の代表団を連れて平壌を訪れた。自らのコミットメントを示すためだ。非核化に関する進ちょくがない一方で、こうした計画は前進している。韓国は制裁を破って、非武装地帯の向こう側に原材料や機材を送った。これは先週オープンした連絡事務所の建設のためだった。 19日の平壌共同宣言は韓国と北朝鮮が年末までに鉄道、道路連結のための着工式を行うことをうたっている。同宣言はまた、双方が金剛山観光事業と開城工業団地での事業再開に努めることを盛り込んでいる。両事業はそれぞれ2008年、2016年に停止されるまでの間、金正恩体制に外貨を提供する事業となっていた。 こうした計画を実現するためには北朝鮮に対する制裁措置の緩和が必要となるため、今回の合意は事実上、北朝鮮の対外貿易再開を認めるよう求める内容だった。韓国が米国に北朝鮮向け制裁措置を撤回するよう圧力を掛けることで北朝鮮を支援する中で、金委員長が核計画について説明しなかったのは驚くべきことではない。 韓国の文正仁・統一外交安保特別補佐官は先月、本紙に対し、韓国は信頼醸成のため米国と北朝鮮が相互に譲歩案を提示することを望んでいると述べた。この発言は北朝鮮が表明している北朝鮮と米国による「段階的で同時的な措置」という要求に呼応したものだが、まず非核化、次いで報償(緩和措置)、という米国の立場とは対立している。 このようなすべての事柄から判断すると、古い約束を繰り返すだけの金委員長の態度にトランプ大統領があれほど熱烈に対応したのは奇妙だ。トランプ氏は19日、「金正恩氏は、最終交渉を条件に、核査察の容認に同意した。また国際専門家の立ち会いの下に実験場と発射台を恒久的に廃棄することに同意した」とツイート。そして「この間、ミサイルないし核の実験はないだろう。(朝鮮戦争当時の)英雄の遺骨は米国の故郷に戻り続けるだろう。また北朝鮮と韓国は2032年五輪を主催する申請を共同で出すだろう。非常にわくわくする!」と書いた。 残念なことに、(発射)実験の一時停止は有用だが、非核化への進展ではない。保有兵器の放棄に金委員長が同意するチャンスは依然としてある。それは、米国がテコとなる制裁措置をしっかり維持している場合だ。19日の共同宣言は、韓国が金委員長にアメをどっさり差し出してムチをしまい込みたいと望んでいることを示唆した。だが北朝鮮の過去の行動は、そうしたやり方では成功がおぼつかないことを示している。 関連記事 平壌宣言で非核化協議に新たな風か、米国の対応焦点 南北首脳会談、笑顔を交わす正恩氏と文氏
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