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首都圏で無理なくマンションを買う人たちの方法…ローン返済額は年収の20%なら余裕!
https://biz-journal.jp/2018/09/post_24793.html
2018.09.16 文=山下和之/住宅ジャーナリスト Business Journal
首都圏を中心にマンション価格が高騰して、平均的な会社員では簡単に買えなくなっています。「もう新築マンションは諦めた」という声も聞こえてきそうですが、ほんとうにそうなのでしょうか。
実際には、多くの人ががんばって自己資金をつくり、できるだけ無理のないかたちでマンションを中心とするマイホームを取得しています。夫婦共働きで収入を増やして年収倍率を下げ、自己資金を多くすることで返済負担率を引き下げて、安全・安心の資金計画を立てている人が多いようです。
住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して実施しているフラット35を利用してマイホームを買った人たちの実態について調べた「2017年度フラット35利用者調査」をみると、そんな姿が浮かび上がってきます。
■首都圏の新築マイホームの年収倍率は10倍超
首都圏を中心にマンション価格が上がり続けています。その結果、平均的な会社員では簡単には手が届かない存在になりつつあります。
民間調査機関の東京カンテイによると、2016年の70平方m換算の新築マンションの全国平均の価格は3309万円。それに対して平均年収は436万円ですから、年収倍率は7.59倍です。これが、首都圏だけでみると、平均価格は5511万円に上がります。平均年収も516万円とそれなりに高くなりますが、それでも年収倍率は10.68倍です。年収の10倍以上のお金が必要になります。
しかも、東京都では平均価格で7265万円に達します。平均年収も634万円と全国平均より200万円近く多くなりますが、それでも年収倍率は11.46倍です。お隣の神奈川県の平均価格は5932万円ですが、平均年収が507万円なので、年収倍率は11.70倍と東京都より高くなります。
■子育て世代でも女性の有業率が高まりつつある
これではとても買えそうにありませんが、それでも買っている人が現実にいる背景には、いくつかの要因を上げることができるでしょう。
ひとつは、自己資金を増やすという手。長い年月をかけてコツコツ貯めるのが基本ですが、親が資産家であれば親から相当な資金援助を得てそれを自己資金にして取得するという人も少なくないでしょう。
なかでも、最も多いとみられるのが共働きによる収入のアップです。総務省統計局の「平成29年就業構造基本調査」によると、15歳以上の国民の有業率は59.7%で、男性は69.2%、女性は50.7%でした。少し前までは、女性は結婚時や出産時に離職、子離れしたあとに復職するのが当たり前でした。そのため、20代後半から30代後半の有業率が急低下、40代から再び上昇するため、年代別の有業率をグラフ化すると鮮明なM字カーブを描いていました。
それが、図表1にあるように、年々解消されつつあります。早晩、M字の中央部分の落ち込みがなくなって、フラットな台形になるのではないでしょうか。
■共働きで世帯年収が増加して年収倍率引き下げ
共働きで女性の年収が増えれば、世帯年収は大幅にアップします。東京都で新築マンションを買う例をみると、70平方m換算の平均価格は7265万円で、平均年収634万円ですから、年収倍率は11.46倍ですが、これが、配偶者の年収がパートなどで100万円あったとしたら、世帯年収は734万円で年収倍率は9.90倍と10倍を切ります。
出産・育児休業などを取得して、正規社員として働き続ければ、夫の年収に負けないぐらい稼いでいるのではないでしょうか。場合によっては、夫以上かもしれません。
仮に夫と同じくらいの年収を得ているとすれば夫婦合わせて1300万円近い年収になります。そうなると、年収倍率は5倍程度に下がって、まったく無理のない資金計画でマンションを取得できるようになります。
実際、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して実施している住宅ローン、フラット35を利用してマイホームを取得した人たちを対象とする「平成29年度フラット35利用者調査」では、図表2にあるように全国の新築マンションの取得額の平均は4348.4万円で、年収倍率は6.9倍でした。先の東京カンテイの全国平均の年収倍率7.59倍を下回っています。
■首都圏でも新築マンションの年収倍率は7.3倍に
首都圏だけでみても、図表3にあるように、新築マンションの平均価格は4787万円で、年収倍率は7.3倍です。こちらは、東京カンテイ調査の年収倍率10.68倍を大きく下回っています。なぜこんなに違っているのでしょうか。
ひとつには、東京カンテイによる70平方m換算の平均値が5511万円に対して、フラット35利用者の取得価格は4787万円で、700万円以上の差があることが関係していますが、同時に、年収に大きな開きがあります。東京カンテイの試算のもとになっている首都圏の平均年収は516万円ですが、フラット35利用者の首都圏の世帯年収の平均は782.7万円です。約267万円も年収が高いのです。
これは、冒頭に触れた共働きによる効果にほかなりません。
そこで、もう一度図表3をご覧ください。新築マンションだけではなく、住宅形態別の購入価格と年収倍率がわかりますが、中古マンションは平均価格2879.4万円で、年収倍率は5.7倍です。格段に無理のない範囲で買えるようになっています。共働きすれば、新築マンションは無理でも、中古マンションなら余裕で手に入るわけです。
■返済負担率は25%以内が安心、20%以下が理想
年収倍率をできるだけ低くすると同時に、もうひとつ重要な指標が返済負担率です。
返済負担率というのは、年間の住宅ローン返済額が年収の何%になるのかを示す数値です。たとえば、年収が500万円で、年間の返済額が100万円なら、100万円÷500万円で0.20、つまり20%ということです。
銀行などのローン審査に当たっては、この返済負担率が審査項目のひとつになっています。一般的には、年収400万円未満なら30%まで、400万円以上なら35%までOKですが、現実に年収500万円で35%の負担はかなり無理があります。できれば、25%程度に抑えておくのが無難といわれています。20%以下が理想でしょう。
事実、図表4にあるように、フラット35を利用してマンションを取得した人たちは最も負担率が高い土地付き注文住宅で23.1%、新築マンションが21.3%で、その他は20%以下におさまっています。皆さん、たいへん堅実な資金計画を立てているようです。
■首都圏でも返済負担率は25%以下におさまっている
平均価格の高い首都圏だけでみても、土地付き注文住宅は24.3%で、新築マンションは22.6%と、無難な範囲といわれる25%以内におさまっています。中古マンション、中古一戸建ては首都圏でも20%を切っています。
これも共働きによって世帯年収が増えている効果ですが、いまひとつ高額物件ほど多めの自己資金を用意しているという実態にも注目しておく必要があります。
たとえば、新築マンションの場合には、全国平均でも4348.4万円の取得価格に対して705.6万円の自己資金を用意しています。首都圏だけでみると取得価格4787.0万円に対して、自己資金は771.6万円で、自己資金比率は16.1%に達します。
フラット35の場合、取得価格の100%の融資も可能ですが、その場合には融資金利が高くなります。低い金利の適用を受けるためには、10%以上の自己資金を用意し、借入額を90%以下にする必要があります。
自己資金を増やせば借入額を減らすことができ、金利も低くなるので一石二鳥です。共働きで年収を引き上げると同時に、自己資金を増やすことがゆとりあるマイホーム取得の重要なカギになります。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
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